スペクトルとはなにか(2)|連続スペクトル・線スペクトル・帯スペクトル
連続スペクトルとは
スペクトルとは何か(1)で説明したニュートンが発見した可視スペクトルのようなスペクトルを連続スペクトルといいます。
線スペクトルとは
スペクトルには不連続の飛び飛びの暗線や輝線が現れるものがあります。トンネルの照明に使われている黄色のナトリウム灯の光をプリズムに通すと、太陽光のように光の色の帯が現れず、オレンジ色の光しか出てきません。
これは、ナトリウム灯の光が、波長589 nmの光しか含んでいないからです。このようなひとつの波長の光を単色光といいます。このスペクトルは次の図のようになります。
ナトリウム灯のスペクトルのように輝線からできているスペクトルを線スペクトルといいます。線スペクトルは原子の発光や吸収にともなって現れますが、原子の種類によって特有な形となります。ナトリウム灯が黄色、水銀灯が青白い色の光を出すのは、ナトリウムと水銀の原子がそれぞれ特有な波長の輝線をもつ線スペクトルを出すからです(発光)。
また、原子は自分が出す光と同じ波長の光を吸収するという性質があります。例えば、低温のナトリウム原子に白色光を当てると、さきほどの輝線と同じ波長の光が吸収され、白色光の連続スペクトルに暗線が現れます(吸収)。
帯スペクトル
複数の原子からなる分子では、原子同士の結合の振動や回転運動によってエネルギー状態が原子ほどきっちりと決まらず、ある幅をもったエネルギーを放出したり吸収します。そのため分子のスペクトルも線スペクトルが集まった幅のあるスペクトルとなります。これを帯スペクトルといいます。
Benzo[a]pyreneの帯スペクトル
原子や分子が出したり吸収したりする光を調べると原子や分子の内部がどうなっているかを知ることができます。スペクトルはその重要な手がかりであり、スペクトルを使った光分析が最先端の技術に利用されています。ニュートンは幻や幽霊という言葉を語源にしてスペクトルを名付けましたが、スペクトルの活躍を考えると語源とは相反していると言えるかもしれませんね。
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