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2022年3月

2022年3月25日 (金)

青色光より短波長の光はなぜ紫色なのか|青紫と赤紫の違い

 虹やプリズムでできた光の色の帯を見ると青色光より短波長側に紫色光が見えます。紫色は青色に赤味が加わった色ですが、どうして青色光より短波長側に長波長側の赤色が混ざった紫色光が見えるのでしょうか。

虹の光の色の帯(連続スペクトル)
虹の光の色の帯(連続スペクトル)

 青色光より短波長側に紫色光が見えるのはヒトの色覚に関係しています。「視覚が生じる仕組み 色が見える仕組み(3)」で説明した通り、ヒトの網膜には赤・緑・青の光を感じる錐体細胞があります。次の図はヒトの平均的な色覚の応答を図で表したものです。R(赤色光)、G(緑色光)、B(青色光)のグラフは光の波長に対してそれぞれの色を感じる色覚の刺激の割合を示したものでG(緑色光)の最大の刺激値を1として標準化したものです。

Cie-1931-xyz
CIE 1931 XYZ等色関数

 この図を見ると青色と緑色に対する色覚はそれぞれ450 nm付近と550 nm付近を中心とする光に応答することがわかります。一方、赤色に対する色覚は主に600 nm付近を中心とする赤色光に応答しますが450 nm付近を中心とする青色光にも応答することがわかります。

 たとえば波長450 nm付近の光に対しては青色と赤色の色覚が応答しますが、青色と赤色の刺激値の差が大きいため青色と認識します。波長450 nmより短い波長の光に対しては青色と赤色の刺激値の差が小さいため青色に赤色が加わった紫色と認識することになるのです。この紫は青色の応答が多いので青紫色の光となります。

 さて光の三原色の混色では赤色光と青色光を混ぜるとマゼンタ(赤紫色)の光になります。赤色と青色の色覚がそれぞれ十分に応答するため赤紫色の光となります。マゼンタの光は前述の青紫色の光と異なり虹の中には存在しない色の光、つまり相当する波長の単色光がない光になります。ピンク色の単色光が存在しないのも同じ理由です。

 マゼンタについては「マゼンタのおはなし|単色光(波長)が存在しない色」に詳しく説明してあります。

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2022年3月 2日 (水)

プラトンが考えた天体の運動|エウドクソスの同心天球仮説①

天体が織りなす現象を救う

 「天と地」の地とは我らが母なる大地、地球でことです。そして、天とは果てしない大空のことです。古代ギリシアの自然哲学者たちは天体の運動を考えれば天と地がどのように成り立っているのかがわかると考えました。例えばアリストテレスは宇宙の中心にある地球の周りを全天体が公転しているという説を唱えました。

 古代ギリシャの自然哲学では、自然現象の真理を追及し、その仕組みを解き明かすことを「現象を救う」と言い表しました。もちろん天体が織り成す自然現象もその対象となりました。天体の運動について現象を救う取り組みを初めて試みようとしたのはプラトンでした。

 古代より太陽や月を始めとする天体の運動には何らかの規則性があると考えられていました。狩猟民族にしろ、農耕民族にしろ、古代の人々が自然を利用しながら賢く生きていくためには、1日の時間の流れ、季節の移り変わりとその周期、位置や方角などを正確に知る必要がありました。そのため人類は太古から天体の運動のなかに規則性を見い出そうとしていたのです。

 しかしながら、真理の探究が遥か昔から行われていたわけではありません。古代ギリシャの自然哲学以前においては、自然現象の解釈は神学的・宗教的なものが中心であり、とても真理の探究とは言えませんでした。それらをできる限り排除して自然科学的な観点から真理を探究しようとしたのが最初の哲学者タレスであり、その後のソクラテスやプラトンでした。

プラトンが考えた天体の運動

 プラトンは天体の運動について、例えば、恒星はどのように動いているかを考えました。星座を作る恒星は、お互いの位置を変えることなく東から西へと移動します。古代の人たちが恒星の配置を星座と見立てることができたのは恒星が規則的な動きをするからです。恒星は24時間経過するとほぼ同じ位置に戻ってきます。しかし、恒星の位置は毎日少しずつずれていきます。そのため、季節によって恒星の見える位置が変わったり、恒星そのものが消えたり現れたりしますが、ほぼ一年経過すると恒星は再び同じ位置に戻ってきます。こうした現象からプラトンは天体の運動は円形で一様で規則的であると考えました。そして、天体の運動を説明するには、どのような円運動が必要になるのかを問いました。

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プラトン

 プラトンが言及した円形で一様な運動とは、物体が一定の速さで回転する運動、つまり、等速円運動のことです。プラトンは等速円運動の組み合わせで、すべての天体の運動が説明できると考えました。

 しかし、プラトンは天体の運動について詳細に調べたわけではなく疑問を提示しただけでした。実際に真理の探究を進めて、天体の運動の仕組みを明らかにしたのは、プラトンの哲学を学んだ数学者のエウドクソスでした(続く)。

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