高温の物体から出る光を調べる|量子力学の幕開け(2)
熱い鉄箱から出る光の不思議な現象
高温の物体から出る光を調べるためには、色のついた物体を使うことはできません。なぜなら、色のついた物体は、その色に対応する光を放射するからです。そこで、黒い物体が放射する光、黒体放射が研究の対象となりました。ところが、さまざまな波長の光を放射したり、吸収したりする理想的な黒体は実在しません。
プロセインの物理学者グスタフ・キルヒホッフは、内部が空洞の鉄箱に小さな穴を開けた装置を考案しました。この穴から光を入れると、光は内部で反射を繰り返し、やがて吸収されてしまいます。逆に、この箱を熱すると、光が穴から出てきます。彼は、この鉄箱が理想的な黒体放射をすると考え、箱を高温にしたときに穴から出てくる光のエネルギーを調べました。この空洞からの熱の放射を空洞放射といいます。
この実験で得られた黒体放射スペクトルは次の図のようになりました。どの温度でも、光のエネルギーは、光の振動数が小さいうちは、振動数の増加に伴い大きくなりますが、ある振動数を超えると小さくなります。光のエネルギーが極大となる振動数は、温度が高いほど大きくなります。このスペクトルの形状は当時の物理学者たちの予想に反していました。彼らは、波である光は振動数が大きいほど大きなエネルギーをもつことができると考えていました。理論的な予想では、スペクトルは右肩あがりになるはずで、光のエネルギーがある振動数で急に小さくなるはずがないと考えました。
イギリスの物理学者レイリー卿ことジョン・ウィリアム・ストラットとジェームズ・ジーンズ、ドイツの物理学者ヴィルヘルム・ヴィーンはそれぞれ黒体放射スペクトルの近似式を導くことを試み始めました。
彼らはそれぞれ次の図に示すスペクトルを求める数式を作りました。しかし、レイリー・ジーンズの式は振動数が大きくなると実測値と合わず、ヴィーンの式は振動数が小さくなると実測値と合わなかったのです。
レイリー・ジーンズの式とヴィーンの式を参考に近似値と実測値がよく合致する式を導いたのはドイツの物理学者マックス・プランクでした。
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