カメラ発明の日は3月19日ではなく8月19日
カメラの語源は、ラテン語のカメラ・オブスキュラで、カメラは部屋、オブスキュラは暗いという意味です。大昔のカメラは内部が真っ暗な箱に小さい孔を開けた簡単な構造のものでした。レンズもついていなければ、フィルムもありません。小孔から差し込む光が、反対側の壁に物体の像を映し出すという、光のピンホール現象を利用したものです。
カメラ・オブスキュラは天体の観測や絵を描く道具として使われていましたが、像を綺麗に映そうとすると像が暗くなるという問題がありました。この問題はピンホールに凸レンズをつけることで解決されました。レンズの利用によって、カメラ・オブスキュラはさらに実用的になりました。しかし、当時のカメラ・オブスキュラでは、映った像を写真として残すことはできませんでした。カメラ・オブスキュラの像をそのまま写真として残すことは人類の長年の夢だったのです。
1822年、フランスのジョゼフ・ニセフォール・ニエプスは天然アスファルトを感光材に使って写真の撮影に成功しました。写真を1枚撮るのに8時間もかかりましたが、カメラ・オブスキュラの像を写真として残すことに成功したのです。ニエプスはルイ・ジャック・マンデ・ダゲールと研究を進め、銀メッキした銅板の表面にヨウ化銀を付着させた板を使う方法を考えました。エニプスは1833年に他界してしまいましたが、ダゲールはこの研究を進め、1839年に銀板写真を発明しました。この銀板写真法をダゲレオタイプといい、そのカメラをダゲレオタイプのカメラといいます。1回の撮影で一枚の写真しか撮れませんでしたが、非常に鮮明な写真を撮ることができ、しかも撮影時間は30分と大幅に短縮されました。
このあたりの詳しい話は、このブログで下記で、まとめてありますので、興味のある方はご覧いただければ幸いです。
さて、本題ですが、ダゲールは1839年の初頭に、フランス科学アカデミーの常任秘書のフランソワ・アラゴにダゲレオタイプのカメラの仕組みを秘密厳守で説明しています。アラゴはこの画期的な発明を理解し、ダゲールを支援しました。
その後、フランス政府はダゲールのこの発明の権利を、ダゲールとニエプスの息子の終身の年金と引き換えに買い取りました。
そして、このダゲレオタイプのカメラは1839年8月19日にパリで開催された科学アカデミーで紹介され公式にその発明が認められました。フランス政府はこの発明をフランスからの「世界への無償の贈り物」として発表し、その完全な手順書を公開しました。これにより、ニエプスとダゲールが発明した銀板写真は世界中に広まりました。
ところで、国内の多くのサイトでカメラ発明の日は3月19日と説明されています。しかしながら、これは上述の通り8月19日の間違いではないかと思います。8を3と誤植した可能性が高いと思われます。海外のサイトでは、8月19日という説明が多いです。
ルイ・マンデ・ダゲール著 完訳 ダゲレオタイプ教本―銀板写真の歴史と操作法
ダゲレオタイプ操作法を詳述した小冊子「ダゲレオタイプ教本」は、1839年8月20日パリで発売されたが、その日に売り切れてしまい、次の年末までに10数ヵ国語訳が出版されるほどの、世界的大ベストセラーとなった。本書は永く待望されていた、この写真における金字塔「ダゲレオタイプ教本」の初めての完訳である。ダゲレオタイプ発明前史と、この画期的な発明が完成されるまでの秘話などを含む、懇切な「解説」が添えられた本書は、すべての写真愛好家に対する必読の書と言っても過言ではない。
出版社 : 朝日ソノラマ (1998/9/1)
発売日 : 1998/9/1
言語 : 日本語
単行本 : 162ページ
ISBN-10 : 4257120207
ISBN-13 : 978-4257120209
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