書籍・雑誌

2021年7月30日 (金)

見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか

見る―眼の誕生はわたしたちをどう変えたか

サイモン・イングス (著) 吉田 利子 (翻訳)

 2009年に出版された本ですが、眼に関する様々なことが解説された本です。いろいろな動物の眼の進化や仕組みなどを解説しています。また、ヒトの視覚の研究の歴史についても触れられており、過去の科学者の取り組みなどを紹介しています。眼について光学と生物学だけではなく、幅広い分野の話を取り上げています。

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単行本: 450ページ
出版社: 早川書房 (2009/1/23)
ISBN-10: 4152089997
ISBN-13: 978-4152089991
発売日: 2009/1/23
商品の寸法: 18.6 x 14.2 x 3.4 cm

【内容】

 光を効率よくとらえようとしてさまざまな生き物が眼を発達させ、見るという能力を獲得した。これまで見つかった最大の眼は、巨大なダイオウイカのもので、目玉の直径が40センチあったという。イカの眼とヒトの眼はまったく異なる進化をたどってきたものだが、それでも両者はじつによく似た構造をしているのだ。

 では、わたしたちはどうやってものを見ているのだろう。多くの哲学者や科学者がその謎に取り組んできた。プラトンは、眼がある種の光線を放射するおかげでものが見えるのだと唱えた。19世紀、死者の網膜には像が残ると言われ、殺人事件の捜査で眼球の写真が撮られた。色覚障害のあった科学者ドルトンは、自分の眼球の色が異なるのだと考え、死後に自分の眼を解剖させている。

 眼には想像以上の物語がある。眼の進化と意識、色覚や錯覚に隠された秘密、視覚の未来まで、眼と「見ること」のすべてを探る

 

・触れて触る眼―ホシバナモグラの鼻、ハダカデバネズミ
・カンブリア紀の大爆発と眼の誕生
・三葉虫のひさしを持った眼、あいだをおいてはめ込まれた眼
・ショウジョウバエの脚に作られた眼
・第三の眼、松果体
・「視光線」を放射している眼?
・色と言葉
・ステレオグラム
・殺人の原因にもなった視覚の化学
・虹が10色に見える4色型色覚をもつ女性
 その他

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2021年2月12日 (金)

絵とき「光学」基礎のきそ (Electronics Series)

絵とき「光学」基礎のきそ (Electronics Series)

齋藤 晴司 (著)

 これも中古本しか入手できなくなりました。下記の目次を見るとわかりますが、オーソドックスな光学の解説書に仕上がっており、記述もわかりやすいです。定価は2,310円と少々高めでしたが、現在は手頃な価格で購入できます。図もしっかりしていますがカラーではないのがちょっと残念です

内容

光学に対するイメージをつかみ、使いこなせることを目標にした光学の入門書。極力数式を使わずに光の基本的な性質から結像や干渉、光学製品のしくみまで光学の基礎を豊富な図とともにやさしく解説する。

単行本: 224ページ(A5)
出版社: 日刊工業新聞社 (2011/11)
ISBN-10: 4526067849
ISBN-13: 978-4526067846
発売日: 2011/11

目次

はじめに

第1章 光とは
1-1 光の直線性
1-2 光の重なり
1-3 宇宙からの光
1-4 光電効果
1-5 光の強さとエネルギーの関係
1-6 光は波か粒子かの問題
1-7 光の速度について
1-8 レーザの光について

第2章 光の基本的な性質(波としての光・波動光学)
2-1 波としての振舞い
2-2 光の伝播
2-3 光の要素(波長、振幅、振動数、周期)
2-4 物質中の光の速度
2-5 基本となる光の表し方
2-6 波の式における波長と周期
2-7 光の回り込み
2-8 光の進み方
2-9 光波としての反射と屈折
2-10 光の位相について
2-11 光の分光
2-12 光の集合度合い

第3章 反射と屈折(粒子としての光・幾何光学)
3-1 光線と光束
3-2 反射と屈折による光路
3-3 水中での物体の見え方
3-4 全反射
3-5 ファイバーの原理
3-6 屈折率
3-7 プリズムによる反射と屈折
3-8 球面による屈折と反射

第4章 光学系による結像(レンズによる結像)
4-1 レンズの性質
4-2 レンズによる結像作用
4-3 像の大きさと明るさ
4-4 像の形態と深度
4-5 レンズの組み合わせ
4-6 レンズの収差
4-7 像の評価

第5章 光の干渉
5-1 強め合う光と弱め合う光
5-2 干渉縞による計測
5-3 薄膜コートについて
5-4 シャボン玉
5-5 CD、DVDのデータの読み取り(光の干渉の利用法)

第6章 光の回折
6-1 回折による光
6-2 開口形状による回折
6-3 分解能のいろいろ
6-4 回折格子について(光の回折の利用法)

第7章 光の偏光
7-1 光の振動方向
7-2 偏光板の特性
7-3 反射による偏光
7-4 複屈折物質の偏光
7-5 波長による位相のズレ
7-6 リターデーションの違いによる分光特性と色
7-7 液晶ディスプレーの構造(光の偏光の利用法)

第8章 色と明るさ
8-1 眼の構造
8-2 光の色
8-3 色度座標
8-4 色温度
8-5 明るさ

第9章 光学製品
9-1 ルーペの光学系
9-2 顕微鏡の光学系
9-3 望遠鏡の光学系
9-4 カメラの光学系

第10章 自然界の光
10-1 空が青い理由
10-2 朝夕の太陽光のスペクトル
10-3 虹の色について
10-4 ステンドグラスの色の鮮やかさ
10-5 蜃気楼について
10-6 グリーンフラッシュ

参考文献
索 引

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2020年10月22日 (木)

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学(鶴田 匡夫)

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学―

鶴田 匡夫 (著)

 本ブログでも紹介した「光とレンズ」の著者の鶴田匡夫さんが雑誌『O plus E』(1979年創刊)で連載している記事をまとめた本です。『光の鉛筆』は十一巻の書籍にまとめられています。この本は第一巻です。雑誌に連載された記事ですので、それぞれの記事が独立した読み物になっています。身近な事柄を題材に光学を解説しています。「なるほど、そうだったのか」と改めて理解が深まる本です。

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学(鶴田 匡夫)

概要

― 光技術者のための応用光学 ―

だれでも知りたいと思うこと、考えてみたくなること。そんな話題がいっぱいです。「海の色」「洗い髪」といった身近な話題から、アッベやショットの光学歴史物語、収差補正の数学、光学系への熱影響……などなど、あなたの知的好奇心をきっと満足させます。本書の魅力は、徹底した資料蒐集、原著論文の深い読込みと咀嚼、そして考察、といった執筆の姿勢によって生み出されています。光を原点から学びたい方、光学設計でお困りの方、光学を教える立場にある方、特に通り一遍の解説では満足できない方、光に携わるすべての方におすすめします。

目次

  1. シャッター
  2. 光学像の明るさ
  3. 絞 り
  4. 光の反射
  5. フレネルの回折
  6. 立体感と立体鏡
  7. 屈折の法則
  8. フレアとゴースト
  9. 光学における相反定理
  10. 魔 鏡
  11. 光学ガラス
  12. 回折格子
  13. レンズの結像性能 1
  14. レンズの結像性能 2
  15. 光のブーメラン
  16. 顕微鏡結像と位相差法
  17. 干渉法と干渉顕微鏡
  18. 天体干渉計
  19. めがね
  20. モアレ
  21. フィルター
  22. 屈折率の物理
  23. コロナ
  24. 偏光顕微鏡とレクティファイア
  25. 分散と全反射
  26. 空の明るさと星の明るさ
  27. 光速度の測定―天文学の時代―
  28. 光速度の測定(続)―光の点滅,偏向,変調―
  29. エバネッセント波
  30. サイドルッキングレーダー
  31. 自然の干渉色
  32. エリプソメトリー
  33. レンズの伝達関数
  34. 散乱光による干渉
  35. ベアリングボール
  36. スペックル
  37. 光学密着
  38. 目と偏光
  39. 熱放射
  40. 積分球
  41. 赤外放射と検出器
  42. モノクロメーター
  43. 視野レンズとリレーコンデンサー
  44. シュミットカメラ
  45. 入射瞳と射出瞳
  46. バビネの原理
  47. 文献

 

発売日 : 1984/12/25
単行本 : 483ページ
ISBN-10 : 491585101X
ISBN-13 : 978-4915851018
出版社 : アドコム・メディア (1984/12/25)

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学―

 

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学(鶴田 匡夫)

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2020年9月27日 (日)

光のスペクトルと原子

光のスペクトルと原子 (サイエンスシアターシリーズ 電磁波をさぐる編)

板倉 聖宣 (著), 湯沢 光男 (著)

題名から分かるように、光のスペクトルについて解説した本です。簡易分光器の型紙とホログラムシート(透過型回折格子)が付属していて、分光したスペクトルを観察を行うことができます。カラー写真で様々なスペクトルが掲載されています。

電磁波の歴史年表が巻末にあり、これも役に立つと思います。

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単行本: 138ページ
出版社: 仮説社 (2008/12)
ISBN-10: 4773502096
ISBN-13: 978-4773502091
発売日: 2008/12
商品の寸法: 20 x 14.8 x 1.4 cm

目次

第1幕 色とスペクトル
プリズムとホログラムシート/〈回折格子板〉を作る/簡易分光器/簡易分光器の組み立て方/分光器の話/太陽からくる光の色(スペクトル)は/白熱電球の光も太陽と同じような色に分かれるか/ニュートンの分光学の研究/虹はなぜ見えるか/白熱電球に赤いセロハン紙をかけて分光器で見たら/赤と緑の光を重ね合わせたら/光の三原色と目/黄色い紙が黄色に見えるのはどうしてか/緑色の紙に赤い光だけを当てたら何色に見えるか/〔補足〕木の葉は緑,植物がよく育つ光は何色?

第2幕 原子とスペクトル
蛍光灯のスペクトル/新しいタイプの蛍光灯のスペクトルは?/ろうそくの光を分光器で見たら/マグネシウムのスペクトル/アルコールを燃やしたときのスペクトル/アルコールに食塩をまぜて燃やしたときのスペクトル/炭酸水素ナトリウム(重曹)と味の素を燃やしたときのスペクトル/塩化リチウムの場合/炎色反応とスペクトル/ブンゼンとキルヒホッフ/花火の話

第3幕 太陽と星のスペクトル
フラウンホーファーが発見した〈太陽スペクトルのなぞ〉/太陽光線と白熱電球では,その連続スペクトルに違いはないか/太陽黒線のなぞにいどむ科学者の登場/ナトリウムの輝線が暗くなるなぞ/太陽黒線のなぞ解明で新しい原子を発見/太陽スペクトルから新原子「ヘリウム」の発見/原子から宇宙まで

コラム 原子が光を出すしくみ
授業書《光と原子》の紹介
特別付録 〈簡易分光器〉作成用ホログラムシート

 

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2020年9月15日 (火)

虹は七色か六色か―真理と教育の問題を考える (ミニ授業書)

虹は七色か六色か―真理と教育の問題を考える (ミニ授業書)

板倉聖宣 著

 日本では多くの人が虹の色は7色と答えますが、もともと日本人は虹の色を7色とは認識していませんでした。日本人が虹を7色と認識するようになったのははイギリスのアイザック・ニュートンの研究に基づく教育によるものです。実際に虹を見ていると、7色を見分けることが難しいことはよくわかります。他の国では6色や5色と見ているところもあります。米国も昔は7色だったそうですが、6色にしか見えない虹をわざわざ7色とするのは教育上よろしくないという提案があり、現在では6色になっているそうです。

 古い文献にまで遡って虹の色は何色なのかを追求していく、非常に興味深い本です。虹の色について詳しく知りたい人にお勧めです。本の大きさは小冊子です。

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説明

内容(「MARC」データベースより)

虹の色は日本では七色が常識だが、アメリカでは六色が常識になっている。この虹の色数の違いから、人々の教育や科学あるいは認識というものについての「考え方」そのものを、分かりやすい文章で解き明かす。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

板倉聖宣

1930年東京下谷(現・台東区上野)に生まれる。1959年国立教育研究所に勤務。1963年仮説実験授業を提唱。1973年遠山啓氏らと教育雑誌『ひと』を創刊。1983年編集代表として月刊誌『たのしい授業』を創刊(仮説社)。1995年私立板倉研究室を開設(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

発売日 : 2003/8/17
文庫 : 60ページ
ISBN-10 : 477350174X
出版社 : 仮説社 (2003/8/17)
ISBN-13 : 978-4773501742

目次

  1. 虹は何色か
  2. 再び、虹は何色か
  3. アメリカでは“虹は六色”と思われている理由についての4人の学者の考え
  4. アメリカ人は、ずっと以前から“虹は六色”と考えていたか
  5. 日本人はずっと以前から“虹は七色”と思っていたか
  6. ニュートンが分光学の研究をはじめた当時のイギリスでは“虹は七色”が常識化していたか
  7. アメリカ人はいつごろ、なぜ“虹は六色”と考えるようになったか

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【虹に関する記事】

虹ができる仕組み

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2020年9月 7日 (月)

ドラえもん科学ワールド 光と音の不思議 (ビッグ・コロタン)

ドラえもん科学ワールド 光と音の不思議 (ビッグ・コロタン)

鈴木 康平 (監修)・小学館ドラえもんルーム (編集)・北原 和夫・藤子F不二雄 藤子プロ

 本書は藤子F不二雄先生が描いた数あるドラえもんの漫画の中から光と音に関係するタイトルを掲載し、科学的な解説を加えたものです。テーマ選びから解説まで適切にまとめられていると思います。

 科学のテーマに合わせて新たに描い下ろしたサイエンス・コナンとは趣向が異なり、漫画と解説が別れていいます。そのため、漫画の部分だけ読んでしまう心配はありそうですが、漫画の内容に「なぜだろう」を感じると、解説が重要な存在になってきます。その「なぜだろう」は、おそらく藤子F不二雄先生のストーリー展開から湧き上がってくるのではないでしょうか。

 一方で解説は高度な内容です。小学生だけでなく、中学生にも難しいかもしれません。

 また藤子F不二雄先生が子どもたちのために漫画の中で取り上げた科学ネタを再確認することができ、藤子F不二雄先生やドラえもんファンの方々にも貴重な本と思います。

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 科学やSF、不思議な現象が大好きだったドラえもんの作者・藤子・F・不二雄先生はそのエッセンスを多くのエピソードに盛り込みました。今回はシリーズ第4弾として「光と音」をテーマにまんがを厳選し、最新の科学記事とともにまとめ上げました。

 「光と音」に身構えてしまう人がいたら、肩肘張らずに大丈夫。普段の生活の中には、光と音の不思議がたくさん潜んでいます。例えば、「空はなぜ青いのか?」「夕焼けが赤く見えるのは?」という素朴な疑問もその1つ。
そうした身近な謎を始め、「雷・虹・蜃気楼」といった自然現象はもちろん、最新の科学研究の成果である「レーザー光」の活用や「電波望遠鏡」による宇宙観測まで、様々なシーンで私たちの生活を支えている「光と音の不思議」をひも解いています。

 また監修は、物理オリンピック日本委員会常務理事でもある東京理科大の北原和夫教授と、実際の学校授業で「科学の面白さの発見勉強」を大切とする自由学園の鈴木康平先生が担当し、ドラえもんのまんがと、身近な事例を元にしたわかりやすい解説に努めました。
子どもから、ドラえもんの読者、科学に興味がある大人まで楽しめる科学本です。

【編集担当からのおすすめ情報】


人間には見えない光を感じ取れる動物がいます。
人間には聞こえない音でコミュニケーションするほ乳類がいます。
光と音は私たちの世界の大きな構成要素です。だからこそ、知っているようで、知らない世界が垣間見えるかもしれません。
科学のワクワクした気持ちを、親子そろってドラえもんを通して楽しく学んでみませんか?

発売日 : 2012/4/17
単行本 : 213ページ
ISBN-13 : 978-4092591189
出版社 : 小学館 (2012/4/17)
ISBN-10 : 4092591187

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2020年9月 1日 (火)

近代科学の源をたどる ―先史時代から中世まで―

近代科学の源をたどる―先史時代から中世まで―

高橋憲一著

2011年出版の本ですが、いまだ新品が入手可能です。

古代から中世までの西洋科学の流れを解説した本です。単なる科学史の解説ではなく、当時の哲学者、自然科学者が考えた原理や仕組を図を使って解説しています。何かを調べるときに、どの原著にあたると良いのかを見極めるのに役に立つ一冊です。

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単行本(ソフトカバー): 472ページ
出版社: 朝倉書店 (2011/3/30)
言語 日本語
ISBN-10: 4254106459
ISBN-13: 978-4254106459
発売日: 2011/3/30
商品の寸法: 21 x 15.2 x 3.2 cm

目次

ギリシャ以前の科学
ギリシャ人と宇宙
アリストテレスの自然哲学
ヘレニズム期の自然哲学
古代における数学的諸学問
ギリシャとローマの医学
ローマと中世初期の科学
イスラーム科学
西欧における学問の復興
ギリシャおよびイスラームの科学の回復と同化
中世的宇宙
月下界の自然学
中世の医学と博物誌
古代・中世科学の遺産

 

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2020年8月24日 (月)

シッカリ学べる! 「光学設計」の基礎知識

シッカリ学べる! 「光学設計」の基礎知識

 光学設計を解説した多くの本は、光学の基礎知識が十分あることが前提で、数式ばかりが目立ちます。この本も数式は多いのですが、必要となる前提知識を解説しながら展開しているので、たとえば掲載されている図が与えられた課題のようなものではなく、どうしてそのようになっているのかを考えることができます。光学設計を行う上での必要な力を身に着けることができる一冊です。

 光学設計が専門ではなくても、光学系についてわかりやすく解説しているので、理科などで光学の実験を行う人、カメラ・望遠鏡・顕微鏡などの光学機器に興味のある人にとっても役に立つと思います。

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内容

光学設計では、具体的には、光を都合よく収束、あるいは拡散させて画像を得たり、照明をしたりするために、レンズ、ミラーなどの光学部品の曲率、材質、大きさ、それらの配置を決める作業(計算)を行う。本書は、それを学ぶ、あるいは光学設計を始めようという技術者のために、豊富な図面と基本的な計算式により、丁寧に解説した入門書。

発売日 : 2017/5/27
単行本 : 192ページ
ISBN-10 : 4526077127
出版社 : 日刊工業新聞社 (2017/5/27)
ISBN-13 : 978-4526077128
言語: : 日本語

目次

はじめに

 近年、レンズやミラーなどで構成された光学部品は、カメラや顕微鏡といた旧来の光学製品の枠を超え、スマートフォン用カメラ、車載カメラ、プロジェクションマッピング、各種センサのキー部品として、さらに照明系などの様々な応用分野においてますますその重要性を高めていることは、皆様もご承知のところかと思います。画像を取り込み、高精細な画像を撮像素子上に形成したり、スクリーンに投影したりする場合には現状ではレンズなどの光学部品を用いるしか術がないと言ってよく、こうした光学部品を目的に合わせて設計する“光学設計技術”の必要性も自ずと高まってきています。

 レンズには他の製品に既に使われている完成品を新しい装置に流用する、ということが難しい側面があります。使用波長域、焦点距離、明るさ(Fナンバー)だけでなく、画像に取り込める被写体の広さ、そして結像分解能も所望のレベルを求めなければなりません。さらに光の入射角度、画像の歪み、そして物体からレンズまでの距離、像からレンズまでの距離、レンズの大きさなどの寸法について等々その他にも多くの制約があります。目的の光学的仕様を満たし、できるだけコンパクトで製造コストの安いものを、と考えますと、どこかで大きな妥協をしない限り、新規に光学設計を起こさざるを得なくなります。こうして、差別化された目的に合致した光学系を得るため、あるいはその際に、ある程度妥協するにいたしましても、光学設計技術の知識を必要とされる方が増えているのだと思います。

 またコンピュータの計算能力の向上、市販の光学設計プログラムの入手のしやすさが、今までよりも光学設計を敷居の低いものにしています。そこで、レンズを使う立場の方々も含めた、より多くの方に光学設計について、よりしっかりと知っていただきたい、と思い本書を著させていただきました。

 私は、この光学設計という仕事を始めて35年以上になりますが、この仕事が好きです。どこが好きかと申しますと、なかなか説明は難しいのですが自分の力が出せて多少なりとも人様のお役に立てているということが一番かもしれません。ですが、それだけですとただ自分に適している、というような当たり前な理由になってしいます。もう少しよく考えてみますと光学設計は、光学理論という物理学の範疇に含まれる理論をその拠り所としています(光がどう進む、曲がる、反射される、強め合う、弱め合う、などについて知るために)。ところが、実は数字のみを頼りにして光学系による現象を評価、改善していこうという際の抽象性(本書内では近軸理論、収差論、光路長の理論や最適化のところで顕著です)には、多分に数学的なところがあります。それと同時に当然、光学設計は実際の光学系を製造するためのものでなくてはなりません。従いましてどのように製造しようかという心づもりは設計中も非常に大切になります。

 このように数学と、実際のもの造りが直結して、その結果が確認できるという作業は意外に少ないのではないかと思います。数学というものは、数学的なもの、と言ったほうがよいかもしれませんが思考の成果であり、純粋に考え抜けるものです(抜けない場合も多いですが)。うまくいくとそこには快感が生じます。そしてその結果が工業分野での新しいキーパツとして、製造技術、物理、数学の結実として、実在し、結果を目の当たりにすることができます。結局これが楽しいのだと思います。

 ですから、私の捉え方ではどうしても数式と光学設計は離して考えにくいのです。いくら入門書とは言っても定性的な話ばかりで、数学的な解説のない光学設計の本は、良質な光学の入門書とはなり得ても光学設計の本としてはなかなか成立しにくいのではないかと思います。斯様な次第で、私の力不足もありますが、入門書ではありますが、本書には数式が予想外に多くなってしまいました。お許しいただければと思います(高校の数学レベルで十分理解可能ですが)。とりあえず結果のみ知り、通読後、ご参考にしていただいても結構です。いろいろな読み方でご利用いただいて、本書が少しでも皆様のお役に立てるようでしたら法外の喜びです。

 最後に、本書の出版の機会をお与えいただき、何かとご尽力いただきました日刊工業新聞社出版局、鈴木徹部長に、そしてお世話になりました関係者の方々に深く御礼申し上げます。

2017年2月

牛山善太

第1章 光学設計の概念

1-1 光学設計とは、そもそも光学系とは
1-2 光学系が実現すること
1-3 光学設計における結像評価の考え方
1-4 改めて結像とはどういうことか?
1-5 光学設計における光学理論

第2章 幾何光学と光線について

2-1 幾何光学理論の重要性
2-2 幾何光学で重要な法則、フェルマーの原理
2-3 幾何光学で重要な法則、スネルの屈折則
2-4 幾何光学において明るさを計算するための法則
2-5 光線の構造
2-6 光線追跡について
2-7 収差とは何か?

第3章 近軸理論

3-1 なぜ近軸理論を構造として採用できるのか
3-2 まず倍率を考えてみましょう
3-3 近軸光線追跡式
3-4 焦点距離
3-5 結像を表す重要な式
3-6 レンズメーカーの式による光学系の構造
3-7 実物体と実像、虚物体と虚像
3-8 主点・焦点距離はどこから測るのか?
3-9 主点・主平面の性質

第4章 光学系の明るさを決めるもの

4-1 開口絞り
4-2 視野絞りと主光線
4-3 Fナンバー
4-4 入射瞳と射出瞳
4-5 テレセントリック系とは

第5章 球面収差

5-1 プリズムで収差を考える
5-2 球面収差について
5-3 球面収差の計算
5-4 とりあえず球面収差がなくなる条件とは
5-5 球面収差のパワー分割による補正
5-6 球面収差の打ち消し合いによる補正
5-7 球面収差図
5-8 光線の高さによる球面収差の違い

第6章 軸外の収差、コマ収差

6-1 軸外結像におけるメリディオナル断面とサジタル断面
6-2 軸外の収差、コマ収差と非点収差
6-3 コマ収差
6-4 正弦法則について
6-5 画面中心近傍のコマ収差を除去する正弦条件について
6-6 正弦条件からわかること
6-7 幾何光学において重要な光路長差
6-8 アイコナールと結像の余弦則
6-9 結像の余弦則から正弦条件を導く、そして縦倍率とは
6-10 アプラナティックレンズとコマ収差
6-11 球面収差が残っている時の正弦条件

第7章 非点収差と像面湾曲

7-1 非点収差とは
7-2 スポットダイヤグラム
7-3 メリディオナル像点とサジタル像点位置の計算
7-4 アプラナティズムと非点収差
7-5 像面湾曲とペッツバール和
7-6 ペッツバール和の重要性
7-7 ペッツバール和を小さくできるレンズ1
7-8 ペッツバール和を小さくできるレンズ2
7-9 ペッツバールレンズ
7-10 ペッツバールレンズの利点

第8章 歪曲収差と射影関係

8-1 歪曲収差
8-2 射影関係

第9章 色収差

9-1 光の波長について
9-2 分散とアッベ数
9-3 2枚のレンズによる色消し
9-4 2次スペクトルの除去
9-5 倍率の色収差

第10章 総合的に収差を考える

10-1 完全対称型のレンズについて
10-2 対称系レンズの無限倍率使用1
10-3 対称系レンズの無限倍率使用2
10-4 ピントずれと焦点深度
10-5 横収差図の読み方1
10-6 横収差図の読み方2

第11章 周辺光量

11-1 周辺光量について
11-2 一般的な周辺光量の計算1
11-3 一般的な周辺光量の計算2
11-4 周辺が暗くならない光学系、輝度不変則
11-5 周辺が暗くならない光学系、瞳収差

第12章 光学系の評価と最適化

12-1 光学系の性能評価
12-2 回折による解像限界について
12-3 MTF
12-4 MTFとフーリエ変換について
12-5 MTF図の読み方
12-6 コンピュータによる最適化
12-7 最適化における対応力

参考文献

 

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2020年8月13日 (木)

光と物質のふしぎな理論-私の量子電磁力学

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)

リチャード・P. ファインマン (著), Richard P. Feynman (原著), 釜江 常好 (翻訳), 大貫 昌子 (翻訳)

 この本はファンマン博士の講義の内容をまとめたものです。光を粒子として考え、光と物質の相互作用などをわかりやすく説明しています(もともとの量電磁力学がそれほど簡単ではありませんが、量子電磁力学の本の中ではかなり優しい内容です。

 私たちは、光は直進するという基本的な性質をもっていることや、光が反射するとき入射角と反射角が等しくなるということを知っていますが、この本を読むと、もはやその法則は絶対的なものではなく、近似的なものであるということがわかります。 光がどのように伝わっていくのかなどについても説明されています。

 後半では光子や電子の運動や相互作用などについてファインマンダイアグラムを用いて説明しています。

自分がもっている本はハードカバーで表紙は下記の左側ですが、現在再販されているものは右側のような表紙になっています。

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内容(「BOOK」データベースより)

「ねえ、リチャード、あなたは何を研究しているの?」友達の奥さんがそう尋ねてきた。はてさて、どうする、ファインマンさん。物理が全然わからない人に、自分の研究を理解してもらえるか。それも、超難解で鳴る量子電磁力学を。光と電子が綾なす不思議な世界へ誘う好著。物理学者リチャード・ファインマン、面目躍如の語りが冴える。

単行本: 215ページ
出版社: 岩波書店 (1987/06)
ISBN-10: 4000058665
ISBN-13: 978-4000058667
発売日: 1987/06
商品の寸法: 18 x 13 x 1.6 cm

目次

  1. はじめに
  2. 光の粒子
  3. 電子とその相互作用
  4. 未解決の部分

 

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2020年8月 4日 (火)

この世界を知るための 人類と科学の400万年史 (日本語)

この世界を知るための 人類と科学の400万年史

レナード ムロディナウ (著) Leonard Mlodinow (原著) 水谷 淳 (翻訳)

この本は科学の歴史について解説した一冊です。第一部は、表題の通り、人類の祖先が誕生した400万年前から話が始まります。人類の好奇心が科学の扉を開き、科学の基礎が作られたプロセスがわかりやすく解説されています。まるで2001年宇宙の旅の類人猿が道具を使い始めることを描写したプロローグを解説したような展開です。第二部以降は、著名な科学者のエピソードをたくさん紹介しながら、科学の発展について解説しています。400ページもありますが、とても読みやすい内容に仕上がっています。科学史に興味のある人は是非一読することをお勧めします。

400

内容(「BOOK」データベースより)

人類はなぜ科学を生み出せたのか?ヒトの誕生から言語の獲得、古代ギリシャの哲学者、ニュートンやアインシュタイン、量子の奇妙な世界の発見まで、世界を見る目を一変させる決定版科学史!

単行本: 416ページ
出版社: 河出書房新社 (2016/5/14)
言語: 日本語
ISBN-10: 4309253474
ISBN-13: 978-4309253473
発売日: 2016/5/14
梱包サイズ: 19.6 x 13.6 x 3.2 cm

目次

第1部 直立した思索者たち

  • 知りたいという欲求
  • 好奇心
  • 文化
  • 文明
  • 道理

第2部 科学

  • 道理への新たな道
  • 機械的な宇宙
  • 物質は何でできているのか
  • 生命の世界

第3部 人間の五感を超えて

  • 人間の経験の限界
  • 見えない世界
  • 量子革命

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