印刷屋さんの色合せ
学校の美術の授業で、先生から「おいおい空の青色はもっと明るいはずだよ」なんて言われた経験がある人もいると思います。
そう言われると、さっそく白い絵の具を取り出して、自分が作った空色に白い絵の具を混ぜて色を調整することになります。
学校の授業で描いたものなら実際の色と少しばかり違っていても問題にはなりませんが、チラシ、カタログ、雑誌、本などの印刷物となるとそうはいきません。
微妙に色が違っているだけで「頼んだ色はこの色ではない」「実物とは色が違う」などのクレームがきてしまいます。
もっともシビアな色合わせを要求されている印刷屋さんはどのようにして色合わせをしているのでしょうか。印刷屋さんでの色の取り扱いには2つあります。
ひとつはプロセス印刷といってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の四色を網点を使って色を作り出す方法です。通常のカラー印刷はこのプロセス印刷を使って行われます。
プロセス印刷の身近な例にはインクジェット式のカラープリンタがあります。印刷物をルーペで拡大してみるとわかりますが、すべての色はYMCKの四色の網点で表現されています。例えば、緑色はYとCのインクの網点で作られています。色の濃淡は網点の密度で表現されます。
もうひとつは特色印刷といって、その色のインクを使う方法です。特色印刷ではプロセス印刷と違って目的の色そのものの色のインクが使われます。印刷屋さんが色合わせをするのは特色印刷の場合です。
インク会社では、各色のインクが実際にどのような色かをまとめた見本帳を用意しています。見本帳にはさまざまな色のサンプルが印刷されています。印刷屋さんはこの見本帳を見て、どのインクを使うか判断します。
ところが、得意先から指定された色(指定色)となると必ずしもこの見本帳の中に最適なインクがあるとは限りません。そのため印刷屋さんは既存のインクを混ぜ合わせて目的の色を作り出す作業を行います。この作業を色合わせ作業といいます。
色合わせ作業は指定色と同じ色のインクを作る作業になりますが、単に色があっていれば良いというわけではなく、どのような素材に印刷するのか、印刷物がどのような用途に使われるのかを考えて目的に合致したインクを選ぶ必要があります。色作りの作業や作った色が合っているかの判断は熟練の職人の目によって行われます。絵の具で、ある色を作り出すように、インクを混ぜ合わせながら目的の色を作っていくのですからこれは大変な作業です。
色合わせが正しいかどうか機械で判断する方法もありますが、現状では職人の速さと正確さには敵わないのです。しかし、人間の目による判断では再現性に問題がある・数値化が不可能などの問題もあり、機械を併用する場合が多くなってきました。
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