天文

2022年3月 2日 (水)

プラトンが考えた天体の運動|エウドクソスの同心天球仮説①

天体が織りなす現象を救う

 「天と地」の地とは我らが母なる大地、地球でことです。そして、天とは果てしない大空のことです。古代ギリシアの自然哲学者たちは天体の運動を考えれば天と地がどのように成り立っているのかがわかると考えました。例えばアリストテレスは宇宙の中心にある地球の周りを全天体が公転しているという説を唱えました。

 古代ギリシャの自然哲学では、自然現象の真理を追及し、その仕組みを解き明かすことを「現象を救う」と言い表しました。もちろん天体が織り成す自然現象もその対象となりました。天体の運動について現象を救う取り組みを初めて試みようとしたのはプラトンでした。

 古代より太陽や月を始めとする天体の運動には何らかの規則性があると考えられていました。狩猟民族にしろ、農耕民族にしろ、古代の人々が自然を利用しながら賢く生きていくためには、1日の時間の流れ、季節の移り変わりとその周期、位置や方角などを正確に知る必要がありました。そのため人類は太古から天体の運動のなかに規則性を見い出そうとしていたのです。

 しかしながら、真理の探究が遥か昔から行われていたわけではありません。古代ギリシャの自然哲学以前においては、自然現象の解釈は神学的・宗教的なものが中心であり、とても真理の探究とは言えませんでした。それらをできる限り排除して自然科学的な観点から真理を探究しようとしたのが最初の哲学者タレスであり、その後のソクラテスやプラトンでした。

プラトンが考えた天体の運動

 プラトンは天体の運動について、例えば、恒星はどのように動いているかを考えました。星座を作る恒星は、お互いの位置を変えることなく東から西へと移動します。古代の人たちが恒星の配置を星座と見立てることができたのは恒星が規則的な動きをするからです。恒星は24時間経過するとほぼ同じ位置に戻ってきます。しかし、恒星の位置は毎日少しずつずれていきます。そのため、季節によって恒星の見える位置が変わったり、恒星そのものが消えたり現れたりしますが、ほぼ一年経過すると恒星は再び同じ位置に戻ってきます。こうした現象からプラトンは天体の運動は円形で一様で規則的であると考えました。そして、天体の運動を説明するには、どのような円運動が必要になるのかを問いました。

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プラトン

 プラトンが言及した円形で一様な運動とは、物体が一定の速さで回転する運動、つまり、等速円運動のことです。プラトンは等速円運動の組み合わせで、すべての天体の運動が説明できると考えました。

 しかし、プラトンは天体の運動について詳細に調べたわけではなく疑問を提示しただけでした。実際に真理の探究を進めて、天体の運動の仕組みを明らかにしたのは、プラトンの哲学を学んだ数学者のエウドクソスでした(続く)。

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2022年2月 4日 (金)

緑色の星は存在するのか?

恒星の色は表面温度で決まる

 宇宙にはたくさんの星が存在しています。それらの星を観察すると赤い星、黄色い星、青い星など様々な色をした星が存在していることがわかります。ところが緑色の星はいくら探しても見つけることはできません。緑色の星は存在しないのでしょうか。

星

 恒星の色は星からやってくる光の波長で決まります。星はさまざまな波長の光を出していますが、星が一番たくさん出す波長の光はその表面温度で決まります。つまり星の色は星の表面温度で決まります。大雑把に説明すると3千度の星は赤色に見え、6千度の星は黄色に見え、1万度の星は温度は青色に見えます。さらに温度が高い星は青白い色に見えます。それでは緑の星が見つからないということは緑色に相当する波長の光をたくさん出す星が存在しないということでしょうか。

緑色の星は存在するのか

 実は私たちにとって身近な星である太陽は緑色の光をたくさん出しています。しかし、太陽は緑色には見えませんし、太陽の表面温度は6千度ですから黄色に見える星のはずです。この矛盾はどうして生じるのでしょうか。

 次の図は太陽光のスペクトルです。可視光線の領域を見てみると500 nm前後のエネルギーが高いことがわかります。この波長範囲の光は緑色(青緑色)に見えます。また他の波長の光も含まれていることがわかります。

太陽光のスペクトル
太陽光のスペクトル

 実は表面温度が6千度の星は緑色の光を一番たくさん出しています。ところがこの表面温度の星から出てくる光には緑色以外の色の光も適度な強さで含まれています。そのため全体として黄色に見えてしまうのです。ですからヒトの色覚で見る星の色という観点からは緑色の星は存在しないということになります。

緑色に見える星がある

 天体観察をしている人の中には緑色の星を見た経験がある人もいるかもしれません。また天文に関する書籍にも緑色の星が掲載されていることがあります。この緑色の星の多くは連星です。連星は通常明るい主星と暗い伴星からなりますが主星が赤色で伴星が白っぽい色のときに伴星が緑色に見えます。白い星が緑色に見えるのは明るい主星の赤色の補色の緑色が伴星の表面に残像で現れるためと考えられています。つまり錯覚で白っぽい星が緑色に見えているのです。

 連星でなく単独の星でも緑色に見える場合があります。これは肉眼ではなく望遠鏡で星を観察している場合が多いようです。特に暗い星を見ているときやピントがずれたり収差が出たりしているときに星が緑色に見えます。これはヒトの色覚に関係していると考えられています。眼の網膜には色は見分けられないが暗いところで光を感じることができる桿体細胞と可視光線の短波長領域の光、中波長領域の光、長波長領域の色光を感じる3つの錐体細胞があります。この3つの錐体細胞のうち最も感度が高いのは中波長領域の光を感じる錐体細胞でヒトが最も見やすい色が緑色と言われるのはこのためです。

 錐体細胞は光が暗くなると反応が鈍くなるため私たちは暗いところでは色を見分けにくくなります。色を見分けにくい暗い星を見たときに感度の高い中波長領域の錐体細胞が反応して緑色に見えると考えられています。また、望遠鏡でピントがずれたり収差が出ているときは星の像は点にならず広がります。広がったところの像は暗くなるので色が見分けにくくなり緑色に見えると考えられています。

 緑の光を一番脱している星は緑色に見えず、緑に見える星は目の錯覚ですから緑の星は存在しない結論づけておきましょう。

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2021年4月22日 (木)

「月面L」の撮影に成功(月齢9 2021年4月21日)

 先日「月齢7の月に「月面X」(2021年4月19日)」に「月面X」の記事と写真をアップしましたが、21日(月齢9)は「月面L」を撮影することができました。

9
月齢9(2021年4月21日21:47撮影 f:8 ss:1/125 ISO:400)

 写真の左下にひっくり返った「L」の文字を確認することができます。

月面L
月面L

「X」や「L」の他にも、「V」や「E」が見えることもあります。2018年3月に撮影された「L」「O」「V」「E」が一度に揃った写真がNASAのAstronomy Picture of the Dayに「Lunar LOVE」として登録されています。この写真を撮影したのは愛媛県の天体愛好家の竹尾昌さんで、この現象は「月面LOVE」と名付けられました。

Lunar LOVE
Image Credit & Copyright: Masaru Takeo - courtesy: Junichi Watanabe (NAOJ)
Astronomy Picture of the Day 2018 November 3

このNASAに登録された写真はVの部分が暗くて見づらいと思います。

朝日新聞デジタルの下記の記事に掲載されている写真がわかりやすいです。

「月面LOVE」バレンタイン2日前が観測のチャンス
https://www.asahi.com/articles/ASM283W9HM28ULBJ009.html

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2021年4月21日 (水)

月齢7の月に「月面X」(2021年4月19日)

 2021年4月19日の夜に撮影した月齢7の月です。上弦の月(20日20:00月齢8)の前日になります。

月齢7の月(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月齢7の月(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 今回は下記に記載した通り、パナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85にパナソニック純正のテレコンバージョンレンズDMW-LT55を装着して撮影してみました。最大まで倍率をあげて撮影してみたところ、色収差の影響が若干出て月の縁が青みががって写りました。一方で他のテレコンより分解のは高い画像が得られました。

 撮影した画像を良く見てみると、かろうじて「月面X」が写っていました。

月齢7の月と月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月齢7の月と月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 月の表面には多数のクレーターが存在しますが、太陽光が当たる角度によって立体的に見えます。上弦の月の頃、月の明るい部分と暗い部分の境目あたりに光の加減で「X」の文字が見えます。この現象は「月面X」と呼ばれています。「月面X」のもとになっている地形は3つのクレーター「プランキヌス」「プールバック」「ラカイユ」の外壁によって作られています。

月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 「月面X」は上弦の月の頃に必ず見られるわけではありません。「月面X」が綺麗に見えるのは約70分しかありません。また、上弦の月が夜に出ていること、月が観測地から見えやすい位置にあることが条件になります。「月面X」が見えるのは1年間を通して数回程度で、天気や雲に月が遮られると観測できるチャンスが失われてしまいます。2021年は「月面X」を合計6回、あと4回観測することができます。日時は下記の日の20:00〜22:30の間の1時間です。

 2月19日、4月19日、6月17日21:30、8月15日20:00、10月13日20:00、12月11日22:30

 4月19日は綺麗に「月面X」が撮影できる時間は21:00頃でしたので、上の写真は1時間ほど早めです。そのためと思いますがXの右側が欠けています。

【撮影機材】

 この月の写真の撮影に使用したカメラはパナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85 ブラック DC-FZ85-Kです。焦点距離が20 mm〜1200 mmで、光学ズームでは60倍まで拡大可能です。

 このカメラにパナソニックの純正のテレコンバージョンレンズ DMW-LT55を装着しました。倍率は1.7倍です。純正ではありますが、FZ-85で光学ズームを最大にすると、色収差の影響が出て月の縁が青みがかって写ります。

 なおFZ-85にこのテレコンをつけるには、パナソニック レンズアダプター ルミックス DMW-LA8が必要です。

 

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2021年2月24日 (水)

地球照とは

 月齢27から3ぐらいまでの大きく欠けた三日月や有明月をよく見てみると、月が欠けた部分に月の丸い姿がうっすらと見えるときがあります。これは地球が反射している太陽光が月の表面を照らしているために起こる現象で地球照といいます。

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下弦の月の地球照

 月が大きく欠けて見えるとき、太陽光を反射して光っている月の表面の面積が小さくなります。また「月の満ち欠けの仕組み」の図からわかる通り、月から見える地球が満地球に近くなり地球から月にやってくる反射光が多くなります。そのため地球照が見えやすくなります。

 新月のときは月から見える地球が完全な満地球となり地球からの反射光が最大となりますが、新月は夜間に見ることができないので地球照も見ることはできません。月が新月の位置にあり、皆既日食が起きたときは地球照を見ることができます。

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2021年1月20日 (水)

太陽と月が同じ大きさに見える理由

 太陽の平均直径は1,392,000 km、月の平均直径は3,474.8 kmです。直径で比較すると太陽は月の400倍です。太陽の直径は月が400個も並ぶ大きさです。ところが、地球から太陽と月を見たときには、ほとんど同じ大きさに見えます。次の写真は太陽と月を同じ倍率で撮影して、見かけの大きさを比較したものです。

太陽と月の見かけの大きさの比較
太陽と月の見かけの大きさの比較

 地球から見たときに太陽と月が同じ大きさに見えるのは「地球から太陽の距離」と「地球から月までの距離」に関係しています。景色を眺めているとき、遠いところにあるものが小さく見えることは、日常でも体験していることと思います。

遠くにある柱は小さく見える
同じ大きさの柱でも遠くにあるものは小さく見える

 次の図は近くの物体Aと遠くの物体Bを見たときの様子を示したもです。これら2つの物体は同じ大きさですが、それぞれの物体までの距離が異なるため、物体を出た光が眼に入ってくる角度が異なります。そのため、網膜にできる像が、それぞれA'とB'となり、結果として、遠いところにある物体Bは近いところにある物体Aよりも小さく見えるのです。また、物体Cは物体Aよりも大きいのですが、物体Aと同じ大きさに見えます。

物体の大きさの捉え方
物体の大きさの捉え方

 このように、私たちは物体の大きさを光がやってくる角度として捉えます。従って、この角度で物体の見かけの大きさを表すことができます。この角度は次の図のようにえると求めることができます。

物体の見かけの大きさの求め方
物体の見かけの大きさの求め方

 物体の大きさy、物体までの距離L、物体が見える角度θの間には次の関係があります。

tanθ = y/L または y = L・tanθ

 さて、冒頭で述べたように太陽の平均直径は1,392,000 km、月の平均直径は3,474.8 kmですが、地球と太陽の平均距離は149,597,870 km、 地球と月の平均距離は384,400km です。これを上式に当てはめると、

太陽の場合は、

tanθ = 1,392,200/149,597,870
θ = 0.53

月の場合は、

tanθ = 3,474.8/384,400
θ = 0.52

となり、どちらの角度も約0.5度になります。結果として、太陽と月の見かけの大きさ(視直径)はほとんど同じ大きさになります。

 地球と太陽は上図の物体Aと物体Cと同じような位置関係にあり、太陽と月の視直径は約0.5度で、地球からの見かけの大きさは同じと覚えておくと良いでしょう。

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2020年10月29日 (木)

月が明るく輝いて見える理由|ガリレオの天文対話

月は太陽光を反射して輝く

 夜空に輝く月は自ら光を出しているわけではなく、太陽の光を反射して輝いていることはよく知られていると思います。

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 古代ギリシアのアリストテレスは月が明るく輝いて見えるのは、月の表面が鏡のようになめらかだからだと考えました。多くの学者達がアリストテレスの説を信じていましたが、この説を否定したのがガリレオ・ガリレイです。

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ガリレオ・ガリレイ

月が明るく輝いて見える理由を明らかにする

 ガリレオは1632年の著者『天文対話』において、3人の学者に月が明るく輝く理由を討論させています。登場する3人は、アリストテレス派のシムプリチオ、コペルニクス派のサルヴィアチ、そして中立的な立場のザグレドです。

天文対話(ガリレオ・ガイレイ)
天文対話(ガリレオ・ガイレイ)

 コペルニクス派のサルヴィアチは2人を外に連れ出し、日光が当たっている明るい壁を見るように言います。そして、この壁に鏡をかけたたら、鏡は壁よりも明るく見えるか、暗く見えるかと問いかけます。

 アリストテレス派の考えでは、表面が滑らかな鏡は光をよく反射するので、鏡は壁よりも明るく見えることになりますが、実際には鏡は壁の表面よりも暗く見えたのです。この矛盾する結果にアリストテレス派のシムプリチオは「この角度から見ると鏡は暗いが、鏡が光を反射する方向の場所に立てば、鏡は壁より明るく見える」と述べ、鏡は入射光に対して、一定の方向に光を反射すると「光の反射の法則」について説明します。

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光の反射の法則

 さらに、シムプリチオは鏡が平面ではなく球面であれば、あらゆる方向に光を反射すると述べます。そして、球体の月は太陽光線をあらゆる方向に反射しているのだから、地球上のどの場所からも明るく輝いて見えると凸面鏡による光の反射の説明をします。

凸面鏡による光の反射
凸面鏡による光の反射

 シムプリチオの主張に対して、中立のサグレドは「物体が輝いて見えるようになるためには、物体が光を反射するだけではなく、その反射光が我々の眼に届くことが必要」と述べ、「鏡が球面であれば、反射光のごく一部だけが我々の眼に届くだけである」と反論します。

 確かに凸面鏡はあらゆる方向に光を反射しますが、あらゆる方向から全体が明るく見えるというわけではありません。凸面鏡の表面の一部が輝く点のように見えるだけで、反射光が眼に届かない部分は暗いはずです。

 コペルニクス派のサルヴィアチは実際に凸面鏡を壁にかけて実験をし、どこから見ても壁の方が凸面鏡より明るく見え、凸面鏡がどこにあるかわからないことを確認します。そして、もし月が球面だったら、月全体が輝いて見えるはずがなく、月は輝く点のように見えるはずである。月の表面は鏡のように滑らかではなく、壁のように乱雑になっていると結論づけます。

  つまり、月は正反射ではなく、乱反射しているからこそ、明るく見えるということを明らかにしたのです。

光の乱反射
光の乱反射

 次の図のように真っ暗な部屋で鏡と白い紙を真上からペンライトで照らします。真横から見ながら実験すると、鏡の見え方は変化しませんが、白い紙は光があたったところ全体が明るくなります。これは鏡が光を真上の方にしか反射しないのに対し、白い紙は光をいろいろな方向に反射するからです。

鏡と白い紙にペンライトの光を当てる
鏡と白い紙にペンライトの光を当てる

 このように光が物体の表面で乱反射するおかげで、私たちは物体の姿や色をいろいろな方向から見ることができるのです。ガリレオはこのことを説明し、月の表面が鏡のように滑らかではなく、凸凹であることを明らかにしたのです。

ガリレオは月の表面を実際に見ていた 

 1604年にケプラーの超新星(SN1604)が発見されると、天体観察への関心がたかりました。ガリレオは1597年にヨハネス・ケプラーにコペルニクスの地動説を指示する手紙を送っていますので、ケプラーの超新星の発見には刺激されたのではないかと思われます。

 当時、天体を観察できる望遠鏡はありませんでした。オランダの眼鏡職人のハンス・リッペルスハイが凸レンズと凹レンズを組み合わせたオランダ式望遠鏡を発明したのは1608年のことでした。ガリレオは独自にオランダ式望遠鏡を製作し、天体の観察を行いました。

 

ガリレオの望遠鏡
ガリレオの望遠鏡

 

 ガリレオは月の表面の観察も行い、1610年の著書『星界の報告』において、月はアリストテレスが主張したような表面が鏡のように滑らかな
球体ではなく、地球の表面と同様に凸凹しているということを記しています。この観察結果をもって、天文対話で3人に「月が明るく輝いて見える理由」を議論させたのです。

ガリレオの月の満ち欠けの観察図
ガリレオの月の満ち欠けの観察図

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2020年9月28日 (月)

満月と月食の関係

月食は月が満月の位置にいる時に起きる

 月が地球の影に覆われる月食。月食は月が満月の位置にあるときにだけ起こります。月が満月の位置にあるとき、月と太陽の間に地球が入るからです。本ブログの記事「月の満ち欠けの仕組み」に掲載した下記の図の満月のようになります。つまり、月-地球-太陽が一直線に並ぶときに、満月も起こり、月食も起こります。

満月と月食は何が違うのか

 上の図だけを見ると、月と地球と太陽が一直線に並ぶ時には、月が地球の影にすっぽりと隠される皆既月食になりそうです。しかし、月食が怒るのは稀で、日常の経験からもわかるとおり、月が満月の位置に来るたびに月食になるわけではありません。なぜ、満月になるのでしょうか。

 実は、月の公転起動と地球の公転軌道は次の図のように5.14度ずれています。

地球と月の公転軌道のずれ
地球と月の公転軌道のずれ

 この公転軌道のずれのため、月が満月の位置にいるとき、多くの場合は地球の影からずれたとろにいます。満月が地球の影と重なるところに入った場合に月食となります。満月が影の一部で隠されている場合は部分月食となり、満月が地球の影の中にすっぽり入ると、皆既月食となります。地球の影の大きさは満月3個分ぐらいの大きさです。満月が影のどの部分で重なるかによって、皆既月食の時間が変わります。

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2020年8月19日 (水)

分光分析の幕開け(9)-天体からのメッセージ

天体からの光のメッセージ

 太陽光のスペクトルにDの暗線があるということは、太陽の表面に多数のナトリウム原子が存在することを意味します。このことは、他の暗線を調べると、太陽にどのような原子が存在するのかがわかることも意味します。

 1868年にインドで観測された皆既日食で、太陽の縁から立ち昇るプロミネンスの光のスペクトルに新たな輝線が確認されました。この輝線は、新しい原子によるものと考えられ、その原子はヘリウムと名付けられました。地球上でヘリウムが発見されたのは、それから27年後の1895年のことです。

 現在、太陽光には約25,000本の暗線が確認されています。暗線は発見者に因みフラウンホーファー線と呼ばれています。

記号 元素 波長(nm) 記号 元素 波長(nm)
A O2 759.370 E2 Fe 527.039
B O2 686.719 F 486.134
C 656.281 G Fe 430.790
D1 Na 589.594 G Ca 430.774
D2 Na 588.997 H Ca+ 396.847
D3 Na 587.565 K Ca+ 392.368

主なフラウンフォファー線

 太陽と同様に宇宙にたくさん存在する恒星からやってくる光のスペクトルを調べることによって、その天体にどのような原子が存在するのかを知ることができます。

宇宙の膨張もわかる 

 地球から遠ざかる天体の光は、ドップラー効果により、波長が長くなります。これを赤方偏移といいますが、どれぐらい波長が長くなったかを調べるには、基準の光が必要となります。この基準にフラウンホーファー線が使われます。

 銀河のスペクトルの赤方偏移から、この宇宙が膨張していることがわかったのです。

 このように遙か彼方の天体からやってくる光には、天体からの原子のメッセージが込められているのです。

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2020年8月 7日 (金)

分光分析の幕開け(8)-フラウンフォーファー線(暗線)の正体を突き止める

ブンゼンとキルヒホフ

 1859 年、ドイツの化学者ローベルト・ブンゼンと物理学者グスタフ・キルヒホフはスペクトル測定の研究を進めていました。ブンゼンが発明したブンゼン・バーナーはほぼ無色の炎を出すことができました。ブンゼンとキルヒホフは、この炎に物質を入れ、物質から出る光のスペクトルを調べる炎光分光分析という分析法を開発しました。1860年に分光学的手法によりセシウムとルビジウムを発見しています。

キルヒホフとブンゼン
キルヒホフ(左)とブンゼン(右)

太陽光のスペクトルの解析

 ブンゼンとキルヒホフは炎光分光分析法で太陽光のスペクトルの分析を行い、フラウンフォーファー線のD線について調査しました。2人は太陽光のスペクトルに D の暗線が生ずるのは、太陽光がナトリウム原子が出す光を含まないからだと考えました。そして、太陽光とナトリウム原子の光を混合すると、ナトリウム原子のDの輝線が太陽光のDの暗線を補い、全体としてはDの暗線が消えると考えました。ところが、実験の結果は、Dの暗線が消えるどころか、予想に反して、より暗くなってしまったのです。

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暗線の正体を突き止める

 ブンゼンとキルヒホフは、暗線が生じないオイルランプの光とナトリウム原子の光で同様の実験をおこないました。すると、D の暗線をもつスペクトルが得られたのです。2人はこの結果について、「オイルランプの炎の中にはナトリウム原子がたくさん存在する。そこに、
ナトリウム原子が出す光がやってくると、オイルランプ中のナトリウム原子がその光を吸収する。その結果、Dの位置の光が欠けて暗線が生じる」と結論づけました。

 つまり、ブンゼンとキルヒホフは原子自らが発光する光と同じ光を吸収することを発見したのです。

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