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2020年7月

2020年7月28日 (火)

分光分析の幕開け(7)-フラウンホーファー線の発見

プリズムの虹に隠された秘密

 ニュートンがプリズム分光実験から約150年後の1814年、ドイツの光学機器の技術者ヨゼフ・フォン・フラウンホーファーは高精度のプリズムを搭載した望遠鏡で太陽光のスペクトルを観察していたところ、綺麗な虹色のスペクトルの中に、暗線が飛び飛びに存在していることに気がつきました。

ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー
ヨゼフ・フォン・フラウンホーファー

 スペクトルの中に暗線があるということは、その部分の光が欠けていることを意味しています。

太陽光の可視スペクトルの暗線
太陽光の可視スペクトルの暗線

 当初、フラウンホーファーは、この暗線は光学ガラスの問題で生じたのではないかと考え、別の光学ガラスを使って観察を繰り返しました。しかし、何度繰り返しても暗線が消えることはなかったのです。この暗線はフラウンホーファー線と呼ばれます。

 フラウンホーファー線は実際にはイギリスの化学者・物理学者のウイリアム・ウォラストンによって1802年に発見されていますが、暗線の探究を行ったフランホファーの名が付けられました。

暗線の正体を探る

 フラウンホーファーは太陽光のスペクトルの暗線の数と位置を丁寧に詳しく調べあげ、およそ600本の暗線があることを確認しました。続いて、月や金星の光のスペクトルについても調べてみました。すると、それらのスペクトルにも暗線が見つかったのです。そして、その暗線の数と位置を調べてみたところ、太陽光のスペクトルの暗線と一致していました。

 フラウンホーファーは、この結果について、月や金星は太陽光を反射しているのだから、太陽と同じ結果になっても不思議ではないと考えました。そこで、フラウンホーファーはいくつかの恒星の光のスペクトルを調べてみました。すると、恒星の光のスペクトルの暗線の数や位置が太陽光のスペクトルの暗線とは異なることを発見したのです。

 フラウンホーファーはスペクトルの暗線を調べると、太陽や恒星について詳しく知ることができると考え、太陽光のスペクトルの波長の長い赤色の光の方から、主要な暗線にA、B、C…と記号をつけました。

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可視スペクトルとフラウンホーファー線の記号

 フラウンホーファーは炎の中に食塩を入れ、ナトリウム原子の炎色反応で生じる黄色い光のスペクトルを調べてみました。すると、黄色い光の輝線が暗線Dと同じ位置に現れました。

Photo_20200728135501
ナトリウムの輝線スペクトル

 

ナトリウム原子の輝線は、分光分析の幕開け(1)-炎色反応でナトリウムの輝線を発見で説明したように、1752年のトーマス・メルビルの炎色反応の実験によって発見されています。メルビルはこの輝線がナトリウム原子に由来するものであることには気がついていませんでしたが、フラウンホーファーの暗線Dはメルビルが発見した輝線と同じものでした。

 フラウンホーファーは暗線Dとナトリウム原子の輝線に何らかの関係があると考え、この結果を報告しました。しかし、当時の科学者たちから受け入れられず、この発見は忘れ去られることになりました。

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2020年7月21日 (火)

「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 「レンズ」のキホン (イチバンやさしい理工系)

 光学とレンズの初心者向けの図解入門書です。フルカラーですので、光路図などがとてもわかりやすくなっています。光学とレンズのキホンのキから解説しているので、これからレンズのことを勉強したい人だけでなく、レンズの基本を教える人にとっても役に立つと思います。

Hyosi

桑嶋幹(著)

レンズを知ると光学はこんなにおもしろい!
昨今のデジタル一眼レフカメラのブームもあって、レンズのことをもっと知りたい人が増えています。本書は、高校生から一般の人を対象に、レンズのことを知る超入門書として、図解や写真をふんだんに使いながら、わかりやすく光の世界を解説します。

レンズを知ることは、光の性質を知ることにつながります。また、メガネや望遠鏡などの光学機器ばかりか、ヒトの眼の構造の理解も進みます。身近な例を題材に、徹底してやさしく、おもしろい話題を集めました。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2010/6/18)
ISBN-10: 4797357150
ISBN-13: 978-4797357158
発売日: 2010/6/18

読者サポートサイト

http://lens-softbank.goryoukaku.com/

目次

はじめに
登場キャラクターのご紹介

第 1 章 レンズのお話

001 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具
002 レンズの歴史
003 小さなものを拡大して見る顕微鏡の歴史
004 遠くのものを近くに見る望遠鏡の歴史
005 レンズでできた像を記録するカメラの歴史

COLUMN レンズの語源

第 2 章 光のふるまい

006 光の直進性と逆進性
007 光の反射の法則
008 鏡による光の反射
009 光の乱反射
010 透明な物体を通る光
011 光は物質の境界面で折れ曲がる 光の屈折
012 光はどのような道筋を選んで進むのか フェルマーの原理
013 スネルの法則①
014 スネルの法則②
015 空気のゆらぎが光を曲げる 陽炎と逃げ水のしくみ
016 空気のゆらぎが光を曲げる 蜃気楼と大気差のしくみ
017 プリズムでできる光の色の帯 光の分散
018 大空にかかる光の色の帯 虹ができるしくみ
019 虹の形はどうして円弧なのか
020 光は波か粒子か① 光の回折
021 光は波か粒子か② 光の干渉
022 光の回折と干渉でできる虹のしくみ
023 光は縦波か横波か
024 偏光メガネとブリュースターの法則
025 光は電磁波の仲間
026 光の速さはどれぐらいか
027 光のふるまいを考える幾何光学と波動光学

COLUMN 近接場光ー光の回折限界を超える光 66

第 3 章 レンズのしくみと働き

028 点光源からでた光はどのように進むか
029 影のでき方
030 ピンホールでできる像
031 ピンホールカメラでできる像
032 レンズの基本的なしくみ
033 凸レンズと凹レンズの基本的な働き
034 レンズの焦点と焦点距離
035 レンズの主点と主平面
036 薄肉球面レンズの焦点距離の求め方
037 レンズを通る光の進み方
038 凸レンズでできる実像
039 無限遠からやってくる光は凸レンズでどこに像を結ぶか
040 凸レンズでできる虚像
041 凸レンズを半分隠すと実像と虚像はどうなるか
042 物体が焦点の位置にあるとき実像と虚像はどうなるか
043 凹レンズでできる虚像
044 レンズの写像公式と倍率① 凸レンズの実像の場合
045 レンズの写像公式と倍率② 凸レンズの虚像の場合
046 レンズの写像公式と倍率③ 凹レンズの虚像の場合
047 レンズの写像公式のまとめ
048 レンズの倍率を求めるもう1つの方法
049 レンズの作図の裏技① 光軸上の1点からでて凸レンズに入射する光
050 レンズの作図の裏技② 凸レンズに任意の傾きで入射する光
051 レンズの作図の裏技③ 凹レンズを通る光の場合
052 2枚のレンズを通る光
053 凹面鏡と凸面鏡のしくみ
054 凹面鏡と凸面鏡で反射する光
055 レンズの分類の仕方
056 表面屈折を利用したレンズ① 球面レンズ
057 表面屈折を利用したレンズ② 非球面レンズ
058 表面屈折を利用したレンズ③ シリンドリカルレンズ
059 表面屈折を利用したレンズ④ トロイダルレンズ
060 表面屈折を利用したレンズ⑤ フレネルレンズ
061 表面屈折を利用しないレンズ① グリンレンズ(屈折率分布レンズ)
062 表面屈折を利用しないレンズ② 回折レンズ

COLUMN メタマテリアルー負の屈折率をもつ物質

第 4 章 レンズの性能

063 レンズをつくる光学ガラスに求められる性質
064 光学ガラスの屈折率
065 光学ガラスのアッベ数
066 光学ガラスの分類
067 ガラス以外の光学材料① 天然や人工の結晶
068 ガラス以外の光学材料② 光学プラスチック
069 レンズができるまで① 球面レンズのつくり方
070 レンズができるまで② 非球面レンズのつくり方
071 収差とはなにか
072 球面収差
073 球面収差の補正
074 コマ収差と非点収差
075 像面湾曲と歪曲収差
076 軸上色収差と倍率色収差
077 像の大きさと明るさ
078 Fナンバーと実効Fナンバー
079 開口数NAとレンズの分解能
080 絞りと瞳
081 絞りの位置とテレセントリック
082 焦点深度と被写界深度

COLUMN ガラスはなぜ透明なのか

第 5 章 レンズを使った身近なもののしくみ

083 ヒトの眼の構造
084 正常な眼のしくみと働き
085 近視と遠視
086 老視と乱視
087 コンタクトレンズのしくみ
088 ルーペのしくみ
089 ルーペの倍率
090 光学顕微鏡のしくみ① 基本的なしくみ
091 光学顕微鏡のしくみ② 倍率と分解能
092 望遠鏡のしくみ① 基本的なしくみ
093 望遠鏡のしくみ② ケプラー式望遠鏡の光の進み方
094 望遠鏡のしくみ③ オランダ式(ガリレオ)望遠鏡の光の進み方
095 望遠鏡のしくみ④ 望遠鏡の倍率
096 望遠鏡のしくみ⑤ ピント合わせが必要なのはなぜ?
097 カメラのしくみ① Fナンバーとシャッタースピード
098 カメラのしくみ② 画角と焦点距離
099 カメラのしくみ③ デジタルカメラの画角と焦点距離
100 進化するレンズ 流体レンズのしくみ

COLUMN 像反転系 倒立像を正立像として見る

参考文献
索引

サンプルページ

第1章 第1節 レンズは光の屈折をたくみに利用するために生みだした道具

1001

第2章 第6節 光の直進性と逆進性

2006  

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2020年7月20日 (月)

分光分析の幕開け(6)-赤外線も紫外線も光の仲間

 1800年のハーシェルによる熱線(赤外線)の発見、1801年のリッター による化学線(紫外線)の発見により、太陽光のスペクトルの両側に目に見えない放射線が存在することが判明し、熱線と化学線も光の仲間と考えられましたが、しばらくの間は光とは別なものと考えられました。
 
 1814年、電磁気学や偏光の研究を進めていたフランスの物理学者ジャン=バティスト・ビオが、熱線・可視光線・化学線はすべて同じ種類の放射線であることを提言しましたが、この3種類の放射線が常に一緒に発生すると考えていたスコットランドの科学者ディヴィッド・ブリュースターによって否定されました。

ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター
ジャン=バティスト・ビオとディヴィッド・ブリュースター

 イタリアの物理学者マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリは1832年頃から熱線の性質の研究を行い、熱線が光と同様に屈折・反射・偏光することを示しました。マセドニオ・メローニは著書『La thermocrose au la coloration calorifique(Vol. I., Naples, 1850)』の執筆を進めていましたが、執筆途上に感染症コレラにかかり亡くなりました。

マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ
マセドニオ・メローニとレオポルド・ノビーリ

 フランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルは光を物質に当てると電気が発生する光起電力効果の研究を進めていました。ベクレルは電気が熱によって発生したものではないと考え、1839年にカラーフィルターを使用してさまざまな波長の光で光起電力効果を確かめました。ベクレルは太陽光のスペクトルについても研究を進め、太陽電池の基礎的な研究を行いました。なお、参考までに放射線の発見者アンリ・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの息子、電気化学や発光現象を研究したアントワーヌ・セザール・ベクレルはアレクサンドル・エドモン・ベクレルの父です。

アレクサンドル・エドモン・ベクレル
アレクサンドル・エドモン・ベクレル

 このようなスペクトルの研究をもとに、熱線や化学線が光の仲間と認められ、それぞれ赤外線、紫外線と名付けらたのです。

 ところで、赤外線と紫外線は英語でそれぞれinfrared、ultravioletです。infra-は「下に」、ultra-は「超える」を意味する接頭語で直訳すると、赤外線と紫外線にはなりません。infraredは光のエネルギーが赤色光より下という意味で、ultravioletは光のエネルギーが紫色光より上とという意味と考えておくと良いでしょう。

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2020年7月15日 (水)

世界の大思想〈第2巻〉アリストテレス ニコマコス倫理学/デ・アニマ(霊魂について)/詩学 (1966年)

世界の大思想〈第2巻〉アリストテレス ニコマコス倫理学/デ・アニマ(霊魂について)/詩学 (1966年)

高田 三郎 (翻訳), 村治 能就 (翻訳)

 別館「光と色と THE NEXT」において、「アリストテレスの変改説(変容説・変化説)」について解説しました。変改説の基本的な考えは、アリストテレスの著書『Περὶ Ψυχῆς(ラテン語:デ・アニマ、和名:霊魂論/魂について/心とは何か)英語名:On the soul』に記述があります。アリストテレスはこの本の第二巻において感覚を取りあげ、第7章で視覚と色について言及しています。

 この本は『Περὶ Ψυχῆς(デ・アニマ)』の訳本です。このような本の訳本は日本語も非常にわかりにくいのですが、この本はわかりやすい日本語で記述されており、アリストテレスが自然科学について、どのように捉えていたのか理解することができます。

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-: 437ページ
出版社: 河出書房新社 (1966)
ASIN: B000JBC0NU
発売日: 1966
梱包サイズ: 19.3 x 13.5 x 2.8 cm

目次

第2巻 - 全12章
第1章 - プシュケーの共通定義
第2章 - プシュケーの諸性質と正しい定義
第3章 - プシュケーの諸能力
第4章 - 諸能力の研究上の順序
第5章 - 感覚についての一般的規定
第6章 - 感覚対象の種類
第7章 - 視覚と色
第8章 - 聴覚と音
第9章 - 嗅覚と臭い
第10章 - 味覚と味
第11章 - 触覚
第12章 - 諸感覚の一般的性格

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2020年7月 7日 (火)

CASIO QV-10A-コンパクトデジタルカメラの市場を開いたデジカメ

 CASIO QV-10Aはカシオ計算機が1996年に発売したコンパクトデジタルカメラです。1年前の1995年にCASIO QV-10というモデルが発売されていますが、QV-10AはQV-10の改良版になります。QV-10には撮影した写真の下部が緑色を呈するという問題がありました。QV-10Aではこの問題が解決されています。

Casioqv10a1

 コンパクトデジタルカメラはCASIOのQV-10やQV-10Aの発売前にもありましたが、実質的にデジタルカメラの市場を大きく開いたのは、斬新な特徴をもったCASIOのQV-10とQV-10Aと言っても過言ではないでしょう。

 どこが斬新だったかというと・・・

 まず、1番目の特徴は液晶パネルを搭載した世界初のデジタルカメラで、撮影中の画像や撮影後の写真をその場で確認することができました。銀塩カメラしか使ったことのない人には衝撃的な機能でした。

Casioqv10a2

 第2の特徴はレンズを回すと自撮りができたということです。この時代に自撮りを先取りしていたのはすごいことです。銀塩カメラで自撮りする場合は勘で撮影するしかありませんでしたが、このカメラは液晶モニターで確認しながらの自撮りが可能でした。

Casioqv10a3

そして、第3の特徴は撮影した写真をパソコンで取り込んだり、テレビに映すことができました。カメラの丈夫には撮影に必要なボタンやパソコンなどに接続するためのコネクタがあります。

Casioqv10a4

 1995年にはWindows 95が発売開始となり、パソコンで画像を見る機会も増えてきました。また、商用インターネットが始まり、ホームページを作る人が増えてきました。QV-10やQV-10Aはホームページに掲載する写真を撮影するカメラとしてはたいへん便利だったのです。

 撮像素子は、なんと25万画素の1/5インチのCCDイメージセンサーで、320x240ドットの写真を撮影することができました。メモリは2MBで前述のサイズの写真を96枚撮影することができました。

 下記の写真は、当時、新幹線に乗ったときに富士山を撮影したものです。

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 レンズが単焦点だったり、電池の消耗が早いなどの欠点もありましたが、自分の周りには、このカメラを持っていた人はずいぶんいました。自分もこのカメラをきっかけにデジタルカメラを買うようになりました。

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2020年7月 2日 (木)

ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか

ハイゼンベルクの顕微鏡~不確定性原理は超えられるか

石井 茂 (著)

 この本も中古でしか入手できなくなりました。前半で量子力学の発展の歴史を解説し、後半で不確定性原理にどのような欠陥があり、どのように修正されたのかを「小澤の不等式」の紹介とともに解説しています。

ハイゼンベルグの不確定性原理とは
 ニールス・ボーアのもとで研究をしていたヴェルナー・ハイゼンベルクは、1927 年に、電子などのミクロな粒子の位置と運動量は同時に特定することはできず、位置を特定しようとすると運動量が決まらなくなり、運動量を特定しようとすると位置が決まらなくなるという「不確定性原理」を発表しました。この位置と運動量を同時に特定することができないというのは、測定方法の問題ではなく、電子のようなミクロの粒子の基本的な性質として、ある時間に、どの位置にいて、どんな速さで運動しているのかは、一意的に決まらないというものでした。

 

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「不確定性原理に欠陥」「不確定性原理を破る小澤の不等式が実証」

日経サイエンス ハイゼンベルクの不確定性原理を破った! 小澤の不等式を実験実証
http://www.nikkei-science.com/?p=16686

Nature Physicsに掲載された論文は次の通りです。
Experimental demonstration of a universally valid error–disturbance uncertainty relation in spin mesurements
https://www.nature.com/articles/nphys2194  

著者からのコメント

 現代社会は量子力学に多くを負っています。コンピュータを動作させる原動力の半導体は、量子力学なしでは今日の隆盛はあり得ませんでした。インターネットで情報を運ぶ手段となっているレーザー光の技術も、量子力学なしには発展できなかったでしょう。その量子力学の基本原理が「ハイゼンベルクの不確定性原理」です。

 1927年、天才物理学者ハイゼンベルクは次のように宣言しました。量子の世界では、物体の位置と速度を同時に知ることはできない。この関係は非常に簡単な不等式で表されます。そしてハイゼンベルクはこの原理を、ミクロの世界を見ることのできる仮想的な顕微鏡を使った思考実験によって導きました。本書の表題はそれにちなんだものです。

 ハイゼンベルクの不確定性原理は以後、絶対的な基本原理として君臨し続けてきたのでした。しかしそこには、あいまいな点が残っていました。75年間、誰も指摘しなかったこのあいまいさを、ある日本人科学者が明快に整理して説明したのは2002年のことです。それは発見者の名をとって「小澤の不等式」と呼ばれています。ハイゼンベルクが発見した不等式は絶対不変の原理ではなく、小澤の不等式によって乗り越えられるかもしれない、という可能性が出てきたのです。

 しかも20世紀後半の技術進歩によって、より小さな現象を測定することが可能になってきました。ハイゼンベルクの不等式が正しいのか、それとも小澤の不等式が正しいのか。それは遠からず実験によって証明されるでしょう。

 本書はその新しく発見された小澤の不等式が、どのようなものであるかを解説します。ギリシャ時代から今日に至るまで、物理学上の基本的発見のほとんどが欧米で成し遂げられてきました。現代の物理学を象徴するハイゼンベルクの不確定性原理が、日本人科学者の手によって覆されるとすれば、こんな痛快なことがまたとあるでしょうか。(著者:石井 茂)

出版社 / 著者からの内容紹介

 ハイゼンベルクが発見した不確定性原理は、量子力学の一応の完成を告げると同時に、量子力学の物理的解釈をめぐって論争の種をまくことになった。量子力学の数学的定式化はフォン・ノイマンによって達成されるが、このときノイマンは不確定性原理がもたらす量子の観測問題にも手を染めた。量子力学を疑う人々がほとんどいなくなっていったこととは裏腹に、観測問題については「シュレディンガーの猫」「ウィグナーの友人」「EPRパラドックス」などのさまざまな疑問が提出され、長い間にわたって論争が続いてきた。

 量子力学における観測問題を決着させたのは、日本の数理物理学者であった。その新しい観測理論は、ハイゼンベルクの不確定性原理に修正を迫る結果になった。

 本書はハイゼンベルクやシュレディンガーなどのあまり知られていないエピソードをたっぷりと紹介しながら、不確定性原理がいかに発見され、その後いかなる道をたどったかを物語る。

内容「BOOK」

「小澤の不等式」がハイゼンベルクを乗り超える!不確定性原理の不思議な世界への招待。

単行本: 272ページ
出版社: 日経BP社 (2005/12/28)
ISBN-10: 4822282333
ISBN-13: 978-4822282332
発売日: 2005/12/28
商品の寸法: 19.4 x 13.4 x 2 cm

目次

第1章 不確定性原理とは何か
第2章 不確定性原理はどのようにして発見されたか
第3章 物理学会との対決―コペンハーゲン解釈の成立
第4章 再開された論争―アインシュタインの再批判
第5章 原子核物理学の発展とハイゼンベルク
第6章 コペンハーゲン解釈への挑戦
第7章 不確定性原理は破れているのか―重力波測定の限界をめぐって
第8章 書き直された不確定性原理―ハイゼンベルクから小澤へ

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