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2020年10月

2020年10月29日 (木)

月が明るく輝いて見える理由|ガリレオの天文対話

月は太陽光を反射して輝く

 夜空に輝く月は自ら光を出しているわけではなく、太陽の光を反射して輝いていることはよく知られていると思います。

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 古代ギリシアのアリストテレスは月が明るく輝いて見えるのは、月の表面が鏡のようになめらかだからだと考えました。多くの学者達がアリストテレスの説を信じていましたが、この説を否定したのがガリレオ・ガリレイです。

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ガリレオ・ガリレイ

月が明るく輝いて見える理由を明らかにする

 ガリレオは1632年の著者『天文対話』において、3人の学者に月が明るく輝く理由を討論させています。登場する3人は、アリストテレス派のシムプリチオ、コペルニクス派のサルヴィアチ、そして中立的な立場のザグレドです。

天文対話(ガリレオ・ガイレイ)
天文対話(ガリレオ・ガイレイ)

 コペルニクス派のサルヴィアチは2人を外に連れ出し、日光が当たっている明るい壁を見るように言います。そして、この壁に鏡をかけたたら、鏡は壁よりも明るく見えるか、暗く見えるかと問いかけます。

 アリストテレス派の考えでは、表面が滑らかな鏡は光をよく反射するので、鏡は壁よりも明るく見えることになりますが、実際には鏡は壁の表面よりも暗く見えたのです。この矛盾する結果にアリストテレス派のシムプリチオは「この角度から見ると鏡は暗いが、鏡が光を反射する方向の場所に立てば、鏡は壁より明るく見える」と述べ、鏡は入射光に対して、一定の方向に光を反射すると「光の反射の法則」について説明します。

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光の反射の法則

 さらに、シムプリチオは鏡が平面ではなく球面であれば、あらゆる方向に光を反射すると述べます。そして、球体の月は太陽光線をあらゆる方向に反射しているのだから、地球上のどの場所からも明るく輝いて見えると凸面鏡による光の反射の説明をします。

凸面鏡による光の反射
凸面鏡による光の反射

 シムプリチオの主張に対して、中立のサグレドは「物体が輝いて見えるようになるためには、物体が光を反射するだけではなく、その反射光が我々の眼に届くことが必要」と述べ、「鏡が球面であれば、反射光のごく一部だけが我々の眼に届くだけである」と反論します。

 確かに凸面鏡はあらゆる方向に光を反射しますが、あらゆる方向から全体が明るく見えるというわけではありません。凸面鏡の表面の一部が輝く点のように見えるだけで、反射光が眼に届かない部分は暗いはずです。

 コペルニクス派のサルヴィアチは実際に凸面鏡を壁にかけて実験をし、どこから見ても壁の方が凸面鏡より明るく見え、凸面鏡がどこにあるかわからないことを確認します。そして、もし月が球面だったら、月全体が輝いて見えるはずがなく、月は輝く点のように見えるはずである。月の表面は鏡のように滑らかではなく、壁のように乱雑になっていると結論づけます。

  つまり、月は正反射ではなく、乱反射しているからこそ、明るく見えるということを明らかにしたのです。

光の乱反射
光の乱反射

 次の図のように真っ暗な部屋で鏡と白い紙を真上からペンライトで照らします。真横から見ながら実験すると、鏡の見え方は変化しませんが、白い紙は光があたったところ全体が明るくなります。これは鏡が光を真上の方にしか反射しないのに対し、白い紙は光をいろいろな方向に反射するからです。

鏡と白い紙にペンライトの光を当てる
鏡と白い紙にペンライトの光を当てる

 このように光が物体の表面で乱反射するおかげで、私たちは物体の姿や色をいろいろな方向から見ることができるのです。ガリレオはこのことを説明し、月の表面が鏡のように滑らかではなく、凸凹であることを明らかにしたのです。

ガリレオは月の表面を実際に見ていた 

 1604年にケプラーの超新星(SN1604)が発見されると、天体観察への関心がたかりました。ガリレオは1597年にヨハネス・ケプラーにコペルニクスの地動説を指示する手紙を送っていますので、ケプラーの超新星の発見には刺激されたのではないかと思われます。

 当時、天体を観察できる望遠鏡はありませんでした。オランダの眼鏡職人のハンス・リッペルスハイが凸レンズと凹レンズを組み合わせたオランダ式望遠鏡を発明したのは1608年のことでした。ガリレオは独自にオランダ式望遠鏡を製作し、天体の観察を行いました。

 

ガリレオの望遠鏡
ガリレオの望遠鏡

 

 ガリレオは月の表面の観察も行い、1610年の著書『星界の報告』において、月はアリストテレスが主張したような表面が鏡のように滑らかな
球体ではなく、地球の表面と同様に凸凹しているということを記しています。この観察結果をもって、天文対話で3人に「月が明るく輝いて見える理由」を議論させたのです。

ガリレオの月の満ち欠けの観察図
ガリレオの月の満ち欠けの観察図

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2020年10月22日 (木)

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学(鶴田 匡夫)

光の鉛筆 ―光技術者のための応用光学―

鶴田 匡夫 (著)

 本ブログでも紹介した「光とレンズ」の著者の鶴田匡夫さんが雑誌『O plus E』(1979年創刊)で連載している記事をまとめた本です。『光の鉛筆』は十一巻の書籍にまとめられています。この本は第一巻です。雑誌に連載された記事ですので、それぞれの記事が独立した読み物になっています。身近な事柄を題材に光学を解説しています。「なるほど、そうだったのか」と改めて理解が深まる本です。

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概要

― 光技術者のための応用光学 ―

だれでも知りたいと思うこと、考えてみたくなること。そんな話題がいっぱいです。「海の色」「洗い髪」といった身近な話題から、アッベやショットの光学歴史物語、収差補正の数学、光学系への熱影響……などなど、あなたの知的好奇心をきっと満足させます。本書の魅力は、徹底した資料蒐集、原著論文の深い読込みと咀嚼、そして考察、といった執筆の姿勢によって生み出されています。光を原点から学びたい方、光学設計でお困りの方、光学を教える立場にある方、特に通り一遍の解説では満足できない方、光に携わるすべての方におすすめします。

目次

  1. シャッター
  2. 光学像の明るさ
  3. 絞 り
  4. 光の反射
  5. フレネルの回折
  6. 立体感と立体鏡
  7. 屈折の法則
  8. フレアとゴースト
  9. 光学における相反定理
  10. 魔 鏡
  11. 光学ガラス
  12. 回折格子
  13. レンズの結像性能 1
  14. レンズの結像性能 2
  15. 光のブーメラン
  16. 顕微鏡結像と位相差法
  17. 干渉法と干渉顕微鏡
  18. 天体干渉計
  19. めがね
  20. モアレ
  21. フィルター
  22. 屈折率の物理
  23. コロナ
  24. 偏光顕微鏡とレクティファイア
  25. 分散と全反射
  26. 空の明るさと星の明るさ
  27. 光速度の測定―天文学の時代―
  28. 光速度の測定(続)―光の点滅,偏向,変調―
  29. エバネッセント波
  30. サイドルッキングレーダー
  31. 自然の干渉色
  32. エリプソメトリー
  33. レンズの伝達関数
  34. 散乱光による干渉
  35. ベアリングボール
  36. スペックル
  37. 光学密着
  38. 目と偏光
  39. 熱放射
  40. 積分球
  41. 赤外放射と検出器
  42. モノクロメーター
  43. 視野レンズとリレーコンデンサー
  44. シュミットカメラ
  45. 入射瞳と射出瞳
  46. バビネの原理
  47. 文献

 

発売日 : 1984/12/25
単行本 : 483ページ
ISBN-10 : 491585101X
ISBN-13 : 978-4915851018
出版社 : アドコム・メディア (1984/12/25)


 

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2020年10月19日 (月)

空に広がる波状雲(はじょううん)

 18日の夕方、空に波状雲が広がっていました。波状雲は、雲が連なったり、うねったりして、波のような形をしています。よく波状雲は地震雲と呼ばれたりしますが、雲がこのような形になるのは上空の大気の流れによります。大気の流れが波打って大気波が生じると、空気が上下に動き、波打った形の雲ができます。

波状雲
波状雲

 波状雲は大気の流れによってできるので、雲の形には関係がなく、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、層積雲、層雲などで生じます。この写真の波状雲の元の雲は高層雲でしょうか。

波状雲
波状雲

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2020年10月17日 (土)

どっちが細長く見える?|シェパード錯視

 次の2つの箱を比べて見てください。どちらが細長く見えるでしょうか。

Shepard illusion シェパード錯視
どちらが細長く見える?

 この図はシェパード錯視といって、アメリカの認知科学者ロジャー・ニューランド・シェパード(Roger Newland Shepard )が1981年に下記の論文で発表したものです。

Shepard, R. N. (1981) Psychophysical complementarity. in Kubovy, M. and Pomeranz, J. (Eds.), Perceptual Organization, Hillsdale, NJ: Lawrence Erlbaum Associates, pp. 279-341. (see p.298)

 同様な錯視が1975年に日本の心理学者の牧野達郎が下記の論文で発表しています。

Makino, T. (1975). Comparison process as a factor of size-distance relationship. Psychologia, 18, 104-109.

 さて、こういう問題をわざわざ出すので答えは想像できると思いますが、左側と右側の箱の上部の平行四辺形はまったく同じ大きさです。そうは言っても、明らかに左側の方が細長く見えると思います。長い辺を奥行きの方へ傾くように配置すると長く見えます。ですが、左側の平行四辺形を45度右に回転してみると、

Shepard illusion シェパード錯視
左側の平行四辺形を回転してみると

 さて、平行四辺形でななく、次のように台形でやってみると、もっと誇張されます。この2つの台形は同じ大きさで同じ形をしています。

Shepard illusion シェパード錯視
台形にすると誇張される

 下記の本はロジャー・シェパードが1990年に発表した著作の日本語版です。

視覚のトリック―だまし絵が語る「見る」しくみ

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2020年10月 5日 (月)

安価なスタンド付き三角プリズム

三角プリズム 物理学 光の実験 教育 光学ガラス製 光スペクトル 物理教育

 三角プリズムは以前は高価だったのですが、最近では安価な中国製のものが入手できるようになりました。しかしながら、スタンド付き(台座付き)の三角プリズムは安価なものはありませんでした。この三角プリズムは価格は2,400円ぐらいで、写真のようにプラスチック製のスタンドが付いています。プラスチック製ですので、多少のゆがみはありますが、簡単なプリズム分散の実験には十分に使えます。スタンドがなくて実験に苦労していた人は楽になると思います。

 プリズム本体は光学ガラス製とあります。どんな光学ガラスなのかは説明はありませんが、本ブログの記事「光学ガラス製のガラス玉」で紹介したBK7相当のK9と呼ばれれているものかもしれません。

台座付き三角プリズム
台座付き三角プリズム

 次のような箱に入って届きました。中国語で三角プリズムは「三稜鏡」と言います。ちなみにレンズは「透鏡」です。

三稜鏡の箱
三稜鏡の箱

【仕様】

材質:プラスチックスタンド、光学ガラスプリズム
スタンドカラー:ブラック
サイズ(L * W):17 * 12cm
重量:約 109g

パッケージに含まれるもの:
1×光学三角プリズム
1×ブラックスタンド

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2020年10月 2日 (金)

更新情報(炎の色、虚物体ほか)|光と色と THE NEXT

「光と色と」の別館サイト「光と色と THE NEXT」に下記の記事を掲載しました。

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