円周率はどのように求められるか
古代のエジプト、バビロニア、インド、ギリシアの哲学者たちは、円の円周と直径の比が円の大きさに関係なく、円周は直径の3倍より少し大きい値になることを知っていました。そして、その円周の比の正しい数値を求めることに多くの時間が費やされました。その数値とは円周率のおとです。
円周率は任意の大きさの円の円周をその直径で割った値です。円周率は記号πで表します。πはギリシア文字で周辺・円周・周などを意味するπερίμετροςあるいは περιφέρειαに由来します。また、円周率は整数の比で表すことができない無理数で循環しない無限小数です。
π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 …
いま直径 d の円の円周を c とすると、
c = πd
で表すことができます。ここで円周 c と同じ長さの直線と直径 d と同じ長さの直線を比較すると次の図のようになります。円周は直径の(3+α)倍であることがわかり、αを実測してみると約0.14dであることがわかります。
この図からもわかる通り、目的に応じて円周率を3として概算することは理にかなっていると思います。しかし、同時に概算でどれぐらいのずれが生じるかを想像できないと「目的に応じて」を見失うことになってしまいます。
たとえば直径 dの円周を 3d と概算したとしましょう。実際の円周は約3.14dですが、3dは次の図のように直径 d の円に内接する正六角形の周の長さと同じです( d/2 × 6 = 3d )。3d は直径 d の円周の近似値であり、図から円周は 3d より大きいことがわかります。さらにこの円に外接する正方形を考えてみましょう。この正方形の周の長さは 4d ですから、円周は4dより小さいことがわかります。つまり、
3d < 円周の大きさ < 4d となります。
続いてこの円に外接する六角形について考えてみましょう。直角三角形を考慮すると一辺の長さは d/(2√3)×2 で d/√3 になります。よって、この六角形の周の長さは 6d/√3 で約3.46d になります。つまり、
3d < 円周の大きさ < 3.46d となります。
円周をより正確に求めるためには、正多角形の角数を増やす必要があります。次の図は半径 dの円に内接および外接する正十二角形を示したものです。六角形のときと同様にそれぞれの周の長さを求めると、
3.11 d < 円周の長さ < 3.22d となります。
図は省略しますが、さらに正多角形の角数を増やしていくと、
正二十四角形 3.1326d < 円周の長さ < 3.1597d
正四十八角形 3.1393d < 円周の長さ < 3.1461d
正九十六角形 3.1408d < 円周の長さ < 3.1428d
正五百角形 3.1415d < 円周の長さ < 3.1416d
となり、本当の円周の長さ 3.141592654…d に近づいていきます。
直径dが1の場合は円周が円周率と同じ大きさになります。つまり、長さ1の直線を直径する円を描いた場合、その円周が円周率になるということです。実は円周率はこのように求められたのです。古代ギリシアのアルキメデスは正九十六角形を使って円周率を求めたそうです。
さて図では円周の長さは決まっているのに、数字で表すと小数点以下が延々と続く無理数となります。同じように長さ1の直線を1辺とする正方形を描いた場合、その対角線の長さは√2になります。√2も小数点以下が延々と続く無理数となります。単純な1を基本とする図形から無理数が現れてくるのは面白いですね。
| 固定リンク | 0
「数学」カテゴリの記事
- √2が開いた科学の扉(2021.04.08)
- 無限の猿定理とは(2021.03.30)
- 円周率はどのように求められるか(2021.03.11)
- バベルの図書館の所蔵数は何冊か(2021.03.09)
コメント