分光分析の幕開け(3)-赤外線の発見
熱線の発見
1800年、イギリスのウィリアム・ハーシェルは、プリズムでできた太陽光のスペクトルのさまざまな部分に温度計を当てて、様々な色の光の温度を測定しました。
| Herschel, W(1800) Experiments on the refrangibility of invisible rays of the sun. Phil. Trans. R. Soc. Kond.,90,255-283,284-292,293-326. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspl.1800.0013 |
実験の結果、赤色光は周囲より7 F°、緑色光は3 F°、紫色光は2 F°だけ温度を上昇させることを発見しました。
さらに、ハーシェルはスペクトルの赤色光側の外側の温度を測定してみました。このときプリズムでできた可視スペクトルの幅は4インチほどになりましたが、赤色光側の端から1.5インチ外側の部分が最も大きい9 F°の温度上昇となることを突き止め、スペクトルの目に見える色がついている部分よりも温度が高くなることを発見しました。
また、ハーシェルは紫色光の端から外側の部分でも同じ測定を試みましたが、温度上昇は認められませんでした。ハーシェルはこの領域での探究は継続しなかったようです。
ハーシェルは、太陽光のエネルギーの最大強度は緑色光から黄色光あたりにあることから、太陽光の熱エネルギーの最大強度は、光のエネルギー最大強度と比べてかなりずれていることを指摘しています。
ハーシェルは一連の実験から、赤色光の外側に熱を運ぶ熱線があると考えました。ハーシェルは熱線が光と同じ屈折と反射の法則に従うことを発見し、放射熱と光は本質的に同じものであることを提案しましたが、19世紀半ばまで受け入れられませんでした。
また、ハーシェルが発見したのは紛れもなく赤外線でしたが、しばらくの間は「熱線」などと呼ばれました。
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