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2020年5月

2020年5月31日 (日)

分光分析の幕開け(2)-ニュートンのプリズム実験

ニュートンのプリズム実験

 分光分析の幕開けと言えば、アイザック・ニュートンが1666年に行ったプリズムの実験を外すことはできないでしょう。ニュートンは無色の太陽光をプリズムに通すと、虹のような連続した光の色の帯が現れる現象について研究を重ね、この光の色の帯のことをスペクトルと名付けました。

 さて、この「分光分析の幕開け」シリーズの(1)でニュートンのプリズムの実験についてあえて触れなかった理由として、

  • このブログでニュートンのプリズム実験についての説明を何度か掲載していること
  • ニュートンのプリズム実験から19世紀の分光学の発展期の間には相当の年月が経過しており、ニュートンの実験が直接的に分光学の発展に寄与したとまではいえないこと

などもあるのですが、ニュートンが1704年に著作「光学」で非常に重要な先駆的な実験と結果を示したにもかかわらず、その後の光の探究からはあえて遠ざかってしまったふしがあるからです。

Opticks

 ニュートンは光の正体を粒子と考え、光の直進、反射、屈折などの現象を説明をしました。クリスティアーン・ホイヘンスやロバート・フックは光のさまざまな現象を観察し、鋭い洞察力から光は波だと唱えました。しかし、当時、万有引力を発見していたニュートンの権威があまりにも絶大だったため、ニュートンの説が覆ることはありませんでした。

 ニュートンの著作「光学」に目を通してみると、前半部分に記述されている反射、屈折、プリズム分光などの現象の研究においては、光を粒子とした説明に勢いが感じられます。しかし、後半部分には、ニュートンリング、薄膜の構造色、回折など、光を粒子とすると説明が困難になりそうなものを題材として取り上げており、説明に苦戦しています。ニュートンの説明はこじつけのようなものもありましたが、それでも何とかつじつまを合わせて光の現象を説明できたのです。しかし、結論を出さずに説明を保留した現象もあります。

なぜ、ニュートンは自らの説明が困難になるような現象まで題材として取り上げたのでしょうか。それは、プリズムの実験からもわかるように、ニュートンが光と物質の相互作用と色の関係を解明しようとしていたからです。そういう意味では、ニュートンは何がなんでも光を粒子だと貫いていたわけではありませんでした。

 ニュートンは、自身やその他の多くの研究者が光の研究を進めていく過程で、光は周期的な性質をもつことを認識していました。ですから、光の正体は本当は波なのではないかと気がついていたようにも思います。しかし、ニュートンは、光の現象について、光が波であるという立場での説明はしませんでした。ニュートンが波の立場で光の現象を説明していたら、もっといろいろなことが解明されていたかもしれません。

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2020年5月29日 (金)

相対性理論 (岩波文庫)  by アインシュタイン

相対性理論 (岩波文庫)

A. アインシュタイン (著), 内山 龍雄 (翻訳)

 アインシュタインの相対性理論に関する最初の論文です。この本の表題は相対性理論とありますが、特殊相対性理論について書いたものであり、原論文のタイトルは「動いている物体の電気力学」です。

Einstein, A.  “Zur Elektrodynamik bewegter Körper ",
Annalen der Physik 322 (10): 891-921(June 30, 1905).
原著論文(ドイツ語)
http://myweb.rz.uni-augsburg.de/~eckern/adp/history/einstein-papers/1905_17_891-921.pdf

 1905年にドイツの学術誌アナーレン・デア・フィジークの第17巻に掲載されました。20世紀始めの名著です。アインシュタインは、当時、光の媒質と考えられていたエーテルの存在を否定し、光速度不変の原理を導入します。それまで絶対的と考えれていた時間と空間が相対的なものとなりました。

アインシュタイン相対性理論.

内容(BOOK DB)

 時空概念を一変させたアインシュタイン(1879‐1955)の相対性理論。その考え方の基本はすべて、最初の論文「動いている物体の電気力学」に述べられている。この論文の邦訳に加え、一般読者の理解のために、原論文の論旨展開を忠実・平易に再現してた解説をほどこした。アインシュタインが創出した思考過程にそって相対論が理解できる得難い一冊。

文庫: 187ページ
出版社: 岩波書店 (1988/11/16)
言語 日本語
ISBN-10: 4003393414
ISBN-13: 978-4003393413
発売日: 1988/11/16
商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1.2 cm

目次

まえがき

A 動いている物体の電気力学

I. 運動学の部

同時刻の定義;長さと時間の相対性;静止系から、これに対して一様な並進運動をしている座標系への座標および時間の変換理論;動いている剛体、ならびに時計に関する変換公式の物理学的意味;速度の合成則

II.電気力学の部

真空中におけるマックスウェル・ヘルツの方程式の変換、磁場内にある物体の運動に伴って生ずる起電力の性質について;ドップラー現象および光行差の理論;光線のエネルギーの変換則、完全反射する鏡に与える輻射圧の理論;携帯電流がある場合のマックスウェル・ヘルツの方程式の変換;加速度が小さい場合の電子の力学

B 解説(内山龍雄)

用語説明

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2020年5月28日 (木)

分光分析の幕開け(1)-炎色反応でナトリウムの輝線を発見

炎色反応のスペクトルに輝線を発見

 18世紀のスコットランドの自然哲学者トーマス・メルビル(Thomas Melvill)は、1752年にエジンバラの医学会において「光と色の観察」という講義を行い、炎色試験について説明しました。

Melvill, Thomas  "Observations on light and colours". Essays and Observations, Physical and Literary. Read before a Society in Edinburgh, …. 2: 12–90. ; see pp. 33–36.

Melvill, Thomas, "Observations on light and colours", Journal of the Royal Astronomical Society of Canada, Vol. 8, p.231.
http://adsabs.harvard.edu/full/1914JRASC...8..231M

 メルビルはさまざまな塩類の炎色反応の炎から発する光をプリズムを使って分光しスペクトルを観察を行ました。

 そして、すべての塩類の炎のスペクトルにおいて、同じ位置に黄色の輝線が現れることを報告しています。この黄色い線はメルビルが実験に使った塩類に含まれていた不純物のナトリウムに由来しましたが、メルビル自身は黄色い輝線の原因を特定することはできませんでした。また、メルビルはプリズムの作用の原理として、異なる色の光線は異なる速さで進むという説を提案しています。

 メルビルは、世界で初めて炎色試験を行った人物として、フレーム発光分光法(炎光光度法)の父と呼ばれることもあります。

ナトリウムの輝線(D線)

 メルビルが発見したナトリウムの輝線は、後にD線と呼ばれるようになりました。D線はナトリウム原子により吸収あるいは放出されるスペクトル線で、ごく近い波長のD1線(589.6 nm)とD2線(589.0 nm)の2本からなります。

ナトリウムD線
ナトリウムランプの輝線スペクトル(D線)

 ところで、ナトリウムはドイツ語Natriumで、英語ではSodiumです。なぜ、ナトリウムの輝線がD線と呼ばれるのかは、この分光分析の幕開けの続編の中で説明します。

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2020年5月27日 (水)

ようこそ!「光と色と」へ

本サイトの「光学」と「色彩」に関する情報を掲載したサイトです。

コンテンツはサイト内検索が可能です。


「光と色と」の別館「光と色と THE NEXT」を新設しました

|

2020年5月26日 (火)

天文アマチュアのための―新版 屈折望遠鏡光学入門

新版 屈折望遠鏡光学入門―天文アマチュアのための

吉田 正太郎

この本も絶版となっており中古本しか入手できませんが、屈折式望遠鏡の仕組みについて原理からしっかりと解説されており、ガリレオ式望遠鏡やケプラー式望遠鏡などの仕組みを学びたい人にお勧めの本です。

中古本ですが高い値がついています。自分が新品を購入した値段は2,940円でした。

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内容(「BOOK」データベースより)

屈折望遠鏡の基本的な原理と、最新の技術を、できるだけ正確に、わかりやすく説明。

内容(「MARC」データベースより)

天体観測ばかりでなく、精密測角、照準望遠鏡、フィールドスコープ、双眼鏡としても広く用いられている屈折望遠鏡の基本的な原理と、最新の技術を、わかりやすく解説する。

単行本: 342ページ
出版社: 誠文堂新光社; 新版版 (2005/12)
ISBN-10: 441620518X
ISBN-13: 978-4416205181
発売日: 2005/12
商品の寸法: 20.8 x 15 x 2.8 cm

目次

1 世界史のなかの屈折望遠鏡
2 レンズ光学入門
3 屈折望遠鏡の一般光学
4 地上望遠鏡、フィールドスコープ、双眼鏡
5 光学材料
6 対物レンズ
7 接眼鏡
8 カタディオプトリック系

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2020年5月25日 (月)

テセウスの船のパラドックス

テセウスの船のパラドックスは認識論的な問題

 ドラマ「テセウスの船」の最終回で、佐野文吾が「テセウスの船」について次のように語りながら、ドラマの幕が閉じていきます。「テセウスの船」はどのような問題なのか考えてみましょう。

ギリシア神話に「テセウスの船」というエピソードがある。戦に勝利した英雄テセウスの船を後世に残すため、朽ちた木材は次々と交換され、やがて全ての部品が新しいものに取り替えられた。さて、ここで矛盾が生じる。この船は最初の船と同じと言えるのだろうか。船は完全に生まれ変わり、古い記憶は薄れていく。でも俺たちはいつまでもずっ〜っと家族だ。

 「テセウスの船」は最後のギリシャ人と呼ばれたローマ帝国のギリシャ人伝記作家・随筆家のプルタルコスが英雄伝(対比列伝)に書き記したギリシア神話の伝説です。

プルタルコス
プルタルコス

 テセウス(テーセウス)はギリシア神話に登場するアテナイ(現アテネ)の王で英雄です。クレタでの怪物ミノタウルス(牛頭人身の怪物)の退治をはじめとする多くの冒険をしました。

ミノタウルスを倒すテセウス
ミノタウルスを倒すテセウス

 テセウスの船は、英雄テセウスがアテネの若者たちとクレタから帰還したときに乗艦していた船です。アテネの人々はこの船をファレロンのデメトリオスの時代(紀元前307年ぐらい)までこの船を保存しました。この過程において、人々はこの船の朽ちた木材を新しい木材に置き換え、船の補修を続けました。やがて、全ての部品が新しい部品に置き換えられました。

 この船は哲学者の間で、万物の根元や真理の追求するうえで、かっこうの議論の的となりました。ある者は、その船は全て部品が置き換えられのだから、もはや元の船と同じものとは言えないと主張し、またある者は部品が全て置き換えられても船は同じものだと主張しました。

 プルタルコスは、船の全ての部品が置き換えられたとき、その船がもとの同じ船と言えるのだろうか、取り除いた元の古い部品から別の船を作った場合、どちらが「テセウスの船」なのかという認識論的な問題を投げかけています。認識論は、知識・認識の本質・起源・根拠などを究明する哲学のことです。

古代ギリシア自然哲学の幕開け

 古代の人々にとって、この世界がどのように生まれ、身の回りのものが何からできているのかという疑問に対する答えは、神々の存在だったに違いありません。しかし、神々による天地創造のような説明は、地域や文化によって内容や解釈が変わり、普遍的なものにはなり得なかったのです。

 紀元前6世紀頃、現在のトルコの南西部に存在したイオニアにミレトスという古代ギリシアの植民都市が栄えていました。地中海交易の拠点であったミレトスには、まわり国々から多くの人々が訪れ、異文化交流が進みました。知識の交流によって、人々がそれまで信じていた世界観や価値観が多様化し、古代ギリシアの人々が信じていたオリンポス神話が崩れていきました。

紀元前5~6世紀頃のギリシャ周辺

 このような変化の中で、人々は普遍的な真理の追求を行うようになり、これが哲学となりました。例えば、ギリシア神話では、地震は海神ポセイドンが引き起こすと考えられていましたが、哲学者タレスは、神話を排除し、大地を支える水が振動すると地震が起きるという説を唱えました。

 自然哲学はミレトスで始まったと考えられており、ここで活躍した哲学者たちをミレトス学派と呼びます。やがて、自然哲学はイオ二ア全体に広がり、この地方の哲学者たちはイオニア学派と呼ばれるようになりました。

 後に活躍したアリストテレスはイオニア学派の哲学者たちを「自然について語る者(フィシオロゴイ)」と呼びました。なお、ミレトス学派はイオニア学派に属しますが、思想の違いから、一般に両派は区別されます。

万物の根元は何か

 ミレトス学派の哲学者タレスは、私たちの身の回りに存在するすべてのものは水が姿を変えたものであると考え、万物の根源は水であると唱えました。すべてのものは水から生まれ、そして滅ぶと水に返っていくと考えたのです。タレスが万物の根源を水とした理由は、水が液体、気体(水蒸気)、固体(氷)とその姿を柔軟に変えることができ、また水が生命にとって必要不可欠なものだったからです。世界は水のように生命に欠かすことのできない流動的なものでできていると考えたのです。

タレス 万物の根元は水
タレス

 タレスの弟子のアナクシマンドロスは、万物の根源のことを「アルケー」と名付けました。そして、彼は、アルケーは何からできているのかを説明する必要がある実体的な物質であるはずがないと考え、アルケーは無限なもの「ト・アペイロン」であると唱えました。「ト・アペイロン」は、変化することがなく、常に新しい物質を生みだし続けるものです。しかし、そのアナクシマンドロスの弟子のアナクシメネスは、アルケーは空気(息)であると唱えています。

 このように、タレスを始めとするミレトス学派の哲学者たちが唱えた万物の根源は多様でしたが、彼らが自然哲学の誕生に果たした重要な役割は「万物の根源は何か」という問いそのものを導き出したことに他なりません。彼らは、物質が何からできているかについて、神学的でもなく、宗教的でもない、誰にでも合理的に説明することが可能な真理は何かという視点で答えを求めたのです。

世界は絶えず変化するもの

 物質が何からできているのかという問いは、世界はどのようにできているのかという視点に広がりました。そして、哲学者たちは、世界が変化しているのかどうかを論じるようになりました。

 イオニア学派のヘラクレイトスは、万物は流転し、世界は絶えず変化していると唱えました。ヘラクレイトスが唱えた「万物は流転する」はギリシャ語で「パンタ・レイ」といいます。

 ヘラクレイトスはこの説明のひとつの例として「同じ川には二度と入ることはできない」と述べています。昨日も今日も、川には水が絶えず流れていますが、昨日と今日とでは流れている水が異なります。そういう意味で、昨日の川と今日の川は、見た目は同じでも、違う川だと考えたのです。極端に言えば、1秒前に川に足を入れたときと、1秒後に川に足を入れたときでは、流れている水が異なるのだから、もはや同じ川ではないということです。そして、ヘラクレイスは、世界は川と同じように、絶えず変化しながら同じ姿を保っていると唱えたのです。

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ヘラクレイトス

 このヘラクレイトスの「同じ川には二度と入ることはできない」の問題は、プルタルコスの「テセウスの船」の問題と本質的に同じものと言えるでしょう。川は川を作る水が全て入れ替わっており、船は船を作る木材が全て入れ替わっています。

 川や船は変化しながら同じ姿を保っていますが、中身が入れ替わってしまった川や船は、昨日の川や最初の船とはもはや違うものということになるでしょう。昨日の川や最初の船が違うものなのに、川や船は同じものとしたら、矛盾が生じるのではないでしょうか。どのように考えたら良いのでしょうか。

 さて、ヘラクレイトスは、世界は変化するが、その背後には絶えず変化する世界をつなぐ「ロゴス」という法則があると考え、万物の根源アルケーは火であると唱えています。すべてのものは火から生まれ、火に返っていくと考えました。

 アルケーを火とした理由は、火があらゆるものを焼きつくしても、同じ姿を保ち続けるからです。さらに、世界は、闘争や対立が繰り返されて変化し続けているとし、その象徴が火であると考えました。そして、闘争で何かが失われれば、別なところでその反対の何かが生まれ、世界は調和すると考えました。世界は変化するからこそ、安定もするのだと考えたのです。

あるものはあり、あらぬものはあらぬ

 南イタリアの都市エレアのエレア学派のパルメニデスは、ヘラクレイトスの万物は流転し、世界は絶えず変化するという考えに異論を唱えています。パルメニデスは、世界の成り立ちは変化ではなく、存在で捉えるべきだと考えました。そして、私たちが、見たり、感じたりすることができるような水や火などの実体的なものをアルケーとすることは、世界の成り立ちの理解に誤解を生じさせると主張しました。

パルメニデス あるものはあり あらぬものはあらぬ
パルメニデス

 パルメニデスは、世界が絶えず変化しているのは、私たちが世界を感覚や感性で捉えているからだと考えました。そして、感覚や感性は人それ
ぞれで異なり、普遍的なものではないのだから、私たちは感覚や感性に頼るべきでなく、理性によって論理的に世界を捉えるべきだと考えたのです。

 例えば、目の前にある鉄の塊を半分に割り、その半分をまた半分に割るという操作を繰り返していくと、鉄の塊はどんどん小さくなり、やがて見えなくなります。これを感覚や感性に従って捉えると、鉄の塊はなくなったことになります。

 しかし、理性に従って捉えると、鉄の塊は見えなくなっただけで、なくなったわけではありません。何もないところから、鉄の塊が生まれてくるはずがありませんし、鉄の塊が木材の塊に変化してしまうこともありません。

 このような考えから、パルメニデスは「あるものはあり、あらぬものはあらぬ」と述べています。

 私たちが感覚や感性で捉えている世界は絶えず変化を続けています。その変化とは、あるものがないものになったり、ないものがあるものになったりすることです。しかし、パルメニデスはその変化も理性的にとらえれば、あるものがないものになったり、ないものがあるものになったりするはずがないと考え、変化を否定したのです。そして、真に存在するものは不生不滅であり、分割不可能で唯一であると結論づけたのです。

 このようにして、パルメニデスをはじめとするエレア学派の哲学者たちは、ものごとを感覚や感性で捉えることを拒絶し、理性的に捉えることで真理の追究をしていったのです。

テセウスの船は同じものか

 パルメニデスのヘラクレイトスが唱えた川に対する主張は、「川の水は確かに流れているが、川の存在は確実であり、川の存在を否定することはできない。川が存在するからこそ、川があるのであって、川がなければ川はない。川の流れの変化は、私たちが感覚や感性で捉えているものに過ぎない」となります。

 川の水がたえず入れ換わっているのは事実ですが、だからといって私たちは川の名前を変えたりすることはしません。それは、川の水の入れ換わりを理性的に捉えているからでしょう。

 テセウスの船も船を作る材料が全て変わってしまったとしても、テセウスが使った船であるということは変わりません。前述のパルメニデスの川に対する主張をテセウスの船に置き換えてみると、「テセウスの船の材料は確かに全て入れ換わっているが、テセウスが使った船の存在は確実であり、テセウスの船の存在を否定することはできない。テセウスの船が存在するからこそ、テセウスの船があるのであって、テセウスの船がなければテセウスの船はない。テセウスの船の材料の入れ換えは、私たちが感覚や完成で捉えているものに過ぎない」ということになります。

 ドラマのテセウスの船は、現代から1989年に戻った田村心が父親の佐野文吾の無実を証明し、佐野家の未来を変えました。それにより、1989年から現代までの佐野文吾の家族の成り立ちが全て違う状況となりました。事件以降、田村姓を名乗っていた家族はおらず、全員が佐野家の家族となっています。いろいろなことがあり家族の成り立ちが変わったが、結論としては、佐野文吾の家族は佐野文吾の家族であるということでしょう。

 ところで、心が1989年に戻って佐野文吾の無実を証明し、そして佐野文吾を守るために死亡したことは佐野家の家族全員が知っていたはずです。生まれてきた次男を心と名付けた経緯も家族全員が知っていたはずです。佐野文吾しか知らなかったことは、1989年に死亡した心が自分の息子だったこと、そして、その心から聞いた未来の佐野家の不幸な状況です。佐野文吾は1989年から現代まで刑務所に収監されていた記憶はないはずです。生まれてきた心は、自分が違う世界で1989年に現れることになった心であることも、1989年当時に何が起きたのかも知りません。

 原作では、1989年に死亡した心の命日に家族が墓参りをするシーンがあります。そこで1989年の心の写真を見た長男の慎吾が、弟の心が1989年に現れた心に似ていると話をしている描画があります。心以外の家族全員は1989年の心の記憶をしっかりともっていたようです。

 いずれにしろ、佐野家は1989年以降のプロセスは変わりましたが、家族を構成する一人一人は生き様が変わったものの、人そのものは変わっていないません。本当にテセウスの船と同じでしょうか。

 いやいや、家族一人一人を作る細胞は入れ換わっているはずで・・・この話は長くなるのでやめておきましょう。

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2020年5月22日 (金)

徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで (カラー版徹底図解)

徹底図解 色のしくみ―初期の光学理論から色彩心理学・民族の色彩まで (カラー版徹底図解)

城 一夫 (著)

 光と色の基本的な性質について丁寧に解説した一冊です。光学や色彩学の基本、色が見える仕組み、色を表す仕組み、色を作る仕組みなど、多くのことが解説されています。どのようなことが取りあげられているかは下の目次を見るとわかると思います。

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内容(「MARC」データベースより)

私たちの生活環境の中で、色彩がいかに重要な役割を果たしているかを、多角的な視座から考察。色彩の成り立ち、色の見え方、色の生理と心理、色の感情効果、そして色彩文化などの、「色のしくみ」を解明する。

単行本: 222ページ
出版社: 新星出版社 (2009/03)
ISBN-10: 4405106789
ISBN-13: 978-4405106789
発売日: 2009/03
商品の寸法: 21 x 15 x 2 cm

目次

はじめに 6

Image Gallery

宇宙と空の色 8
昆虫の色 10
海中の色 12

第1章 光と色 13

色研究の元祖、ニュートンとゲーテ 14
光-色の感覚を引きおこすもの 16
可視光線 18
光の反射、吸収、透過 20
色光の3原色、色材の3原色 22
光の色彩現象(1)屈折 24
光の色彩現象(2)散乱 26
光の色彩現象(3)回折と干渉 28
色の現象的分類 30
人工光 白熱灯と蛍光灯 32
光と色温度 34
光の明るさ(1)単位 36
光の明るさ(2)条件等色 38
光の明るさ(3)標準イルミナントと演色性 40
動植物の色素 42
染料 44
顔料 46
印刷インキ 48
塗料 50
絵の具、その他の色材 52
Column JlS慣用色名(1) 54

第2章 色が見えるしくみ 55

眼の構造と役割 56
網膜の役割 58
大脳のはたらき 60
色の知覚 62
明暗順応と色順応 64
比視感度とプルキニエ現象 66
色の恒常性と明るさの恒常性 68
残像 70
色相対比 72
明度対比、彩度対比 74
同化 76
視認性、誘目性、識別性 78
色記憶と記憶色 80
色の見え方 82
主観色とネオンカラー効果 84
錯視 86
Column JIS慣用色名(2) 88

第3章 色を表すしくみ 89

色の3属性 90
マンセル表色系 92
PCCS(日本色研配色体系) 94
NCS(Natural Color System) 96
XYZ表色系、L*a*b*表色系 98
色の伝達方法 100
色の記号で伝達する 102
測色値で伝える 104
Column JIS慣用色名(3) 106

第4章 混色と色再現 107

加法混色(1)同時加法混色 108
加法混色(2)中間混色 110
減法混色 112
印刷の色再現 114
写真の色再現 116
テレビの色再現 118
Column JIS慣用色名(4) 120

第5章 色と心理 121

共感覚 122
色の連想 124
色の寒暖感 126
膨張色と収縮色 128
色の軽重感、硬軟感 130
色に対するイメージ 132
投映法(投影法) 134
Column JIS慣用色名(5) 136

第6章 色彩調和論と配色調和 137

ゲーテの色彩調和論 138
シュヴルールの色彩調和論 140
オストワルトの色彩調和論 142
イッテンの色彩調和論 144
ジャッドの色彩調和論 146
代表的な配色(1) 148
代表的な配色(2) 150
代表的な配色(3) 152
代表的な配色(4) 154
慣用的な配色 156
配色の基礎用語 158
Column JIS慣用色名(6) 160

第7章 生活と色彩 161

景観と色彩 162
街並みと色彩 164
インテリアのカラーコーディネート 166
部屋の用途別のインテリアカラー 168
食物と色彩 170
家電の色 172
自動車の色 174
ケータイ(携帯電話)の色 176
CIカラー 178
安全色彩 180
Column JIS慣用色名(7) 182

第8章 これからの色彩 183

デジタル色彩(Digital Color) 184
発光ダイオード 186
ユニバーサルデザインと色彩 188
機能性色素 190
カラーマネジメント(Color Management) 192
癒しと色彩 194
Column JIS慣用色名(8) 196

第9章 世界各国の色彩文化 197

国旗と色彩 198
ヨーロッパの色(1)オランダ 200
ヨーロッパの色(2)ドイツ 202
ヨーロッパの色(3)イギリス 204
ヨーロッパの色(4)イタリア 206
ヨーロッパの色(5)フランス 208
アフリ力諸国の色 210
中南米諸国(ラテンアメリカ)の色 212
イスラム圏の色 214
アジアの色(1)中国 216
アジアの色(2)日本 218

さくいん 220
特別協力・おもな参考文献 223

 

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2020年5月21日 (木)

H-IIBロケットはどれぐらいの重量まで宇宙に運べるか

「H-IIBロケット」と「こうのとり」最後の打ち上げ成功

 2020年5月21日午前2時31分、国際宇宙ステーション(IIS)に物資を運ぶ無人補給機「こうのとり(HTV, H-II Transfer Vehicle)」9号を搭載したH-IIB(H2B)ロケットが鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。約15分後に、H-IIBロケットから切り離されたHTVは予定通りの軌道に投入され、打ち上げは成功しました。HTVは25日午後9時頃にIISに到着する予定です。H-IIBロケットとHTVは今回の打ち上げをもって退役となり、最後の打ち上げに有終の美を飾ることができました。

H2b

 下記のJaxaの映像で30分のところが打ち上げ10秒前です。

「こうのとり」9号機/H-IIBロケット9号機打上げライブ中継

 今回の打ち上げは新型コロナウイルスの感染防止のため種子島島内の見学場が全て閉鎖されたなか実施されました。

 自分はずいぶん前にH-IAロケットの打ち上げを見学するために種子島を訪問したことがあります。残念ながら打ち上げが延期となってしまいました。いつか見学しに行きたいと思っています。

ロケットはどれぐらいの重量を打ち上げられるのか?

 実は宇宙ロケットは非常に効率の悪い乗り物です。地上から打ち上げたロケットが地球の引力を振り切って宇宙空間に脱出するためには毎秒11.2 km(40,320 km/h = マッハ33)の速度が必要となります。ロケットがこの速度を出すためには膨大な推進力を必要とします。

 ロケットの推進力を大きくするためには燃焼ガスの噴射速度を大きくする必要があるため、大量の燃料を必要とします。そのため、普通のロケットは総質量のほとんどを燃料が占めています。H-IIBロケットの場合、総質量531トンに対して86%の458.2トンが燃料となります。

 ロケットが運べる貨物の質量をペイロードといいます。H-IIBロケットのペイロードは人工衛星を打ち上げるのに必要な高度で8トン(高度36,000 km以上)から19トン(高度350~1,400 km)です。打ち上げの時のH-IIBの総重量は531トン+ペイロードとなります。

 ISSは高度約400 kmの起動を回っています。「こうのとり(HTV)」は全長9.8 m、直径4.4 mの円筒形をしています。質量は補給品を搭載していない状態で10.5トンで、積載可能最大質量は6トンです。高度350〜460 kmまでの軌道に対応しています。実際には棚など内部に設置されている構造物の質量を除いた輸送能力は4トンぐらいのようです。

 積載可能な質量まで満載したHTVを搭載したエンジンを点火する前のH-IIBの総質量は531トン+16.5トン=537.5トンぐらいになります。

H-IIIロケットとHTV-X

 H-IIBロケットの後継はH-III(H3)ロケットとなり、2020年ど後半に試験機の1号機が打ち上げを予定しているようです。H-IIIロケットは世界のロケット市場で活躍できるように、柔軟性、高信頼性、低価格を実現し、使いやすいロケットとなることをめざしています。

 一方のHTVの後継はHTV-Xとなり、21年度以降に運用開始となる予定です。HTVはISSのロボットアームでISSとドッキングするようになっていますが、HTV-Xは自動ドッキング機能を備えています。これにより、米国NASAが計画している月周回宇宙ステーションにもドッキングできるようになります。

 ペイロードを含まないH-IIIロケットの総質量は571トン、HTV-Xの棚など内部に設置されている構造物を除いた輸送力は5.85トンになるようです。

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2020年5月19日 (火)

色彩学貴重書図説―ニュートン・ゲーテ・シュヴルール・マンセルを中心に

色彩学貴重書図説―ニュートン・ゲーテ・シュヴルール・マンセルを中心に

北畠 耀

 これも中古本になりますが、光や色彩の探求の歴史上重要な資料が多数掲載されています。題名の色彩学「貴重書」図説の通りです。冒頭は古代壁画などの解説に始まります。また、ニュートンが光についてどのような実験をやったのかなど、ニュートンが描いた図を見ることができます。ゲーテの色彩に関するニュートンへの反論なども図で楽しむことができます。

色彩学貴重書辞典

内容(「MARC」データベースより)

 哲学者としてのニュートン、自然科学者としてのゲーテ、色彩調和論の先駆者シュヴルール、“色のものさし”を創案したマンセルを中心に取り上げ紹介。色彩の入門者を歴史探訪へ誘う、しかも見て楽しい色の画集のような一冊。

 “色彩文化の歴史的記念碑”あるいは“色彩学三代古典書”と呼ばれる貴重書に、科学史を転換させたニュートンの『光学』(1706)、文豪ゲーテが20年をかけた壮大な著作『色彩論』(1818)、印象派画家から「色のバイブル」と呼ばれた化学者シュブルールの『色の同時対比の法則』(1938)があります。豊かな社会が到来した20世紀には、徐々に色彩計画の重要性が増し「色のものさし」が求められました。このときマンセルは『色表記法』(1905)で画期的な提案を行い、彼が創案したカラースケールは、学問分野のみならず全産業に大きく貢献しました。

 本書では、上記4人の著書の図説を中心に、主に16世紀から今日までの色彩学の発展に貢献した重要な書籍を図説で解説。色彩研究史年表も充実させました。

単行本:101ページ
出版社::日本塗料工業会 (2006/04)
ISBN-10::4841904158
ISBN-13::978-4841904154
発売日:2006/04

目次

01. 古代社会における色彩象徴
02. 古代ギリシアの世界観
03. 中世の色彩文化
04. ルネサンスの造形術と色彩書
05. 17世紀における色彩体系の発想
06. 科学革命時代の群像
07. 哲学者としてのニュートン
08. 自然科学者としてのゲーテ
09. 色彩調和論の先覚者シュヴルール
10. 複製術(版画・印刷・織布・写真)の開発者たち
11. 色を音の類比で構想したフィールド
12. 明治初期の初等教科書『色圖問答』
13. 産業の色彩と教育の色彩
14. “色のものさし”の創案者マンセル
15. 色空間で調和を論じたオストワルト
16. 色名体系の登場と発展
17. メルツ&ポール色名辞典
18. ISCC-NBS色名法
19. 18世紀以降の色彩体系の展開
20. XYZによる表色系の統括
APPENDIX
色と光の文化史年表
色と光の探求者関連年表

巻末折り込み:
太陽光のスペクトルとシュヴルール色相との対応図

 

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2020年5月18日 (月)

ピッカリコニカ コニカC35EF

 ピッカリコニカことコニカC35EFはコニカ(旧小西六、現コニカミノルタ )が1975年に販売したエレクトロフラッシュ(ストロボ)内臓のカメラです。写真は1976年に発売された改良型のコニカニューC35EDです。コニカC35EFにセルフタイマーを搭載(レンズ左側のレバー)されたものです。

ピッカリコニカ コニカC35EF

 エレクトロフラッシュが復旧する前は、ストロボと言えば、ストロボバルブ(閃光電球)で、撮影ごとに電球の交換をする必要があるなど、素人には扱いにくいものでした。電球の交換も不要で何度でも使えるエレクトロフラッシュの登場により、カメラのフラッシュが一般の人でも簡単に使えるようになりました。

 この便利なエレクトロフラッシュをカメラに内臓したのが、コニカCF35EFです。カメラにフラッシュが内臓されたことにより、暗いところでも簡単に撮影できるカメラとして、ピッカリコニカという愛称で大ヒットしました。

コニカC35EFの主な仕様

レンズ ヘキサノン38 mm F2.8 3群4枚
シャッタースピード 1/60秒 1/125秒 自動切換※
絞り 2.8〜16
露出 プログラムAE方式
ピント調節 目測式 1m〜無限遠
内臓ストロボ GN14(ISO100)

※コニカニューC35EFでは1/250秒が搭載された。

 なお、コニカC35EFが世界初のストロボ内臓カメラという説明をよく見かけますが、世界初のストロボ内臓カメラドイツのフォクトレンダー社のビトローナというカメラです。コニカC35EFが発売される10年以上の前の1964年に発売されています。ビトローナはストロボは内臓だったのですが、電池ケースとコンデンサーが外付けだったため、使い勝手はあまりよくありませんでした。そのため、世界初のストロボ内臓カメラにもかかわらず、それほど復旧しませんでした。コニカC35EFは、世界で初めてもっとも普及したストロボ内臓カメラとは言えるでしょう。

 もともとコニカC53は1968年に発売がされていますが、いろいろと機能が追加されC53シリーズは進化していきました。1983年に終売となっています。当初のコニカC53シリーズのボディは金属製でしたが、C35EFの開発において感電事故が起きたため、ボディがプラスチック製となりました。

 現在、コニカC35EFはジャンク品をよく見かけます。ヤフオクでは完動する良品も出ることもあるようです。

ピッカリコニカ コニカC35EF

写真のコニカニューC35EFは実際に使っていたものです。フィルムを入れての撮影は最近は行っていませんが未だ使えるはずと思います。

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2020年5月17日 (日)

色彩の科学

色彩の科学 (岩波新書)

金子 隆芳 (著)

 初版1988年でいまだ新品で購入できます。自分の手元の本は2010年第10版でした。これだけ長く販売され続けている理由はこの本を読んでみればわかります。

 ニュートンの色彩論を皮切りに色彩の科学を、その発展の歴史とともに解説していきます。原著論文までしっかりと参照されており、ニュートン、ヤング、マクスウェル、ヘルムホルツなど色彩学の発展に関わる当時の科学者たちがたくさん登場し、彼らが実際に実験に用いた装置の写真や図が丁寧な説明とともに掲載されています。そして、現代色彩論の解説と展開しています。第9章「ゲーテの色の現象学」、第10章「ヘリングの心理学的色覚説」、第11章「物体色の色彩論」で色の本質にせまります。

 色彩を勉強する人にはおすすめの一冊です。

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 内容(「BOOK」データベースより)

 豊かな色彩に囲まれた私たちの世界。だが「色が見える」とはどういうことなのだろうか?ニュートンやゲーテの色彩論以来、さまざまな人々がこの問題に取り組んできた。それらの成果を踏まえて、色覚異常や動物の色覚からイマジナリー・カラー、色ベクトルなどの最新理論まで、多岐にわたる色彩の世界を、物理学・心理学の両面から論じる。

新書: 220ページ
出版社: 岩波書店 (1988/10/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4004300444
ISBN-13: 978-4004300441
発売日: 1988/10/20
梱包サイズ: 17.2 x 10.4 x 1.2 cm

目次

1 ニュートン色彩論
2 色覚の三史
3 ヘルムホルツ三色説
4 測色学の祖・マクスウェル
5 現代色彩論の基本思想
6 現代色彩論のXYZ
7 ヘルムホルツ三原色と色覚異常
8 動物の色覚・処女開眼者の色覚
9 ゲーテの色の現象学
10 ヘリングの心理学的色覚説
11 物体色の色彩論
12 カラー・オーダー・システム

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2020年5月16日 (土)

雷の正体見たり静電気 雷の仕組み

雷の正体を探る

 大音響とともに鋭い光の筋が空を切り裂く雷。古代の人々は雷は雲の中にいる神様が光と音を出していると考えていました。たとえば、ギリシャ神話の全知全能の神であるゼウスは雷を司る天空神です。日本では、古くから雷神が雷をおこすと考えられていました。日本語の雷の語源は神鳴りと考えられています.

雷神(俵屋宗達)

 雷の正体は18世紀の半ばには電気であることが予想されていました。雷の正体を初めて実験で確かめたのは、アメリカの政治家・科学者のベンジャミン・フランクリンです。フランクリンは静電気の実験に使われていたライデン瓶に蓄電すると、電気火花が発生するのを見て、この電気火花と稲妻は同じものではないかと考えたのです。

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 ライデン瓶は1746年にオランダのライデン大学の物理学者ピーテル・ファン・ミュッセンブルークが発明した蓄電装置です。実際には数ヶ月ほど前にドイツのエヴァルト・ゲオルク・フォン・クライストも同じ仕組みのものを発明しています。ライデン瓶の上部の金属球に静電気を帯びたものを触れると、金属箔に電気が蓄えられます。電気が蓄えられた状態で、内側と外側の金属箔を短絡(ショート)するとライデン瓶の中で放電が起こり、電気火花が発生します。

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フランクリンの凧あげ実験

 1752年6月、フランクリンは雷の正体を調べるため、自分の息子とともに雷雲をめがけて凧あげの実験を行いました。 彼は凧に針金を取り付け、凧糸には水に濡れやすい麻糸を使いました。そして、麻糸に金属の鍵を取り付けました。金属の鍵から手元までは感電防止のため濡れにくい絹糸を使いました。雷で麻糸が帯電して逆立ったとき、彼は息子に金属の鍵の先にライデン瓶を近づけるように言いました。息子がライデン瓶を鍵に近づけると、雷の電気がライデン瓶に蓄電されていきました。そして、ライデン瓶を短絡させると、ライデン瓶の中で電気火花が生じました。一瞬の出来事でしたが、雷の正体が電気であることが確かめられた瞬間でした。

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※フランクリンの凧あげ実験は非常に危険ななので、絶対にやってはいけません。

雷雲が発生するしくみ

 空に浮かぶ雲は細かい水滴や氷の粒でできています。これらの水滴や氷の粒は地上や海上で蒸発した水です。空気は気温が高いほど水蒸気をたくさん含むことができます。暖かい空気は軽いので上空へ昇っていきますが、上空は気圧が低いので膨張します。このとき、空気は外部から熱を与えられない状態で膨張します。空気自身が持つ熱が膨張に使われるので、空気の温度が下がります。空気に含まれる水蒸気は冷やされると気体のままでは存在できなくなり、凝結して細かい水滴や氷の粒になります。これが雲の正体です。
 雷がよく起きるのは、夏に空高くまで発達した積乱雲の中です。積乱雲の中では、強い上昇気流のために、氷同士が激しく衝突します。このとき、氷の表面の水や衝突で融けた水が負の電荷を持ち、それが成長する氷に移動します。そのため、大きい氷の粒がマイナス、小さい粒がプラスの電気を帯びます。小さい粒は、軽いために雲の上の方へ、大きい粒は重いため雲の下の方へ移動します。その結果、雷雲は、ちょうどプラスとマイナスが向かい合った形となり、そこに高い電圧がかかるというわけです。また雷雲が大地に近づくと、その下の地面はプラスに帯電していきます。これを静電誘導といいます。

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 雷雲が発生すると、雲の中で静電気がたまります。この静電気が、雲と地上の間の大気の絶縁性で支えきれないほど大きくなると、雲から地上へ対地放電が起こります。これが落雷です。また、放電は落雷よりも雲の中で頻繁に起こります。このとき、雲が青白く光って見えます。ひとつの雷雲の中で起こる場合を雲内放電、複数の雷雲の間で起こる場合を雲間放電といいます。

<h4>稲妻が光るしくみ</h4>


 内部を真空にしたライデン瓶で放電の実験を行うと、電気火花が生じなくなります。つまり、電気火花の発生には空気が関係しています。本来、空気は絶縁体で電流は流れません。しかし、強い電圧をかけると、瞬間的に電気絶縁性が失われ大電流が流れます。すると、大きなエネルギーを持った電子が、空気中の窒素や酸素に衝突します。窒素や酸素は電子のエネルギーを受け取り、自分自身も電子を放出してイオン化して高エネルギー状態になります。高エネルギー状態になった窒素や酸素は、すぐに元のエネルギー状態に戻ります。このとき、余分なエネルギーが光となって出てくるわけです。これを放電現象といいますが、稲妻の光もこれと同じ現象です。なお、放電が起こると、火花の周囲の温度が急激に上昇し、空気が瞬間的に膨張します。そして、膨張した空気はすぐに冷えるため収縮します。この空気の膨張と収縮が振動となって音となります。

 雷の放電は、大気の絶縁性のために、いっきに地面には届きません。何度も小きざみに放電を繰り返し、電気の通り道を作りながら、地面へと近づきます。稲妻がジグザグに見えるのはこのためです。これを先駆放電といいます。稲妻が地面に届くと、今度は逆に地面から雲に向かって放電が起こります。これを帰還雷撃といい、このとき強い光と大きな音を出します。これが落雷です。

 落雷をハイスピードカメラで撮影して映像がYouTubeにあがっています。

 Slow Motion Lightning

落雷の威力は凄いです。

Close-Up Lightning strike Compilation with Horrifying Sound and Destruction |Thunder strikes

 

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2020年5月15日 (金)

科学と仮説 by ポアンカレ

科学と仮説 (岩波文庫)

アンリ・ポアンカレ著

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光を伝える媒質エーテルの否定や、ニュートンの絶対空間と絶対時間からアインシュタインの特殊相対性理論を調べていて、再び読み始めました。

この本の原著は1902年にフランスで出版された「 La Science et l'hypothèse(科学と仮説)」です。当時の最先端の物理学を仮説や思考実験からわかりやすく紐解いていく一冊です。特殊相対性理論について勉強するときに読んでおきたい一冊です。

【説明(岩波ブックサーチャー)】

本書は科学の諸部門に通達したポアンカレの根本思想を示したもので,数学・物理・心理・論理等,科学と哲学とにわたり,科学思想を扱った論著に広く利用されている.科学とは何か,その基礎は何かというような大きな問題とともに,数学の推理と碁・将棋の推理との違い,感覚と幾何学との連関,波動説と粒子説との関係をも説く。

文庫: 296ページ
出版社: 岩波書店; 改版 (1959/01)
ISBN-10: 4003390210
ISBN-13: 978-4003390214
発売日: 1959/01
商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.2 cm

目次

序文
第一篇 数と量
  第一章 数学的推理の本性
  第二章 数学的量と経験
第二篇 空間
  第三章 非ユークリッド幾何学
  第四章 空間と幾何学
  第五章 経験と幾何学
第三篇 力
  第六章 古典力学
  第七章 相対的運動と絶対的運動
  第八章 エネルギーと熱力学
第四篇 自然
  第九章 物理学における仮説
  第十章 近代物理学の理論
  第十一章 確率論
  第十二章 光学と電気学
  第十三章 電気力学
  第十四章 物質の終わり

 

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2020年5月14日 (木)

光の三原色の波長はどのように決まったのか 色が見える仕組み(8)

ヒトの眼が色を感じる仕組みの探究

 ニュートンが1666年に行ったプリズムで虹をつくる実験をきっかけに「人間の眼はどのようにして色を感じているのか?」という疑問に関心が集まるようになりました。ニュートンをはじめ当時の学者たちは、人間の眼の中には光の色の数に相当する多種類の視細胞があると考えました。

 ヤングはこの考えに疑問をもち、1801年に絵の具の混色からヒントを得て「人間の眼の中には赤・緑・青の光を感じる視細胞があり、色は3つの視細胞が受けた刺激の割合で決まる」という三色説を提唱しました。ヤングの仮説は正しかったのですが、当時は光の混色実験が難しく再現性も乏しかったためまったく支持されませんでした。

 1860年、マクスウェルは色分けされた円板を回転させると別の色が見え、ある割合にすると白色に見えるという実験を行いました。Maxwellはこの実験で時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色を示したのです。

マクスウェルの円盤

この実験については、スコットランドの国立博物館のサイト(英語)に説明があります。当時の円板の写真も掲載されています。

彼は下記の装置で赤・緑・青の光の混合実験を行い、この3つの色光で白色光を作り出し、また様々な色を作り出せる可能性を示しました。

マクスウェルの箱

この装置を用いた実験については下記の論文に示されています。CAの方向から白色光を入れます。CBの間から入った白色光はミラーMで反射し、レンズLで集光されてEに向かいます。BAの間から入った白色光はスリットXYZを通って3つの白色光になります。3つの白色光はプリズムPで分光されて赤・緑・青の光となり、その後プリズムP'を通って混色され、レンズLをで集光されてEに向かいます。Eから覗くと、光の色を観察することができるようになっています。3色の光の強さはスリットXYZの位置と幅で調整することができます。BAから入ってEから出てくる光とCBから入ってEから出てくる白色光を比較し、BAからの混色された光がCBからの白色光と同じになるようにXYZを調整しました。

On the Theory of Compound Colours, and the Relations of the Colours of the Spectrum.
Philosophical Transactions, Vol. 150 pp. 57–84. 1 January 1860.
PDF https://www.jstor.org/stable/pdf/108759.pdf
本論文はJames Clerk Maxwellの単著となっていますが、この実験には夫人のKatherine Clerk Maxwellが貢献しています。この著書には観察者が2人出てきます。一人はJ.C. Maxwell本人ですが、本文中に出てくるもう一人の観測者Kは夫人のKatherineです。

 1868年、ヘルムホルツはヤングの3色説を定量的に解明し、ヤングの3色説が正しいことを説明しました。これをヤング・ヘルムホルツの三色説と言います。下図はヘルムホルツが求めた各錐体の分光感度曲線です。

ヤング・ヘルムホルツの三色説

こうしてヤング、マクスウェル、ヘルムホルツによって、三色説が有力な仮説となりました。

ヤング、マクスウェル、ヘルムホルツ

 1956年、スウェーデンの生理学者Gunnar Svaetichinは魚の網膜を調べ、青、緑、赤の3つの波長の光に特異的な感度を示すことを発見しまました。これは、ヤング・ヘルムホルツ三原色説を支持する最初の生理学的な実証となりました。

Spectral response curves from single cones,
Svaetichin, G., Actaphysiol. scand. 39, Suppl. 134, 17-46, 1956

網膜に赤・緑・青の光を感じる3種類の錐体細胞が存在することが確認されたのは1964年のことです。Marksらは錐体細胞を通した光と、錐体細胞を通していない光を比較することにより、光のスペ クトルの差を求め、網膜には 445nm(青)、535nm(緑)、570nm(赤)にピークをもつ3種類の視物質が存在することを証明しました。

Visual pigment of single primate canes.
Marks WB, Dobelle WH, MacNichol EF Jr:Science 143; 1181-1183, 1964.

 3種類の錐体の感度がもっとも高い波長は赤錐体450 nm、緑錐体530 nm、青錐体560 nmですが、それぞれの感度曲線は次の図のようにある程度の幅を持っています。

分光感度曲線

 青錐体はほぼ青色光に対応する感度分布になっていますが、緑錐体と赤錐体の感度分布は幅が広く、赤錐体は緑錐体よりも長波長側にシフトしているものの広い範囲で重複しています。青色の光に対しては、青錐体・緑錐体・赤錐体のすべてが応答することがわかります。この図を見てもわかるように、ある波長の光に対してひとつの錐体が応答するわけではありません。そのため、青錐体・緑錐体・赤錐体は波長の短(S)、中(M)、長(L)でそれぞれS錐体・M錐体・L錐体と呼ぶ場合もあります。

光の三原色を再現する等色

 マクスウェルの実験からも分かる通り、赤・緑・青の光を任意に混合すると、様々な色を作ることができます。これは私たちが見ている色を光の三原色で再現できるということです。3色の光でどれぐらいの色を再現できるかは次の図のような装置を使うことで確認できます。例えば、白色光をプリズムで分けて得られる波長約490 nmのシアン(青緑)の単色光が、光の3原色でどのように再現できるかを調べる作業を行います。このような作業を色合わせ、もしくは等色と言います。

等色の実験 

 いま[A]と[B]、[C]と[D]という色光があるとします。それぞれの色光の組み合わせが等色であるとき、式1で表すことができます。このような式を等色式と言います。≡は等色であることを示す記号です。

[A]≡[B]   [C]≡[D]・・・(式1)

そして、上記の等色の実験から次の2つの法則があることが確かめられています。この2つの法則をグラスマンの法則と言います。

グラスマンの法則:比例則

光の強度を一定倍にしても等色式は成り立つ

α[A]≡ α[B]      β[C]≡ β[D]・・・(式2)

グラスマンの法則:加法則

等色の光同士を加えても等色式は成り立つ

[A]+[C] ≡[B]+[D]   [A] + [D] ≡ [B] + [C]・・・(式3)

また、ある試験光[A]が[R][G][B]の光をそれぞれα・β・γの割合で組み合わせたときにできるとき、式4のように表すことができます。

[A]≡ α[R] + β[G] + γ[B]・・・(式4)

グラスマンの法則では任意の[R][G][B]の光を決めてやれば、試験光を式4で表すことができます。しかし、様々な色の試験光に対して、[R][G][B]で色合わせを行うためには[R][G][B]の標準化が必要になります。

光の三原色の標準化

 1931年に国際照明委員会(CIE, Commission Internationale de l'Eclairage)は光の3原色を赤色光700 nm、緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの単色光としました。当時はLED(発光ダイオード)などありませんでしたから、実験に使いやすい光の波長が選ばれました。緑色光546.1 nm、青色光435.8 nmの光は水銀ランプの輝線です。赤色光700 nmは可視光の最も長波長の光を採用しました。このCIEの等色の標準化には、英国のJohn GuildWilliam David Wrightがそれぞれ別途に実施した実験結果が採用されています。この実験に使われていた光の三原色が上記の3つ波長の光だったのです。この三原色を使った色の表現方法をRGB表色系と言います。

 ところで、ヒトの眼の色を感じる錐体細胞は中心窩から2度以内のところに集中して分布しています。そのため、混色の実験でどのような色が見えるかは、観察者の視野によって変わります。そのため、CIEは測色標準観察者なるものを定義し、中心窩から2度の視野角で得られる色覚を人の標準的な色覚と定義しました。

次の図は、等色の実験において、試験光の波長を変更しながら、その試験光に等色する[R][G][B]の三刺激値を求めプロットしたものです。

CIE 1931 RGB等色関数

 この図は「CIE 1931 RGB等色関数」のグラフです。たとえば、660 nmの試験光に対する三刺激値の比率は次のよう読み取ることができます(実際には等色関数から計算で求めます)。

[R]:[G]:[B]=0.05932:0.00037:0.0000

 ところで、この等色関数のグラフを見ると、赤色光が450 nmあたりから550 nmあたりまでマイナスの値になっています。たとえば、約490 nmの試験光は、青色光と緑色光をおよそ0.05の割合で加えて、赤色光を0.05引かなければ再現できません。これを式で表すと次のようになります。

490 nmの試験光=0.05[B]+0.05[G]+(-0.05[R])

 光の三原色ではシアンの光は緑と青の光を混色するとできるはずですが、マイナスの赤い光を加えるというのはどういうことなのでしょうか。

 実は、波長490 nmのシアンの単色光を光の三原色の[G][B]の混色で作ろうとすると、このシアンの単色光の鮮やかさを再現することができないのです。そこで、等色実験で試験光のシアンの単色光に赤色の光を加えると、[G][B]で作ったシアンの光の色と等色になります(式5)。

490 nmのシアンの単色光 +[R]  = [G] + [B]・・・(式5)

ですから、490 nmのシアンの単色光は次のよう表すことになるのです。

490 nmのシアンの単色光 = [G] + [B] + [-R]・・・(式6)

 このように、490 nmのシアンの単色光を作るには[G][B]の光にマイナスの[R]を加えなければなりません。これは色を表現するのに非常に不都合です。そこで、CIEはマイナスの光を扱わなくても色を表すことができる数値で表す仮想的な3原色XYZをつくりました。大まかに言うとXは赤、Yは緑、Zは青で、Yだけには輝度を表す役割があります。このXYZを用いて現実の色を表現する方法をXYZ表色系と言います。

CIE 1931 XYZ等色関数

 ところで、カラーテレビや液晶ディスプレイは光の3原色を使って色を再現していますが、必ずしもCIEが定めた波長の光が使われているとは限りません。例えばカラーテレビは赤・緑・青の光を出す3種類の蛍光物質に電子ビームを当てて色を作りますが、それらの蛍光物質が出す光の波長はだいたい赤色光で610 nm、緑色光で550 nm、青色光で470 nmです。これらの波長は使う蛍光物質よって変わりますから、カラーテレビの色再現は厳密にはどの蛍光物質を採用したかによって異なることになります。このような色の表現を「機種依存な色表現」と言います。つまり、現実に使われているRGB 表色系は厳密には色を指定するのに向いていないという側面があります。

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2020年5月10日 (日)

光と視覚の科学―神話・哲学・芸術と現代科学の融合

光と視覚の科学―神話・哲学・芸術と現代科学の融合

アーサー ザイエンス (著), Arthur Zajonc (原著), 林 大 (翻訳)

この本も既に中古本でしか入手できなくなりました。人類が光と視覚についてどのような疑問をもち、どのように考え、どのように取り扱い、そして科学的にどのように解き明かしてきたのかなどを解説する一冊です。光について、いろいろ書いたり、話をしたりする機会がある人は

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内容(「BOOK」データベースより)

知の領域を縦横無尽に越境し、光の謎と神秘を語りつくす。

内容(「MARC」データベースより)

光と視覚について人間がこの3000年間に考えてきたことを、重層的に、余す所なく書き尽くす。物理学と心理学、数学と直観、科学と芸術…あらゆるアプローチと洞察をとりあげ、対比し、一体化させる。

単行本: 425ページ
出版社: 白揚社 (1997/09)
ISBN-10: 4826900791
ISBN-13: 978-4826900799
発売日: 1997/09
商品の寸法: 19.2 x 13.6 x 3.4 cm

目次

1 絡み合う二つの光―自然の光と精神の光
2 光の贈り物
3 分断された光―神の光と光の科学
4 光を解剖する
5 歌う炎―エーテルの波としての光
6 輝く場―電気の光で見る
7 虹の扉
8 光を見る―科学に魂を吹き込む ゲーテとシュタイナー
9 蝋燭の光の量子論
10 相対性と美
11 最小の光―現代の見方
12 光を見る

 

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2020年5月 9日 (土)

レンチキュラーレンズで光学迷彩?(2) レンチキュラーレンズの仕組み

レンチキュラーレンズはどんなレンズ?

 レンチキュラーレンズは半透明の板状のプラスチック製レンズです。レンチキュラーレンズを触ってみると、片面はツルツルしていて、片面はザラザラしていることがわかります。良くみると、縦方向の縞模様が入っていることがわかります。

レンチキュラーレンズ

 レンチキュラーレンズの表面をルーペで拡大すると、次の図のように、細長いカマボコ状のものが並んでいることがわかります。このカマボコ状のものは、その一つ一つがシリンドリカルレンズになっています。

レンチキュラーレンズの表面を拡大してみると

シリンドリカルレンズとは

 次の写真のように、水を入れた牛乳びん越しに「あ」を見ると、びんが縦置きのときは左右が反転して横に伸びて見え、横置きのときは上下が反転して縦に伸びて見えますこのように方向で見え方が異なるのは、牛乳びんが円柱形をしているからです。

牛乳ビンのレンズ

 次の図のように、円柱の側面の一部を切り出した形のレンズをシリンドリカルレンズといいます。その形状からカマボコレンズと呼ばれることもあります。普通の球面レンズはどこを切り出しても断面に曲面がありますが、シリンドリカルレンズは曲面をもつ断面ABと、曲面をもたない断面CDがあります。

シリンドリカルレンズの構造

 そのため、シリンドリカルレンズには、レンズの働きをする向きと、働きをしない向きがあります。普通のレンズは次の図の左側のように光軸に平行な光を1点の焦点に集めますが、シリンドリカルレンズは光を直線上に集めます。

普通のレンズとシリンドリカルレンズの違い

 小さなシリンドリカルレンズをたくさん配列したレンズがレンチキュラーレンズです。レンチキュラーレンズを通してものを見たときに、『レンチキュラーレンズで光学迷彩?(1) 手品と物体の見え方』で紹介したような見え方になるのは、たくさん配列されているシリンドリカルレンズの働きによるものです。どうして、ものが消えたり、伸びて見えたりするかについては、次の機会に説明します。

レンチキュラーレンズという用語

 ところで、英語の『レンチキュラー(lenticular)』は「レンズの」「レンズ状の」「水晶体の」という意味です。ですので、レンチキュラーレズは「レンズのレンズ」「レンズ状のレンズ」で、「頭痛が痛い」「馬から落馬する」のような重言になっています。

 日本語特有の誤用かと思いましたが、英語版のWikipeidaではlenticular lenseとなっていますし、海外の多くのサイトでlenticula lensと表現されています。日本でもレンチキュラーレンズという表現が多いのですが、日本語版のWikipediaではレンチキュラーとなっています。なお、日本語版および英語版のWikipediaの解説は3Dやアニメーションを表示するためのレンチキュラーレンズが前提となった説明になっていて、レンチキュラーレンズそのものの説明になっていないようです。

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2020年5月 5日 (火)

光技術入門

光技術入門 第2版

堀内 敏行 (著)

2

光学機器の入門書です。入門書といっても専門書で、数式も多いのですが、図と説明がしっかりしていますので、数式が苦手な人でも読み進めることができると思います。

単行本: 247ページ
出版社: 東京電機大学出版局; 第2版 (2014/7/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4501628804
ISBN-13: 978-4501628802
発売日: 2014/7/20
梱包サイズ: 21.2 x 15.2 x 2 cm

目次

第1章 光線の性質
 1.1 光とは
 1.2 幾何光学
 1.3 幾何光学の基本原理
 1.4 幾何光学の基本法則
 1.5 正規反射と乱反射
 1.6 全反射
 参考文献
第2章 レンズによる結像
 2.1 凸レンズと凹レンズ
 2.2 光軸と焦点
 2.3 主点と主平面
 2.4 球面における屈折
 2.5 凸レンズによる結像
 2.6 凹レンズによる結像
 2.7 ニュートンの結像式
 2.8 レンズを2枚重ねたときの焦点距離
 参考文献
第3章 ミラーによる結像
 3.1 凸面鏡と凹面鏡
 3.2 凹面鏡による平行光の集束
 3.3 凸面鏡による平行光の発散
 3.4 凹面鏡による結像
 3.5 凸面鏡による結像
 3.6 平面鏡による結像
 3.7 球面以外の二次曲面の性質
 参考文献
第4章 収差
 4.1 球面による収差
 4.2 色収差
 参考文献
第5章 光の波動性
 5.1 光の波動的な特徴
 5.2 光の波動の解析
 5.3 干渉
 5.4 偏光
 5.5 反射特性への波動性の影響
 参考文献
第6章 回折
 6.1 回折現象
 6.2 短形スリット2によるフラウンホーファ回折
 6.3 回折格子
 6.4 円形開口によるフランホーファ回折
 6.5 レンズによるフランフォーファ回折
 6.6 スリットによるフレネル回折
 6.7 ナイフエッジによるフレネル回折
 6.8 光波の複素数表現
 参考文献
第7章 光の粒子性
 7.1 水素の輝線スペクトル
 7.2 光子と光子のもつエネルギ
 参考文献
第8章 光と視覚
 8.1 人間の目の構造
 8.2 人間の目の解像度
 8.3 光の強さ
 8.4 めがね
 参考文献
第9章 レーザ
 9.1 レーザ光の発生
 9.2 レーザ光のモード
 9.3 レーザ光の種類と用途
 参考文献
第10章 光ファイバー
 10.1 光ファイバーの構造
 10.2 光の伝播可能角度
 10.3 通信用光ファイバー
 10.4 画像取り出し用光ファイバー
 10.5 ライトガイド
 参考文献
第11章 光学機器
 11.1 拡大鏡(ルーペ)
 11.2 顕微鏡
 11.3 望遠鏡
 11.4 カメラ
 11.5 コピー機
 11.6 レーザプリンタ
 参考文献
第12章 光応用技術
 12.1 液晶ディスプレイ
 12.2 ホログラフィ
 12.3 干渉を利用した距離測定技術
 12.4 屈折率分布の可視化技術
 12.5 発光ダイオード
 12.6 光造形法
 12.7 リソグラフィ
 参考文献
索引

 

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2020年5月 4日 (月)

時計が右回りの理由

 最近はデジタル時計を使っている人が多いと思いますが、時計回りにと言われれば、誰しも右回りであることを理解するでしょう。

Watch

 世界中にはさまざま文化やルールがありますが、時計が右回りは万国共通です。どうして右回りが万国共通になっているかというと、それは時計の成り立ちに関係しています。古来より、人類は太陽の動きにより、朝ー昼ー夜といった時間の流れを意識していたはずです。そして、太陽の動きから正確な時の流れを計る日時計が発明されました。

 人類最古の日時計は真っ直ぐな棒を地面に突き立てた簡単なものでした。紀元前3000年頃のエジプトでは、オベリスクと呼ばれる神殿などに立てられたモニュメントの影が日時計として利用されていました。影の位置で時刻を知ることができ、影の長さで季節を知ることができました。また、古代バビロニアでも日時計が利用されていたという記録も残っています。日時計は古代ギリシャや古代ローマで発展しました。

 

 さて、人類はアフリカで生まれ、北上していきました。文明の多くは北半球で発展したと考えられます。日時計の影は北半球では右回りになります。その後の時計の開発も北半球で進んだため、時計の針は右回りとなりました。

 日時計は英語でSundial(サンダイアル)といいます。時計以外にも回転式のメーター、ツマミやダイアルなどが右回りなのも日時計に関係していると考えられています。もし、人類が誕生したときの地球の大陸が南半球中心だったら、時計回りは左回りになっていたかもしれません。

 日時計は自分でも作れますが、下記のキットが良くできています。

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2020年5月 2日 (土)

光工学入門―光の基礎知識のすべて

光工学入門―光の基礎知識のすべて

小川 力 (著), 若木 守明 (著)

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この本も中古本でしか入手できませんが、説明の展開がとても面白いです。数式もありますが、図も多いのである程度の物理の知識がある人は式をとばしても読み進めることができると思います。

第1章は光学の歴史がよくまとまっています。巻末には光学史年表もついており、これがまた役に立ちます。第2章は光るというのがどのような現象なのかを解説してくれます。第3章で光の性質を解説、第4章でその光が物質とどのように相互作用するのかを解説します。第5章で光学素子や光の技術、第6章で先端技術を紹介しています。

目次

第1章 光学の歴史
第2章 光の発生
第3章 光が持つ性質
第4章 光と物質の相互作用
第5章 光工学の応用
第6章 光工学の未来

単行本: 233ページ
出版社: 実教出版 (1998/04)
ISBN-10: 4407023899
ISBN-13: 978-4407023893
発売日: 1998/04
商品の寸法: 21.2 x 14.6 x 2.2 cm

 

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2020年5月 1日 (金)

光は蓄えることができるか(4)ー光を蓄える人工物質

  1987年に米国のベル通信研究所のヤブロノビッチ博士(現在カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)は屈折率が異なる物質を周期的に配列した微細な構造体を使えば光を自由に制御することができるという論文を発表しました。

 この構造体のことをフォトニック結晶と言います。フォトニック結晶は、私たちの身の回りにある物質の結晶とは異なります。周期的な構造をもつ特殊な微細な物体と考えたほうが理解しやすいでしょう。フォトニック結晶の構造の周期は光の波長の半分程度(可視光線では200 nm~300 nmぐらい)のナノオーダーです。フォトニック結晶は非常にに微細な構造体です。

Phtonic1

  フォトニック結晶は光の透過・反射・屈折・回折・散乱・干渉といった光の振る舞いを制御する目的で使用することができます。光がフォトニック結晶に入ったときに、光の振る舞いは光の波の波長(振動数)とフォトミック結晶の周期性のある構造との相互作用で決まります。

 光を蓄えるという点では、フォトニック結晶中には光が存在できるところと、光が存在できないところがあります。フォトニック結晶の構造を変えてやると、光が集中して存在する部分ができたり、結晶中の光の通り道を制御したりすることができます。

 このため、フォトニック結晶を通る光は通常の光の振る舞いと異なります。例えば、屈折率が負になったり、わずかな波長の違いで屈折率が大きく変わったりするなどの従来の物質では起こりえなかった現象を作りだすことができます。

Phtonic2

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