光の三原色

2026年3月 8日 (日)

光の三原色の波長はなぜ解説によって異なるのか?|視物質・条件等色・CIEの定義の波長

 

最終更新日:2026年3月10日

 光の三原色(RGB)の原理を深く探求していくと避けて通れないのが波長(nm)という具体的な数値です。しかし、この波長を調べるとWebサイトや参考書によって数値が微妙に異なっていることに気づきませんか?

 波長が異なる理由はいくつかありますが、その違いは何を対象にした解説なのかによります。何を解説しているのか明記しているものもありますが、単に光の三原色の波長や錐体細胞の波長としか記されていない解説もあります。異なる定義の混同によって、科学的な正確さを欠いている解説が少なからずあるのです。また古い文献値、誤記、由来が不明なものなどがあります。

1. 錐体細胞に含まれている視物質の最大吸収波長

 錐体細胞にはL錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)がありますが、それぞれの波長を、560 nm、530 nm、430 nm(または420 nm)としているものです。また、それぞれのピーク波長に幅を持たせて、L錐体を560-580 nm、M錐体を530-540 nm、S錐体を420-440 nmとしている解説もあります。

 Wikipediaには次の図が掲載されています。


Spectral-absorption-curves-of-the-short-
Spectral absorption curves of the short (S), medium (M) and long (L) wavelength pigments in human cone and rod (R) cells.
After Bowmaker J.K. and Dartnall H.J.A., "Visual pigments of rods and cones in a human retina." ''J. Physiol.'' '''298''': pp501-511

 この値は錐体細胞の視物質を抽出してその吸収スペクトルを分光光度計で測定したものです。ですから、眼の角膜、水晶体、硝子体での光の吸収の影響を受けていません。ですから視物質の物理的な吸収スペクトルと最大吸収波長です。

 なお上図の横軸が等間隔ではないことに留意してください。この図をもとに作成した図で解説しているものがありますが、グラフはそのままで横軸を等間隔にした誤った図をよく見かけます。図の中にピークの数値が入っていないものは間違えてしまいます。

2.条件等色から求めたヒトの色覚の最大吸収波長

 錐体細胞の刺激の割合から色を認識しているのは脳です。ですから、前述の視細胞の最大吸収波長とヒトの色覚の3色に対する最大応答波長は異なります。こちらの波長は条件等色の実験から生理学的に求められた波長で、L錐体が560 nm、M錐体が540 nm、S錐体が440 nmとされています。条件等色(メタメリズム)とは成分が異なる2つの光の色刺激が、特定の観測条件で等しい色に見えることです。例えば、光の三原色の緑色光と青色光を混ぜるとシアン光が得られます。単色光のシアン光とは光の成分が異なりますが、ほぼ同じ色に見えます(厳密には同じ色にならず単色光のシアンの方が鮮明になります。詳しい解説は「シアンのおはなし|単色光(波長)と複合光が存在する色」を参照)。

3.CIEが定義した光の三原色(RGB)の波長の国際規格

 1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)は光の三原色の波長を赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光と定義しました。この定義はイギリスのJohn GuildとWilliam David Wrightがそれぞれ別途に報告した条件等色の実験の結果から採用された値です。現在は単色光を発光するLED(発光ダイオード)光源がありますが、当時は実験に使いやすい光の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光はタングステンランプの白色光を分光器で分散させて得られた650 nmの光が使われましたが、定義としてはより長波長の700 nmの光が採用されました。

太陽光に含まれる可視光線と光の三原色(RGB)の色の比較
太陽光に含まれる可視光線と光の三原色(RGB)の色の比較

3.古い文献値、誤記、由来が不明なもの

 数値が間違っている解説も多く見かけます。それらのサイトをこの記事ですべて紹介することはできませんが、問い合わせを頂いた中から最も間違いの影響が大きいと考えられるページを紹介します。

 Googleでキーワード「光の三原色」で検索すると「FNの高校物理」の「光と絵の具の三原色(色とは何か)」というページが検索順位1位および強調スニペット(通称0位)に表示されます。このページは物理学を詳しく解説しており自分も尊敬するサイトの一つです。ところが、このページの中に次の記述があります。

人間の目の網膜には、赤色波長(6.1×10-7m)近傍の光に共鳴してその光のエネルギーを吸収し興奮する細胞と、緑色波長(5.5×10-7m)近傍の光を共鳴吸収して興奮する細胞と、青色波長(4.5×10-7m)近傍の光を吸収共鳴して興奮する細胞がある。それらの細胞の先端は錐体状をしており、それぞれはL錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)と呼ばれる。

 つまりL錐体は610 nm、M錐体は550 nm、S錐体は450 nmと説明しています。これらの数値は文章の内容からは錐体細胞の3つの視細胞の最大吸収波長と考えられます。そうであるならばこの数値は間違っています。また条件等色による波長やCIEが定義した波長の数値とも異なっており何に由来する数値かわかりません。文章内に書籍の1ページをまるごとコピーした写真へのリンクがありますが、そこにも波長の記載はありません。その下に図2が表示されていますが、この図は太陽光のスペクトルに本記事で紹介した条件等色の図「Simplified human cone response curves.」を重ねたものと思われます。波長の数値が誤記としても図は上述の説明とは異なるものです。

 図3は条件等色の実験から得られたLMS色空間の応答曲線です。これは色を再現(表示)するためのものではなく、ヒトが色覚が色をどのように知覚しているかを示すものです。ここから光の三原色の光源の波長について言及し、あたかも光の三原色ですべての色を表現できるかのような解説となっていますが、実際にはヒトの色覚を再現できる光の三原色の光源は存在しません。RGB色空間やXYZ色空間について解説もされていないので説明が中途半端になっています。

 その後のオプシンの解説ではレチナールの構造変化の説明をしていると思われるリンクが403エラーとなっています。また光受容細胞1、光受容細胞2、光受容細胞3のリンク先は著作物のコピーとなっています。引用が表示されていますが1ページ丸ごとコピーの画像表示は引用の範疇を超えておりいただけません。

 また、光の三原色と色の三原色の解説であるにも関わらず、加法混色や減法混色とは関係ない発光・発色の事例が掲載されています。

 FNの高校物理は優れたサイトではありますが、光の三原色と色の三原色の解説ページとしては内容は適切ではないと考えます。このページをGoogleが検索順位1位や強調スニペットに表示していることについては色彩を学ぶ人たちに対して悪い影響を与えることを懸念しています。

 ※FNの高校物理は非常に秀逸なサイトですが更新は止まっているようです。最近ではドメインの有効期限切れで長らくサイトが消滅しており、管理者様への連絡もできない状態でした。幸いサイトは復活しましたがドメインの有効期限が10年先になっていました。誤りの指摘をできる可能性は低いと判断し、こちらで紹介させて頂くことにしました。

4.光の三原色RGBの比較表

光の三原色の波長:階層別(視細胞・生理学・CIE規格)比較データ一覧
分類 L錐体 M錐体 S錐体 解説・意味合い
1. 視細胞 560  nm 530  nm 430  nm 網膜の錐体細胞(フォトプシン)が物理的に最も強く吸収する波長
2. 等色条件 560  nm 540 nm 440 nm 脳内処理を経てヒトが赤・緑・青と知覚する波長
3. CIEの規格 700 nm 546.1 nm 435.8 nm 色彩計測の基準として水銀灯の輝線等を用いて定義された波長です。

【参考記事】

 光の三原色(RGB)と色の三原色(CMY)の原理と仕組み、色が見える仕組み、条件等色、光の三原色の波長が決まった経緯については次のページを参照してください。

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Author:Photon(工学修士 専門:光学、光分析、機器分析 執筆:光と色やレンズの本を執筆 日本分析化学会会員)

本サイトの図表や解説は教育機関における著作物利用を管理する「SARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)」を通じて学校教育の現場でも活用されています

色彩の科学の基本について詳しく学びたい方には次の書籍をおすすめします。このページで指摘していることをより深く理解することができます。

Photonの書評

色彩の科学(岩波新書 44)

金子 隆芳 (著)(筑波大学名誉教授 専門:色彩心理学)

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2026年3月 3日 (火)

シアンのおはなし|単色光(波長)と複合光が存在する色

シアンとは

 「光の三原色」や「色の三原色」にシアンという名前の色が出てきます。シアンは日本語では藍紫色と言いますが、わかりやすく言うと水色に近い青緑色のことです。

 光の色としてのシアンは光の三原色の赤色光と青色光を均等に混ぜたときにできる色です。

(R,G,B)=(0,255,255)=#ff00ff

 物体の色としてのシアンについては、

 CMYKのプロセス印刷のCは次のような色になります。

(R,G,B)=(0, 174, 239)=#00aeef

 JIS慣用色名ではマンセル値で7.58B 6/10とされており、次のような色になります。これはCMYKのインクの色味とは異なります。

マンセル値 7.5B 6/10 (R,G,B)=(17,173,208)=#11add0

光の三原色と色の三原色の基本的知識について学びたい場合は次のページを参照してください。

 

シアンの由来

 シアンは古代ギリシア語の κύανος(kyanos、濃い青色)という単語に由来します。ただし、κύανος は天然石のラピスラズリの色(和名:瑠璃色)です。ラピスラズリが造られる顔料はウルトラマリンでシアンとは色合いが異なります。

ラピスラズリから造られた天然ウルトラマリン顔料
ラピスラズリから造られた天然ウルトラマリン顔料

 シアンの天然石として古くから知られていたのは貴重な宝石とされていたトルコ石です。トルコ石は古代の中国・アステカ・エジプトなどでシアンの装飾として使われました。トルコ石は貴重なため一般に顔料として使われることはありませんでした。

シアン色のトルコ石
トルコ石

 シアンの人工顔料は1704年にドイツの顔料・染料の製造業者ヨハン・ヤコブ・ディースバッハによって偶然に発明されました。コチニールを用いた赤い顔料を製造する際、使用した炭酸カリウムが窒素加工物を含む骨油(ディッペル油)で汚染されていたため青色を呈するようになったのです。この顔料は発明した地のプロイセンに由来してプルシアンブルーと名付けられました。当時非常に貴重だった青色の顔料に対し、安価で大量生産可能なプルシアンブルーが広く使われるようになりました。プルシアンブルーは粒子が非常に微細で濃淡を出しやすかったため幅広い青色を表現できるようになりました。シアンの顔料としても使われました。

 19世紀に入ると銅化合物を含む青緑色の顔料が使われるようになりました。1928年にイギリスの染料工場でフタロシアニンの銅錯体である銅フタロシアニンブルーが偶然に合成されると、フタロシアニンブルーの合成方法が研究開発され、鮮明なシアン顔料を工業的に安価に大量に製造
できるようになりました。、フタロシアニンブルー(銅フタロシアニン)は現代のカラー印刷に使われる色の三原色(CMY)のシアンとして使われています。

マンセル値 10PB 2/10 など(R,G,B)=(0,15,137)=#000f89

シアンの光は2種類ある

 この記事の冒頭でシアンは色の三原色(CMY)の緑(G)と青(B)を均等に混色したときにできる色と説明しましたが、虹やプリズムで分散したスペクトルの中にはシアンの光が存在します。約490 nm(485~500 nm)の波長の単色光はシアンです。

太陽光の可視光線の連続スペクトル
太陽光の可視光線の連続スペクトル

 つまりシアンには490nm付近にピークを持つ「単色光としてのシアン」と、青(B)と緑(G)が加法混色したときに生じる「複合光としてのシアン」が存在します。この二つのシアンは含まれる光の成分が異なります。物理的に異なるエネルギー分布を持ちながら、ヒトの眼の網膜の錐体細胞のM錐体(緑錐体)とS錐体(青錐体)を刺激するため、ヒトの色覚ではシアンとして認識されます。どちらも生理的に認識されるシアンですが、単色光のシアンは物理的に存在するシアンなどと表現されることがあります。

単色光のシアンと複合光のシアンの違い

 2つのシアンを比べると、単色光のシアンの方が複合光のシアンより鮮やかな色をしています。これはヒトの錐体細胞のL錐体(赤錐体)が青色光の刺激を受ける特性があるからです。次の図はヒトの標準的な色覚を標準観測者として数値化した波長ごとの刺激値を表した CIE 1931 XYZ等色関数をグラフ化したものです。

CIE 1931 XYZ等色関数
CIE 1931 XYZ等色関数

 この図を見ると約490 nm(485~500 nm)の単色光は青錐体と緑錐体のみに刺激を与えることがわかります。一方、青色光と緑色を混色した複合光は青錐体と緑錐体だけではなく赤錐体にも刺激を与えることがわかります。赤錐体が刺激を受けるため複合光のシアンは鮮やかさが失われてしまうのです。単色光のシアンに赤色光を混ぜると複合光のシアンと同じ色にすることができますが、複合光のシアンを単色光のシアンと同じ色にすることはできないのです。このことは単色光と光の三原色の色合わせの実験(等色実験)から判明しました。単色光と複合光のシアンの違いについては次のページで解説している等色条件やグラスマンの法則を参照してください。

【関連記事】

マゼンタのおはなし|単色光(波長)が存在しない色



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2026年1月23日 (金)

光の三原色の教育ツールデモンストレーター

 光の三原色の加法混色を確認することができる実験装置です。前面のつまみで赤・緑・青の原色の明るさを調整することができ、2色の光の混合や3色の光の混合を行うことができます。

「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組みについては下記のページを参照してください。
【関連記事】「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7)

Generic 光の3原色物理光学教育ツールデモンストレーター

サイズ:約12x8x11cm / 4.72x3.15x4.33インチ

 

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2025年12月29日 (月)

光の三原色(加法混色)と色の三原色(減法混色)の英語は?

 光の三原色色の三原色は、英語ではそれぞれ以下のように呼ばれます。

「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組みについては下記のページを参照してください。
【関連記事】「光の三原色」と「色の三原色」の原理と仕組み|色が見える仕組み(7)

光の三原色と色の三原色
光の三原色 RGB 色の三原色 CMY

〇光の三原色

 光の三原色はテレビやパソコンのモニターなど自ら光を放つものの色の混色の基本となる色です。赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)の三色です。それぞれの色の頭文字をとってRGBとも呼ばれます。

 光の三原色は英語では次のように表記されます。

  • The three primary colors of light
  • Primary colors of light 
  • Additive primary colors 

 混色の原理の加法混色Additive color mixing と言います。

〇 色の三原色

 絵の具やプリンターのインクなど物体の表面で反射した光の色の混色の基本となる色です。青緑(Cyan)、赤紫(Magenta)、黄色(Yellow)の三色です。それぞれの色の頭文字をとってCMYとも呼ばれます。

 色の三原色は英語では次のように表記されます。

  • The three primary colors of pigment
  • Primary colors of pigment
  • Substractive primary colors 

 混色の原理の減封混色は Subtractive color mixing と言います。

 

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2020年5月14日 (木)

光の三原色の波長はどのように決まったのか|色が見える仕組み(8)

最終更新:2026年3月8日

光の三原色の歴史

 ニュートンが1666年に行ったプリズムで虹をつくる実験をきっかけに「人間の眼はどのようにして色を感じているのか?」という疑問に関心が集まるようになりました。ニュートンをはじめ当時の学者たちは、人間の眼の中には光の色の数に相当する多種類の視細胞があると考えました。この考えに疑問をもったのがヤングでした。

ヒトの眼が色を感じる仕組みの探究のはじまり

 ヤングは1801年に絵の具の混色からヒントを得て「人間の眼の中には赤・緑・青の光を感じる視細胞があり、色は3つの視細胞が受けた刺激の割合で決まる」という三色説を提唱しました。ヤングの仮説は正しかったのですが、当時は光の混色実験が難しく再現性も乏しかったためまったく支持されませんでした。

 1860年、マクスウェルは色分けされた円板を回転させると別の色が見え、ある割合にすると白色に見えるという実験を行いました。Maxwellはこの実験で時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色を示したのです。

マクスウェルの円盤

この実験については、スコットランドの国立博物館のサイト(英語)に説明があります。当時の円板の写真も掲載されています。

彼は下記の装置で赤・緑・青の光の混合実験を行い、この3つの色光で白色光を作り出し、また様々な色を作り出せる可能性を示しました。

マクスウェルの箱

この装置を用いた実験については下記の論文に示されています。CAの方向から白色光を入れます。CBの間から入った白色光はミラーMで反射し、レンズLで集光されてEに向かいます。BAの間から入った白色光はスリットXYZを通って3つの白色光になります。3つの白色光はプリズムPで分光されて赤・緑・青の光となり、その後プリズムP'を通って混色され、レンズLをで集光されてEに向かいます。Eから覗くと、光の色を観察することができるようになっています。3色の光の強さはスリットXYZの位置と幅で調整することができます。BAから入ってEから出てくる光とCBから入ってEから出てくる白色光を比較し、BAからの混色された光がCBからの白色光と同じになるようにXYZを調整しました。


On the Theory of Compound Colours, and the Relations of the Colours of the Spectrum.
Philosophical Transactions, Vol. 150 pp. 57–84. 1 January 1860.
PDF https://www.jstor.org/stable/pdf/108759.pdf
本論文はJames Clerk Maxwellの単著となっていますが、この実験には夫人のKatherine Clerk Maxwellが貢献しています。この著書には観察者が2人出てきます。一人はJ.C. Maxwell本人ですが、本文中に出てくるもう一人の観測者Kは夫人のKatherineです。

 1868年、ヘルムホルツはヤングの3色説を定量的に解明し、ヤングの3色説が正しいことを説明しました。これをヤング・ヘルムホルツの三色説と言います。下図はヘルムホルツが求めた各錐体の分光感度曲線です。

ヤング・ヘルムホルツの三色説

こうしてヤング、マクスウェル、ヘルムホルツによって、三色説が有力な仮説となりました。

ヤング、マクスウェル、ヘルムホルツ

 1956年、スウェーデンの生理学者Gunnar Svaetichinは魚の網膜を調べ、青、緑、赤の3つの波長の光に特異的な感度を示すことを発見しまました。これは、ヤング・ヘルムホルツ三原色説を支持する最初の生理学的な実証となりました。


Spectral response curves from single cones,
Svaetichin, G., Actaphysiol. scand. 39, Suppl. 134, 17-46, 1956

網膜に赤・緑・青の光を感じる3種類の錐体細胞が存在することが確認されたのは1964年のことです。Marksらは錐体細胞を通した光と、錐体細胞を通していない光を比較することにより、光のスペ クトルの差を求め、網膜には 445nm(青)、535nm(緑)、570nm(赤)にピークをもつ3種類の視物質が存在することを証明しました。


Visual pigment of single primate canes.
Marks WB, Dobelle WH, MacNichol EF Jr:Science 143; 1181-1183, 1964.

 3種類の錐体の感度がもっとも高い波長は青錐体450 nm、緑錐体530 nm、赤錐体560 nmですが、それぞれの感度曲線は次の図のようにある程度の幅を持っています。

分光感度曲線

 青錐体はほぼ青色光に対応する感度分布になっていますが、緑錐体と赤錐体の感度分布は幅が広く、赤錐体は緑錐体よりも長波長側にシフトしているものの広い範囲で重複しています。青色の光に対しては、青錐体・緑錐体・赤錐体のすべてが応答することがわかります。この図を見てもわかるように、ある波長の光に対してひとつの錐体が応答するわけではありません。そのため、青錐体・緑錐体・赤錐体は波長の短(S)、中(M)、長(L)でそれぞれS錐体・M錐体・L錐体と呼ぶ場合もあります。

光の三原色を再現する等色とグラスマンの法則

 マクスウェルの実験からも分かる通り、赤・緑・青の光を任意に混合すると、様々な色を作ることができます。これは私たちが見ている色を光の三原色で再現できるということです。3色の光でどれぐらいの色を再現できるかは次の図のような装置を使うことで確認できます。例えば、白色光をプリズムで分けて得られる波長約490 nmのシアン(青緑)の単色光が、光の3原色でどのように再現できるかを調べる作業を行います。このような作業を色合わせ、もしくは等色と言います。

等色の実験 

 いま[A]と[B]、[C]と[D]という色光があるとします。それぞれの色光の組み合わせが等色であるとき、式1で表すことができます。このような式を等色式と言います。≡は等色であることを示す記号です。

[A]≡[B]   [C]≡[D]・・・(式1)

そして、上記の等色の実験から次の2つの法則があることが確かめられています。この2つの法則をグラスマンの法則と言います。

グラスマンの法則:比例則

光の強度を一定倍にしても等色式は成り立つ

α[A]≡ α[B]      β[C]≡ β[D]・・・(式2)

グラスマンの法則:加法則

等色の光同士を加えても等色式は成り立つ

[A]+[C] ≡[B]+[D]   [A] + [D] ≡ [B] + [C]・・・(式3)

また、ある試験光[A]が[R][G][B]の光をそれぞれα・β・γの割合で組み合わせたときにできるとき、式4のように表すことができます。

[A]≡ α[R] + β[G] + γ[B]・・・(式4)

グラスマンの法則では任意の[R][G][B]の光を決めてやれば、試験光を式4で表すことができます。しかし、様々な色の試験光に対して、[R][G][B]で色合わせを行うためには[R][G][B]の標準化が必要になります。

光の三原色の標準化

 1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)は光の3原色を赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光としました。これらの波長は英国のJohn GuildWilliam David Wrightがそれぞれ別途に実施した等色実験の結果が採用されています。当時はLED(発光ダイオード)などありませんでしたから、実験に使いやすい光の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光はタングステンランプの白色光を分光器で分散させて得られた650 nmの光が使われましたが最終的にはより長波長の700 nmの光が採用されました。この三原色を使った色の表現方法をRGB表色系と言います。

 ところで、ヒトの眼の色を感じる錐体細胞は中心窩から2度以内のところに集中して分布しています。そのため、混色の実験でどのような色が見えるかは、観察者の視野によって変わります。そのため、CIEは測色標準観察者なるものを定義し、中心窩から2度の視野角で得られる色覚を人の標準的な色覚と定義しました。

次の図は、等色の実験において、試験光の波長を変更しながら、その試験光に等色する[R][G][B]の三刺激値を求めプロットしたものです。

CIE 1931 RGB等色関数

 この図は「CIE 1931 RGB等色関数」のグラフです。たとえば、660 nmの試験光に対する三刺激値の比率は次のよう読み取ることができます(実際には等色関数から計算で求めます)。

[R]:[G]:[B]=0.05932:0.00037:0.0000

 ところで、この等色関数のグラフを見ると、赤色光が450 nmあたりから550 nmあたりまでマイナスの値になっています。たとえば、約490 nmの試験光は、青色光と緑色光をおよそ0.05の割合で加えて、赤色光を0.05引かなければ再現できません。これを式で表すと次のようになります。

490 nmの試験光=0.05[B]+0.05[G]+(-0.05[R])

 光の三原色ではシアンの光は緑と青の光を混色するとできるはずですが、マイナスの赤い光を加えるというのはどういうことなのでしょうか。

 実は、波長490 nmのシアンの単色光を光の三原色の[G][B]の混色で作ろうとすると、このシアンの単色光の鮮やかさを再現することができないのです。そこで、等色実験で試験光のシアンの単色光に赤色の光を加えると、[G][B]で作ったシアンの光の色と等色になります(式5)。

490 nmのシアンの単色光 +[R]  = [G] + [B]・・・(式5)

ですから、490 nmのシアンの単色光は次のよう表すことになるのです。

490 nmのシアンの単色光 = [G] + [B] + [-R]・・・(式6)

 このように、490 nmのシアンの単色光を作るには[G][B]の光にマイナスの[R]を加えなければなりません。これは色を表現するのに非常に不都合です。そこで、CIEはマイナスの光を扱わなくても色を表すことができる数値で表す仮想的な3原色XYZをつくりました。大まかに言うとXは赤、Yは緑、Zは青で、Yだけには輝度を表す役割があります。このXYZを用いて現実の色を表現する方法をXYZ表色系と言います。

CIE 1931 XYZ等色関数

 ところで、カラーテレビや液晶ディスプレイは光の3原色を使って色を再現していますが、必ずしもCIEが定めた波長の光が使われているとは限りません。例えばカラーテレビは赤・緑・青の光を出す3種類の蛍光物質に電子ビームを当てて色を作りますが、それらの蛍光物質が出す光の波長はだいたい赤色光で610 nm、緑色光で550 nm、青色光で470 nmです。これらの波長は使う蛍光物質よって変わりますから、カラーテレビの色再現は厳密にはどの蛍光物質を採用したかによって異なることになります。このような色の表現を「機種依存な色表現」と言います。つまり、現実に使われているRGB 表色系は厳密には色を指定するのに向いていないという側面があります。

光の三原色の波長はなぜ解説によって異なるのか?

 光の三原色(RGB)の原理を深く探求していくと避けて通れないのが波長(nm)という具体的な数値です。しかし、この波長を調べるとWebサイトや参考書によって数値が微妙に異なっています。波長の数値が異なっている理由はいくつかありますが、その違いは何を対象にした解説なのかによります。詳細については次のページを参照してください。

 

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2012年4月29日 (日)

「光の三原色」と「色の三原色」の基本と原理と仕組み|色が見える仕組み(7)【2026年最新版】

最終更新日:2026年3月14日 (2012年から継続的に最新情報に更新)

[English Edition] The Summary of this article is also available in English. This is the global edition of our top-ranked guide on the principles of color.  The Principles of Primary Colors(Interactive Simulator Included): The Mechanisms of RGB, CMY, and Human Color Vision

簡単な用語解説

  • 光の三原色RGB) 赤(R)・緑(G)・青(B) カクテルライトなどの色光の混合。色光を混合していくと、光の波長の種類と量が増え次第に明るくなり、ついには白色光になる。このように光の足し算で色をつくることを加法混色と呼ぶ。
  • 色の三原色CMY)シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y) 絵の具などの色材の混合。色材を混合していくと、色材で吸収される光が増えるため、色材で反射する光の波長の種類と量が減り次第に黒ずんでいく。このように光の引き算で色をつくることを減法混色と呼ぶ。印刷では黒(K)も使用しCMYKと呼ばれる。


要約(初心者向けセクション) 光の三原色と色の三原色の定義と違いを原理と仕組みから図解で簡単に解説

光と色の三原色(光と絵の具の三原色)の専門的な原理と仕組みの解説は専門的解説セクションの目次から読むことができます。

 光の三原色(RGB)とは、赤(R)・緑(G)・青(B)の3色の光のことです。 これらを混ぜ合わせることで、あらゆる色を作り出すことができ、すべて混ぜると白(W)になります(加法混色)。一方、色の三原色(CMY)」はシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の3色の色材の色です。これらを混ぜ合わせることで、あらゆる色を作り出すことができ、すべてを混ぜると黒に近づきます。

光の三原色(RGB)の加法混色と色の三原色(CMY)の減法混色の原理と仕組みの図解
光の三原色と色の三原色の原理と仕組み

 解説を読む前に、まずは光と色の混ざり方の違いをシュミレーターで体験してみましょう。ブラウザ上で実際にスライダーを動かして、色の変化をシミュレーションできます。

光の三原色RGB)とは?

 光を混ぜて色を作る加法混色の基本となる色で赤(R)・緑(G)・青(B)の3色です。光の三原色を均等に混ぜると白色になります。テレビやプロジェクターなど光を発する機器で色を再現するのに利用されています。パソコンで表現する場合のカラーコードは次の通りです。

  R:#FF0000 G:#00FF00 B:#0000FF

光の三原色
光の三原色
R:赤(レッド) G:緑(グリーン) B:青(ブルー)
C:青緑(シアン) M:赤紫(マゼンタ) Y:黄(イエロー) W:白(ホワイト)

〇光の三原色の組み合わせ

 上図のように光を重ね合わせると以下の色になります。

  • 赤(R) + 緑(G) = 黄(Yellow)
  • 赤(R) + 青(B) = マゼンタ(Magenta)
  • 緑(G) + 青(B) = シアン(Cyan)
  • 赤(R) + 緑(G) + 青(B) = 白(White)

 光の三原色は英語で Primary colors of lightAdditive primary colors と言います。加法混色は Additive color mixing と言います。

色の三原色CMY)とは?

 絵の具やインクなどの色材を混ぜて色を作る減法混色の基本となる色でシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)の3色です。色の三原色を均等に混ぜると黒色になります。ラー写真、カラー印刷、インクジェットプリタなどで色を再現するのに利用されています。パソコンで表現する場合のカラーコードは次の通りです。

  C:#00FFFF M:#FF00FF Y:#FFFF00

色の三原色
色の三原色
C:青緑(シアン) M:赤紫(マゼンタ) Y:黄(イエロー)
R:赤(レッド) G:緑(グリーン) B:青(ブルー) K:黒(ブラック)

〇色の三原色の組み合わせ

 上図のように色を重ね合わせると以下の色になります。

  • シアン(C) + マゼンタ(M) = 青(Blue)
  • シアン(C) + 黄(Y) = 緑(Green)
  • マゼンタ(M) + 黄(Y) = 赤(Red)
  • シアン + マゼンタ + 黄 = 黒(Blackに近い色)

 色の三原色は英語で Primary colors of pigment や Subtractive primary colors と言います。減法混色は Subtractive color mixing と言います。


〇光の三原色と色の三原色の違い

光の三原色と色の三原色の比較表
項目 光の三原色 (RGB) 色の三原色 (CMY)
三原色 赤(Red)
緑(Green)
青(Blue) 
シアン(Cyan)
マゼンタ(Magenta)
イエロー(Yellow)
混合の方法 加法混色
混ぜるほど明るくなる
減法混色
混ぜるほど暗くなる
すべて混ぜると 白になる 黒になる
主な用途 テレビ、スマホ、PCモニター、照明など 印刷物、絵の具、染料など
仕組み 自ら発光して色を作る 光を吸収・反射して色を作る

 ここまでの要約で光の三原色と色の三原色について辞書的定義の簡易な解説を完結しています。ここまでの理解で光の三原色と色の三原色の基本的な知識は十分ではありますが、実はここから先の説明が光の三原色と色の三原色の真実に迫る内容となっています。ここから先の項目では光の三原色と色の三原色について専門的に解説します。光の三原色と色の三原色はヒトが色を感じる色覚の仕組みと密接に関係しています。

目次(専門的解説セクション)

 本記事では、色彩学の基本であり、色彩検定やカラーコーディネーターの試験などでも必須となる三原色の原理から「なぜ3色なのか?」という本質的な疑問、そして加法混色・減法混色の違いまでを最新の生理学的データに基づく「目の仕組み」と関係づけて初心者にも分かりやすく解説します。また、テレビやスマホのディスプレイ表示、印刷技術といった身近な活用事例についても紹介。この記事を読むことで、光と色の現象を単なる教科書的な暗記ではなく体系的に理解できるようになります。

ヒトの色覚

 光は電磁波であり、光の色は波長によって異なるという説明をよく聞きます。これは間違いではありませんが、色は光が持つ普遍的な性質ではなく私たちが色覚で認識しているものです。たった三色でさまざまな色を作ることができるのは私たちヒトの色覚の仕組みと深く関係しています。

 ヒトの眼(め)の網膜には暗い光にも反応するが色を識別できない桿体細胞杆体細胞)と、明るい光にしか反応しないが色を識別できる錐体細胞が存在します。錐体細胞は黄斑部を中心に分布しています。桿体細胞は錐体細胞よりも数が多く、主に網膜の周辺部にたくさん分布しています。眼はこの2種類の視細胞によって、網膜に結んだ物体の像の明暗や色や形をとらえます。

 

眼の構造と視細胞
眼の構造と視細胞

 桿体細胞に含まれる視物質をロドプシン、錐体細胞に含まれる視物質をヨドプシンイオドプシン)といいます。どちらもオプシンというタンパク質とビタミンAであるレチナールが結びついた構造をしています。杆体細胞と錐体細胞ではオプシンの構造の異なりますが、どちらも光を受けていない状態ではシス型の構造をしています。光を受けると赤で囲んだ部分の構造が変化しトランス型になります。

視細胞ロドプシンとヨドプシン(イオドプシン)の化学構造
視細胞ロドプシンとヨドプシン(イオドプシン)の化学構造

 レチナールの構造が変化すると、レチナールとオプシンの結合が切れます。ロドプシンの構造が光で変化するのは可視光線が分子の電子エネルギー状態を変化させるからです。この光によるロドプシンの構造の変化が視細胞の刺激になります。この刺激が視神経を通って脳に伝わり、その結果、視覚が生じます。なお、オプシンと結合が切れたトランス型のレチナールは暗所でシス型のレチナールに戻り、オプシンと再結合します。また、レチナールは食べ物から摂取されるビタミンAから作られます。ビタミンAが不足すると暗所でものがよく見えなくなる(夜盲症)のはロドプシンが合成されにくくなるからです。

光の三原色が3色なのはヒトの色覚に関係しているから

 錐体細胞のオプシンは3種類存在します。ですから錐体細胞もオプシンの違いによって赤色光、緑色光、青色光の刺激を受ける赤錐体L錐体)・緑錐体M錐体)・青錐体S錐体)とよばれる3種類の細胞が存在します。それぞれ約560 nm、約530 nm、約430 nmを中心にある程度の幅をもつ波長範囲の光を感じることができます。なお、ここでいう波長とは真空中もしくは大気中の光の波長のことです。波長が異なるということは光の振動数、つまり光のエネルギーが異なるということです。3種類の錐体細胞は実際には光の波長の違いではなく光のエネルギーの違いに反応して刺激されます。

錐体細胞と桿体細胞の感度曲線
錐体細胞と桿体細胞の感度曲線

 3種類の錐体細胞の刺激の大きさは眼に入る光によって変化します。それぞれの錐体細胞が受けた刺激が視神経を通って脳に送られます。脳は3種類の錐体細胞が受け取った刺激の割合から色を認識します。たとえば赤錐体と緑錐体が同程度に刺激されるとイエロー(黄色)、赤錐体と青錐体が同程度に刺激されると赤紫(マゼンタ)、緑錐体と青錐体が同程度に刺激されるとシアン(青緑)を認識します。すべての錐体細胞が同程度に刺激されると白色を認識します。

 哺乳類はかつては夜行性の動物だったため、色を見分けることよりも、暗いところで良く見える能力が必要でした。そのため犬や猫など多くの哺乳類は二原色の色覚(二色型色覚)です。一方、哺乳類の中でも霊長類の一部の原猿類や新世界ザル類、旧世界猿や類人猿やヒトは昼行性となり太陽光のもと明るいところで暮らすようになったことから色を見分ける能力が発達し三原色の色覚(三色型色覚)を持つようになりました。この三原色の色覚から導き出されたのが光の三原色と色の三原色です。次の図は太陽光のスペクトルです。ヒトの三色型色覚は大気を通り抜けて地表に届く太陽光のうち光量の多い400~800 nmの光を効率的に利用するように進化してきたと言えます。波長380~780 nmの範囲の光を可視光線と呼びます。

太陽光のスペクトル
太陽光のスペクトル

 ところで私たちが認識している色は眼に入ってくる光の情報をもとに脳内で作り出しているものです。もともと光や物体には色はついていません。脳がものに色をつけているのです。光や物体は色覚が認識する色の条件を作っているにすぎません。色は私たちが作り上げた概念にすぎません。色は目に入る光の成分と私たちヒトの生理的な色覚により生じるもので光そのものがもつ性質ではありません。異なる色覚をもつ動物は私たちとは異なる色の世界を見ています。 私たちが見ている色とりどりの景色は私たちの脳内で作り出されているバーチャルな世界と言えるでしょう。

物体の形や色が見える仕組み:眼に入った光が網膜の視細胞を刺激し、その刺激が電気信号として視細胞を通り脳に伝わる。その結果、私たちや物体の形や色を見ることができる。
物体の形や色が見える仕組み

  【参考】視覚が生じる仕組み 色が見える仕組み(3)

 この記事をこのページから読んだ方で色が見える仕組みについて知りたい方は、この記事の一番下にある【関連記事】の(1)〜(6)をご一読ください。

「光の三原色」と「色の三原色」は何色か

 光の三原色RGB)は赤(R:レッド)・緑(G:グリーン)・青(B:ブルー)、色の三原色CMY)は青緑(C:シアン)、赤紫(M:マゼンタ)、黄(Y:イエロー)です。次の図は光の三原色と色の三原色を重ねると何色になるかを示した図です。

光の三原色と色の三原色
光の三原色 RGB 色の三原色 CMY

 光の三原色と色の三原色をパソコンの画面で表現する場合、カラーコードは下記のようになります。

  R:#FF0000 G:#00FF00 B:#0000FF

  C:#00FFFF M:#FF00FF Y:#FFFF00

 この三色を混ぜ合わせると、ほとんどの色をつくり出すことができます。私たちが目で見ている色を再現できると言った方が的を射ているでしょう。

 光の三原色と色の三原色は色が違うだけのように見えますが、その意味は大きく異なります。光の三原色と色の三原色の違いについて、基本的な原理から考えてみましょう。

光の三原色(RGB)

 光の三原色は色光の混合です。次の図のように真っ暗な部屋の中で白地のスクリーンに赤・緑・青の光を当てたときの様子を示したものが光の三原色の図です。赤・緑・青の光源でさまざまな色をつくります。

 よく白地に光の三原色が描かれた図を見かけますが、これは白色光の元で光の三原色の混色をしていることになりますので、正し表現とは言えません。光の三原色の背景は黒にするべきでしょう。

光の三原色の混色
光の三原色の混色

 光の三原色のそれぞれの色光は1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)によって赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光と定められました。これらの数値は1931年にJohn GuildとWilliam David Wrightが行った等色実験のデータに基づいています。当時はLEDなどありませんでしたから、実験に使いやすい光源の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光は適当な光源がないためタングステンランプの白色光を分光器で分散させた約650 nmの波長が使われましたが最終的に700 nmの光が採用されました。

  【参考】光の三原色の波長はどのように決まったのか 色が見える仕組み(8)

 光の三原色の身近な応用例はカラーテレビ、デジタルカメラ、プロジェクターや舞台照明などです。白色LEDや蛍光灯にも光の三原色を利用したものがあります。

 【参考】液晶ディスプレイのカラー表示のしくみ|液晶ディスプレイの仕組み(3)

 最近のスマートフォンやテレビに採用されている「有機EL」も光の三原色の原理を最大限に活用しした技術です。一般的な液晶ディスプレイはバックライトの白色光とRGBのフィルターを使ってカラーを実現していますが、有機ELは各ピクセルが自らRGBもしくは白色光を放つため鮮やかな色を表現できます。 

  【参考】有機ELの仕組み|発光原理とカラー表示の4つの方式

光の三原色の条件等色

 光の三原色を任意に混合すると様々な色を作ることができます。3色の光でどれぐらいの色を再現できるかは次の図のような装置で調べることができます。この装置によって異なる成分の2つの光が同じ色に見える条件等色を確認することができます。

条件等色の実験装置
条件等色の実験装置

 例えば試験光として白色光をプリズムで分けて得られる波長約490 nmのシアン(青緑)の単色光が、光の3原色でどのように再現できるかを調べる作業を行います。このような作業を色合わせ、もしくは等色と言います。次の図は単色光と光の三原色の色合わせから求めた等色関数をグラフで示したものです。これはCIE 1931 RGB等色関数といいます。

CIE 1931 RGB等色関数
CIE 1931 RGB等色関数

 この等色関数のグラフを見ると赤色光が450 nmあたりから550 nmあたりまでマイナスの値になっていることがわかります。例えば約490 nmのシアンの単色光は青色光と緑色光をおよそ0.05の割合で加えて赤色光を0.05引くと再現できることになります。

 試験光(490 nmのシアン単色光+光の三原色の赤色光)

   =光の三原色の混色によるシアン光(青色光+緑色光)

 試験光(490 nmのシアン単色光)

   =光の三原色(青色光0.05+緑色光0.05ー赤色光0.05)

 光の三原色では緑色光と青色光を混色するシアンが得られますがマイナスの赤色光を加えるというのはどういうことなのでしょうか。実は、波長490 nmのシアンの単色光を光の三原色の混色で作ろうとすると、シアンの単色光の鮮やかさを再現することができないのです。条件等色の実験において試験光のシアンの単色光に赤色光を加えると、光の三原色の緑色光と青色光で作ったシアンの光を再現することができます。つまり光の三原色でシアンの単色光を再現するには青色光と緑色光を混色し、そこから赤色光をマイナスする操作が必要となるわけですが、もともとシアンの光には赤色光は含まれていませんので現実的ではありません。 そこでCIEはマイナスの光を扱わなくても色を表すことができる数値で表す仮想的な3原色XYZをつくりました。大まかに言うとXは赤、Yは緑、Zは青で、Yだけには輝度を表す役割があります。このXYZを用いて現実の色を表現する方法をXYZ表色系と言います。次の図はCIE 1931 XYZ 等色関数といいます。 条件等色も実験は光の三原色(RGB)だけではすべての色を再現できないことを科学的に証明したのです。

この曲線が三原色の生理学的根拠となるCIE 1931 XYZ 等色関数です
CIE 1931 XYZ 等色関数

 光の三原色の赤色光と青色光をまぜるとマゼンタ(赤紫)の光に見えますが、これは赤色錐体(L錐体)と青色錐体(S錐体)の刺激によって脳がマゼンタ(赤紫)を認識します。マゼンタ(赤紫)の光は単色光が存在しない脳が作り出した色です。マゼンタの詳細については次の記事を参照してください。

 また青色光より短い波長にバイオレット(青紫)の単色光が存在しますが、このグラフから光の三原色の青色光にわずかに赤色光を加えることで再現できることがわかります。これは青色光より短波長の光に対して青色錐体(S錐体)に加えて赤色錐体(L錐体)もわずかに刺激を受けるからです。同じ紫色でも単色光のバイオレット(青紫)と光の三原色で作ることができるマゼンタ(赤紫)は何が違うのでしょうか。次の記事を参照してください。

 次の図はヒトの色覚を体系化したCIE 1931色空間のxy色度図です。ヒトの3種類の錐体細胞が受け取る刺激の割合を数学的に求め、ヒトが認識できるすべての色を体系化したものです。外周の馬蹄形の上の数値は光の波長(nm)を示しています。光の彩度はこの馬蹄形の中心に向かうほど下がりすべての光が混ざると白色になります。

CIE 1931色空間のxy色度図
CIE 1931色空間のxy色度図

光の三原色(RGB)で作れない色

 光の三原色によりヒトが認識できるすべての色を再現できるという説明はあくまでも理論上の話です。光の三原色を利用してデバイスの画面に表示される色は次のような制限があります。

  • 色度図の右下の赤(R)、中央上部の緑(G)、青(B)の3点を結ぶ内側の範囲をすべて再現できるわけではありません。デバイスが物理的に発することができる最も純粋な赤・緑・青の光が色度図上のどこに位置するかによって色が表示できる範囲「色域」(ガマット)は狭くなります。たとえば液晶ディスプレイのLED光源やカラーフィルター、あるいは有機ELの発光材料にはそれぞれ固有の分光特性があります。理想的な単色光ではないため三原色の各点が色度図の最も彩度が高い純色である馬蹄形の曲線まで届かず再現範囲が狭まります。
  • 単色光のシアンなど彩度の高い色は光の三原色を足し合わせるだけで再現できません。彩度の高い色は色度図の馬蹄形の曲線付近に存在します。実際のデバイスにおける三原色の各点は馬蹄形の曲線の内側に位置するため外側の色の再現が不可能です。

 XYZ等色関数により様々な色を定義することは可能ですが、RGBで全ての色を再現できるわけではありません。前述の単色光のシアンの例のように彩度の強い色は表現できないのです。

【参考】この光の三原色(RGB)で作れない色についての詳細は別館「光と色と THE NEXT」の下記のスピンアウト記事を参照してください。

光の三原色の規格 sRGBとAdobe RGB

 前述の通り光の三原色では再現できる色に制限があります。 RGB による加法混色によるで一般的な色空間の規格をとsRGB (standard RGB) と呼びます。sRGBで再現できる色は次の図のsRGBの三角形で囲まれている範囲です。 三角形の頂点はそれぞれ光の三原色の光源が発色するR(赤)・G(緑)・B(青)の位置です。sRGBは液晶ディスプレイなど一般的な表示デバイスで採用されています。sRGBでは三角形の外側の色を再現することはできません。

CIE 1931色空間のxy色度図とsRGBとAdobe RGB
CIE 1931色空間のxy色度図とsRGBとAdobe RGB

 sRGBよりも広い範囲の色を表示できる規格がAdobe社が定めたAdobe RGBです Adobe RGBはsRGBに比べて緑(G)の位置が短波長側にあるため緑や青緑をより鮮やかに再現することができます。Adobe RGBはsRGBでは再現できない印刷の色空間を扱う規格として登場しましたが、最近はAdobe RGB に対応した広色域の液晶ディスプレイが広く使われるようになりました。広色域ディスプレイを実際に印刷される色を画面上で再現できます。

 さて上図から色空間を広げることができればより多くの色を再現することが可能になります。LEDは任意の波長の単色光を出すことができます。光の三原色(RGB)に加えて別の色の光源を加えるとより多くの色を再現できるようになります。実際に光の三原色(RGB)に黄色(Y)を加えた四原色(RGBY)液晶ディスプレイが開発されました。この液晶ディスプレイは従来では表現できなかった色域まで再現することが可能です。鮮やかな黄色、黄金の輝き、エメラルドグリーンなどを再現できるようになりました。

光の三原色を応用した最新ディスプレイ技術QLEDとMini LED

 現在は四原色(RGBY)液晶ディスプレイも過去の技術となっています。最新の技術としては青色LEDと量子ドットを組み合わせた QLEDQuantum Dot Light-Emitting Diode)やMini LED が主流なっています。

 従来の液晶ディスプレイのバックライトは青色LEDと黄色を発光する蛍光体を組み合わせた白色光でした。この白色LEDが出す光は青色成分の多い擬似的な白色光のためフィルターを通しても鮮やかな赤色や緑色を再現するのは困難でした。QLEDはバックライトに青色LEDを使用します。青色光は量子ドットと呼ばれる大きさの異なるナノ粒子に当てられますが、このとき大きな粒子は青色光を純度の高い赤色光に変換し、中くらいの大きさの粒子は青色光を純度の高い緑色光に変換します。結果として純度の高い光の三原色が揃うため従来よりも圧倒的に広い範囲の色を再現できるようになりました。

 Mini LEDによる「色の鮮やかさ」の底上げ

 Mini LEDは従来のLEDよりも小さい数千~数万個の極小LEDで作られたバックライトです。MiniLEDによって高輝度なディスプレイを実現できるようになりました。また光漏れを最小限に抑えることができるためLEDを消灯させたときに綺麗な黒を再現できることからコントラストも飛躍的に向上します。QLEDとMiniLEDを組み合わせることによって、多くの色を鮮明に表現できるディスプレイが実現できるようになりました。

色の三原色(CMY)

 色の三原色は絵の具などの色材の混合です。次の図のように、白地のキャンバスの上で白色光に照らされたシアン・マゼンタ・イエローの色材を混ぜた様子を示したものが色の3原色の図です。色の三原色の身近な応用例はカラー写真、カラー印刷、インクジェットプリタなどです。プリンタのインクにはCMYの三色のインクの他に黒インクが使われます。これは色の三原色により綺麗な黒を作るのは難しく、またインクの節約のためです。カラー印刷の混色ではCMYに加えて黒をK(Key plateキープレート)で表しCMYKと呼ばれます。

色の三原色の混色
色の三原色の混色

色の三原色(CMY)の吸収スペクトルと反射スペクトル

 色の三原色は白色光で照らされた時に色材が反射する光の色です。次の図は色材のシアン・マゼンタ・イエローの吸収スペクトルです。シアンの色材は白色光のうち赤系の光の吸収しそれ以外を反射します。その反射した光がシアンに見えます。マゼンタの色材は白色光のうち緑系の光を吸収しそれ以外の光の反射します。その反射した光がマゼンタに見えます。イエローの色材は白色光のうち青色系の光を吸収しそれ以外の光を反射します。その反射した光がイエローに見えます。これらの反射する光は単色光ではありません。

色材のシアン・マゼンタ・イエローの吸収スペクトル
色材のシアン・マゼンタ・イエローの吸収スペクトル

 結果として色材のシアン・マゼンタ・イエローの反射スペクトルは次のようになります。シアンが青錐体(S錐体)と緑錐体(M錐体)、マゼンタが青錐体(S錐体)と赤錐体(L錐体)、イエローが緑錐体(M錐体)と赤錐体(L錐体)を刺激することがわかります。

色材のシアン・マゼンタ・イエローの反射スペクトル
色材のシアン・マゼンタ・イエローの反射スペクトル

 【参考】白色光|図解 光学用語(別館 光と色と THE NEXT

 【参考】色の三原色(CMY)の吸収スペクトルと反射スペクトル

色の三原色に関する誤解:伝統的な赤・青・黄(RYB)の歴史的背景

 色の三原色は赤・青・黄(RYB)と説明している場合もありますが、正しくはシアン・マゼンダ・イエロー(CMY)です。シアン・マゼンダ・イエローは日本語で表現するとそれぞれ青緑(実際には水色に近い青緑)、赤紫、黄になります。

 日本人は昔から青と緑を明確に区別する文化をもっておらず、緑のことを青と呼ぶことが多かったという背景があります。赤紫と赤の区別もしっかりできていたかもわかりません。青緑を青、赤紫を赤と表現すると、色の三原色は青・赤・黄(RYB)となります。

 実際に原色の赤・青・黄を色の三原色としている場合があります。絵画の分野では、昔から赤・青・黄の絵具の混色で、さまざまな色を作り出してきました。そもそもマゼンタという顔料が使えるようになったのは1859年以降のことです。シアンの元になったプルシアンブルーという顔料が作られるようになったのは1704年以降です。

 小学校の美術の学習では、シアン・マゼンタ・イエローでは理解が難しいためか、赤・青・緑の絵具の混色で色の三原色を説明をしています。インクジェットプリンタが発売されるようになってから、色の三原色はシアン・マゼンタ・イエローと再認識した人も多いのではないでしょうか。

光の色は光の足し算 なぜ白になるのか

  赤と緑の波長の光を混合すると、黄色い波長の光が含まれていなくても、黄色に見える光ができます。たくさんの波長の光を混合していくと、光の波長の種類と量が増え、光は次第に明るくなり、ついには白色光になります。このように光の足し算で色をつくることを加法混色といいます。

 赤・緑・青の光の三原色を任意の割合で混ぜると、ほとんどの色をつくることが可能です。光の三原色の混色を式で表すと次のようになります。光の色が足し算で作られていることがわかります。

 W=R+G+B C=G+B M=R+B Y=R+G

 R:赤 G:緑 B:青 C:シアン M:マゼンタ Y:イエロー W:白

 身近な例としてケミカルライトも赤・緑・青の蛍光色素を使い分けることで多彩な色を作り出すことができます。3色を混ぜた蛍光色素を使ったケミカルライトは白色光を発します。ケミカルライトが光る原理と仕組みついては次のページを参照してください。


光の三原色のケミカルライト
光の三原色のケミカルライト

次の写真は赤・緑・青のLEDの光で混色で作った色です。

LEDによる光の三原色の混色
LEDによる光の三原色の混色

加法混色には、異なる色光を重ねて色をつくる同時加法混色、色分けされた円盤を回転したときのように時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色、細かい色の点をモザイク状に敷き詰めて色をつくる並置加法混色があります。

同時加法混色
"同時加法混色

 

継時加法混色と並置加法混色
継時加法混色と並置加法混色

物体の色は光の引き算 なぜ黒になるのか

 物体の色は、光源から物体に届く光のうち、物体に吸収せれずに反射した光で決まります。次の図は光源を太陽とした場合のリンゴとバナナの光の吸収と反射の様子を示したものです。 リンゴは太陽光のうちシアン系(青緑系)の光を吸収しそれ以外の光を反射しています。その反射光が赤色に見えます。バナナは太陽光のうち青色系の光を吸収しそれ以外の光を反射しています。その反射光が黄色に見えます。

いバナナと黄色いバナナの光の反射の様子
赤いバナナと黄色いバナナの光の反射の様子

 次の図は赤いバナナと黄色いバナナに太陽光(白色光)を当てたときの反射スペクトルです。赤いバナナは青緑色系の光を吸収(引き算)し、それ以外の光を反射していることがわかります。その反射光は主に赤錐体(L錐体)を刺激するため赤色に見えます。黄色いバナナは青色系の光を吸収(引き算)し、それ以外の光を反射していることがわかります。その反射光は主に赤錐体(L錐体)と緑錐体(M錐体)を刺激するため黄色に見えます。

赤いバナナと黄色いバナナの反射スペクトル
赤いバナナと黄色いバナナの反射スペクトル

 このような物体の色も色の三原色(CMY)で再現することができます。色の三原色の混合について考えましょう。色の三原色を式で表すと次のようになります。

 K=C+M+Y R=M+Y G=C+Y B=C+M

 R:赤 G:緑 B:青 C:シアン M:マゼンタ Y:イエロー W:白

 上式は絵の具を混ぜ合わせたときに何色になるかを示したものですから足し算の式になっています。しかしながら、色材は光の吸収体ですから、いろいろな色の絵の具を混ぜると黒ずんでいきます。絵の具を混ぜて別の色をつくるということは、吸収される光が増えてゆき、絵の具で反射して私たちの目に届く光の波長の種類と量が減るということです。このように、光の引き算で色をつくることを減法混色といいます。シアン・マゼンタ・イエローの3色で、ほとんどの色をつくり出すことができます。

 次の図はそれぞれの色材が光の三原色で作られた白色光からどの光を吸収しどの光を反射するかを示したものです。

RGB光源による減法混色
RGB光源による減法混色

 これを式で表すと次のようになります。色が引き算で作られていることがわかります。

 R=W-(G+B)=W-C 

 G=W-(R+B)=W-M 

 B=W-(R+G)=W-Y

 C=W-R

 M=W-G

 Y=W-B

絵の具の混色とカラープリンタの混色の違い

 絵の具もカラープリンタも色の三原色を使って色を作り出していますが大きな違いがあります。絵の具は色の三原色の色材を直接混ぜ合わせて別の色の絵の具を作り出します(詳細は後述の「色の三原色の実験」の映像をご覧下さい)。

 一方、カラープリンタは色の三原色を使って色を表現していますが、3色のインクを混ぜ合わせているわけではありません。印刷物をルーペで
拡大すると小さな点の集まりが見えます。これを網点と呼びます。網点を観察すると濃い色は大きく薄い色は小さいことがわかります。また色の三原色と黒のインクの組み合わせで網点を作り様々な色を表現しています。つまり空プリンターは色の三原色を利用した並置加法混色で色を再現しているのです。

カラープリンタの網点
カラープリンタの網点

カラープリンタのインクに黒がある理由(CMYK)

 カラープリンタのインクは色の三原色のシアン・マゼンタ・イエロー(CMY)に加えて黒(K = Key plate)があります。色の三原色のシアン・マゼンタ・イエロー(CMY)を等量混ぜ合わせると理論的には黒(K)になるはずですが、実際にはインクの特性により綺麗な黒色にはならずに濁った暗褐色(ダーティブラウン)や濃い灰色になってしまいます。そこでカラープリンタはCMYに黒インクを加えたCMYKでカラー印刷を行います。黒を単独のインクとすることでCMYインクの節約にもなります。黒インクを「B」ではなく「K(Key plate、キープレート)」と呼ぶのは黒い輪郭線や文字などを明瞭に表現するための基準となる色だからです。黒インクがない場合、CMYインクで黒色や灰色を作らなければならなくなるため黒インクを加えることはCMYインクの節約にもなっています。

補色とは

 特定の2つの色光を混ぜると白色光となり、特定の2つの色材を混ぜると灰色になります。このような組み合わせを補色といいます。

 光の三原色と色の三原色の補色の組み合わせは次の表のようになります。赤とシアン、緑とマゼンタ、青とイエローです。

光の三原色 補色
シアン
マゼンタ
イエロー

光の三原色の補色

色の三原色 補色
シアン
マゼンタ
イエロー

色の三原色の補色

 補色を色度図で考えてみましょう。色度図上の赤(R)の点から中央の白色点を通って反対側へ線を伸ばすと、その先にはシアン(C)が存在します。同様に緑(G)の反対にはマゼンタ(M)、青(B)の反対にはイエロー(Y)が存在します。このように色度図において白色点を挟んで反対側に位置する2つの色の関係が補色です。

CIE 1931色空間のxy色度図と補色の関係’RGBとCMY)
CIE 1931色空間のxy色度図と補色の関係’RGBとCMY)

 赤(R)の光を吸収する物質は、その補色であるシアン(C)の色に見えます。このように、特定の光を吸収して残りの補色の光を反射・透過するという物理的な性質が、光の三原色(RGB)と色の三原色(CMY)を繋ぐ鍵となります。

 また、色度図上でRGBの3点が作る三角形の各辺が、それぞれCMYの各色に対応しています。実際のデバイスの色度図でこのCMYを三点とした三角形を考えると減法混色で表示可能な範囲の色域がわかります。理論上は色度図の対称性で全て説明できますが現実のインクには不純物があるため、これら三色を混ぜても完全な黒にはなりません。そのため実際には黒(K)を補う必要があるのです

 光の三原色と色の三原色は、色度図上の白色点を中心とした対称性によって成立しており、まさにヒトの色覚が生み出した表裏一体のシステムと言えるでしょう。

補色同士を混ぜるとなぜ白色や灰色になるのか

 補色の関係にある2色の色を混ぜると色を失うのはヒトの色覚と関係しています。

 例えば、青とイエローの光を混ぜると白色になるのは、青色光が青錐体を刺激し、黄色光が赤錐体と緑錐体を刺激するからです。3種類の錐体がすべて刺激されるため白色となります。一般に使用されている白色LEDは青色LEDと黄色光を発光する蛍光体の組み合わせで作られています。LEDが発した青色光の刺激を受けた蛍光体が黄色い光を発光します。補色の関係にある青色光と黄色光を混合することによって白色光を作り出しているのです。

 【参考】白色LEDのスペクトル

 一方、青とイエローの色材を混ぜると白色にならずに灰色となるのは色材が光の吸収体だからです。同様に3種類の錐体が刺激を受けるためい色が失われますが下地の白い紙よりは暗くなるため灰色となります。

 赤はシアンを吸収しシアンは赤を吸収します。緑はマゼンタを吸収しマゼンタは緑を吸収します。青はイエローを吸収しイエローは青を吸収します。つまり光の三原色と色の三原色はお互いに補色の関係にあります。次の色相環で示すとおり三原色以外の色にも必ず補色があります。

色相環とは

 色相を環状に並べた図を色相環と呼び色の体系化に使われます。隣り合う色は類似色で調和が取りやすく、向かい合う2つの色は対比する色です。この対比する色は補色の関係にあります。

色相環
色相環

光の三原色の実験

 光の三原色の赤色LED、緑色LED、青色LEDを使った照明を入手することができます。3色のLEDの点灯の組み合わせにより光の三原色の混色を確かめることができます。

LED アンビエンス照明

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 光の三原色のLEDライトがあると次の映像のような実験ができます。白い紙の上に白いピンポン玉が置かれています。そのピンポン玉に三方向から赤・青・緑の光を当てます。このときピンポン玉は光を受けている面が赤・青・緑の混色で白色になる位置に置きます。するとピンポン玉の後ろ側の三方向に色がついた影ができます。 シアンの影ができている部分は赤色の光が届いておらず緑色と青色の光が届いています。緑色と青色の光が混ざるとシアンになります。同様にイエローの影ができている部分は青色の光が届いておらず赤色と緑色の光が届いています。赤色と緑色の光が混ざるとイエローになります。マゼンタの影ができている部分は緑色の光が届いておらず赤色と青色の光が届いています。赤色と青色の光が混ざるとマゼンタになります。

Primary Colors of Light - Mixing of Colors

 

色の三原色の実験

 色の三原色のシアン、マゼンタ、イエローの絵の具を入手することができます。3色の絵の具をパレットで混ぜて色の三原色の混色を確かめることができます。

ターナー 三原色カラー 【5セット】

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 色の三原色の絵の具で次の映像ような実験を行うことができます。白いパレットに色の三原色のイエロー、マゼンタ、シアンの絵の具が入っています。この基本の3色の絵の具を混ぜ合わせて様々な色を作っていきます。この映像は色の三原色の絵の具を使って色の三原色の減法混色の実験を演示したものです。色の三原色のシアン・マゼンタ・イエローを混ぜ合わせて赤、緑、青を作ります。隣り合う色を混ぜていくと色相環ができあがります。

CMY Color Wheel: Acrylic Color Mixing Tutorial 

よくある質問(FAQ)

Q1: 「光の三原色」と「色の三原色」の最大の違いは何ですか?

A: 最も大きな違いは「混ぜた時の明るさ」の変化です。光の三原色(RGB)は混ぜるほど明るくなり白に近づく「加法混色」ですが、色の三原色(CMY)は混ぜるほど光を吸収して暗くなり黒に近づく「減法混色」という対照的な性質を持っています。

Q2: なぜ三原色は「3色」と決まっているのですか? 4色や5色ではダメなのですか?

A: 私たちヒトの目(網膜)に、主に赤、緑、青の3つの波長に反応する「錐体細胞(L・M・S錐体)」というセンサーがあるためです。脳はこの3つの刺激の割合を合成してすべての色を判断しているため、3色の組み合わせが色の再現において最も効率的で自然なのです。

Q3: 小学校では色の三原色を「赤・青・黄」と習いましたが、間違いですか?

A: 間違いではありませんが、それは伝統的な色彩教育(RYB)に基づいたものです。現代の光学や印刷技術において、最も広い範囲の色を鮮やかに再現できる科学的に正しい三原色は「シアン(青緑)・マゼンタ(赤紫)・イエロー(黄)」です。

Q4: 「補色」の関係を簡単に覚えるコツはありますか?

A: 光の三原色(RGB)と色の三原色(CMY)は互いに補色の関係にあります。「赤(R)の反対はシアン(C)」「緑(G)の反対はマゼンタ(M)」「青(B)の反対はイエロー(Y)」とセットで覚えると、色相環の向かい合う関係が理解しやすくなります。

Q5: プリンターのインクに「黒(K)」が入っているのはなぜですか?

A: 理論上はシアン・マゼンタ・イエローを混ぜれば黒になりますが、現実のインクには不純物があり、混ぜても濁った茶色のような黒にしかなりません。そのため、文字をくっきり印刷し、影の表現を安定させるために専用の黒インク(K)が使われます。

Q6: 色が生じる仕組みには他にどんなものがありますか?

 色が生じる仕組みには本稿で解説した光と色の三原色の混色の他に、光の屈折によって生じる色(虹やプリズム)、熱放射によって生じる色(恒星の色)、光の回折と干渉によって生じる構造色(シャボン玉、CDの裏面)、自由電子による金属反射の色(金属光沢)など、光の物理的性質そのものが原因となる現象があります。これらは光と色の三原色の混色とは別の現象です。そのため本稿では扱っていません。興味のある方は下部の【関連記事】の「色が生じる仕組み」の解説記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】

色が生じる仕組み

 

 

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Author:Photon(工学修士 専門:光学、光分析、機器分析 執筆:光と色やレンズの本を執筆 日本分析化学会会員)

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