古代ギリシャの哲学者タレスが予言した皆既日食(紀元前585年5月28日)
古代ギリシャの都市ハリカルナッソスの歴史家ヘロドトスの「ヒストリア(歴史)」という著書に、紀元前6世紀に行われた戦争中に、昼が夜に変わり、双方の兵士たちが戦いをやめ、和平を急ぐ気持ちになったということが記されています。これは紀元前585年5月28日に起きた皆既日食のことと考えられています。
同書によると、この日食は古代ギリシャのイオニア地方で発祥したミレトス学派の始祖であるタレスが予言していたようです。もちろん、タレスの予言は現在のように○月○日○時○分のような予言ではありませんでした。ヘロドトスのヒストリアから伺えるのは、タレスの日食の予言は年単位であっただろうということです。
もちろん、タレスが日食が生じる詳しい仕組みや計算方法を知っていたわけではありません。しかし、古代から天球上での太陽と月の動きは知られていて、太陽と月が重なる時期については、ある程度の予想ができていたと考えられます。
タレスが活躍していた当時、ミレトスは地中海交易の拠点であり、様々な国から多くの人々が訪れ、異文化交流が進みました。それによって、これまでそれぞれの地域の人々が信じていた神学的な世界観や価値観は、崩れ始め、多様化し、混乱しました。そのような中で、世界の仕組みや、身の回りの自然現象などについて、普遍的な真理の追求が行われるようになり、これが哲学となりました。その哲学の祖となったのがタレスです。
おそらく、この異文化交流によって、タレスはさまざまな情報を入手したのだろうと思います。その中には、日食に関する記録もあったのではないかと思います。
もし、タレスがたくさんの日食の記録が入手でき、その周期性に気がつけば、日食が起きる時期をおおまかに予言することは難しいことではなかったでしょう。
タレスは紀元前585年5月28日に日食が起きると予想したわけではありませんから、当時の人々の認識は今年中に日食が起きるという予言があるという程度だったでしょう。多くの人がその予言を信じていたかどうかはわかりません。
しかし、5月28日に行われた戦争中にその予言が見事的中したのです。しかも、日食は部分日食ではなく、皆既日食でした。あたりが暗くなり、昼が夜に変わったことにより、兵士たちは驚いたと思います。彼らは浮き足立ち、そして早く元通りの世界に戻ってくれと、和平を願ったのでしょう。
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