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2020年7月20日 (月)

分光分析の幕開け(6)-赤外線も紫外線も光の仲間

 1800年のハーシェルによる熱線(赤外線)の発見、1801年のリッター による化学線(紫外線)の発見により、太陽光のスペクトルの両側に目に見えない放射線が存在することが判明し、熱線と化学線も光の仲間と考えられましたが、しばらくの間は光とは別なものと考えられました。
 
 1814年、電磁気学や偏光の研究を進めていたフランスの物理学者ジャン=バティスト・ビオが、熱線・可視光線・化学線はすべて同じ種類の放射線であることを提言しましたが、この3種類の放射線が常に一緒に発生すると考えていたスコットランドの科学者ディヴィッド・ブリュースターによって否定されました。

ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター
ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター

 イタリアの物理学者マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリは1832年頃から熱線の性質の研究を行い、熱線が光と同様に屈折・反射・偏光することを示しました。マセドニオ・メローニは著書『La thermocrose au la coloration calorifique(Vol. I., Naples, 1850)』の執筆を進めていましたが、執筆途上に感染症コレラにかかり亡くなりました。

マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ
マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ

 フランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルは光を物質に当てると電気が発生する光起電力効果の研究を進めていました。ベクレルは電気が熱によって発生したものではないと考え、1839年にカラーフィルターを使用してさまざまな波長の光で光起電力効果を確かめました。ベクレルは太陽光のスペクトルについても研究を進め、太陽電池の基礎的な研究を行いました。なお、参考までに放射線の発見者アンリ・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの息子、電気化学や発光現象を研究したアントワーヌ・セザール・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの父です。

アレクサンドル・エドモン・ベクレル
アレクサンドル・エドモン・ベクレル

 このようなスペクトルの研究をもとに、熱線や化学線が光の仲間と認められ、それぞれ赤外線、紫外線と名付けらたのです。

 ところで、赤外線と紫外線は英語でそれぞれinfrared、ultravioletです。infra-は「下に」、ultra-は「超える」を意味する接頭語で直訳すると、赤外線と紫外線にはなりません。infraredは光のエネルギーが赤色光より下という意味で、ultravioletは光のエネルギーが紫色光より上とという意味と考えておくと良いでしょう。

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