光の三原色

2020年5月14日 (木)

光の三原色の波長はどのように決まったのか 色が見える仕組み(8)

光の三原色の歴史

 ニュートンが1666年に行ったプリズムで虹をつくる実験をきっかけに「人間の眼はどのようにして色を感じているのか?」という疑問に関心が集まるようになりました。ニュートンをはじめ当時の学者たちは、人間の眼の中には光の色の数に相当する多種類の視細胞があると考えました。この考えに疑問をもったのがヤングでした。

ヒトの眼が色を感じる仕組みの探究のはじまり

 ヤングは1801年に絵の具の混色からヒントを得て「人間の眼の中には赤・緑・青の光を感じる視細胞があり、色は3つの視細胞が受けた刺激の割合で決まる」という三色説を提唱しました。ヤングの仮説は正しかったのですが、当時は光の混色実験が難しく再現性も乏しかったためまったく支持されませんでした。

 1860年、マクスウェルは色分けされた円板を回転させると別の色が見え、ある割合にすると白色に見えるという実験を行いました。Maxwellはこの実験で時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色を示したのです。

マクスウェルの円盤

この実験については、スコットランドの国立博物館のサイト(英語)に説明があります。当時の円板の写真も掲載されています。

彼は下記の装置で赤・緑・青の光の混合実験を行い、この3つの色光で白色光を作り出し、また様々な色を作り出せる可能性を示しました。

マクスウェルの箱

この装置を用いた実験については下記の論文に示されています。CAの方向から白色光を入れます。CBの間から入った白色光はミラーMで反射し、レンズLで集光されてEに向かいます。BAの間から入った白色光はスリットXYZを通って3つの白色光になります。3つの白色光はプリズムPで分光されて赤・緑・青の光となり、その後プリズムP'を通って混色され、レンズLをで集光されてEに向かいます。Eから覗くと、光の色を観察することができるようになっています。3色の光の強さはスリットXYZの位置と幅で調整することができます。BAから入ってEから出てくる光とCBから入ってEから出てくる白色光を比較し、BAからの混色された光がCBからの白色光と同じになるようにXYZを調整しました。


On the Theory of Compound Colours, and the Relations of the Colours of the Spectrum.
Philosophical Transactions, Vol. 150 pp. 57–84. 1 January 1860.
PDF https://www.jstor.org/stable/pdf/108759.pdf
本論文はJames Clerk Maxwellの単著となっていますが、この実験には夫人のKatherine Clerk Maxwellが貢献しています。この著書には観察者が2人出てきます。一人はJ.C. Maxwell本人ですが、本文中に出てくるもう一人の観測者Kは夫人のKatherineです。

 1868年、ヘルムホルツはヤングの3色説を定量的に解明し、ヤングの3色説が正しいことを説明しました。これをヤング・ヘルムホルツの三色説と言います。下図はヘルムホルツが求めた各錐体の分光感度曲線です。

ヤング・ヘルムホルツの三色説

こうしてヤング、マクスウェル、ヘルムホルツによって、三色説が有力な仮説となりました。

ヤング、マクスウェル、ヘルムホルツ

 1956年、スウェーデンの生理学者Gunnar Svaetichinは魚の網膜を調べ、青、緑、赤の3つの波長の光に特異的な感度を示すことを発見しまました。これは、ヤング・ヘルムホルツ三原色説を支持する最初の生理学的な実証となりました。


Spectral response curves from single cones,
Svaetichin, G., Actaphysiol. scand. 39, Suppl. 134, 17-46, 1956

網膜に赤・緑・青の光を感じる3種類の錐体細胞が存在することが確認されたのは1964年のことです。Marksらは錐体細胞を通した光と、錐体細胞を通していない光を比較することにより、光のスペ クトルの差を求め、網膜には 445nm(青)、535nm(緑)、570nm(赤)にピークをもつ3種類の視物質が存在することを証明しました。


Visual pigment of single primate canes.
Marks WB, Dobelle WH, MacNichol EF Jr:Science 143; 1181-1183, 1964.

 3種類の錐体の感度がもっとも高い波長は赤錐体450 nm、緑錐体530 nm、青錐体560 nmですが、それぞれの感度曲線は次の図のようにある程度の幅を持っています。

分光感度曲線

 青錐体はほぼ青色光に対応する感度分布になっていますが、緑錐体と赤錐体の感度分布は幅が広く、赤錐体は緑錐体よりも長波長側にシフトしているものの広い範囲で重複しています。青色の光に対しては、青錐体・緑錐体・赤錐体のすべてが応答することがわかります。この図を見てもわかるように、ある波長の光に対してひとつの錐体が応答するわけではありません。そのため、青錐体・緑錐体・赤錐体は波長の短(S)、中(M)、長(L)でそれぞれS錐体・M錐体・L錐体と呼ぶ場合もあります。

光の三原色を再現する等色

 マクスウェルの実験からも分かる通り、赤・緑・青の光を任意に混合すると、様々な色を作ることができます。これは私たちが見ている色を光の三原色で再現できるということです。3色の光でどれぐらいの色を再現できるかは次の図のような装置を使うことで確認できます。例えば、白色光をプリズムで分けて得られる波長約490 nmのシアン(青緑)の単色光が、光の3原色でどのように再現できるかを調べる作業を行います。このような作業を色合わせ、もしくは等色と言います。

等色の実験 

 いま[A]と[B]、[C]と[D]という色光があるとします。それぞれの色光の組み合わせが等色であるとき、式1で表すことができます。このような式を等色式と言います。≡は等色であることを示す記号です。

[A]≡[B]   [C]≡[D]・・・(式1)

そして、上記の等色の実験から次の2つの法則があることが確かめられています。この2つの法則をグラスマンの法則と言います。

グラスマンの法則:比例則

光の強度を一定倍にしても等色式は成り立つ

α[A]≡ α[B]      β[C]≡ β[D]・・・(式2)

グラスマンの法則:加法則

等色の光同士を加えても等色式は成り立つ

[A]+[C] ≡[B]+[D]   [A] + [D] ≡ [B] + [C]・・・(式3)

また、ある試験光[A]が[R][G][B]の光をそれぞれα・β・γの割合で組み合わせたときにできるとき、式4のように表すことができます。

[A]≡ α[R] + β[G] + γ[B]・・・(式4)

グラスマンの法則では任意の[R][G][B]の光を決めてやれば、試験光を式4で表すことができます。しかし、様々な色の試験光に対して、[R][G][B]で色合わせを行うためには[R][G][B]の標準化が必要になります。

光の三原色の標準化

 1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)は光の3原色を赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光としました。当時はLED(発光ダイオード)などありませんでしたから、実験に使いやすい光の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光700 nmは可視光の最も長波長の光を採用しました。このCIEの等色の標準化には、英国のJohn GuildWilliam David Wrightがそれぞれ別途に実施した実験結果が採用されています。この実験に使われていた光の三原色が上記の3つ波長の光だったのです。この三原色を使った色の表現方法をRGB表色系と言います。

 ところで、ヒトの眼の色を感じる錐体細胞は中心窩から2度以内のところに集中して分布しています。そのため、混色の実験でどのような色が見えるかは、観察者の視野によって変わります。そのため、CIEは測色標準観察者なるものを定義し、中心窩から2度の視野角で得られる色覚を人の標準的な色覚と定義しました。

次の図は、等色の実験において、試験光の波長を変更しながら、その試験光に等色する[R][G][B]の三刺激値を求めプロットしたものです。

CIE 1931 RGB等色関数

 この図は「CIE 1931 RGB等色関数」のグラフです。たとえば、660 nmの試験光に対する三刺激値の比率は次のよう読み取ることができます(実際には等色関数から計算で求めます)。

[R]:[G]:[B]=0.05932:0.00037:0.0000

 ところで、この等色関数のグラフを見ると、赤色光が450 nmあたりから550 nmあたりまでマイナスの値になっています。たとえば、約490 nmの試験光は、青色光と緑色光をおよそ0.05の割合で加えて、赤色光を0.05引かなければ再現できません。これを式で表すと次のようになります。

490 nmの試験光=0.05[B]+0.05[G]+(-0.05[R])

 光の三原色ではシアンの光は緑と青の光を混色するとできるはずですが、マイナスの赤い光を加えるというのはどういうことなのでしょうか。

 実は、波長490 nmのシアンの単色光を光の三原色の[G][B]の混色で作ろうとすると、このシアンの単色光の鮮やかさを再現することができないのです。そこで、等色実験で試験光のシアンの単色光に赤色の光を加えると、[G][B]で作ったシアンの光の色と等色になります(式5)。

490 nmのシアンの単色光 +[R]  = [G] + [B]・・・(式5)

ですから、490 nmのシアンの単色光は次のよう表すことになるのです。

490 nmのシアンの単色光 = [G] + [B] + [-R]・・・(式6)

 このように、490 nmのシアンの単色光を作るには[G][B]の光にマイナスの[R]を加えなければなりません。これは色を表現するのに非常に不都合です。そこで、CIEはマイナスの光を扱わなくても色を表すことができる数値で表す仮想的な3原色XYZをつくりました。大まかに言うとXは赤、Yは緑、Zは青で、Yだけには輝度を表す役割があります。このXYZを用いて現実の色を表現する方法をXYZ表色系と言います。

CIE 1931 XYZ等色関数

 ところで、カラーテレビや液晶ディスプレイは光の3原色を使って色を再現していますが、必ずしもCIEが定めた波長の光が使われているとは限りません。例えばカラーテレビは赤・緑・青の光を出す3種類の蛍光物質に電子ビームを当てて色を作りますが、それらの蛍光物質が出す光の波長はだいたい赤色光で610 nm、緑色光で550 nm、青色光で470 nmです。これらの波長は使う蛍光物質よって変わりますから、カラーテレビの色再現は厳密にはどの蛍光物質を採用したかによって異なることになります。このような色の表現を「機種依存な色表現」と言います。つまり、現実に使われているRGB 表色系は厳密には色を指定するのに向いていないという側面があります。

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2012年4月29日 (日)

「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7)

最終更新日:2025年12月16日

新着情報

 ・「光の三原色と色の三原色:たった2文でわかる定義と違い」を追加

はじめに

 この記事では「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組みや違いについて説明します。「光の三原色」と「色の三原色」は色が見える仕組みと密接な関係があります。時間のある方はこの記事の一番下にある【関連記事】の「光があるところに色がある 色が見える仕組み(1)」からお読みください。お急ぎの方は要約をご覧下さい。

光の三原色と色の三原色:たった2文でわかる定義と違い

光の三原色RGB)とは?

 光を混ぜて色を作る加法混色の基本となる色で赤(R)・緑(G)・青(B)の3色です。これらを均等に混ぜると白色になります。テレビやプロジェクターなど光を発する機器で色を再現するのに利用されています。

色の三原色(CMY)とは?

 絵の具やインクなどの色材を混ぜて色を作る減法混色の基本となる色でシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の3色です。これらを均等に混ぜると黒色になります。ラー写真、カラー印刷、インクジェットプリタなどで色を再現するのに利用されています。

光の三原色と色の三原色の原理と仕組み
「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み

要約

 この記事は「光の三原色」(RGB)と「色の三原色」(CMY)についてヒトの色覚と関連づけて詳しく解説しています。

〇ヒトの色覚

 ヒトの眼の網膜には赤錐体L錐体)、緑錐体M錐体)、青錐体S錐体)の3種類の錐体細胞があります。3種類の錐体細胞はそれぞれ異なる波長範囲の光で刺激を受けます。脳はこれら3種類の錐体細胞が受け取った刺激の割合から色を認識します。光の三原色や色の三原色で様々な色を作れるのはヒトの色覚の仕組みと深く関係しています。

〇光の三原色(RGB)と加法混色

 光の三原色は、赤(R:レッド)、緑(G:グリーン)、(B:ブルー)です。これは色光の混合で光を混ぜるほど明るくなります。光の三原色の色光を均等に混ぜると白色になります。色光を混ぜて色を作ることを加法混色といいます。身近な応用例としては、カラーテレビ、デジタルカメラ、プロジェクターなどがあります。

  【参考】光の三原色|図解 光学用語(別館 光と色と THE NEXT

〇色の三原色(CMY)と減法混色

 色の三原色は、青緑(C:シアン)、赤紫(M:マゼンタ)、黄(Y:イエロー)です。これは絵の具などの色材の混合で色を混ぜるほど光の吸収が増え暗くなります。色の三原色を均等に混ぜると黒になります。色材を混ぜて色を作ることを減法混色といいます。身近な応用例としては、カラー写真、カラー印刷、インクジェットプリンタなどがあります。

 青・赤・黄色(BRY)が色の三原色とされることがありますが、これは顔料の歴史的背景、初等の美術の学習、日本文化において青と緑の区別があいまいだったことなどによるものです。正しくは青緑(C:シアン)、赤紫(M:マゼンタ)、黄(Y:イエロー)です。

  【参考】色の三原色|図解 光学用語(別館 光と色と THE NEXT

〇補色と色相環

 特定の2つの色を混ぜたときに白色光(光の場合)や灰色(色材の場合)になる組み合わせを補色と呼びます。色相環は色相を環状に並べた図で、向かい合う色は補色の関係にあります。

目次

ヒトの色覚

 よく光の色は波長によって異なるという説明を聞きます。これは間違いではありませんが、色は光が持つ普遍的な性質ではなく私たちが色覚で認識しているものです。たった三色でさまざまな色を作ることができるのは私たちヒトの色覚の仕組みと深く関係しています。

 哺乳類はかつては夜行性の動物だったため、色を見分けることよりも、暗いところで良く見える能力が必要でした。そのため犬や猫など多くの哺乳類は二原色の色覚(二色型色覚)です。一方、哺乳類の中でも霊長類の一部の原猿類や新世界ザル類、旧世界猿や類人猿やヒトは昼行性となり太陽光のもと明るいところで暮らすようになったことから色を見分ける能力が発達し三原色の色覚(三色型色覚)を持つようになりました。

 ヒトの眼の網膜には赤色光、緑色光、青色光を感じる赤錐体(L錐体)・緑錐体(M錐体)・青錐体(S錐体)とよばれる3種類の細胞が存在します。この3種類の錐体細胞には光受容タンパク質ヨドプシンイオドプシン)が存在します。その構造の違いによりそれぞれ約560 nm、約530 nm、約430 nmを中心にある程度の幅をもつ波長範囲の光を感じることができます。

眼の構造と視細胞
眼の構造と視細胞

  【参考】視覚が生じる仕組み 色が見える仕組み(3)

 3種類の錐体細胞の刺激の大きさは眼に入る光によって変化します。それぞれの錐体細胞が受けた刺激が視神経を通って脳に送られます。脳は3種類の錐体細胞が受け取った刺激の割合から色を認識します。たとえば赤錐体と緑錐体が同程度に刺激されるとイエロー(黄色)、赤錐体と青錐体が同程度に刺激されると赤紫(マゼンタ)、緑錐体と青錐体が同程度に刺激されるとシアン(青緑)を認識します。すべての錐体細胞が同程度に刺激されると白色を認識します。

錐体細胞と桿体細胞の感度曲線
錐体細胞と桿体細胞の感度曲線

 私たちが認識している色は眼に入ってくる光の情報をもとに脳内で作り出しているものです。もともと光や物体には色はついていません。脳がものに色をつけているのです。光や物体は色覚が認識する色の条件を作っているにすぎません。色は私たちが作り上げた概念にすぎません。私たちが見ている色とりどりの景色は私たちの脳内で作り出されているバーチャルな世界と言えるでしょう。

 この記事をこのページから読んだ方で色が見える仕組みについて知りたい方は、この記事の一番下にある【関連記事】の(1)〜(6)をご一読ください。

「光の三原色」と「色の三原色」は何色か

 光の三原色RGB)は赤(R:レッド)・緑(G:グリーン)・青(B:ブルー)、色の三原色CMY)は青緑(C:シアン)、赤紫(M:マゼンタ)、黄(Y:イエロー)です。次の図は光の三原色と色の三原色を重ねると何色になるかを示した図です。

光の三原色と色の三原色
光の三原色 RGB 色の三原色 CMY

 この三色を混ぜ合わせると、ほとんどの色をつくり出すことができます。私たちが目で見ている色を再現できると言った方が的を射ているでしょう。

 光の三原色と色の三原色は色が違うだけのように見えますが、その意味は大きく異なります。光の三原色と色の三原色の違いについて、基本的な原理から考えてみましょう。

光の三原色(RGB)

 光の三原色は色光の混合です。次の図のように真っ暗な部屋の中で白地のスクリーンに赤・緑・青の光を当てたときの様子を示したものが光の三原色の図です。赤・緑・青の光源でさまざまな色をつくります。光の三原色の身近な応用例はカラーテレビ、デジタルカメラ、プロジェクターや舞台照明などです。白色LEDや蛍光灯にも光の三原色を利用したものがあります。

 【参考】液晶ディスプレイのカラー表示のしくみ|液晶ディスプレイの仕組み(3)

 よく白地に光の三原色が描かれた図を見かけますが、これは白色光の元で光の三原色の混色をしていることになりますので、正し表現とは言えません。光の三原色の背景は黒にするべきでしょう。

光の三原色の混色
光の三原色の混色

 光の三原色のそれぞれの色光は1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)によって赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光と定められました。当時は実験に使いやすい光源の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線、赤色光700 nmは可視光の最も長波長の光です。

  【参考】光の三原色の波長はどのように決まったのか 色が見える仕組み(8)

色の三原色(CMY)

 色の三原色は絵の具などの色材の混合です。次の図のように、白地のキャンバスの上で白色光に照らされたシアン・マゼンタ・イエローの色材を混ぜた様子を示したものが色の3原色の図です。色の三原色の身近な応用例はカラー写真、カラー印刷、インクジェットプリタなどです。プリンタのインクにはCMYの三色のインクの他に黒インクが使われます。これは色の三原色により綺麗な黒を作るのは難しく、またインクの節約のためです。カラー印刷の混色ではCMYに加えて黒をK(Key plateキープレート)で表しCMYKと呼ばれます。

色の三原色の混色
色の三原色の混色

 色の三原色は白色光で照らされた時に色材が反射する光の色です。シアンの色材は白色光のうち赤系の光の吸収しそれ以外を反射します。その反射した光がシアンに見えます。マゼンタの色材は白色光のうち緑系の光を吸収しそれ以外の光の反射します。その反射した光がマゼンタに見えます。イエローの色材は白色光のうち青色系の光を吸収しそれ以外の光を反射します。その反射した光がイエローに見えます。これらの反射する光は単色光ではありません。

 【参考】白色光|図解 光学用語(別館 光と色と THE NEXT

色の三原色に関する誤解:伝統的な赤・青・黄(RYB)の歴史的背景

 色の三原色は赤・青・黄(RYB)と説明している場合もありますが、正しくはシアン・マゼンダ・イエロー(CMY)です。シアン・マゼンダ・イエローは日本語で表現するとそれぞれ青緑(実際には水色に近い青緑)、赤紫、黄になります。

 日本人は昔から青と緑を明確に区別する文化をもっておらず、緑のことを青と呼ぶことが多かったという背景があります。赤紫と赤の区別もしっかりできていたかもわかりません。青緑を青、赤紫を赤と表現すると、色の三原色は青・赤・黄(RYB)となります。

 実際に原色の赤・青・黄を色の三原色としている場合があります。絵画の分野では、昔から赤・青・黄の絵具の混色で、さまざまな色を作り出してきました。そもそもマゼンタという顔料が使えるようになったのは1859年以降のことです。シアンの元になったプルシアンブルーという顔料が作られるようになったのは1704年以降です。

 小学校の美術の学習では、シアン・マゼンタ・イエローでは理解が難しいためか、赤・青・緑の絵具の混色で色の三原色を説明をしています。インクジェットプリンタが発売されるようになってから、色の三原色はシアン・マゼンタ・イエローと再認識した人も多いのではないでしょうか。

光の色は光の足し算 なぜ白になるのか

  赤と緑の波長の光を混合すると、黄色い波長の光が含まれていなくても、黄色に見える光ができます。たくさんの波長の光を混合していくと、光の波長の種類と量が増え、光は次第に明るくなり、ついには白色光になります。このように光の足し算で色をつくることを加法混色といいます。

 赤・緑・青の光の三原色を任意の割合で混ぜると、ほとんどの色をつくることが可能です。光の三原色の混色を式で表すと次のようになります。光の色が足し算で作られていることがわかります。

 W=R+G+B C=G+B M=R+B Y=R+G

 R:赤 G:緑 B:青 C:シアン M:マゼンタ Y:イエロー W:白

次の写真は赤・緑・青のLEDの光で混色で作った色です。

LEDによる光の三原色の混色
LEDによる光の三原色の混色

加法混色には、異なる色光を重ねて色をつくる同時加法混色、色分けされた円盤を回転したときのように時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色、細かい色の点をモザイク状に敷き詰めて色をつくる並置加法混色があります。

同時加法混色
"同時加法混色

 

継時加法混色と並置加法混色
継時加法混色と並置加法混色

物体の色は光の引き算 なぜ黒になるのか

 物体の色は、光源から物体に届く光のうち、物体に吸収せれずに反射した光で決まります。次の図は光源を太陽とした場合のリンゴとバナナの光の吸収と反射の様子を示したものです。 リンゴは太陽光のうちシアン系(青緑系)の光を吸収しそれ以外の光を反射しています。その反射光が赤色に見えます。バナナは太陽光のうち青色系の光を吸収しそれ以外の光を反射しています。その反射光が黄色に見えます。

いバナナと黄色いバナナの光の反射の様子
赤いバナナと黄色いバナナの光の反射の様子

 次の図は赤いバナナと黄色いバナナに太陽光(白色光)を当てたときの反射スペクトルです。赤いバナナは青緑色系の光を吸収(引き算)し、それ以外の光を反射していることがわかります。その反射光は主に赤錐体(L錐体)を刺激するため赤色に見えます。黄色いバナナは青色系の光を吸収(引き算)し、それ以外の光を反射していることがわかります。その反射光は主に赤錐体(L錐体)と緑錐体(M錐体)を刺激するため黄色に見えます。

赤いバナナと黄色いバナナの反射スペクトル
赤いバナナと黄色いバナナの反射スペクトル

 このような物体の色も色の三原色(CMY)で再現することができます。色の三原色の混合について考えましょう。色の三原色を式で表すと次のようになります。

 K=C+M+Y R=M+Y G=C+Y B=C+M

 R:赤 G:緑 B:青 C:シアン M:マゼンタ Y:イエロー W:白

 上式は絵の具を混ぜ合わせたときに何色になるかを示したものですから足し算の式になっています。しかしながら、色材は光の吸収体ですから、いろいろな色の絵の具を混ぜると黒ずんでいきます。絵の具を混ぜて別の色をつくるということは、吸収される光が増えてゆき、絵の具で反射して私たちの目に届く光の波長の種類と量が減るということです。このように、光の引き算で色をつくることを減法混色といいます。シアン・マゼンタ・イエローの3色で、ほとんどの色をつくり出すことができます。

 次の図はそれぞれの色材が光の三原色で作られた白色光からどの光を吸収しどの光を反射するかを示したものです。

RGB光源による減法混色
RGB光源による減法混色

 これを式で表すと次のようになります。色が引き算で作られていることがわかります。

 R=W-(G+B)=W-C 

 G=W-(R+B)=W-M 

 B=W-(R+G)=W-Y

 C=W-R

 M=W-G

 Y=W-B

絵の具の混色とカラープリンタの混色の違い

 絵の具もカラープリンタも色の三原色を使って色を作り出していますが大きな違いがあります。絵の具は色の三原色の色材を直接混ぜ合わせて別の色の絵の具を作り出します(詳細は後述の「色の三原色の実験」の映像をご覧下さい)。

 一方、カラープリンタは色の三原色を使って色を表現していますが、3色のインクを混ぜ合わせているわけではありません。印刷物をルーペで
拡大すると小さな点の集まりが見えます。これを網点と呼びます。網点を観察すると濃い色は大きく薄い色は小さいことがわかります。また色の三原色と黒のインクの組み合わせで網点を作り様々な色を表現しています。つまり空プリンターは色の三原色を利用した並置加法混色で色を再現しているのです。

カラープリンタの網点
カラープリンタの網点

カラープリンタのインクに黒がある理由(CMYK)

 カラープリンタのインクは色の三原色のシアン・マゼンタ・イエロー(CMY)に加えて黒(K = Key plate)があります。色の三原色のシアン・マゼンタ・イエロー(CMY)を等量混ぜ合わせると理論的には黒(K)になるはずですが、実際にはインクの特性により綺麗な黒色にはならずに濁った暗褐色(ダーティブラウン)や濃い灰色になってしまいます。そこでカラープリンタはCMYに黒インクを加えたCMYKでカラー印刷を行います。黒を単独のインクとすることでCMYインクの節約にもなります。黒インクを「B」ではなく「K(Key plate、キープレート)」と呼ぶのは黒い輪郭線や文字などを明瞭に表現するための基準となる色だからです。黒インクがない場合、CMYインクで黒色や灰色を作らなければならなくなるため黒インクを加えることはCMYインクの節約にもなっています。

補色とは

 特定の2つの色光を混ぜると白色光となり、特定の2つの色材を混ぜると灰色になります。このような組み合わせを補色といいます。

 光の三原色と色の三原色の補色の組み合わせは次の表のようになります。赤とシアン、緑とマゼンタ、青とイエローです。

光の三原色 補色
シアン
マゼンタ
イエロー

光の三原色の補色

色の三原色 補色
シアン
マゼンタ
イエロー

色の三原色の補色

 特定の2色の色を混ぜると色を失うのはヒトの色覚と関係しています。

 例えば、青とイエローの光を混ぜると白色になるのは、青色光が青錐体を刺激し、黄色光が赤錐体と緑錐体を刺激するからです。3種類の錐体がすべて刺激されるため白色となります。一般に使用されている白色LEDは青色LEDと黄色光を発光する蛍光体の組み合わせで作られています。LEDが発した青色光の刺激を受けた蛍光体が黄色い光を発光します。補色の関係にある青色光と黄色光を混合することによって白色光を作り出しているのです。

 【参考】白色LEDのスペクトル

 一方、青とイエローの色材を混ぜると白色にならずに灰色となるのは色材が光の吸収体だからです。同様に3種類の錐体が刺激を受けるためい色が失われますが下地の白い紙よりは暗くなるため灰色となります。

 赤はシアンを吸収しシアンは赤を吸収します。緑はマゼンタを吸収しマゼンタは緑を吸収します。青はイエローを吸収しイエローは青を吸収します。つまり光の三原色と色の三原色はお互いに補色の関係にあります。次の色相環で示すとおり三原色以外の色にも必ず補色があります。

色相環とは

 色相を環状に並べた図を色相環と呼び色の体系化に使われます。隣り合う色は類似色で調和が取りやすく、向かい合う2つの色は対比する色です。この対比する色は補色の関係にあります。

色相環
色相環

光の三原色の実験

 光の三原色の赤色LED、緑色LED、青色LEDを使った照明を入手することができます。3色のLEDの点灯の組み合わせにより光の三原色の混色を確かめることができます。

LED アンビエンス照明

Photo_20251014154901

 光の三原色のLEDライトがあると次の映像のような実験ができます。白い紙の上に白いピンポン玉が置かれています。そのピンポン玉に三方向から赤・青・緑の光を当てます。このときピンポン玉は光を受けている面が赤・青・緑の混色で白色になる位置に置きます。するとピンポン玉の後ろ側の三方向に色がついた影ができます。 シアンの影ができている部分は赤色の光が届いておらず緑色と青色の光が届いています。緑色と青色の光が混ざるとシアンになります。同様にイエローの影ができている部分は青色の光が届いておらず赤色と緑色の光が届いています。赤色と緑色の光が混ざるとイエローになります。マゼンタの影ができている部分は緑色の光が届いておらず赤色と青色の光が届いています。赤色と青色の光が混ざるとマゼンタになります。

Primary Colors of Light - Mixing of Colors

 

色の三原色の実験

 色の三原色のシアン、マゼンタ、イエローの絵の具を入手することができます。3色の絵の具をパレットで混ぜて色の三原色の混色を確かめることができます。

ターナー 三原色カラー 【5セット】

Photo_20251014152401

 色の三原色の絵の具で次の映像ような実験を行うことができます。白いパレットに色の三原色のイエロー、マゼンタ、シアンの絵の具が入っています。この基本の3色の絵の具を混ぜ合わせて様々な色を作っていきます。この映像は色の三原色の絵の具を使って色の三原色の減法混色の実験を演示したものです。色の三原色のシアン・マゼンタ・イエローを混ぜ合わせて赤、緑、青を作ります。隣り合う色を混ぜていくと色相環ができあがります。

CMY Color Wheel: Acrylic Color Mixing Tutorial 

 

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Author:Photon(光学修士 専門:光学、光分析、機器分析 執筆:光と色やレンズの本を執筆)

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