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2021年4月

2021年4月27日 (火)

古代エジプトにレンズは存在していたのか

 以前、古代エジプトのヒエログラフに「レンズ」を意味する文字があるという情報を得ていろいろ調べたことがあります。インンターネットのいくつかの記事では古代エジプトのレンズについて「simple glass meniscal lenses(簡単なガラス製の半月レンズ)」と紹介されていますが、そのヒエログラフがどのようなものかを示す論文を見つけることができませんでした。その経緯は下記の記事にまとめてあります。

 当時の古代エジプトにはレンズを作ることができるような十分に透明なガラスは存在していませんでした。しかし、水晶など天然の透明な結晶はありました。当時の人たちが水晶などを使って意図的にレンズを作成したとは考えにくいですが、レンズの一部の働きをする道具を作って利用していた可能性はありそうです。

 その中でもっとも可能性がありそうなものは光を集めて着火するための道具でしょう。しかし、これをもって古代の人々が意図的にレンズと作ったと主張するには無理があるかもしれません。透明なものが光の収れん現象を起こし、可燃物を着火させることはよく知られています。当時の人々も原理を理解していたかはともかく、球状の透明なものが光を効率的に収れんさせるという経験と知識はもっていたでしょう。

  さて、「アッシリアの水晶レンズ」もしくは「ニムルドのレンズ」と呼ばれている世界最古のレンズがあります。このレンズはしばしばオーパーツとして取り上げられることもありますが、実際にはレンズとして意図的に作られたものではなく、家具や置き物などの装飾に使った象嵌材だったと考えられています。下記の記事にまとめてあります。

 このアッシリアのレンズと呼ばれる水晶は象嵌材ではありますが平凸レンズの形をしていたため、レンズの働きによる現象を確認できたはずです。この象嵌材を作成した職人はこの象嵌材を通して作業台の上にあったものの拡大像を見ていたかもしれません。

 象嵌材で気が付いたのですが「玉眼」というものがあります。「玉眼」とは仏像の眼を本物のように見せるために使われた水晶のことです。像の眼の部分に穴を開けて板状の水晶を嵌め込み、水晶の裏に虹彩や瞳を描いて白い布を当てます。これを表側から見ると、本物の眼のように見えるというわけです。「玉眼」は仏像に限って使われたわけではなかったでしょう。

 古代エジプトでは太陽神ラーが最も重要な神とされていました。

イメンテット(左)と太陽神ラー(紀元前13世紀のネフェルタリの墓)
イメンテット(左)と太陽神ラー(紀元前13世紀のネフェルタリの墓)

 古代エジプト人にとっての光は太陽神ラーの眼差しで、ラーの眼は神聖なものでした。もし、ラーの眼に「玉眼」の加工が施されたいたら神秘的に見えたに違いありません。

太陽神ラーの眼
太陽神ラーの眼

 そのような観点から古代エジプトの「玉眼」を探してみたところ次のサイトが見つかりました。これをレンズと呼んで良いのかどうか実物を見たいのですが、そう簡単には実現できないでしょう。この論文に写真でも掲載されていると良いのですが、今回のリサーチはとりあえずここまでとしておきます。

19 July 1999

Remarkable lenses and eye units in statues from the Egyptian Old Kingdom (ca. 4500 years ago): properties, timeline, questions requiring resolution

Jay M. Enoch, Univ. of California/Berkeley (United States)

Proc. SPIE 3749, 18th Congress of the International Commission for Optics, (19 July 1999)

Abstract

The first known lenses appeared during the IVth and Vth Dynasties (fabricated mainly between ca. 2500 - 2400 BC) of the Old Kingdom of Egypt. Excellent examples of these lenses are found in The Louvre Museum in Paris and the Egyptian Museum in Cairo. These lenses were components of eye constructs in statues and had unique qualities. In particular, the `eyes' appear to follow the viewer as he/she rotates about the statues in any direction. Clearly, this was an intended effect which can be readily photographed (and understood optically). The lenses were ground from high quality rock crystal (a form of quartz). They had a convex and highly polished front surface. On the plane rear lens surface as `iris' was painted. Centered in the dark- appearing pupil zone was an approximately hemispheric negative ground, high power, concave lens surface.

初めてレンズが登場したのはエジプト古王国の第4王朝と第5王朝のものです(主に紀元前2500年から2400年の間に製作された)。これらのレンズは、パリのルーブル美術館やカイロのエジプト博物館に所蔵されており、彫像の目を構成する部品であり、独特の性質を持っています。特に、この「目」は鑑賞者が彫像をどの方向から見ても追随するように見える。これは明らかに意図された効果であり、容易に写真に収めることができます(光学的に理解できます)。レンズは、高品質のロッククリスタル(石英の一種)から研磨されたものです。レンズは高品質のロッククリスタル(石英の一種)を研磨したもので、前面は凸状に高度に研磨されています。後面の平面には「アイリス」の文字が描かれている。暗く見える瞳の部分を中心に、ほぼ半球状のマイナス地、高出力の凹レンズ面がある。

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2021年4月23日 (金)

屈折率とアッベ数|光学ガラスの原理と仕組み(2)

分散と屈折率

 白色光をプリズムに通すと、次の図ように光の色の帯(スペクトル)ができます。この現象を光の分散といいます。光の分散はガラスの屈折率が光の波長によって異なるため生じます。光学ガラスといえどもこの現象から逃れることはできません。

プリズムによる光の分散
プリズムによる光の分散

 一般に光学ガラスの屈折率はヘリウム原子が発する波長587.562 nmの光であるd線の屈折率 ndで表されます。この波長を基準波長、nd基準屈折率と呼びます。この光は人間の眼の感度もよく、可視光線の波長領域(380~780 nm)のほぼ中央にある光です。

 もともと基準波長の光はナトリウム原子が発するD線が使われていました。D線は波長589.6 nmのD1と589.0 nmのD2から成り、現在はd線が用いらるようになりました。なお、D線の屈折率はnDで表されます。

 多くの光学ガラスは、同じ材質であればnd が±0.0005となるように保証されており、高精度のものでは±0.0002まで保証されているものもあります。このように光学ガラスの屈折率はきわめて正確に管理されています。

スペクトル線 波長(nm) 光源
t(赤外線) 1013.98 Hg
s(赤外線) 852.11 Cs
A'(赤色) 768.195 K
r(赤色) 706.519 He
C(赤色) 656.273 H
C'(赤色) 643.847 Cd
He-Ne(赤色) 632.816 He-Neレーザー
D(黄色) 589.294 Na
d(黄色) 587.562 He
e(緑色) 546.047 Hg
F(青色) 486.133 H
F'(青色) 479.992 Cd
g(青色) 435.835 Hg
h(紫色) 404.656 Hg
i(紫外線 365.015 Hg

 光学ガラスのカタログによく記載されている光の種類と波長

色収差とアッベ数

 レンズの焦点は実際には次の図のように光の波長によって異なります。これを色収差といいます。

Photo_20210423153301
光の分散による焦点位置のずれ

 この色収差の度合いは、光学ガラスの種類によって異なります。たとえば、光の分散が大きい光学ガラスでつくったプリズムでできるスペクトルの幅は広くなります。逆に、分散が小さい光学ガラスでつくったプリズムでは狭くなります。そこで、波長の短い光(青)と波長の長い光(赤)の屈折率の差が大きい光学ガラスを分散が大きい光学ガラス、差が小さい光学ガラスを分散が小さい光学ガラスと呼びます。

分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム
分散が異なる光学ガラスで作ったプリズム

 光学ガラスの分散の度合いは、次式で表されるアッベ数νという値で表し、次の式で求めることができます。

Photo_20210423155101

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2021年4月22日 (木)

「月面L」の撮影に成功(月齢9 2021年4月21日)

 先日「月齢7の月に「月面X」(2021年4月19日)」に「月面X」の記事と写真をアップしましたが、21日(月齢9)は「月面L」を撮影することができました。

9
月齢9(2021年4月21日21:47撮影 f:8 ss:1/125 ISO:400)

 写真の左下にひっくり返った「L」の文字を確認することができます。

月面L
月面L

「X」や「L」の他にも、「V」や「E」が見えることもあります。2018年3月に撮影された「L」「O」「V」「E」が一度に揃った写真がNASAのAstronomy Picture of the Dayに「Lunar LOVE」として登録されています。この写真を撮影したのは愛媛県の天体愛好家の竹尾昌さんで、この現象は「月面LOVE」と名付けられました。

Lunar LOVE
Image Credit & Copyright: Masaru Takeo - courtesy: Junichi Watanabe (NAOJ)
Astronomy Picture of the Day 2018 November 3

このNASAに登録された写真はVの部分が暗くて見づらいと思います。

朝日新聞デジタルの下記の記事に掲載されている写真がわかりやすいです。

「月面LOVE」バレンタイン2日前が観測のチャンス
https://www.asahi.com/articles/ASM283W9HM28ULBJ009.html

【撮影機材】

 この月の写真の撮影に使用したカメラはパナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85 ブラック DC-FZ85-Kです。焦点距離が20 mm〜1200 mmで、光学ズームでは60倍まで拡大可能です。

 このカメラにパナソニックの純正のテレコンバージョンレンズ DMW-LT55を装着しました。倍率は1.7倍です。純正ではありますが、FZ-85で光学ズームを最大にすると、色収差の影響が出て月の縁が青みがかって写ります。

 なおFZ-85にこのテレコンをつけるには、パナソニック レンズアダプター ルミックス DMW-LA8が必要です。

 

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2021年4月21日 (水)

月齢7の月に「月面X」(2021年4月19日)

 2021年4月19日の夜に撮影した月齢7の月です。上弦の月(20日20:00月齢8)の前日になります。

月齢7の月(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月齢7の月(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 今回は下記に記載した通り、パナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85にパナソニック純正のテレコンバージョンレンズDMW-LT55を装着して撮影してみました。最大まで倍率をあげて撮影してみたところ、色収差の影響が若干出て月の縁が青みががって写りました。一方で他のテレコンより分解のは高い画像が得られました。

 撮影した画像を良く見てみると、かろうじて「月面X」が写っていました。

月齢7の月と月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月齢7の月と月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 月の表面には多数のクレーターが存在しますが、太陽光が当たる角度によって立体的に見えます。上弦の月の頃、月の明るい部分と暗い部分の境目あたりに光の加減で「X」の文字が見えます。この現象は「月面X」と呼ばれています。「月面X」のもとになっている地形は3つのクレーター「プランキヌス」「プールバック」「ラカイユ」の外壁によって作られています。

月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)
月面X(f:8 ss:1/100 ISO:800)

 「月面X」は上弦の月の頃に必ず見られるわけではありません。「月面X」が綺麗に見えるのは約70分しかありません。また、上弦の月が夜に出ていること、月が観測地から見えやすい位置にあることが条件になります。「月面X」が見えるのは1年間を通して数回程度で、天気や雲に月が遮られると観測できるチャンスが失われてしまいます。2021年は「月面X」を合計6回、あと4回観測することができます。日時は下記の日の20:00〜22:30の間の1時間です。

 2月19日、4月19日、6月17日21:30、8月15日20:00、10月13日20:00、12月11日22:30

 4月19日は綺麗に「月面X」が撮影できる時間は21:00頃でしたので、上の写真は1時間ほど早めです。そのためと思いますがXの右側が欠けています。

【撮影機材】

 この月の写真の撮影に使用したカメラはパナソニック デジタルカメラ ルミックス FZ85 ブラック DC-FZ85-Kです。焦点距離が20 mm〜1200 mmで、光学ズームでは60倍まで拡大可能です。

 このカメラにパナソニックの純正のテレコンバージョンレンズ DMW-LT55を装着しました。倍率は1.7倍です。純正ではありますが、FZ-85で光学ズームを最大にすると、色収差の影響が出て月の縁が青みがかって写ります。

 なおFZ-85にこのテレコンをつけるには、パナソニック レンズアダプター ルミックス DMW-LA8が必要です。

 

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2021年4月19日 (月)

光学ガラスとは|光学ガラスの原理と仕組み(1)

光学ガラスとは

 レンズやプリズムは光を操って光の進む方向を変えたり、像を結んだりするために使われます。そのため、レンズやプリズムに使われているガラスには優れた光学的性能が求められます。ですから窓ガラスなどに使われている普通のガラスは、顕微鏡、望遠鏡、カメラなどの光学機器には使えません。このような精巧な光学機器に使われる特別なガラスを光学ガラスといいます。

 普通のガラスも光学ガラスも、一見すると透明で均質に見えます。どちらのガラス板を通してものを見ても、鮮明に見えますし、歪んで見えるわけでもありません。しかし、2つのガラスの間には、光学的に大きな違いがあります。

 たとえば、普通のガラスは製造過程で融かして固める際にガラス内部に力学的な歪みや脈理(みゃくり)と呼ばれる化学的成分の異なる部分ができやすいため屈折率のムラが生じます。光学ガラスはこのようなムラが生じないように作られており、ガラスのどの部分で屈折率を測っても、ほとんど同じ値が得られます。また、ガラスに気泡や異物が入らないよう、透明度にもムラが生じないよう細心の注意が払われてつくられています。

 普通のガラス板は正面から見ると透明に見えますが、断面を見ると緑色に見えます。これはガラスに含まれている不純物が光を吸収するからです。次の写真は、厚さ1.5 cmのガラス板を2枚重ねて撮影した写真です。左右の厚さの差は1.5 cmですが、左側が緑色を帯びて暗くなっています。


ガラス板の透明度

 このように普通のガラスを何枚も重ねていくと次第に暗くなっていき、やがて光が全く通らなくなります。光学ガラスは、普通のガラスに比べて、光の透過性が極めて高く、光をあまり吸収しません。光ファイバーが遠くまで光を運べるのは、光の透過性に極めて優れた光学ガラスが使われているからです。

 光学ガラスに求められる性質は光学的性質のみではありません。次の表のように、用途に合わせた耐環境性や、生産性向上に必要な優れた加工性なども求められます。

光学的性質
光透過性 光の吸収が少なく、光をよく通すこと
均質性 ムラがなくガラスのどの部分も屈折率が同じであること
耐環境性・生産性
化学的性質 耐熱性、耐水性、耐薬品性などに優れていること
物理的性質 強靱性、硬度などに優れていること
表 光学ガラスに求められる基本的な性質

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2021年4月 8日 (木)

√2が開いた科学の扉

異端視されたデモクリトスの原子論

 世の中のすべてのものが原子と原子の結びつきからなるという原子論を唱えたデモクリトスは、唯物論者であり、また機械論者でもありました。デモクリストスはこの世界に存在するものや事象はすべて必然の結果であるとし、その対象は人間の思考や行動にまで及ぶと考えました。人間の肉体は原子からなるのだから、人間の思考や行動が未来でどうなるかは予め決められており、筋書き通りになると考えたのです。

クリ
デモクリトス

 このような機械論的な思想は原子論の流布の妨げになりました。実際、その後の古代ギリシャ哲学は、プラトンやアリストテレスの人間主義的な思想が主流となりました。デモクリトスの原子論は封印され、四元素説が広まりました。

万物の根源は数としたピタゴラス 

 デモクリトスはピタゴラスを崇拝し、ピタゴラス学派の思想を受け継いだとされています。

ピタゴラス
ピタゴラス

 一般に、ピタゴラスは数学者と知られていますが、実際には新興宗教ピタゴラス教団の開祖でした。この教団は、霊魂は不滅であり、あの世に旅立った霊魂は、この世に生まれ変わるという輪廻転生の考えを持っていました。そして、宇宙は厳格な法則で成立していると考え、輪廻転生から解脱し、魂を肉体の支配から解放するには、その法則を深く理解する必要があると考えました。

日の出を祝うピタゴラス(1869, Fyodor Bronnikov)
日の出を祝うピタゴラス(1869, Fyodor Bronnikov)

 やがて、ピタゴラス学派の哲学者たちは天文学や音楽から宇宙の法則を考えるようになりました。たとえば、天文学では、月の満ち欠けや、星座の動きには法則があると考えました。

 月の満ち欠けと太陽と地球と月の位置の関係
月の満ち欠けと太陽と地球と月の位置の関係

 音楽の分野では、一本の弦を奏でたときに鳴る音の規則性を発見しています。ドの音が鳴る弦の1/2を押さえて弾くと1オクターブ高いドが鳴り、2/3を弾くとソが鳴り、3/4を弾くとファがなります。弦が美しい音を奏でるのは数の比が関係しているに違いないと考えました。

弦の長さとハ長調の音階の関係
弦の長さとハ長調の音階の関係

 このような結果から、彼らは、この世界は数の比で秩序づけられており、美しく調和していると考えました。そして、数の比の関係を神聖な数と考えられていた10と関連づけ、テトラクテュスという図で示しました。テトラクテュスは頂点が1つ、2列目が2つ、3列目が3つ、4列目が4つの点から成る図形です。単純な整数の比によって美しい正三角形ができることを示しています。

テトラクテュス
テトラクテュス

 そして、この調和をハルモニアと呼び、宇宙の本質は数の比であり、すべてのものは数に置き換えられると考え、「万物の根源は数である」と結論づけたのです。

すべてが数の比で表すことができるのか

 ピタゴラス学派の哲学者たちは、ハルモニアが数の比でもたらされるならば、この世に存在するものは、それ以上分割できない最小単位からなると考えました。そして、この考えを空間や時間にも適用し、それらも最小単位からなると考えました。彼らは、世界は、数と数の比で表すことができる美しいものであると考えたのです。

 ところが、ピタゴラスの弟子のヒッパソスは、ピタゴラスの定理を考えているうちに、数と数の比で表せない数があることを発見しました。彼は二乗すると2となる数字を数の比で表そうと試みましたが、それが絶対に無理であることに気がつきました。

ピタゴラスの定理
ピタゴラスの定理

 ヒッパソスはこのことをピタゴラスに伝えましたが、ピタゴラスは彼の発見が教団の考えを覆すことを直ちに理解し、彼に決して口外してはならぬと命じました。真偽はともかく、この発見を闇に葬るためヒッパソスが殺されたという説もありますから、ピタゴラスはこの発見に驚愕し、警戒したのは間違いないようです。

ヒッパソスヒッパソス

 ヒッパソスが見い出した数と数の比で表せない数とは√2のことですが、√2そのものは彼が発見したわけではありません。紀元前2千年のメソポタミアで栄えたバビロニアの遺跡から発掘された石版にその近似値が六十進法で記述されています。また、古代の人々はロープを使って次のオ図のような手順で平方根を作図できたと考えられます。

平方根の作図.png
平方根の作図.png

実数が科学の扉を開いた

 数には分数で表せる有理数と、分数で表せない無理数があります。ヒッパソスが「世界で初めて発見した数」とは無理数のことです。

 有理数は1/2や3/4など分数で表すことができます。2/3は割り切れず0.6666…と6が無限に続く小数ですが、整数の比で表せるので有理数です。2/7は0.285714285714…と285714が繰り返し続きますが、これも整数の比で表せるので有理数です。

有理数と無理数
有理数と無理数

 一方、無理数は分数で表すことができない数です。その例には√2や√3、円周率πや自然対数の底eなどがあります。これらの数字は繰り返しのパターンがなく、無限に続く小数です。

  √2 = 1.41421356237309504880・・・
  √3 = 1.73205080756887729352・・・
  π  = 3.14159265358979323846・・・
  e  = 2.71828182845904523536・・・

 ヒッパソスが無理数を発見したとき、哲学者たちは混乱しました。しかし、彼らは、やがてその混乱から脱却し、有理数と無理数を合わせた実数という概念を作り上げました。

 実数の概念は数学を発展させることになり、科学を発展させることにもなりました。数学を使えば、物体の運動など多くの現象を数で表すことができます。また数学からの新発見もあります。たとえば、マクスウェルは、電磁波が発見される20年も前に、数学で電磁波の存在を予測しています。アインシュタインも数学で相対性理論を導き出しました。そして、現在の科学者たちは素粒子の世界を数学を駆使して解明しようとしているのです。

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