光速の測定と光の波動説
次の図のように、光が空気中から水中にはいるとき、光は水と空気の境界面で屈折して水中に入ります。このとき、屈折角は入射角より小さくなります。
この現象は、光の波動説では光の速さが水中ではおそくなるためとされていました。一方、粒子説では、光の粒子が水にはいるときに下向きの力がはたらくためとされていました。光の粒子に下向きの力がはたらくということは、光の粒子が水中に入るときに加速されることを意味します。つまり光速は水中の方が速いことになります。この光の屈折に対する、光の粒子説と波動説の解釈の食い違いに決着がつけば、光が粒子か波かがわかることになります。実はヤングもそのことを指摘していましたが、1800 年代の初めに水中の光速を正確に測定する技術はなかったのです。
水中の光速を測定しようと最初に試みたのは、フランスの物理学者フランソワ・アラゴです。彼はいち早く光の波動説を認めた科学者であり、その関係でフレネルと共同研究を行っています。光が横波であることが実証されたのも、2人の共同研究によるものでした。
フランソワ・アラゴ
アラゴは光の波動説を証明するため、1838 年頃から水中とガラス中の光の速さを比べる実験をしましたが、十分な結果を得ることができませんでした。
1850 年、視力が衰え始めたアラゴは水中の光速がわかれば、光の粒子説と波動説の論争に決着をつけることができると唱え回転鏡を用いた光速の測定実験をフィゾーとフーコーに託したのです。
フィゾーはアラゴが推奨した回転鏡を用いた光速の測定実験を途中で諦めてしまいましたが、フーコーは回転鏡を用いた光速測定実験に拘り続け、装置の改良を続けました。
1850 年、フーコーはついに水中の光速を測定することに成功しました。彼が測定した水中の光速は、空気中の光速(秒速 30 万キロメートル)の約3/4の値、秒速22万5千キロメートルでした。この実験結果によって、光は波であると結論づけられ、1672 年に始まった光の粒子説と波動説の論争に、ひとまず終止符が打たれることになったのです。
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