分光分析の幕開け(4)-紫外線の発見
化学線の発見
1801年、ドイツのヨハン・ヴィルヘルム・リッターは、1800年のハーシェルの熱線(赤外線)の発見に触発されて、太陽光のスペクトルの紫色光の外側にも目に見えない光があるのではないかと考えて、実験を行うことにしました。
Die Auffindung nicht sichtbarer Sonnenstrahlen außerhalb des Farbenspektrums an der Seite des Violetts. Ritter, J. W. (1801) 6. Von den Herren Ritter und Backmann. Annalen der Physik, 7, 527. |
実験を行うにあたり、リッター は塩化銀の光化学反応を利用しました。当時、硝酸銀や塩化銀に光を当てると黒化する現象はよく知られていました。最初の記録としては、1614年にタリアの医師Angeleo Salaが太陽光を硝酸銀の粉末に当てると色が黒くなることを報告しています。
リッターは、太陽光のスペクトルの様々な色の光を塩化銀に当て、塩化銀が白色から黒色に変化する反応速度を調べました。そして、赤色光では、塩化銀がほとんど変色しないこと、青色光が赤色光よりも速く塩化銀を黒化させることを確認し、さらにスペクトルの紫色光の外側0.5インチの色がついていない部分がもっとも速く塩化銀を黒化することを発見しました。
この実験の結果から、リッターはスペクトルの紫色光の外側に目に見えない物質を変化させる放射線が存在することを示し、これを脱酸線(de-oxidierende Strahlen)と名付けました。脱酸素線は後に化学線と呼ばれるようになりました。
リッター が発見した化学線が光の仲間であることは直ちには受け入れられませんでした。化学線が紫外線と呼ばれるようになるまでには、しばらく時間を要しました。
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