植物の光合成は緑色光を捨てているのか?|なぜ植物の葉は光を最大限に吸収する黒色ではなく緑色なのか
光合成とは
光合成とは植物が太陽光のエネルギーを利用して無機化合物の二酸化炭素と水から有機化合物のブドウ糖を生成し、それをもとにデンプンやタンパク質など生きるために必要なエネルギー源や体を作る物質を合成する働きのことです。光合成は植物の葉などの細胞に含まれる葉緑体で行われます。
植物の葉はどうして緑色なのか
葉緑体にはクロロフィル(葉緑素)という色素がたくさん含まれています。次の図はクロロフィルの吸収スペクトルです。クロロフィルは500 nm以下の青色光と600 nm以上の赤色光を吸収する性質をもっています。その結果、500 nmから600 nmの緑や黄色の光を反射します。その反射光が緑色や黄緑色に見えるのです。
緑色の光は光合成に寄与しないのか?
光合成の主役は緑色光を吸収せずに反射するクロロフィルであり、緑色光は光合成に必要な光ではないと説明しているWebページや参考書を見かけます。この説明はとりわけ光学や物理学を切り口とした解説に多いようですが、最新の植物学の論文を見ると、植物の光合成における光の利用は単純ではなく、緑色光が必要ないという結論は誤りであることがわかります。
Green light drives leaf photosynthesis more efficiently than red light in strong white light: Revisiting the enigmatic question of why leaves are green.
光合成が単に光をたくさん吸収すれば良いという仕組みであれば、可視光線の全域を吸収する黒色が良いことになります。しかし、そう話は単純ではありません。大量の光のエネルギーは細胞を破壊する恐れがあるのです。大気を通って地表に届く太陽光のうち最も多いのは緑色光です。そのためクロロフィルは緑色光を吸収する量を抑えているのですが、緑色光をまったく吸収しないというわけでもありません。このクロロフィルの緑色光を吸収しにくい性質は逆に緑色光の効率的な利用に役立ちます。クロロフィルに吸収されなかかった多くの緑色光は葉の中で散乱します。この散乱した緑色光を待ち受けているのがクロロフィルとは別のカロチノイドと呼ばれる色素です。
植物は光合成を終えるとクロロフィルが少なくなり紅葉します。紅葉の色は植物の葉に含まれれるカロチノイドという色素の色です。カロチノイドは葉が青々としているときも存在していますが、その色は大量のクロロフィルに隠されて現れません。このカロチノイドは過剰な緑色光を吸収して熱として散逸させ、細胞を破壊する光のエネルギーを無害化する働きをしています。同時にカロテノイドに吸収された緑色光はクロロフィルへ受け渡され間接的に光合成を促進しているのです。なぜ植物の葉が光を最大限に吸収する黒色ではなく緑色なのか。植物は緑色光を反射して捨てているのでは太陽光を巧に有効活用するための産みだした仕組みなのです。
㧘橋拓子,西山佳孝
Hiroko Takahashi, Yoshitaka Nishiyama
Roles of carotenoids in photosynthesis Keywords: carotenoids, energy quenching, photosystem, photoprotection, repair of PSII
まとめ
クロロフィルによる光合成は大量の光のエネルギーのもとでは効率が落ちるため、あえて太陽光にたくさん含まれている緑色光の直接的な利用を避けています。植物に含まれるカロチノイドが緑色光を吸収することで植物の細胞を守るのと同時にクロロフィルの光合成を間接的に促進しています。クロロフィルのスペクトルから、青色と赤色の光だけあれば植物を成長させるという説明は適切ではありません。
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Author:Photon(工学修士 専門:光学、光分析、機器分析 執筆:光と色やレンズの本を執筆 日本分析化学会会員)
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