光学ガラスとは|光学ガラスの原理と仕組み(1)
光学ガラスとは
レンズやプリズムは光を操って光の進む方向を変えたり、像を結んだりするために使われます。そのため、レンズやプリズムに使われているガラスには優れた光学的性能が求められます。ですから窓ガラスなどに使われている普通のガラスは、顕微鏡、望遠鏡、カメラなどの光学機器には使えません。このような精巧な光学機器に使われる特別なガラスを光学ガラスといいます。
普通のガラスも光学ガラスも、一見すると透明で均質に見えます。どちらのガラス板を通してものを見ても、鮮明に見えますし、歪んで見えるわけでもありません。しかし、2つのガラスの間には、光学的に大きな違いがあります。
たとえば、普通のガラスは製造過程で融かして固める際にガラス内部に力学的な歪みや脈理(みゃくり)と呼ばれる化学的成分の異なる部分ができやすいため屈折率のムラが生じます。光学ガラスはこのようなムラが生じないように作られており、ガラスのどの部分で屈折率を測っても、ほとんど同じ値が得られます。また、ガラスに気泡や異物が入らないよう、透明度にもムラが生じないよう細心の注意が払われてつくられています。
普通のガラス板は正面から見ると透明に見えますが、断面を見ると緑色に見えます。これはガラスに含まれている不純物が光を吸収するからです。次の写真は、厚さ1.5 cmのガラス板を2枚重ねて撮影した写真です。左右の厚さの差は1.5 cmですが、左側が緑色を帯びて暗くなっています。
![](https://optica.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized/2010/03/03/photo.jpg)
ガラス板の透明度
このように普通のガラスを何枚も重ねていくと次第に暗くなっていき、やがて光が全く通らなくなります。光学ガラスは、普通のガラスに比べて、光の透過性が極めて高く、光をあまり吸収しません。光ファイバーが遠くまで光を運べるのは、光の透過性に極めて優れた光学ガラスが使われているからです。
光学ガラスに求められる性質は光学的性質のみではありません。次の表のように、用途に合わせた耐環境性や、生産性向上に必要な優れた加工性なども求められます。
光学的性質 | |
---|---|
光透過性 | 光の吸収が少なく、光をよく通すこと |
均質性 | ムラがなくガラスのどの部分も屈折率が同じであること |
耐環境性・生産性 | |
化学的性質 | 耐熱性、耐水性、耐薬品性などに優れていること |
物理的性質 | 強靱性、硬度などに優れていること |
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