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2012年5月23日 (水)

減色法によるカラー写真の仕組み 写真の仕組み(6)

色の三原色によるカラー写真の実現

 1869年、フランスのオーロンはC(Cyan、シアン)、M(Magenta、マゼンタ)、Y(Yellow、イエロー)の色の三原色を利用した写真術を考案しました。彼が考案した方法は、色光を混ぜて色を作るマクスウェルの加色法に対し、光の吸収体である色材を混ぜて色を作ることから減色法といいます。加色法は光の三原色のフィルタと白黒感光剤で色を作りますが、減色法は光で感光剤そのものを色の三原色に発色させて色を作ります。現在の銀塩カラー写真の原理は全て減色法です。

減色法は手順が煩雑なため1930年代中頃にコダック社が実用的なフィルムの販売を開始するまではほとんど普及せず、加色法が主流でした。

カラーフィルムの仕組み

  カラーフィルムの構造は大雑把に光の三原色で発色する青色感光層、緑色感光層、赤色感光層と、緑色感光層と赤色感光層に青色光が入るのを防ぐイエローフィルタ層の4つの層からなります。

 カメラのシャッターを切ると、フィルムの各感光層が特定の色の光で感光します。このとき、白黒写真と同じように臭化銀が銀に変化して潜像ができます。

 フィルムを現像すると、現像液の成分が各感光層にできた銀と結びつくことによって潜像が明瞭になります。同時に各感光層はそれぞれが感じ取る光の色の補色を発色します。青色感光層はイエロー、緑色感光層はマゼンタ、赤色感光層はシアンに変化します。このように補色に変化することを一般に色の反転といいます。

Photo

 例えば被写体からの赤色光は次の図のように赤色感光層を感光します。赤色感光層は現像によって赤色の補色であるシアンを発色します。

5

生成した銀が残ると発色した色が黒ずんでしまいます。そこで、定着時に生成した銀をフィルム上に残った臭化銀と一緒に漂白します。

プリントの仕組み

 次にカラー写真のプリントについて考えてみましょう。カラーの印画紙にもフィルムと同様に3種類の感光剤が塗ってあります。

 ネガフィルムに光を当て引き伸ばしを行って印画紙上に像を作ると、この像の光によって印画紙の感光層が感光します。印画紙を現像すると、ネガの色と反転した色ができ、被写体の色が印画紙に再現されます。例えばシアンの光は、次の図のように緑色感光層と青色感光層を感光させます。この印画紙を現像すると、緑色感光層はマゼンタ、青色感光層はイエローを発色します。マゼンタとイエローは混ぜると赤色になりますので、印画紙上で被写体の赤色を再現することができます。

6

カラー写真と光と色の三原色の関係

次の図は光と色の三原色を示したものです。また、被写体の色、現像時のフィルムの色、プリント時の印画紙の色の関係を表にまとめました。表をじっくり見ると、カラー写真でどのように色が再現されているのかがわかると思います。

Photo

光の三原色と色の三原色の足し算と引き算

W=R+G+B C=G+B M=R+B Y=R+G
K=Y+M+C R=Y+M G=Y+C B=M+C

補色

R=W-C  G=W-M  B=W-Y
Y=W-B  M=W-G  C=W-R

フィルムの現像とプリントによる発色

  被写体の色
(反射光)
W K R G B C M Y
フィルム 青色感光層 Y Y Y Y
緑色感光層 M M M M
赤色感光層 C C C C
ネガ K W C M Y R G B
プリント 赤色感光層 C C C C
緑色感光層 M M M M
青色感光層 Y Y Y Y
印画紙 W K R G B C M Y

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