背理法 存在しないことを証明する
古代ギリシャの哲学者であり、エレア派の始祖でもあるパルメニデスの養子にゼノンという哲学者がいました。ゼノンはパルメニデスの思想が世の中で受け入れられないことを嘆き、師の考えに対する異論に反論し、師を擁護するための論法を考えました。
ゼノンが考え出した方法は「背理法」です。背理法は、相手が真とする命題をひとまず真と仮定して論理を展開し、真と仮定したことによって生じる矛盾を導き出すことによって、相手の命題が成り立たないことを証明する方法です。
自分が真とする命題を証明する立場で考えると、自分の命題の否定を真と仮定することにより導き出される矛盾を示すことによって、自分の命題が真であると結論づけることになります。
背理法について、簡単な例で考えてみしょう。昆虫とクモは節足動物の仲間ですが、昆虫は節足動物昆虫類、クモは節足動物クモ類に属します。クモが昆虫ではないことを背理法で証明してみましょう。
まず、「クモは昆虫ではない」の否定である「クモは昆虫である」を真の命題として、次の図のように論理
を展開します。
このように、昆虫とクモの構造を比較すると、矛盾が生じることから、「クモは昆虫である」という仮定が成り立たないことを示すことができ、もとの命題「クモは昆虫ではない」を証明することができます。
ところで、昆虫とクモの足の数について、
① クモは足が8本ある
② 昆虫はクモではない
③ よって、昆虫の足は8本ではない
という証明はできるでしょうか。実は、この証明はできません。昆虫をタコに入れ替えてみてください。タコは昆虫ではありませんが、足は8本あります。このように条件の設定や手順を間違えると、証明ができなくなります。
また、命題と条件によっては目的の証明ができずに迷宮入りしてしまう可能性もあります。背理法を使うときには、このような状況に陥らないように注意する必要があります。
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