回折

2011年10月10日 (月)

望遠鏡を発明したのは誰?

 レンズを 2 枚組み合わせてものを見る実験は非常に簡単です。そのため、2 枚のレンズでものを拡大して見ることができることを最初に気がついた人が誰なのかはよくわかっていません。

 しかし、13 世紀のイギリスの哲学者ロジャー・ベーコンの 著書 「大著作(Opus Majus)」に、レンズを 2枚使って遠くのものを近くに見ることや、小さなものを大きく見ることが書き記されています。

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 1608年、オランダの眼鏡職人ハンス・リッペルスハイは凸レンズ(対物レンズ)と凹レンズ(接眼レンズ)を筒にはめた望遠鏡を作り、オランダ政府に特許を申請しました。同じくオランダの技術者ヤコブ・メチウスもリッペルスハイからわずかに遅れて同じ仕組みの望遠鏡の特許を申請しました。2人の特許は申請がほぼ同時だったことや、望遠鏡自体が新しい発明ではないこともあり認められませんでした。しかし、オランダ政府はリッペルスハイの望遠鏡を高く評価し、彼に報奨を出しています。そして、彼は実用的な望遠鏡の製造・販売を始めました。このことから、リッペルスハイが望遠鏡の発明者とされています。

  ところで、1590年頃に顕微鏡を発明したオランダのヤンセン親子の息子ツァハリアス・ヤンセンが1604年に望遠鏡を作ったという記録もあります。リッペルスハイがヤンセンのアイデアを盗んだのではないかという見解もあるようです。ただし、ヤンセンも既存の望遠鏡を真似て作ったともあり、1580年代の終わりにイタリアの博学者が望遠鏡を作っていたという記録も残っています。

 このように望遠鏡を誰が発明したかについては諸説あるのですが、17世紀に入って望遠鏡が非常に便利な道具としてヨーロッパに瞬く間に広まったのは間違いないようです。

■ガリレオが自作した望遠鏡

 イタリアのガリレオ・ガリレイはオランダで発明された望遠鏡を改良し、独自に天体望遠鏡を作りました。彼は1609年に天体観測を行い、木星や土星の衛星、月面のクレーター、太陽の黒点の動き、金星の満ち欠けなどを発見しました。それらの観察結果から当時主流であった天動説を否定しコペルニクスの地動説を支持しました。

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 凸レンズと凹レンズを組み合わせた望遠鏡をオランダ式望遠鏡またはガリレオ式望遠鏡といいます。オランダ式望遠鏡は次の図のように凸レンズA(対物レンズ)で収束する光線を凹レンズB(接眼レンズ)の虚像として見ます。拡大されたものを正立像として見る光学系としては構造が簡単なため、現在でも簡単な地上用望遠鏡やオペラグラスとして利用されています。しかし、倍率を上げると視野が非常に狭くなるという欠点があり、天体観測には向いていません。

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■ケプラーが考案した望遠鏡

 1611年、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーはオランダ式望遠鏡の欠点を解決する望遠鏡として、凸レンズを2枚組み合わせた望遠鏡を考案しました。この望遠鏡をケプラー式望遠鏡といいます。ケプラー式望遠鏡は次の図のように凸レンズA(対物レンズ)で作った実像を凸レンズB(接眼レンズ)の虚像として見ます。拡大されたものを倒立像として見ますが、視野が広く倍率を上げることができます。また、天体観測では倒立像でも問題ないため、天体望遠鏡として広く使われるようになりました。地上用の望遠鏡では内部にプリズムを入れて正立像を得られるものもあります。この原理もケプラーが考案しました。

ただし、ケプラーは望遠鏡を自作していません。 1611年にケプラーが発表したのは理論だけでした。1645年にオランダのシルレによって、望遠鏡のしくみや応用が詳しくまとめられました。

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 ところで、レンズを使った望遠鏡には、倍率を上げると物体の色が正しく再現できないという欠点があります。プリズムに光を通すと虹のような色の帯ができますが、レンズにも同じような働きがあるため物体に色がついて見えてしまうのです。このため、アイザック・ニュートンは1618年に凸レンズと凹面鏡を使った反射望遠鏡を考え出しました。

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2011年9月26日 (月)

その色、どこから

■物体の色はどこから

私たちの身の周りにある多くの物体の色は太陽や電灯などの光源から物体に届いた光のうち、物体が吸収せずに反射した光の色で決まります。このように物体が特定の色の光を吸収・反射すると、色が生じます。

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ところが、空にかかる虹・シャボン玉の膜・CDやDVDの銀色の面は、普通の物体と違って光の吸収と反射で色づくわけではありません。どのような仕組みで色が生じるのか考えてみましょう。

■虹の色はどこから

1666年、イギリスのアイザック・ニュートンは、無色の太陽光をプリズムに通すと、太陽光が分解して、赤から紫まで連続的に変化する光の色の帯が現れる現象を実験で示しました。このような現象を光の分散といいます。

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そして、ニュートンは無色の太陽光は赤から紫までの色の光が混ざり合ったものであることを突き止めました。このような光を白色光と呼びます。

光の色は波長の違いであり、波長が短い方から長くなるに従って紫から赤へと変化します。物質中の光の速度は光の波長が短くなるほど遅くなります。そのため、波長の短い光は波長の長い光より大きく屈折します。

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太陽光をプリズムに通すと、光の色が赤から紫になるに従って大きく屈折するため、光が分散して光の色の帯が現れます。空にかかる虹も空気中に無数に存在する水滴で光が屈折することによって生じた光の色の帯で、その基本的な原理はプリズムで光の色の帯が生じる原理と同じです。

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■シャボン玉や油膜の色はどこから

シャボン玉の膜や水面に広がった油膜は虹のように色づいて見えます。シャボン玉の膜や油膜の虹は薄膜による光の干渉によって生じます。

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干渉とは複数の波が重ね合わさるとき、波が強め合ったり、弱め合ったりする現象です。光の波と波が干渉するとき、波の山と谷が重なる条件では、光が暗くなり、波の山と山が重なる条件では、光が明るくなります。

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次の図のように、光が薄い膜にあたると、光の一部は表面で反射しますが、膜の表面で屈折してから膜の中に入った光は、膜の中で反射して再び膜の外に出てきます。この2つの光が干渉し合い光が強め合うところと弱め合うところができるため、膜の表面に色づいた縞模様が見えます。シャボン玉や油膜の虹色の模様がさまざまに変化するのは膜の厚さが変わるためです。

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コガネムシなどの昆虫やサバなどの魚の体は金属のような光沢がありますが、これらも薄い膜が何枚も積み重なった多層膜による光の干渉によるもので金属光沢ではありません。

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■CDやDVDの虹色はどこから

CDやDVDの銀色の面をのぞくと鏡のように自分の顔が映りますが、虹のような光の色の帯が見えます。これらのディスクの銀色の面には同心円状のトラックと呼ばれる円周上にピットと呼ばれる小さな孔が開けられており、その配列によって情報を記憶しています。トラックとトラックの間隔はCDで1.6μmで、1mmあたりに625本のトラックが溝のように規則正しく等間隔に並んでいます。

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波は波長と同じぐらいの大きさの物体にあたると、その物体の陰に回り込むように広がって進む性質があります。これを波の回折といいます。光も波の性質をもつため、光が光の波長ほどの微細な物体にあたると回折します。

CDやDVDの規則正しく刻まれた溝に光があたると、光は回折を起こし、ディスクの表面でさまざな方向に広がるように反射します。このとき、光の波の干渉が起こり、光が出てくる角度によって、特定の色の光が強め合ったり、弱め合ったりします。これが連続的にくり返されて、全体として虹のような光の色の帯が見えます。このようにCDやDVDで生じる虹は、ディスクの面に規則正しく微細に刻まれた溝による光の回折と干渉によって生じます。

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物体の微細な構造によって回折や干渉で生じる色を構造色と呼びます。構造色で虹色を見ることができるのは、光源がさまざまな色の光を含んだ白色光であることも忘れてはいけません。

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