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2021年4月23日 (金)

屈折率とアッベ数|光学ガラスの原理と仕組み(2)

分散と屈折率

 白色光をプリズムに通すと、次の図ように光の色の帯(スペクトル)ができます。この現象を光の分散といいます。光の分散はガラスの屈折率が光の波長によって異なるため生じます。光学ガラスといえどもこの現象から逃れることはできません。

プリズムによる光の分散
プリズムによる光の分散

 一般に光学ガラスの屈折率はヘリウム原子が発する波長587.562 nmの光であるd線の屈折率 ndで表されます。この波長を基準波長、nd基準屈折率と呼びます。この光は人間の眼の感度もよく、可視光線の波長領域(380~780 nm)のほぼ中央にある光です。

 もともと基準波長の光はナトリウム原子が発するD線が使われていました。D線は波長589.6 nmのD1と589.0 nmのD2から成り、現在はd線が用いらるようになりました。なお、D線の屈折率はnDで表されます。

 多くの光学ガラスは、同じ材質であればnd が±0.0005となるように保証されており、高精度のものでは±0.0002まで保証されているものもあります。このように光学ガラスの屈折率はきわめて正確に管理されています。

スペクトル線 波長(nm) 光源
t(赤外線) 1013.98 Hg
s(赤外線) 852.11 Cs
A'(赤色) 768.195 K
r(赤色) 706.519 He
C(赤色) 656.273 H
C'(赤色) 643.847 Cd
He-Ne(赤色) 632.816 He-Neレーザー
D(黄色) 589.294 Na
d(黄色) 587.562 He
e(緑色) 546.047 Hg
F(青色) 486.133 H
F'(青色) 479.992 Cd
g(青色) 435.835 Hg
h(紫色) 404.656 Hg
i(紫外線 365.015 Hg

 光学ガラスのカタログによく記載されている光の種類と波長

色収差とアッベ数

 レンズの焦点は実際には次の図のように光の波長によって異なります。これを色収差といいます。

Photo_20210423153301
光の分散による焦点位置のずれ

 この色収差の度合いは、光学ガラスの種類によって異なります。たとえば、光の分散が大きい光学ガラスでつくったプリズムでできるスペクトルの幅は広くなります。逆に、分散が小さい光学ガラスでつくったプリズムでは狭くなります。そこで、波長の短い光(青)と波長の長い光(赤)の屈折率の差が大きい光学ガラスを分散が大きい光学ガラス、差が小さい光学ガラスを分散が小さい光学ガラスと呼びます。

分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム
分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム

 光学ガラスの分散の度合いは、次式で表されるアッベ数νという値で表し、次の式で求めることができます。

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