用語

2014年3月25日 (火)

「陰」と「影」の使い分け 異字同訓

光と色の関係で使い方で気になる漢字が「陰」と「影」です。

日本語では、どちらも「かげ」ですが、英語では、陰はshade、影はshadowです。

陰は光が当たっていないところのこと、一方、影は光が物体にさえぎられてできるもののことです。

私たちが物体を立体的に見ることができるのは、光が物体にあたったときに、陰と影ができるからです。

この経験から、私たちは、陰と影を表現した二次元の絵を三次元として見てしまいます。

 


【陰】

光の当たらない場所。目の届かない場所。

日陰。木陰。山陰。陰で支える。陰口。

【影】

光が遮られてできるもの。光。姿。身代わり。

障子に影が映る。影も形もない。影が薄い。星影。影を潜める。影武者。

 

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2014年3月16日 (日)

「写す」と「映す」の使い分け 異字同訓

光学関係の文書を書いているときに、どっちだっけかなと悩むのが「写す」と「映す」です。

「写」と「映」のもともとの意味を考えると、どちらを使えば良いのかわかります。

【写す・写る】
そのとおりに書くこと。画像として残す。透ける。
データを書き写す。写真やビデオを写す。裏面が写って透けて見える。
【映す・映る】
画像を再生する。投影する。反映する。印象を与える。
ビデオを映す。スクリーンに像を映す。鏡に姿が映る。壁に影が映る。時代を映す物語。奇異に映る行動。

光学系の文書で使われることが多いのは「映す」でしょう。『実像がスクリーンに映る』『鏡に物体の虚像が映る』となります。

写真やビデオの場合、カメラで写すのは『写真やビデオを写す』になりますが、撮影した写真をビデオをスクリーンで見るときには『写真やビデオを映す』になります。

そうなると、『ビデオに自分が映っていた』と『ビデオに自分が写っていた』は厳密には意味が違うことになります。前者は、ビデオを見ていたら自分が映っていたという意味で、ビデオを見ている立場です。後者はビデオを見ていて、自分が被写体として写されていたという意味になるでしょうか。

そう考えると、鏡の場合にも、『鏡に写す』『鏡に映る』という使い分けがありそうです。

このあたり多少、使い分けが難しいかもしれません。

※異字同訓

「漢字は異なるものの、意味の近い言葉で、訓読が同じになるもの」です。

 

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2012年9月 7日 (金)

玉虫色とは何色?

玉虫色とは

 玉虫色とは、文字通り玉虫のような色のことです。タマムシはコウチュウ(甲虫目)タマムシ上科に属する昆虫の総称で、吉丁虫(キッチョウムシ)とも呼ばれることがあります。タマムシは次の映像のような色をした昆虫です。玉虫色とはタマムシの色に由来する言葉です。

タマムシ/構造色/jewel beetle/structural color

タマムシの玉虫色

玉虫色はどんな色?

 タマムシはこのような色をしていますと映像を見せられても、見る方向によって金属光沢のある緑から紫に変化して見え、虹のように色づいても見えるなど、一義的な色彩名を答えられない、なんとも言葉で説明しがたい色だと思います。

広辞苑では玉虫色は次のように説明されていますが、どれもタマムシの色に由来しています。

たまむし‐いろ【玉虫色】
  1. 玉虫の羽のように光線の具合で緑色や紫色に見えたりする染色または織色。世間胸算用(3)「―の羽織は」
  2. 襲(かさね)の色目。表は青、裏は紫。
  3. 見方によっていろいろに受け取られるような、あいまいな表現。「―の調停案」

玉虫色は構造色

 タマムシの体の表面は、薄い膜が何枚も積み重なった多層膜となっています。その多層膜に光が当たると、光は多層膜の中に入り、それぞれの膜で反射する光が干渉を起こします。その干渉した光の色がタマムシの色です。このような仕組みで生じる色を構造色といいます。仕組みは当ブログの「その色、どこから」の「シャボン玉や油膜の色はどこから」で説明しています。

アワビ貝の貝殻の内側が虹色に見えるのも同じ仕組みです。

アワビの貝殻の構造色

なお、構造色を観察するとき、偏光板を通して見ると、色が変化して面白いです。

玉虫色は美しい色

 上述の広辞苑の解説の1はまさにタマムシの色のような色ということです。

 2は襲の色目(かさねのいろめ)とは、女性の平安装束(へいあんしょうぞく)の十二単(じゅうにひとえ)などに使われる色の組み合わせのうち、特に表裏を重ねるもののことです。その中に表が青で、裏が紫という組み合わせがありますが、これを玉虫色と呼びます。なお、ここでの青は、どちらかというと緑色に近い色です。

 3は構造色が光の加減や見る方向によって異なるように見えることから、あいまいな態度などのことを玉虫色と表現します。

 ところで、3の意味で使われる玉虫色は政治などの局面で悪い意味で使われることから、玉虫色は灰色とか黄土色などと思っている人も少なくないようです。確かに、政治の玉虫色が構造色というのは綺麗すぎてなんだか納得いきません。コフキコガネのような色を想像してしまいます(^_^;)

玉虫色は英語では?

 タマムシは英語で「Buprestoidea」といいます。「jewel beetles」と呼ぶ場合もあるようです。これは虫の名前ですから、玉虫色の英語は別な単語になります。

 玉虫色の様子そのものを表す場合は「 iridescence」が良いでしょう。「虹色」「真珠光沢」という意味になります。「タマムシのような色」と訳しても良いと思います。玉虫色と訳すと、曖昧な玉虫色と混乱しそうです。

 あいまいな態度などを表す場合は「ambiguous」が良いでしょう。「2つ以上の意味がある」「あいまいな」「不明瞭な」という意味になります。また「equivocal」は「曖昧な」「両方の意味に取れる」という意味があります。

 「deliberate ambiguity」とすると「意図的に曖昧にする」という意味がありますが、これは答弁などで、しどろもどろになって玉虫色の発現になるのとはちょっと違うように思います。「Policy of deliberate ambiguity」とすると、国家的などの意図的に曖昧にする政策の意味になります。

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2012年6月19日 (火)

高エネルギー可視光線 - 用語

最近、パソコンの使用時に透明なメガネをかけている人が多くなってきました。

パソコンのディスプレイがCRTだった頃、静電気で飛沫する微粒子から眼を守るために、メガネをかけましょうというのがありましたが、LCDが主流になってからは、眼を守るためにメガネをかけるということはなくなりました。

どうして、最近になって、メガネをかける必要が出てきたかというと、LCDのバックライトがハ白色LEDに変わったからです。白色LEDは青色LEDと、その青色LEDの光で励起されると黄色い光を出す蛍光体を組み合わせたものです。ですから、白色LEDが出す光には波長が短くてエネルギーの高い青色光がたくさん含まれています。

眼科の分野では、可視光線のうち波長380 nmから530 nmまでの光のことを、高エネルギー可視光線(HEV light, High-Energy Visible light)と呼び、青色光網膜障害の原因となるとされています。最近では、白色LEDが使われる例が増えていますので、眼が長時間青色光にさらされる機会が増えています。

パソコンのLCDディスプレイは、眼から近い位置で使うことが多く、また、画面を凝視する時間が長いので、眼が青色光に長時間暴露されます。そこで、眼を守るために、高エネルギー可視光線の波長領域の光をカットするメガネが使われるようになっているのです。

Bluelight

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2012年5月17日 (木)

単色光 - 用語

 単色光(たんしょくこう)は、太陽光線などをプリズムなどで分散したときに、それ以上、分けることができない光のことです。つまり、単一の波長(振動数、周波数)の電磁波のことです。

 街灯や高速道路の照明に使われているナトリウムランプが出す黄色の光は単色光です。また、赤色や青色などのLEDが出す光も単色光です。レーザー光は、光の波の位相がそろった単色光です。

 LEDの光にしろ、レーザー光にしろ、実際に存在する単色光はある程度の波長幅をもった光です。厳密に単一波長の単色光は電磁波の性質から作り出すことはできません。

 色セロハンを取り付けた白熱電球などから出る色光を単色光と呼んでいる人が時々見受けられますが、用語の使い方を誤っています。

 色セロハンは、その色に見える光を通しますが、その光はかなり幅広い波長範囲の光ですから、とても単色光とは言えません。

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2012年2月13日 (月)

定常波 - 用語

 振動数、振幅、速さが同じで進行方向が逆の2つの波が重なり合うときに現れる波。定在波ともいう。波が進行方向に対して垂直な面で反射すると、波は進行してきた方向に跳ね返される。このとき、もとの波と反射して戻って来る波の重ね合わせで定常波ができる。

定常波 ( standing wave )

 重なり合う前の2つの波は山や谷の位置が進んでいくが、重なり合ってできた波は山や谷の位置が変わらず、その場で振動しているだけで進んでいないように見える。定常波の媒質の振動が最も激しい部分を腹、全く振動しない部分を節という。

 ギターなどの弦楽器の弦は両端が固定されているが、弦をはじいて振動させると、弦の両端が節となる定常波が生じ、その振動数が弦の音程となる。

 管楽器の場合は、管口で発生した空気の振動の波が管内で反射を繰り返し、波が重なり合い定常波が生じる。両端が開いた開管では、両端が腹となる定常波を生じる。瓶の口に息を吹き込むような楽器は、片方が閉じた閉管であり、閉じられた端が節となる定常波が生じる。発生した定常波の振動数が管楽器の音程となる。

 蛇腹のついたホースをぐるぐる回すと音が出るが、これもホースの内部でできる定常波によるものである。

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2012年2月 3日 (金)

染料と顔料 - 用語

 染料と顔料は着色剤である。染料と顔料の大きな違いは水や油などの溶媒に溶けるか溶けないかである。溶媒に溶かして使われるものが染料、溶媒に分散させて使われるのが顔料である。

 染料は主に紙や布の染色に使われる他、食品やプラスチックの染色などに使われる。染料は溶媒と一緒に染色する素材に染みこんで素材と化学結合するため色落ちしにくい。染色するときには無色で、染めた後に化学反応などで発色させるものもある。染料には天然染料と合成染料がある。天然染料は古くから利用されており、植物や昆虫などから抽出した色素から使われる。合成染料は19 世紀の半ばに発明された。

 顔料はインク、絵の具、塗料などに使われ、それらをものの表面に塗って着色させる。また、プラスチックやゴムにねりこんで補強剤として使われるものもある。顔料には天然顔料と合成顔料があり、さらに無機顔料と有機顔料に分けられる。天然の無機顔料は人類が初めて利用した着色剤であり、古代壁画にも使われた。天然の有機顔料は染料を溶媒に溶けないような構造にしたレーキ顔料などがある。合成無機顔料は18世紀初めに発明されて以来、様々な種類のものがある。

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2011年12月26日 (月)

キャンドルパワー (燭) - 用語

日本語で燭、キャンドルパワー(記号 C)というのは、昔使用されていた光の明るさを表す単位です。

1Cの光の明るさは、ロウソク1本分の明るさという意味です。ロウソク1本分の明るさという定義はずいぶん曖昧ですが、1860年にイギリスで都市ガス条例によってガス灯が規制されたときに定義されました。これが日本に伝わったときに燭または燭光と訳されました。

その定義によると、1Cは、1時間に120グレーン(1グレーン=1/7000ポンド)の割合で燃焼する1/6ポンドの鯨油ロウソクの明るさとなります。

1ポンドは約453.6グラムですから、120グレーンは120×453.6/7000=7.8グラム、1/6ポンドは453.6/6=75.6グラムとなります。6ポンドのロウソクと書いてある書物もありますが、1/6ポンドです。

キャンドルパワーは曖昧なため、その後、定義が何度か改めれました。最終的には光の明るさは1948年にカンデラ(記号 cd)という単位で国際的に統一されました。

カンデラの値はキャンドルパワーになるべく近い値となっていて、次の関係があります。

1 C = 1.0067 cd

Candle

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2011年12月24日 (土)

波(波動) - 用語

波とは周期的な変化が空間を伝わる現象。波が伝わる空間物質を媒質という。

例えば、音波は音源の振動が気体や液体や固体を媒質として伝わる波である。地震は震源の揺れが波として地面を伝わったものである。波は空間を伝わるが、物質の移動を伴わない。媒質となる物質はその場で振動するだけである。木の葉が浮いている水面に波が広がるとき、葉がその場に留まっている様子を見ることができる。波は物質の移動を伴わずにエネルギーを伝達する現象である。

また、波には媒質を必要としないものもある。光や電波などの電磁波は磁界の変化と電界の変化が繰り返しながら伝わる波であり、真空中も伝わる。

波には波の進行方向に対して垂直に振動する横波と、波の進行方向に対して水平に振動する縦波がある。

横波はピンと張った糸をはじいたときにできる波である。縦波はバネが伸縮するような振動で伝わる波で疎密波ともいう。音波は縦波であり、電磁波は横波である。

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2011年12月22日 (木)

虚像 - 用語(光学)

虚像の説明は『光と色と THE NEXT』の「虚像-光学用語」を参照してください。


虚像とは、凸レンズや凹レンズを屈折しながら通過する光線や、鏡で反射する光線によって見える像である

やってくる光線を反対方向に延長すると、そこにあたかも物体があるように像が見える。その像を虚像という。

虚像は光が集まってできる像ではないので、スクリーン上に虚像を映すことはできない。

鏡の中に映っている自分の姿や、ルーペや望遠鏡で拡大して見ている物体は虚像である。

平面鏡でできる虚像凸レンズでできる虚像

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