光学

2020年9月29日 (火)

凹レンズの公式の導出-虚像

 凹レンズでできる虚像のレンズの写像公式も実像のときと同様に求めることができます。

凹レンズでできる虚像
凹レンズでできる虚像

 この図からレンズの公式を導くことができます。

 次の図で△OABと△OA’B’が相似形であることに注目します。

凹レンズの虚像の相似形
凹レンズの虚像の相似形

△OABと△OA’B’が相似形ですから、

A’B’/AB=B’O/BO=b/a ……(1)式

の関係にあります。

次に、下図で△FPOと△FA’B’が相似形であることに注目します。

凹レンズの虚像の相似形
凹レンズの虚像の相似形

△FPOと△FA’B’が相似形ですから、

A’B’/PO=B’F/OF=(f-b)/f ……(2)式

の関係にあります。

ここで、AB=POであることに着目すると(1)式と(2)式が等しいことがわかります。

つまり、

b/a=(fーb)/f

の関係にあります。

この式を変形すると、

bf=afーab

となります。

両辺をfで割ると

b=aーab/f

より

-ab/f=b-a

両辺をabで割ると

-1/f=1/a-1/b

となります。

凹レンズの場合はf<0とし、また虚像はb<0とする約束がありますので、

1/f=1/a+1/b

のように表すことができます。

レンズの倍率mは虚像の高さと物体の高さの比ですからA’B‘/ABです。これは(1)式と同じですから、次の式が得られます。

m=A’B’/AB=b/a

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2020年8月24日 (月)

シッカリ学べる! 「光学設計」の基礎知識

シッカリ学べる! 「光学設計」の基礎知識

 光学設計を解説した多くの本は、光学の基礎知識が十分あることが前提で、数式ばかりが目立ちます。この本も数式は多いのですが、必要となる前提知識を解説しながら展開しているので、たとえば掲載されている図が与えられた課題のようなものではなく、どうしてそのようになっているのかを考えることができます。光学設計を行う上での必要な力を身に着けることができる一冊です。

 光学設計が専門ではなくても、光学系についてわかりやすく解説しているので、理科などで光学の実験を行う人、カメラ・望遠鏡・顕微鏡などの光学機器に興味のある人にとっても役に立つと思います。

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内容

光学設計では、具体的には、光を都合よく収束、あるいは拡散させて画像を得たり、照明をしたりするために、レンズ、ミラーなどの光学部品の曲率、材質、大きさ、それらの配置を決める作業(計算)を行う。本書は、それを学ぶ、あるいは光学設計を始めようという技術者のために、豊富な図面と基本的な計算式により、丁寧に解説した入門書。

発売日 : 2017/5/27
単行本 : 192ページ
ISBN-10 : 4526077127
出版社 : 日刊工業新聞社 (2017/5/27)
ISBN-13 : 978-4526077128
言語: : 日本語

目次

はじめに

 近年、レンズやミラーなどで構成された光学部品は、カメラや顕微鏡といた旧来の光学製品の枠を超え、スマートフォン用カメラ、車載カメラ、プロジェクションマッピング、各種センサのキー部品として、さらに照明系などの様々な応用分野においてますますその重要性を高めていることは、皆様もご承知のところかと思います。画像を取り込み、高精細な画像を撮像素子上に形成したり、スクリーンに投影したりする場合には現状ではレンズなどの光学部品を用いるしか術がないと言ってよく、こうした光学部品を目的に合わせて設計する“光学設計技術”の必要性も自ずと高まってきています。

 レンズには他の製品に既に使われている完成品を新しい装置に流用する、ということが難しい側面があります。使用波長域、焦点距離、明るさ(Fナンバー)だけでなく、画像に取り込める被写体の広さ、そして結像分解能も所望のレベルを求めなければなりません。さらに光の入射角度、画像の歪み、そして物体からレンズまでの距離、像からレンズまでの距離、レンズの大きさなどの寸法について等々その他にも多くの制約があります。目的の光学的仕様を満たし、できるだけコンパクトで製造コストの安いものを、と考えますと、どこかで大きな妥協をしない限り、新規に光学設計を起こさざるを得なくなります。こうして、差別化された目的に合致した光学系を得るため、あるいはその際に、ある程度妥協するにいたしましても、光学設計技術の知識を必要とされる方が増えているのだと思います。

 またコンピュータの計算能力の向上、市販の光学設計プログラムの入手のしやすさが、今までよりも光学設計を敷居の低いものにしています。そこで、レンズを使う立場の方々も含めた、より多くの方に光学設計について、よりしっかりと知っていただきたい、と思い本書を著させていただきました。

 私は、この光学設計という仕事を始めて35年以上になりますが、この仕事が好きです。どこが好きかと申しますと、なかなか説明は難しいのですが自分の力が出せて多少なりとも人様のお役に立てているということが一番かもしれません。ですが、それだけですとただ自分に適している、というような当たり前な理由になってしいます。もう少しよく考えてみますと光学設計は、光学理論という物理学の範疇に含まれる理論をその拠り所としています(光がどう進む、曲がる、反射される、強め合う、弱め合う、などについて知るために)。ところが、実は数字のみを頼りにして光学系による現象を評価、改善していこうという際の抽象性(本書内では近軸理論、収差論、光路長の理論や最適化のところで顕著です)には、多分に数学的なところがあります。それと同時に当然、光学設計は実際の光学系を製造するためのものでなくてはなりません。従いましてどのように製造しようかという心づもりは設計中も非常に大切になります。

 このように数学と、実際のもの造りが直結して、その結果が確認できるという作業は意外に少ないのではないかと思います。数学というものは、数学的なもの、と言ったほうがよいかもしれませんが思考の成果であり、純粋に考え抜けるものです(抜けない場合も多いですが)。うまくいくとそこには快感が生じます。そしてその結果が工業分野での新しいキーパツとして、製造技術、物理、数学の結実として、実在し、結果を目の当たりにすることができます。結局これが楽しいのだと思います。

 ですから、私の捉え方ではどうしても数式と光学設計は離して考えにくいのです。いくら入門書とは言っても定性的な話ばかりで、数学的な解説のない光学設計の本は、良質な光学の入門書とはなり得ても光学設計の本としてはなかなか成立しにくいのではないかと思います。斯様な次第で、私の力不足もありますが、入門書ではありますが、本書には数式が予想外に多くなってしまいました。お許しいただければと思います(高校の数学レベルで十分理解可能ですが)。とりあえず結果のみ知り、通読後、ご参考にしていただいても結構です。いろいろな読み方でご利用いただいて、本書が少しでも皆様のお役に立てるようでしたら法外の喜びです。

 最後に、本書の出版の機会をお与えいただき、何かとご尽力いただきました日刊工業新聞社出版局、鈴木徹部長に、そしてお世話になりました関係者の方々に深く御礼申し上げます。

2017年2月

牛山善太

第1章 光学設計の概念

1-1 光学設計とは、そもそも光学系とは
1-2 光学系が実現すること
1-3 光学設計における結像評価の考え方
1-4 改めて結像とはどういうことか?
1-5 光学設計における光学理論

第2章 幾何光学と光線について

2-1 幾何光学理論の重要性
2-2 幾何光学で重要な法則、フェルマーの原理
2-3 幾何光学で重要な法則、スネルの屈折則
2-4 幾何光学において明るさを計算するための法則
2-5 光線の構造
2-6 光線追跡について
2-7 収差とは何か?

第3章 近軸理論

3-1 なぜ近軸理論を構造として採用できるのか
3-2 まず倍率を考えてみましょう
3-3 近軸光線追跡式
3-4 焦点距離
3-5 結像を表す重要な式
3-6 レンズメーカーの式による光学系の構造
3-7 実物体と実像、虚物体と虚像
3-8 主点・焦点距離はどこから測るのか?
3-9 主点・主平面の性質

第4章 光学系の明るさを決めるもの

4-1 開口絞り
4-2 視野絞りと主光線
4-3 Fナンバー
4-4 入射瞳と射出瞳
4-5 テレセントリック系とは

第5章 球面収差

5-1 プリズムで収差を考える
5-2 球面収差について
5-3 球面収差の計算
5-4 とりあえず球面収差がなくなる条件とは
5-5 球面収差のパワー分割による補正
5-6 球面収差の打ち消し合いによる補正
5-7 球面収差図
5-8 光線の高さによる球面収差の違い

第6章 軸外の収差、コマ収差

6-1 軸外結像におけるメリディオナル断面とサジタル断面
6-2 軸外の収差、コマ収差と非点収差
6-3 コマ収差
6-4 正弦法則について
6-5 画面中心近傍のコマ収差を除去する正弦条件について
6-6 正弦条件からわかること
6-7 幾何光学において重要な光路長差
6-8 アイコナールと結像の余弦則
6-9 結像の余弦則から正弦条件を導く、そして縦倍率とは
6-10 アプラナティックレンズとコマ収差
6-11 球面収差が残っている時の正弦条件

第7章 非点収差と像面湾曲

7-1 非点収差とは
7-2 スポットダイヤグラム
7-3 メリディオナル像点とサジタル像点位置の計算
7-4 アプラナティズムと非点収差
7-5 像面湾曲とペッツバール和
7-6 ペッツバール和の重要性
7-7 ペッツバール和を小さくできるレンズ1
7-8 ペッツバール和を小さくできるレンズ2
7-9 ペッツバールレンズ
7-10 ペッツバールレンズの利点

第8章 歪曲収差と射影関係

8-1 歪曲収差
8-2 射影関係

第9章 色収差

9-1 光の波長について
9-2 分散とアッベ数
9-3 2枚のレンズによる色消し
9-4 2次スペクトルの除去
9-5 倍率の色収差

第10章 総合的に収差を考える

10-1 完全対称型のレンズについて
10-2 対称系レンズの無限倍率使用1
10-3 対称系レンズの無限倍率使用2
10-4 ピントずれと焦点深度
10-5 横収差図の読み方1
10-6 横収差図の読み方2

第11章 周辺光量

11-1 周辺光量について
11-2 一般的な周辺光量の計算1
11-3 一般的な周辺光量の計算2
11-4 周辺が暗くならない光学系、輝度不変則
11-5 周辺が暗くならない光学系、瞳収差

第12章 光学系の評価と最適化

12-1 光学系の性能評価
12-2 回折による解像限界について
12-3 MTF
12-4 MTFとフーリエ変換について
12-5 MTF図の読み方
12-6 コンピュータによる最適化
12-7 最適化における対応力

参考文献

 

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2020年8月19日 (水)

分光分析の幕開け(9)-天体からのメッセージ

天体からの光のメッセージ

 太陽光のスペクトルにDの暗線があるということは、太陽の表面に多数のナトリウム原子が存在することを意味します。このことは、他の暗線を調べると、太陽にどのような原子が存在するのかがわかることも意味します。

 1868年にインドで観測された皆既日食で、太陽の縁から立ち昇るプロミネンスの光のスペクトルに新たな輝線が確認されました。この輝線は、新しい原子によるものと考えられ、その原子はヘリウムと名付けられました。地球上でヘリウムが発見されたのは、それから27年後の1895年のことです。

 現在、太陽光には約25,000本の暗線が確認されています。暗線は発見者に因みフラウンホーファー線と呼ばれています。

記号 元素 波長(nm) 記号 元素 波長(nm)
A O2 759.370 E2 Fe 527.039
B O2 686.719 F 486.134
C 656.281 G Fe 430.790
D1 Na 589.594 G Ca 430.774
D2 Na 588.997 H Ca+ 396.847
D3 Na 587.565 K Ca+ 392.368

主なフラウンフォファー線

 太陽と同様に宇宙にたくさん存在する恒星からやってくる光のスペクトルを調べることによって、その天体にどのような原子が存在するのかを知ることができます。

宇宙の膨張もわかる 

 地球から遠ざかる天体の光は、ドップラー効果により、波長が長くなります。これを赤方偏移といいますが、どれぐらい波長が長くなったかを調べるには、基準の光が必要となります。この基準にフラウンホーファー線が使われます。

 銀河のスペクトルの赤方偏移から、この宇宙が膨張していることがわかったのです。

 このように遙か彼方の天体からやってくる光には、天体からの原子のメッセージが込められているのです。

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2020年8月13日 (木)

光と物質のふしぎな理論-私の量子電磁力学

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)

リチャード・P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 釜江 常好 (翻訳), 大貫 昌子 (翻訳)

 この本はファンマン博士の講義の内容をまとめたものです。光を粒子として考え、光と物質の相互作用などをわかりやすく説明しています(もともとの量電磁力学がそれほど簡単ではありませんが、量子電磁力学の本の中ではかなり優しい内容です。

 私たちは、光は直進するという基本的な性質をもっていることや、光が反射するとき入射角と反射角が等しくなるということを知っていますが、この本を読むと、もはやその法則は絶対的なものではなく、近似的なものであるということがわかります。 光がどのように伝わっていくのかなどについても説明されています。

 後半では光子や電子の運動や相互作用などについてファインマンダイアグラムを用いて説明しています。

自分がもっている本はハードカバーで表紙は下記の左側ですが、現在再販されているものは右側のような表紙になっています。

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内容(「BOOK」データベースより)

「ねえ、リチャード、あなたは何を研究しているの?」友達の奥さんがそう尋ねてきた。はてさて、どうする、ファインマンさん。物理が全然わからない人に、自分の研究を理解してもらえるか。それも、超難解で鳴る量子電磁力学を。光と電子が綾なす不思議な世界へ誘う好著。物理学者リチャード・ファインマン、面目躍如の語りが冴える。

単行本: 215ページ
出版社: 岩波書店 (1987/06)
ISBN-10: 4000058665
ISBN-13: 978-4000058667
発売日: 1987/06
商品の寸法: 18 x 13 x 1.6 cm

目次

  1. はじめに
  2. 光の粒子
  3. 電子とその相互作用
  4. 未解決の部分

 

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2020年8月 7日 (金)

分光分析の幕開け(8)-フラウンフォーファー線(暗線)の正体を突き止める

ブンゼンとキルヒホフ

 1859 年、ドイツの化学者ローベルト・ブンゼンと物理学者グスタフ・キルヒホフはスペクトル測定の研究を進めていました。ブンゼンが発明したブンゼン・バーナーはほぼ無色の炎を出すことができました。ブンゼンとキルヒホフは、この炎に物質を入れ、物質から出る光のスペクトルを調べる炎光分光分析という分析法を開発しました。1860年に分光学的手法によりセシウムとルビジウムを発見しています。

キルヒホフとブンゼン
キルヒホフ(左)とブンゼン(右)

太陽光のスペクトルの解析

 ブンゼンとキルヒホフは炎光分光分析法で太陽光のスペクトルの分析を行い、フラウンフォーファー線のD線について調査しました。2人は太陽光のスペクトルに D の暗線が生ずるのは、太陽光がナトリウム原子が出す光を含まないからだと考えました。そして、太陽光とナトリウム原子の光を混合すると、ナトリウム原子のDの輝線が太陽光のDの暗線を補い、全体としてはDの暗線が消えると考えました。ところが、実験の結果は、Dの暗線が消えるどころか、予想に反して、より暗くなってしまったのです。

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暗線の正体を突き止める

 ブンゼンとキルヒホフは、暗線が生じないオイルランプの光とナトリウム原子の光で同様の実験をおこないました。すると、D の暗線をもつスペクトルが得られたのです。2人はこの結果について、「オイルランプの炎の中にはナトリウム原子がたくさん存在する。そこに、
ナトリウム原子が出す光がやってくると、オイルランプ中のナトリウム原子がその光を吸収する。その結果、Dの位置の光が欠けて暗線が生じる」と結論づけました。

 つまり、ブンゼンとキルヒホフは原子自らが発光する光と同じ光を吸収することを発見したのです。

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2020年7月28日 (火)

分光分析の幕開け(7)-フラウンホーファー線の発見

プリズムの虹に隠された秘密

 ニュートンがプリズム分光実験から約150年後の1814年、ドイツの光学機器の技術者ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーは高精度のプリズムを搭載した望遠鏡で太陽光のスペクトルを観察していたところ、綺麗な虹色のスペクトルの中に、暗線が飛び飛びに存在していることに気がつきました。

ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー
ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー

 スペクトルの中に暗線があるということは、その部分の光が欠けていることを意味しています。

太陽光の可視スペクトルの暗線
太陽光の可視スペクトルの暗線

 当初、フラウンホーファーは、この暗線は光学ガラスの問題で生じたのではないかと考え、別の光学ガラスを使って観察を繰り返しました。しかし、何度繰り返しても暗線が消えることはなかったのです。この暗線はフラウンホーファー線と呼ばれます。

 フラウンホーファー線は実際にはイギリスの化学者・物理学者のウイリアム・ウォラストンによって1802年に発見されていますが、暗線の探究を行ったフランホファーの名が付けられました。

暗線の正体を探る

 フラウンホーファーは太陽光のスペクトルの暗線の数と位置を丁寧に詳しく調べあげ、およそ600本の暗線があることを確認しました。続いて、月や金星の光のスペクトルについても調べてみました。すると、それらのスペクトルにも暗線が見つかったのです。そして、その暗線の数と位置を調べてみたところ、太陽光のスペクトルの暗線と一致していました。

 フラウンホーファーは、この結果について、月や金星は太陽光を反射しているのだから、太陽と同じ結果になっても不思議ではないと考えました。そこで、フラウンホーファーはいくつかの恒星の光のスペクトルを調べてみました。すると、恒星の光のスペクトルの暗線の数や位置が太陽光のスペクトルの暗線とは異なることを発見したのです。

 フラウンホーファーはスペクトルの暗線を調べると、太陽や恒星について詳しく知ることができると考え、太陽光のスペクトルの波長の長い赤色の光の方から、主要な暗線にA、B、C…と記号をつけました。

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可視スペクトルとフラウンホーファー線の記号

 フラウンホーファーは炎の中に食塩を入れ、ナトリウム原子の炎色反応で生じる黄色い光のスペクトルを調べてみました。すると、黄色い光の輝線が暗線Dと同じ位置に現れました。

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ナトリウムの輝線スペクトル

 

ナトリウム原子の輝線は、分光分析の幕開け(1)-炎色反応でナトリウムの輝線を発見で説明したように、1752年のトーマス・メルビルの炎色反応の実験によって発見されています。メルビルはこの輝線がナトリウム原子に由来するものであることには気がついていませんでしたが、フラウンホーファーの暗線Dはメルビルが発見した輝線と同じものでした。

 フラウンホーファーは暗線Dとナトリウム原子の輝線に何らかの関係があると考え、この結果を報告しました。しかし、当時の科学者たちから受け入れられず、この発見は忘れ去られることになりました。

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2020年7月21日 (火)

「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 光学とレンズの初心者向けの図解入門書です。フルカラーですので、光路図などがとてもわかりやすくなっています。光学とレンズのキホンのキから解説しているので、これからレンズのことを勉強したい人だけでなく、レンズの基本を教える人にとっても役に立つと思います。

Hyosi

桑嶋幹(著)

レンズを知ると光学はこんなにおもしろい!
昨今のデジタル一眼レフカメラのブームもあって、レンズのことをもっと知りたい人が増えています。本書は、高校生から一般の人を対象に、レンズのことを知る超入門書として、図解や写真をふんだんに使いながら、わかりやすく光の世界を解説します。

レンズを知ることは、光の性質を知ることにつながります。また、メガネや望遠鏡などの光学機器ばかりか、ヒトの眼の構造の理解も進みます。身近な例を題材に、徹底してやさしく、おもしろい話題を集めました。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2010/6/18)
ISBN-10: 4797357150
ISBN-13: 978-4797357158
発売日: 2010/6/18

読者サポートサイト

http://lens-softbank.goryoukaku.com/

目次

はじめに
登場キャラクターのご紹介

第 1 章 レンズのお話

001 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具
002 レンズの歴史
003 小さなものを拡大して見る顕微鏡の歴史
004 遠くのものを近くに見る望遠鏡の歴史
005 レンズでできた像を記録するカメラの歴史

COLUMN レンズの語源

第 2 章 光のふるまい

006 光の直進性と逆進性
007 光の反射の法則
008 鏡による光の反射
009 光の乱反射
010 透明な物体を通る光
011 光は物質の境界面で折れ曲がる 光の屈折
012 光はどのような道筋を選んで進むのか フェルマーの原理
013 スネルの法則①
014 スネルの法則②
015 空気のゆらぎが光を曲げる 陽炎と逃げ水のしくみ
016 空気のゆらぎが光を曲げる 蜃気楼と大気差のしくみ
017 プリズムでできる光の色の帯 光の分散
018 大空にかかる光の色の帯 虹ができるしくみ
019 虹の形はどうして円弧なのか
020 光は波か粒子か① 光の回折
021 光は波か粒子か② 光の干渉
022 光の回折と干渉でできる虹のしくみ
023 光は縦波か横波か
024 偏光メガネとブリュースターの法則
025 光は電磁波の仲間
026 光の速さはどれぐらいか
027 光のふるまいを考える幾何光学と波動光学

COLUMN 近接場光ー光の回折限界を超える光 66

第 3 章 レンズのしくみと働き

028 点光源からでた光はどのように進むか
029 影のでき方
030 ピンホールでできる像
031 ピンホールカメラでできる像
032 レンズの基本的なしくみ
033 凸レンズと凹レンズの基本的な働き
034 レンズの焦点と焦点距離
035 レンズの主点と主平面
036 薄肉球面レンズの焦点距離の求め方
037 レンズを通る光の進み方
038 凸レンズでできる実像
039 無限遠からやってくる光は凸レンズでどこに像を結ぶか
040 凸レンズでできる虚像
041 凸レンズを半分隠すと実像と虚像はどうなるか
042 物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか
043 凹レンズでできる虚像
044 レンズの写像公式と倍率① 凸レンズの実像の場合
045 レンズの写像公式と倍率② 凸レンズの虚像の場合
046 レンズの写像公式と倍率③ 凹レンズの虚像の場合
047 レンズの写像公式のまとめ
048 レンズの倍率を求めるもう1つの方法
049 レンズの作図の裏技① 光軸上の1点からでて凸レンズに入射する光
050 レンズの作図の裏技② 凸レンズに任意の傾きで入射する光
051 レンズの作図の裏技③ 凹レンズを通る光の場合
052 2枚のレンズを通る光
053 凹面鏡と凸面鏡のしくみ
054 凹面鏡と凸面鏡で反射する光
055 レンズの分類の仕方
056 表面屈折を利用したレンズ① 球面レンズ
057 表面屈折を利用したレンズ② 非球面レンズ
058 表面屈折を利用したレンズ③ シリンドリカルレンズ
059 表面屈折を利用したレンズ④ トロイダルレンズ
060 表面屈折を利用したレンズ⑤ フレネルレンズ
061 表面屈折を利用しないレンズ① グリンレンズ(屈折率分布レンズ)
062 表面屈折を利用しないレンズ② 回折レンズ

COLUMN メタマテリアルー負の屈折率をもつ物質

第 4 章 レンズの性能

063 レンズをつくる光学ガラスに求められる性質
064 光学ガラスの屈折率
065 光学ガラスのアッベ数
066 光学ガラスの分類
067 ガラス以外の光学材料① 天然や人工の結晶
068 ガラス以外の光学材料② 光学プラスチック
069 レンズができるまで① 球面レンズのつくり方
070 レンズができるまで② 非球面レンズのつくり方
071 収差とはなにか
072 球面収差
073 球面収差の補正
074 コマ収差と非点収差
075 像面湾曲と歪曲収差
076 軸上色収差と倍率色収差
077 像の大きさと明るさ
078 Fナンバーと実効Fナンバー
079 開口数NAとレンズの分解能
080 絞りと瞳
081 絞りの位置とテレセントリック
082 焦点深度と被写界深度

COLUMN ガラスはなぜ透明なのか

第 5 章 レンズを使った身近なもののしくみ

083 ヒトの眼の構造
084 正常な眼のしくみと働き
085 近視と遠視
086 老視と乱視
087 コンタクトレンズのしくみ
088 ルーペのしくみ
089 ルーペの倍率
090 光学顕微鏡のしくみ① 基本的なしくみ
091 光学顕微鏡のしくみ② 倍率と分解能
092 望遠鏡のしくみ① 基本的なしくみ
093 望遠鏡のしくみ② ケプラー式望遠鏡の光の進み方
094 望遠鏡のしくみ③ オランダ式(ガリレオ)望遠鏡の光の進み方
095 望遠鏡のしくみ④ 望遠鏡の倍率
096 望遠鏡のしくみ⑤ ピント合わせが必要なのはなぜ?
097 カメラのしくみ① Fナンバーとシャッタースピード
098 カメラのしくみ② 画角と焦点距離
099 カメラのしくみ③ デジタルカメラの画角と焦点距離
100 進化するレンズ 流体レンズのしくみ

COLUMN 像反転系 倒立像を正立像として見る

参考文献
索引

サンプルページ

第1章 第1節 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具

1001

第2章 第6節 光の直進性と逆進性

2006  

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2020年7月20日 (月)

分光分析の幕開け(6)-赤外線も紫外線も光の仲間

 1800年のハーシェルによる熱線(赤外線)の発見、1801年のリッター による化学線(紫外線)の発見により、太陽光のスペクトルの両側に目に見えない放射線が存在することが判明し、熱線と化学線も光の仲間と考えられましたが、しばらくの間は光とは別なものと考えられました。
 
 1814年、電磁気学や偏光の研究を進めていたフランスの物理学者ジャン=バティスト・ビオが、熱線・可視光線・化学線はすべて同じ種類の放射線であることを提言しましたが、この3種類の放射線が常に一緒に発生すると考えていたスコットランドの科学者ディヴィッド・ブリュースターによって否定されました。

ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター
ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター

 イタリアの物理学者マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリは1832年頃から熱線の性質の研究を行い、熱線が光と同様に屈折・反射・偏光することを示しました。マセドニオ・メローニは著書『La thermocrose au la coloration calorifique(Vol. I., Naples, 1850)』の執筆を進めていましたが、執筆途上に感染症コレラにかかり亡くなりました。

マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ
マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ

 フランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルは光を物質に当てると電気が発生する光起電力効果の研究を進めていました。ベクレルは電気が熱によって発生したものではないと考え、1839年にカラーフィルターを使用してさまざまな波長の光で光起電力効果を確かめました。ベクレルは太陽光のスペクトルについても研究を進め、太陽電池の基礎的な研究を行いました。なお、参考までに放射線の発見者アンリ・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの息子、電気化学や発光現象を研究したアントワーヌ・セザール・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの父です。

アレクサンドル・エドモン・ベクレル
アレクサンドル・エドモン・ベクレル

 このようなスペクトルの研究をもとに、熱線や化学線が光の仲間と認められ、それぞれ赤外線、紫外線と名付けらたのです。

 ところで、赤外線と紫外線は英語でそれぞれinfrared、ultravioletです。infra-は「下に」、ultra-は「超える」を意味する接頭語で直訳すると、赤外線と紫外線にはなりません。infraredは光のエネルギーが赤色光より下という意味で、ultravioletは光のエネルギーが紫色光より上とという意味と考えておくと良いでしょう。

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2020年6月23日 (火)

Opus Majus of Roger Bacon ロジャー・ベーコンの大著作

ロジャー・ベーコンは13世紀に活躍したイギリスの哲学者でカトリックの司祭でした。ニュートンより400年も前の時代に、自然科学の理論の探求を行い、実験や観察を行いました。近代科学の先駆者と言えるでしょう。

Rogerbacon

今回紹介する書籍はロジャー・ベーコンの大著作(Opus Majus)の上下巻です(この本は英語版です)。

光学・レンズの歴史を勉強するうえで、ロジャー・ベーコンの功績は外せません。高価ではありますが、光学の歴史に興味のある人は手元にあっても良いかと思います。

Book Description

Volume one of a two volume set. (This description is for both volumes.) Contains much of Bacon's principle writings in mathematics, optics, experimental science, and philosophy. Bacon is regarded as the first modern scientist. This is one of his major works with 8 plates and 72 illustrations.

The Opus Majus of Roger Bacon (Cambridge Library Collection - Physical Sciences)

The Opus Majus of Roger Bacon, Volume 2, Part 1 & 2 (Cambridge Library Collection - Physical Sciences)

 

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2020年6月10日 (水)

分光分析の幕開け(5)-可視光線の波長範囲の測定

ニュートンのプリズム実験で見逃されたもの

 ニュートンが1666年に太陽光をプリズムで分散してスペクトルの観察をした実験の様子は、ニュートンが1704に出版した『光学』に詳しい記述があります。

▶︎ニュートンのプリズム分光実験が1666年である根拠
https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/1666-2081.html
▶︎光学の原著 Opticks by Sir Isaac Newton / Project Gutenberg
https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/opticks-by-sir.html

 なにしろ、ニュートンは光を波と考ようとはしませんでしたので、可視光線の連続スペクトルの各部の色を屈折角と関係づけて説明しています。

可視光線のスペクトル

 ですから、ニュートンは光の色の説明で波長のことは言及していません。その後の他の科学者達によるスペクトルの実験でも、しばらくの間は光の色と波長が関係づけられることはありませんでした。赤外線を発見したハーシェルも紫外線を発見したリッター も光と波長の関係については言及していません。詳細な実験がいろいろ行われ、いろいろなことが解き明かされたにも関わらず、光の色と波長の関係だけは取り残されていたのです。

光は波であると結論づけたのは誰か?

 ニュートンの時代でも、クリスティアーン・ホイヘンスやロバート・フックなど光が波であろうと考えていた科学者はいましたが、光の波長を求めるところまでは至っていません。光の波長はあまりにも小さいため、当時の技術で光の波長を測定するのは困難だったのです。

 光が波であることを解き明かしたのはトマス ・ヤングです。ヤングは1790 年代には医学を学び、視覚、色覚、聴覚、音声について研究を行いました。それらの研究をきっかけに、やがて光学に興味をもつようになり、光の正体が何かを考えるようになりました。

Thomasyoung
トマス ・ヤング

 ヤングは 1773 年に生まれで、ニュートンは 1727 年、ホイヘンスは 1695 年、フックは1705年に没しています。ですから、ヤングは光の粒子説と波動説の争いの渦中にあったわけではありません。ヤングが生まれた頃には、この争いは光の粒子説の勝利で決着がついていました。その後も、ニュートンが提唱した説が覆されることはありませんでした。

 しかし、ヤングは音は空気中を伝わる波によって生じるのだから、光も波だろうという考えに至り、光が波であることを突き止める研究を進めました。そして、1800 年に「音と光についての実験および理論的研究に関する議論」という論文を発表し、世界で初めて波の干渉の原理につい
て説明しました。この論文は、音と光の比較から、光の振る舞いについて説明したものです。しかし、干渉の現象は音の波での説明であり、光
の干渉にまでは十分に拡張されていませんでした。

 ヤングはその後も光の干渉の実験を勧め、有名なヤングの実験(二重スリットの実験)で光の波を干渉させ、光が波であることを証明しました。この実験はヤングが1807年に発表した 「自然哲学講義」に掲載されていますが、この話は長くなるので、ここでは取りあげません。

ニュートンのスペクトルを波長と関係ずける

 ヤングは1801年に単純な回折格子を用いて、格子の溝の間隔から波長を計算しました。ヤングが用いた回折格子は、1インチあたり500本の溝が刻まれたガラス板でした。この回折格子に45度で太陽光を入射させると、光の干渉により、4つの明るい序列が現れました。回折角の正弦が整数1:2:3:4に従って増加していることから、ヤングは太陽光の波長を求めることができました。ヤングの計算では、可視光線の範囲は424 nmから675 nmの光となります。このことはヤングの1802年にまとめた下記の論文に掲載されています。

Young, T., "The Bakerian Lecture: On the Theory of Light and Colours", Phil. Trans. R. Soc. Lond., 92, 12-48 (1802). 
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstl.1802.0004
Veiw PDFをクリックすると、PDFを参照することができます。

上記の論文の39ページの下表に結果がまとめられています。

Theoryoflightandcolours

この表の波長の単位はインチになっています。

赤側の端と紫側の端をメートルに換算してみましょう。

Red Extremaは、0.0000266 inchとあります。1inchは2.54 cmですから、0.0254 mになります。

0.000026 inch × 0.0254 m/inch = 0.00000067564 m

これに109をかけてnmにすると、675.64 nmになります。

同様に、

Violet Extremaは、0.0000167 inchiですから、424.18 nmになります。

実は小数点の下三桁の数字に2.54をかけると、ちょうどnm単位になります。

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