緑色の星は存在するのか?
恒星の色は表面温度で決まる
宇宙にはたくさんの星が存在しています。それらの星を観察すると赤い星、黄色い星、青い星など様々な色をした星が存在していることがわかります。ところが緑色の星はいくら探しても見つけることはできません。緑色の星は存在しないのでしょうか。
恒星の色は星からやってくる光の波長で決まります。星はさまざまな波長の光を出していますが、星が一番たくさん出す波長の光はその表面温度で決まります。つまり星の色は星の表面温度で決まります。大雑把に説明すると3千度の星は赤色に見え、6千度の星は黄色に見え、1万度の星は温度は青色に見えます。さらに温度が高い星は青白い色に見えます。それでは緑の星が見つからないということは緑色に相当する波長の光をたくさん出す星が存在しないということでしょうか。
緑色の星は存在するのか
実は私たちにとって身近な星である太陽は緑色の光をたくさん出しています。しかし、太陽は緑色には見えませんし、太陽の表面温度は6千度ですから黄色に見える星のはずです。この矛盾はどうして生じるのでしょうか。
次の図は太陽光のスペクトルです。可視光線の領域を見てみると500 nm前後のエネルギーが高いことがわかります。この波長範囲の光は緑色(青緑色)に見えます。また他の波長の光も含まれていることがわかります。
実は表面温度が6千度の星は緑色の光を一番たくさん出しています。ところがこの表面温度の星から出てくる光には緑色以外の色の光も適度な強さで含まれています。そのため全体として黄色に見えてしまうのです。ですからヒトの色覚で見る星の色という観点からは緑色の星は存在しないということになります。
緑色に見える星がある
天体観察をしている人の中には緑色の星を見た経験がある人もいるかもしれません。また天文に関する書籍にも緑色の星が掲載されていることがあります。この緑色の星の多くは連星です。連星は通常明るい主星と暗い伴星からなりますが主星が赤色で伴星が白っぽい色のときに伴星が緑色に見えます。白い星が緑色に見えるのは明るい主星の赤色の補色の緑色が伴星の表面に残像で現れるためと考えられています。つまり錯覚で白っぽい星が緑色に見えているのです。
連星でなく単独の星でも緑色に見える場合があります。これは肉眼ではなく望遠鏡で星を観察している場合が多いようです。特に暗い星を見ているときやピントがずれたり収差が出たりしているときに星が緑色に見えます。これはヒトの色覚に関係していると考えられています。眼の網膜には色は見分けられないが暗いところで光を感じることができる桿体細胞と可視光線の短波長領域の光、中波長領域の光、長波長領域の色光を感じる3つの錐体細胞があります。この3つの錐体細胞のうち最も感度が高いのは中波長領域の光を感じる錐体細胞でヒトが最も見やすい色が緑色と言われるのはこのためです。
錐体細胞は光が暗くなると反応が鈍くなるため私たちは暗いところでは色を見分けにくくなります。色を見分けにくい暗い星を見たときに感度の高い中波長領域の錐体細胞が反応して緑色に見えると考えられています。また、望遠鏡でピントがずれたり収差が出ているときは星の像は点にならず広がります。広がったところの像は暗くなるので色が見分けにくくなり緑色に見えると考えられています。
緑の光を一番脱している星は緑色に見えず、緑に見える星は目の錯覚ですから緑の星は存在しない結論づけておきましょう。
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