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2020年5月 9日 (土)

レンチキュラーレンズで光学迷彩?(2) レンチキュラーレンズの仕組み

レンチキュラーレンズはどんなレンズ?

 レンチキュラーレンズは半透明の板状のプラスチック製レンズです。レンチキュラーレンズを触ってみると、片面はツルツルしていて、片面はザラザラしていることがわかります。良くみると、縦方向の縞模様が入っていることがわかります。

レンチキュラーレンズ

 レンチキュラーレンズの表面をルーペで拡大すると、次の図のように、細長いカマボコ状のものが並んでいることがわかります。このカマボコ状のものは、その一つ一つがシリンドリカルレンズになっています。

レンチキュラーレンズの表面を拡大してみると

シリンドリカルレンズとは

 次の写真のように、水を入れた牛乳びん越しに「あ」を見ると、びんが縦置きのときは左右が反転して横に伸びて見え、横置きのときは上下が反転して縦に伸びて見えますこのように方向で見え方が異なるのは、牛乳びんが円柱形をしているからです。

牛乳ビンのレンズ

 次の図のように、円柱の側面の一部を切り出した形のレンズをシリンドリカルレンズといいます。その形状からカマボコレンズと呼ばれることもあります。普通の球面レンズはどこを切り出しても断面に曲面がありますが、シリンドリカルレンズは曲面をもつ断面ABと、曲面をもたない断面CDがあります。

シリンドリカルレンズの構造

 そのため、シリンドリカルレンズには、レンズの働きをする向きと、働きをしない向きがあります。普通のレンズは次の図の左側のように光軸に平行な光を1点の焦点に集めますが、シリンドリカルレンズは光を直線上に集めます。

普通のレンズとシリンドリカルレンズの違い

 小さなシリンドリカルレンズをたくさん配列したレンズがレンチキュラーレンズです。レンチキュラーレンズを通してものを見たときに、『レンチキュラーレンズで光学迷彩?(1) 手品と物体の見え方』で紹介したような見え方になるのは、たくさん配列されているシリンドリカルレンズの働きによるものです。どうして、ものが消えたり、伸びて見えたりするかについては、次の機会に説明します。

レンチキュラーレンズという用語

 ところで、英語の『レンチキュラー(lenticular)』は「レンズの」「レンズ状の」「水晶体の」という意味です。ですので、レンチキュラーレズは「レンズのレンズ」「レンズ状のレンズ」で、「頭痛が痛い」「馬から落馬する」のような重言になっています。

 日本語特有の誤用かと思いましたが、英語版のWikipeidaではlenticular lenseとなっていますし、海外の多くのサイトでlenticula lensと表現されています。日本でもレンチキュラーレンズという表現が多いのですが、日本語版のWikipediaではレンチキュラーとなっています。なお、日本語版および英語版のWikipediaの解説は3Dやアニメーションを表示するためのレンチキュラーレンズが前提となった説明になっていて、レンチキュラーレンズそのものの説明になっていないようです。

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