ピンホール現象とカメラオブスクラ 写真の仕組み(1)
カメラの原型は真っ暗な部屋
真っ暗な部屋の壁に開けた小さな孔から差し込む光が、孔と反対側の壁に外の景色を映し出す。これがカメラの原型で、その原理は光のピンホール現象です。カメラの語源はラテン語のカメラ・オブスクラで、カメラは部屋、オブスクラは暗いという意味です。
ピンホール現象とは
カメラ・オブスクラの原理であるピンホール現象は紀元前から知られていました。紀元前5世紀頃に活躍した中国の思想家の墨子とその弟子達の著書には、針孔を通過する光が交差し倒立した像ができるという記述があります。
また、紀元前4世紀のギリシャのアリストテレスは、樹木の葉の隙間から差し込む光が地面に丸い形を作ることに気が付き、日食の日にその丸い形が三日月のように欠けるのを見て、それが太陽の像であることを確かめました。
ピンホール現象は11世紀頃にイブン・アル・ハイサム(アルハーゼン)が詳しく解説しています。
ピンホール現象を利用したカメラ・オブスクラ
15世紀頃にはイタリアのレオーネ・アルベルティやレオナルド・ダ・ビンチもカメラ・オブスクラを考案して利用した記録を残しています。
この頃のカメラ・オブスクラはまさに暗い暗室で、太陽の観察を行ったり、壁などに映った景色をなぞって絵画を制作したりする目的で使われました。
次の図はイタリアの画家のカナレット(ジョヴァンニ・アントーニオ・カナール)がカメラ・オブスクラで描いたベニスにあるCampo Santi Giovanni e Paoloという建物の絵の下書きです。
Campo Santi Giovanni e Paoloの写真です。上手の右から2番目の図と比べてみましょう。ドームや銅像などが描かれていてわかりやすいと思います。
次がカナレットが描いた図です。
カメラ・オブスクラが広く使われるようなると、内部に椅子を取り付けたもの、移動式のもの、手で持って歩くことができる小型のもの、鏡を使って倒立像を正立像にするものなどが作られるようになりました。
凸レンズを利用したカメラ・オブスクラ
ピンホールでできる像は、ピンホールを小さくすると像がはっきりと映りますが、光の量が少なくなるので像が暗くなります。逆にピンホールを大きくすると、像は明るくなりますがぼやけてしまいます。
この問題はピンホールの部分を凸レンズにすることによって解決することができます。前述のピンホールでできたろうそくの像を凸レンズで作ると下図のようになります。ピンホールは1点から出た光線が点像を作りますが、凸レンズは1点から出た光を集めて点像を作ります。像点を作る光の量が増えるため鮮明な像が得られるのです。
カメラ・オブスクラに凸レンズが取り付けられるようになったのは16世紀に入ってからです。
レンズの利用によってカメラ・オブスキュラはさらに実用的になりました。しかし、この頃のカメラ・オブスクラは像を眺めるだけで、写真として残すことはできませんでした。18世紀の始めにドイツのヨハン・ハインリッヒ・シュルツが銀の化合物が光で変色することを発見していますが、写真を発明するまでには至らなかったのです。
【関連記事】
| 固定リンク | 0
「光学機器」カテゴリの記事
- フォーカルプレーンシャッターの仕組み(2024.07.17)
- 一眼レフカメラとミラーレス1眼カメラの違い(2024.07.12)
- バーコードの原理と仕組み①(2022.10.06)
コメント