レンズ

2021年4月27日 (火)

古代エジプトにレンズは存在していたのか

 以前、古代エジプトのヒエログラフに「レンズ」を意味する文字があるという情報を得ていろいろ調べたことがあります。インンターネットのいくつかの記事では古代エジプトのレンズについて「simple glass meniscal lenses(簡単なガラス製の半月レンズ)」と紹介されていますが、そのヒエログラフがどのようなものかを示す論文を見つけることができませんでした。その経緯は下記の記事にまとめてあります。

 当時の古代エジプトにはレンズを作ることができるような十分に透明なガラスは存在していませんでした。しかし、水晶など天然の透明な結晶はありました。当時の人たちが水晶などを使って意図的にレンズを作成したとは考えにくいですが、レンズの一部の働きをする道具を作って利用していた可能性はありそうです。

 その中でもっとも可能性がありそうなものは光を集めて着火するための道具でしょう。しかし、これをもって古代の人々が意図的にレンズと作ったと主張するには無理があるかもしれません。透明なものが光の収れん現象を起こし、可燃物を着火させることはよく知られています。当時の人々も原理を理解していたかはともかく、球状の透明なものが光を効率的に収れんさせるという経験と知識はもっていたでしょう。

  さて、「アッシリアの水晶レンズ」もしくは「ニムルドのレンズ」と呼ばれている世界最古のレンズがあります。このレンズはしばしばオーパーツとして取り上げられることもありますが、実際にはレンズとして意図的に作られたものではなく、家具や置き物などの装飾に使った象嵌材だったと考えられています。下記の記事にまとめてあります。

 このアッシリアのレンズと呼ばれる水晶は象嵌材ではありますが平凸レンズの形をしていたため、レンズの働きによる現象を確認できたはずです。この象嵌材を作成した職人はこの象嵌材を通して作業台の上にあったものの拡大像を見ていたかもしれません。

 象嵌材で気が付いたのですが「玉眼」というものがあります。「玉眼」とは仏像の眼を本物のように見せるために使われた水晶のことです。像の眼の部分に穴を開けて板状の水晶を嵌め込み、水晶の裏に虹彩や瞳を描いて白い布を当てます。これを表側から見ると、本物の眼のように見えるというわけです。「玉眼」は仏像に限って使われたわけではなかったでしょう。

 古代エジプトでは太陽神ラーが最も重要な神とされていました。

イメンテット(左)と太陽神ラー(紀元前13世紀のネフェルタリの墓)
イメンテット(左)と太陽神ラー(紀元前13世紀のネフェルタリの墓)

 古代エジプト人にとっての光は太陽神ラーの眼差しで、ラーの眼は神聖なものでした。もし、ラーの眼に「玉眼」の加工が施されたいたら神秘的に見えたに違いありません。

太陽神ラーの眼
太陽神ラーの眼

 そのような観点から古代エジプトの「玉眼」を探してみたところ次のサイトが見つかりました。これをレンズと呼んで良いのかどうか実物を見たいのですが、そう簡単には実現できないでしょう。この論文に写真でも掲載されていると良いのですが、今回のリサーチはとりあえずここまでとしておきます。

19 July 1999

Remarkable lenses and eye units in statues from the Egyptian Old Kingdom (ca. 4500 years ago): properties, timeline, questions requiring resolution

Jay M. Enoch, Univ. of California/Berkeley (United States)

Proc. SPIE 3749, 18th Congress of the International Commission for Optics, (19 July 1999)

Abstract

The first known lenses appeared during the IVth and Vth Dynasties (fabricated mainly between ca. 2500 - 2400 BC) of the Old Kingdom of Egypt. Excellent examples of these lenses are found in The Louvre Museum in Paris and the Egyptian Museum in Cairo. These lenses were components of eye constructs in statues and had unique qualities. In particular, the `eyes' appear to follow the viewer as he/she rotates about the statues in any direction. Clearly, this was an intended effect which can be readily photographed (and understood optically). The lenses were ground from high quality rock crystal (a form of quartz). They had a convex and highly polished front surface. On the plane rear lens surface as `iris' was painted. Centered in the dark- appearing pupil zone was an approximately hemispheric negative ground, high power, concave lens surface.

初めてレンズが登場したのはエジプト古王国の第4王朝と第5王朝のものです(主に紀元前2500年から2400年の間に製作された)。これらのレンズは、パリのルーブル美術館やカイロのエジプト博物館に所蔵されており、彫像の目を構成する部品であり、独特の性質を持っています。特に、この「目」は鑑賞者が彫像をどの方向から見ても追随するように見える。これは明らかに意図された効果であり、容易に写真に収めることができます(光学的に理解できます)。レンズは、高品質のロッククリスタル(石英の一種)から研磨されたものです。レンズは高品質のロッククリスタル(石英の一種)を研磨したもので、前面は凸状に高度に研磨されています。後面の平面には「アイリス」の文字が描かれている。暗く見える瞳の部分を中心に、ほぼ半球状のマイナス地、高出力の凹レンズ面がある。

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2021年4月23日 (金)

屈折率とアッベ数|光学ガラスの原理と仕組み(2)

分散と屈折率

 白色光をプリズムに通すと、次の図ように光の色の帯(スペクトル)ができます。この現象を光の分散といいます。光の分散はガラスの屈折率が光の波長によって異なるため生じます。光学ガラスといえどもこの現象から逃れることはできません。

プリズムによる光の分散
プリズムによる光の分散

 一般に光学ガラスの屈折率はヘリウム原子が発する波長587.562 nmの光であるd線の屈折率 ndで表されます。この波長を基準波長、nd基準屈折率と呼びます。この光は人間の眼の感度もよく、可視光線の波長領域(380~780 nm)のほぼ中央にある光です。

 もともと基準波長の光はナトリウム原子が発するD線が使われていました。D線は波長589.6 nmのD1と589.0 nmのD2から成り、現在はd線が用いらるようになりました。なお、D線の屈折率はnDで表されます。

 多くの光学ガラスは、同じ材質であればnd が±0.0005となるように保証されており、高精度のものでは±0.0002まで保証されているものもあります。このように光学ガラスの屈折率はきわめて正確に管理されています。

スペクトル線 波長(nm) 光源
t(赤外線) 1013.98 Hg
s(赤外線) 852.11 Cs
A'(赤色) 768.195 K
r(赤色) 706.519 He
C(赤色) 656.273 H
C'(赤色) 643.847 Cd
He-Ne(赤色) 632.816 He-Neレーザー
D(黄色) 589.294 Na
d(黄色) 587.562 He
e(緑色) 546.047 Hg
F(青色) 486.133 H
F'(青色) 479.992 Cd
g(青色) 435.835 Hg
h(紫色) 404.656 Hg
i(紫外線 365.015 Hg

 光学ガラスのカタログによく記載されている光の種類と波長

色収差とアッベ数

 レンズの焦点は実際には次の図のように光の波長によって異なります。これを色収差といいます。

Photo_20210423153301
光の分散による焦点位置のずれ

 この色収差の度合いは、光学ガラスの種類によって異なります。たとえば、光の分散が大きい光学ガラスでつくったプリズムでできるスペクトルの幅は広くなります。逆に、分散が小さい光学ガラスでつくったプリズムでは狭くなります。そこで、波長の短い光(青)と波長の長い光(赤)の屈折率の差が大きい光学ガラスを分散が大きい光学ガラス、差が小さい光学ガラスを分散が小さい光学ガラスと呼びます。

分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム
分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム

 光学ガラスの分散の度合いは、次式で表されるアッベ数νという値で表し、次の式で求めることができます。

Photo_20210423155101

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2021年4月19日 (月)

光学ガラスとは|光学ガラスの原理と仕組み(1)

光学ガラスとは

 レンズやプリズムは光を操って光の進む方向を変えたり、像を結んだりするために使われます。そのため、レンズやプリズムに使われているガラスには優れた光学的性能が求められます。ですから窓ガラスなどに使われている普通のガラスは、顕微鏡、望遠鏡、カメラなどの光学機器には使えません。このような精巧な光学機器に使われる特別なガラスを光学ガラスといいます。

 普通のガラスも光学ガラスも、一見すると透明で均質に見えます。どちらのガラス板を通してものを見ても、鮮明に見えますし、歪んで見えるわけでもありません。しかし、2つのガラスの間には、光学的に大きな違いがあります。

 たとえば、普通のガラスは製造過程で融かして固める際にガラス内部に力学的な歪みや脈理(みゃくり)と呼ばれる化学的成分の異なる部分ができやすいため屈折率のムラが生じます。光学ガラスはこのようなムラが生じないように作られており、ガラスのどの部分で屈折率を測っても、ほとんど同じ値が得られます。また、ガラスに気泡や異物が入らないよう、透明度にもムラが生じないよう細心の注意が払われてつくられています。

 普通のガラス板は正面から見ると透明に見えますが、断面を見ると緑色に見えます。これはガラスに含まれている不純物が光を吸収するからです。次の写真は、厚さ1.5 cmのガラス板を2枚重ねて撮影した写真です。左右の厚さの差は1.5 cmですが、左側が緑色を帯びて暗くなっています。


ガラス板の透明度

 このように普通のガラスを何枚も重ねていくと次第に暗くなっていき、やがて光が全く通らなくなります。光学ガラスは、普通のガラスに比べて、光の透過性が極めて高く、光をあまり吸収しません。光ファイバーが遠くまで光を運べるのは、光の透過性に極めて優れた光学ガラスが使われているからです。

 光学ガラスに求められる性質は光学的性質のみではありません。次の表のように、用途に合わせた耐環境性や、生産性向上に必要な優れた加工性なども求められます。

光学的性質
光透過性 光の吸収が少なく、光をよく通すこと
均質性 ムラがなくガラスのどの部分も屈折率が同じであること
耐環境性・生産性
化学的性質 耐熱性、耐水性、耐薬品性などに優れていること
物理的性質 強靱性、硬度などに優れていること
表 光学ガラスに求められる基本的な性質

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2020年9月29日 (火)

凹レンズの公式の導出-虚像

 凹レンズでできる虚像のレンズの写像公式も実像のときと同様に求めることができます。

凹レンズでできる虚像
凹レンズでできる虚像

 この図からレンズの公式を導くことができます。

 次の図で△OABと△OA’B’が相似形であることに注目します。

凹レンズの虚像の相似形
凹レンズの虚像の相似形

△OABと△OA’B’が相似形ですから、

A’B’/AB=B’O/BO=b/a ……(1)式

の関係にあります。

次に、下図で△FPOと△FA’B’が相似形であることに注目します。

凹レンズの虚像の相似形
凹レンズの虚像の相似形

△FPOと△FA’B’が相似形ですから、

A’B’/PO=B’F/OF=(f-b)/f ……(2)式

の関係にあります。

ここで、AB=POであることに着目すると(1)式と(2)式が等しいことがわかります。

つまり、

b/a=(fーb)/f

の関係にあります。

この式を変形すると、

bf=afーab

となります。

両辺をfで割ると

b=aーab/f

より

-ab/f=b-a

両辺をabで割ると

-1/f=1/a-1/b

となります。

凹レンズの場合はf<0とし、また虚像はb<0とする約束がありますので、

1/f=1/a+1/b

のように表すことができます。

レンズの倍率mは虚像の高さと物体の高さの比ですからA’B‘/ABです。これは(1)式と同じですから、次の式が得られます。

m=A’B’/AB=b/a

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2020年9月18日 (金)

光の反射の実験で半円レンズが使われる理由

 光の反射の実験のときに半円レンズを使う場合があります。次の図のように、光線を半円レンズの曲面からレンズの中心に向けて入射し、入射角と反射角が等しいことを確認します。

1_20200918101401
半円レンズによる反射の実験

 なぜ反射の実験に半円レンズが使われることが多いのでしょうか。それは半円レンズの中心に向かう光線および半円レンズの中心で反射する光線が半円レンズの曲面で屈折しないからです。光線が曲面の接線に対して垂直になっているため、そのまま直進するのです。

 そのため任意の入射角で光を入れたときに、必ず入射角=反射角になることを容易に確認できます。四角いガラス板の場合は、光が入射する点と射出する点で屈折するため、上図のようにはなりません。

 光線を半円レンズの中心からずれた位置に向けて入射すると、光線は曲面で屈折します。ナリカチャンネルに半円レンズの反射の実験の様子の映像がありました。

D20-1626 光の屈折・反射実験セット RRL-3Y

反射の実験で半円レンズを使うと、屈折の実験にスムーズに移行できます。

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2020年7月21日 (火)

「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 光学とレンズの初心者向けの図解入門書です。フルカラーですので、光路図などがとてもわかりやすくなっています。光学とレンズのキホンのキから解説しているので、これからレンズのことを勉強したい人だけでなく、レンズの基本を教える人にとっても役に立つと思います。

Hyosi

桑嶋幹(著)

レンズを知ると光学はこんなにおもしろい!
昨今のデジタル一眼レフカメラのブームもあって、レンズのことをもっと知りたい人が増えています。本書は、高校生から一般の人を対象に、レンズのことを知る超入門書として、図解や写真をふんだんに使いながら、わかりやすく光の世界を解説します。

レンズを知ることは、光の性質を知ることにつながります。また、メガネや望遠鏡などの光学機器ばかりか、ヒトの眼の構造の理解も進みます。身近な例を題材に、徹底してやさしく、おもしろい話題を集めました。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2010/6/18)
ISBN-10: 4797357150
ISBN-13: 978-4797357158
発売日: 2010/6/18

読者サポートサイト

http://lens-softbank.goryoukaku.com/

目次

はじめに
登場キャラクターのご紹介

第 1 章 レンズのお話

001 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具
002 レンズの歴史
003 小さなものを拡大して見る顕微鏡の歴史
004 遠くのものを近くに見る望遠鏡の歴史
005 レンズでできた像を記録するカメラの歴史

COLUMN レンズの語源

第 2 章 光のふるまい

006 光の直進性と逆進性
007 光の反射の法則
008 鏡による光の反射
009 光の乱反射
010 透明な物体を通る光
011 光は物質の境界面で折れ曲がる 光の屈折
012 光はどのような道筋を選んで進むのか フェルマーの原理
013 スネルの法則①
014 スネルの法則②
015 空気のゆらぎが光を曲げる 陽炎と逃げ水のしくみ
016 空気のゆらぎが光を曲げる 蜃気楼と大気差のしくみ
017 プリズムでできる光の色の帯 光の分散
018 大空にかかる光の色の帯 虹ができるしくみ
019 虹の形はどうして円弧なのか
020 光は波か粒子か① 光の回折
021 光は波か粒子か② 光の干渉
022 光の回折と干渉でできる虹のしくみ
023 光は縦波か横波か
024 偏光メガネとブリュースターの法則
025 光は電磁波の仲間
026 光の速さはどれぐらいか
027 光のふるまいを考える幾何光学と波動光学

COLUMN 近接場光ー光の回折限界を超える光 66

第 3 章 レンズのしくみと働き

028 点光源からでた光はどのように進むか
029 影のでき方
030 ピンホールでできる像
031 ピンホールカメラでできる像
032 レンズの基本的なしくみ
033 凸レンズと凹レンズの基本的な働き
034 レンズの焦点と焦点距離
035 レンズの主点と主平面
036 薄肉球面レンズの焦点距離の求め方
037 レンズを通る光の進み方
038 凸レンズでできる実像
039 無限遠からやってくる光は凸レンズでどこに像を結ぶか
040 凸レンズでできる虚像
041 凸レンズを半分隠すと実像と虚像はどうなるか
042 物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか
043 凹レンズでできる虚像
044 レンズの写像公式と倍率① 凸レンズの実像の場合
045 レンズの写像公式と倍率② 凸レンズの虚像の場合
046 レンズの写像公式と倍率③ 凹レンズの虚像の場合
047 レンズの写像公式のまとめ
048 レンズの倍率を求めるもう1つの方法
049 レンズの作図の裏技① 光軸上の1点からでて凸レンズに入射する光
050 レンズの作図の裏技② 凸レンズに任意の傾きで入射する光
051 レンズの作図の裏技③ 凹レンズを通る光の場合
052 2枚のレンズを通る光
053 凹面鏡と凸面鏡のしくみ
054 凹面鏡と凸面鏡で反射する光
055 レンズの分類の仕方
056 表面屈折を利用したレンズ① 球面レンズ
057 表面屈折を利用したレンズ② 非球面レンズ
058 表面屈折を利用したレンズ③ シリンドリカルレンズ
059 表面屈折を利用したレンズ④ トロイダルレンズ
060 表面屈折を利用したレンズ⑤ フレネルレンズ
061 表面屈折を利用しないレンズ① グリンレンズ(屈折率分布レンズ)
062 表面屈折を利用しないレンズ② 回折レンズ

COLUMN メタマテリアルー負の屈折率をもつ物質

第 4 章 レンズの性能

063 レンズをつくる光学ガラスに求められる性質
064 光学ガラスの屈折率
065 光学ガラスのアッベ数
066 光学ガラスの分類
067 ガラス以外の光学材料① 天然や人工の結晶
068 ガラス以外の光学材料② 光学プラスチック
069 レンズができるまで① 球面レンズのつくり方
070 レンズができるまで② 非球面レンズのつくり方
071 収差とはなにか
072 球面収差
073 球面収差の補正
074 コマ収差と非点収差
075 像面湾曲と歪曲収差
076 軸上色収差と倍率色収差
077 像の大きさと明るさ
078 Fナンバーと実効Fナンバー
079 開口数NAとレンズの分解能
080 絞りと瞳
081 絞りの位置とテレセントリック
082 焦点深度と被写界深度

COLUMN ガラスはなぜ透明なのか

第 5 章 レンズを使った身近なもののしくみ

083 ヒトの眼の構造
084 正常な眼のしくみと働き
085 近視と遠視
086 老視と乱視
087 コンタクトレンズのしくみ
088 ルーペのしくみ
089 ルーペの倍率
090 光学顕微鏡のしくみ① 基本的なしくみ
091 光学顕微鏡のしくみ② 倍率と分解能
092 望遠鏡のしくみ① 基本的なしくみ
093 望遠鏡のしくみ② ケプラー式望遠鏡の光の進み方
094 望遠鏡のしくみ③ オランダ式(ガリレオ)望遠鏡の光の進み方
095 望遠鏡のしくみ④ 望遠鏡の倍率
096 望遠鏡のしくみ⑤ ピント合わせが必要なのはなぜ?
097 カメラのしくみ① Fナンバーとシャッタースピード
098 カメラのしくみ② 画角と焦点距離
099 カメラのしくみ③ デジタルカメラの画角と焦点距離
100 進化するレンズ 流体レンズのしくみ

COLUMN 像反転系 倒立像を正立像として見る

参考文献
索引

サンプルページ

第1章 第1節 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具

1001

第2章 第6節 光の直進性と逆進性

2006  

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2020年6月23日 (火)

Opus Majus of Roger Bacon ロジャー・ベーコンの大著作

ロジャー・ベーコンは13世紀に活躍したイギリスの哲学者でカトリックの司祭でした。ニュートンより400年も前の時代に、自然科学の理論の探求を行い、実験や観察を行いました。近代科学の先駆者と言えるでしょう。

Rogerbacon

今回紹介する書籍はロジャー・ベーコンの大著作(Opus Majus)の上下巻です(この本は英語版です)。

光学・レンズの歴史を勉強するうえで、ロジャー・ベーコンの功績は外せません。高価ではありますが、光学の歴史に興味のある人は手元にあっても良いかと思います。

Book Description

Volume one of a two volume set. (This description is for both volumes.) Contains much of Bacon's principle writings in mathematics, optics, experimental science, and philosophy. Bacon is regarded as the first modern scientist. This is one of his major works with 8 plates and 72 illustrations.

The Opus Majus of Roger Bacon (Cambridge Library Collection - Physical Sciences)

The Opus Majus of Roger Bacon, Volume 2, Part 1 & 2 (Cambridge Library Collection - Physical Sciences)

 

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2020年6月16日 (火)

レンチキュラーレンズで光学迷彩?(3) ものが消えて見える原理と仕組み

 レンチキュラーレンズで鉛筆が消えて見える

 次の写真の右上のように、縦向きに置いた鉛筆のうえに横向きに鉛筆を置きます。これを=の方向にしたレンチキュラーレンズの通して見ると、写真の左のように上に置いたはずの横向きの鉛筆が消えて、下に置いたはずの縦向きの鉛筆が見えます。このままの状態で、写真右下のようにレンチキュラーレンズを90度回転し、‖の方向にすると、縦向きの鉛筆が消えて、横向きの鉛筆が見えます。また、よく見てみると、写真左では、横向きの鉛筆が消えて見えなくなっている部分(縦置きの鉛筆の左右)、写真右下では、縦向きの鉛筆が消えて見えなくなっている部分(横向きの鉛筆の上下)が背景色とい同じオレンジ色になっています。

レンチキュラーレンズで鉛筆が消える
レンチキュラーレンズで鉛筆が消える

レンチキュラーレンズでものが消えて見える理由は、少年写真新聞社理科教育ニュースの2020年5月28日号に解説が掲載されていますが、ここでは、この現象についてもう少し詳しく解説します。さらに理解を深めることができればと思います。

シリンドリカルレンズの虚像

 レンチキュラーレンズによる鉛筆の見え方の変化の現象の基本的原理はシリンドリカルレンズでできる実像です。なぜなら、この現象は、レンチキュラーレンズを鉛筆に密着した状態で見ているときには起きないからです。ですから、上の写真のように、鉛筆が方向によって、見えたり消えたりするのは、レンチキュラーレンズでできる鉛筆の実像を見ていることになります。

 理解を深めるために、まずはひとつのシリンドリカルレンズで見える虚像を考えてみます。シリンドリカルレンズでできる虚像は、曲面がある方向に拡大されます。下の写真はグラフ用紙の真上にシリンドリカルレンズを=の方向に置いたものです。シリンドルカルレンズを=の方向に置いたとき、縦方向には曲面がありますが、横方向には曲面がありません。

レンチキュラーレンズの虚像
レンチキュラーレンズの虚像

 上の写真でレンズの中のグラフを見てみると、縦方向の線の太さや、縦線の間隔には変化がないことがわかります。これは曲面のない横方向で光が屈折しないからです。一方、横方向の線は太くなっており、横線の間隔も広くなっています。レンズの外側では横線は 4 行あるのに、レンズの中では拡大された 2行しか見えていなません。これは、曲面のある縦方向で光が屈折するからです。

 この虚像の現象からは、上の鉛筆が消える写真の現象を説明することはできません。虚像の場合、シリンドリカルレンズを置く方向にかかわらず、縦方向の鉛筆も横方向の鉛筆も消えて見えなくなることはありません。また、上述の通り、鉛筆が消えている部分が背景のオレンジ色になっていますが、虚像ではこのようなことは起こりません。

シリンドリカルレンズの実像

 次にシリンドリカルレンズをグラフ用紙から離し、実像を観察してみます。光が屈折しない方向の縦線の太さや間隔は、虚像のときと同様に変化がありません。一方、横線については、虚像とは異なり、縦方向が圧縮され、たくさんの行が見えています。シリンドリカルレンズでできる実像は光を屈折する方向に直線上に集まるようにできますので、これは理に適っています。

シリンドリカルレンズの実像
シリンドリカルレンズの実像

 また、=の方向に置いたシリンドリカルレンズでできる実像は縦方向が反転していて、横方向はそのままであることに留意しておきましょう。ですから、レンズの中の上側の列は、実際には下の列が見えていて、レンズの中の下側の列は実際の上の列が見えています。下記のようにグラフの上に赤いラインを引くと縦方向が反転していることがわかります。 

 リンドリカルレンズの実像(縦方向反転) 
シリンドリカルレンズの実像(縦方向反転)

さらに、レンズをグラフから離していくと、さらに縦方向が圧縮されて、横線が見えなくなります。ところで、縦方向が詰まっているということは、変化がないように見える縦線も実は縦方向に詰まっているということです。

シリンドリカルレンズの実像
シリンドリカルレンズの実像(横線が見えなくなる)

 次の図はシリンドリカルレンズでできる実像の仕組みを示したものです。シリンドリカルレンズを=の方向に配置すると、横長の物体ABの実像A'B'は、横方向はそのままですが、縦方向が縮んで細い線状となるため、視認しずらくなります。一方、縦長の物体CDの実像C'D'も縦方向に縮みますが、物体が十分に縦長なため、視認できます。レンズを90度回転すると、今度はC'D'が視認できなくなります。

シリンドリカルレンズの実像(模式図)

シリンドリカルレンズの実像(模式図)

 レンチキュラーレンズの各々のレンズの実像は反転していますが、微小な領域のため全体として見たときには反転して見えません。また、横置きの鉛筆の下側にある縦置き鉛筆が前面にあるように見えるのは、レンチキュラーレンズに物体を引き延ばして見せる効果があるからです。レンチキュラーレンズで鉛筆の端の方を観察すると、鉛筆が伸びて見えることがわかります。

 このことを確認するためパソコンで画像を作成して次のような確認をしてみました。

パソコンで次のような絵を描き(左)、これをレンチキュラーレンズを通してみてみました。画面にレンチキュラーレンズをぴったりとつけて、虚像を観察すると、レンチキュラーレンズの方向にかかわらず、元の絵からほとんど変化していません。

レンチキュラーレンズの虚像 元の絵(左) =方向(中) ‖方向(右)
レンチキュラーレンズの虚像 元の絵(左) =方向(中) ‖方向(右)

 レンチキュラーレンズを画面から離して、実像を観察すると、レンチュキュラーの置き方が=方向(写真左)か‖方向か(写真中)によって、元の絵とは見え方が変わります。最初の鉛筆の実験の写真と同じ結果となっています。

レンチキュラーレンズの実像 =方向(左) ‖方向(中) =方向で伸びる(右)
レンチキュラーレンズの実像 =方向(左) ‖方向(中) =方向で伸びる(右)

 写真左において、縦長の棒しか見えないのは、横長の棒がシリンドリカルレンズの屈折の働きで圧縮されてしまいぼやけて視認できなくなるからです。実際には縦長の棒も圧縮されていますが、圧縮される方向に縦長のため、横長の棒のようぼけたようには見えません。また、横長の棒の下側にあるはずの縦長の棒が前面に出ているように見えるのは、レンチキュラーレンズが物体を引き延ばして見せるからです。写真右を見ると、縦長の棒と黒い背景が下側に伸びて見えることがわかります。最初の鉛筆の写真で背面のオレンジ色が前面に出てきているのも同じ理由です。

 以上がレンチキュラーレンズの向きで、縦横の向きの鉛筆が消えて見える理由です。

さて、レンチキュラーレンズを通してものを見ると、確かにものが消えます。これはレンチキュラーレンズでできる実像が圧縮したり伸びたりしてぼやけているからです。確かに特殊なレンズを用いた面白い現象ですが、これだけですと光学迷彩というまでには少し無理がありそうです。

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2020年6月 6日 (土)

光学ガラス製のガラス玉

水晶玉 60mm 無色透明 クリア台座付き 宙玉撮影 クリスタルボール レンズボール 撮影 水晶球

ガラス玉があると、魚眼レンズの観察や虹ができる仕組み(水滴中の光の進み方)など、いろいろな実験ができます。以前は、大きなものを手軽な価格で入手するのは困難でしたが、最近になって中国製の安価なものを入手できるようになりました。直径60 mmで1,280円、80 mmで1,680円です。この値段だと複数個変える値段です。

Photo_20200605185001

 水晶玉とありますが、もちろん天然水晶であるはずはありません。Amazonのサイトには【K9クリスタル素材を採用、透明度が高いボール】とあります。K9というからには光学ガラスのクラウンガラスだと思いますが、K9というのは聞いたことがありません。調べてみたら、BK7と同じもののようです。BK7はホウケイ酸塩クラウン光学ガラスで、合成石英でもありません。ですので、水晶という表現は適切ではないのですが、実験道具としてはBK7で十分です。

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2020年5月 9日 (土)

レンチキュラーレンズで光学迷彩?(2) レンチキュラーレンズの仕組み

レンチキュラーレンズはどんなレンズ?

 レンチキュラーレンズは半透明の板状のプラスチック製レンズです。レンチキュラーレンズを触ってみると、片面はツルツルしていて、片面はザラザラしていることがわかります。良くみると、縦方向の縞模様が入っていることがわかります。

レンチキュラーレンズ

 レンチキュラーレンズの表面をルーペで拡大すると、次の図のように、細長いカマボコ状のものが並んでいることがわかります。このカマボコ状のものは、その一つ一つがシリンドリカルレンズになっています。

レンチキュラーレンズの表面を拡大してみると

シリンドリカルレンズとは

 次の写真のように、水を入れた牛乳びん越しに「あ」を見ると、びんが縦置きのときは左右が反転して横に伸びて見え、横置きのときは上下が反転して縦に伸びて見えますこのように方向で見え方が異なるのは、牛乳びんが円柱形をしているからです。

牛乳ビンのレンズ

 次の図のように、円柱の側面の一部を切り出した形のレンズをシリンドリカルレンズといいます。その形状からカマボコレンズと呼ばれることもあります。普通の球面レンズはどこを切り出しても断面に曲面がありますが、シリンドリカルレンズは曲面をもつ断面ABと、曲面をもたない断面CDがあります。

シリンドリカルレンズの構造

 そのため、シリンドリカルレンズには、レンズの働きをする向きと、働きをしない向きがあります。普通のレンズは次の図の左側のように光軸に平行な光を1点の焦点に集めますが、シリンドリカルレンズは光を直線上に集めます。

普通のレンズとシリンドリカルレンズの違い

 小さなシリンドリカルレンズをたくさん配列したレンズがレンチキュラーレンズです。レンチキュラーレンズを通してものを見たときに、『レンチキュラーレンズで光学迷彩?(1) 手品と物体の見え方』で紹介したような見え方になるのは、たくさん配列されているシリンドリカルレンズの働きによるものです。どうして、ものが消えたり、伸びて見えたりするかについては、次の機会に説明します。

レンチキュラーレンズという用語

 ところで、英語の『レンチキュラー(lenticular)』は「レンズの」「レンズ状の」「水晶体の」という意味です。ですので、レンチキュラーレズは「レンズのレンズ」「レンズ状のレンズ」で、「頭痛が痛い」「馬から落馬する」のような重言になっています。

 日本語特有の誤用かと思いましたが、英語版のWikipeidaではlenticular lenseとなっていますし、海外の多くのサイトでlenticula lensと表現されています。日本でもレンチキュラーレンズという表現が多いのですが、日本語版のWikipediaではレンチキュラーとなっています。なお、日本語版および英語版のWikipediaの解説は3Dやアニメーションを表示するためのレンチキュラーレンズが前提となった説明になっていて、レンチキュラーレンズそのものの説明になっていないようです。

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