眼の構造と物体の見え方 眼の仕組み(1)
眼のしくみ
次の図はヒトの右眼の眼球を上から見たときの断面図です。眼球は鞏膜(強膜)に囲まれた構造をしており、屈折率約1.34のガラス体で満たされています。眼球の前方には透明な角膜と水晶体があります。角膜の直径は約12 mmで、屈折率は約1.38です。角膜と水晶体の間の眼房は屈折率が約1.34の眼房水で満たされています。水晶体は直径が約8 mm、屈折率が約1.4で凸レンズの形をしています。
眼に届いた光はまず角膜で大きく屈折して眼の中に入ります。このとき、虹彩は明るさによって瞳孔の大きさを変化させ、眼に入る光の量を調整します。瞳孔を通った光は眼房を通り抜けて水晶体に入り、網膜上に物体の像を結びます。
毛様体と水晶体の働き
眼は遠くのものや近くのものを見るときには、毛様体を伸縮して水晶体の厚さを調節し、網膜に像ができるようにします。水晶体で屈折した光はガラス体を通過し、網膜に像を結びます。
次の図は遠方の鳥を見たときの眼に入る光の進み方と網膜にできる像の様子を示したものです。網膜には物体の倒立した像が映ります。
近くの物体と遠くの物体の見え方
景色を眺めているとき、近いところにあるものは大きく見え、遠いところにあるものは小さく見えます。図4は近くの物体と遠くの物体を見たときの様子を示したものです。物体OAと物体O’’Bの大きさは同じですが、眼からの距離が異なるため、眼に入ってくる光の角度が変わり、網膜にできる像の大きさが変わります。このように眼は物体の大きさを光がやってくる角度として捉えています。
ものが見えるとは
網膜に光があたると、網膜で感じた光の色や明るさなどの情報が視神経を通って脳へ伝わります。脳はその情報をもとに複雑な処理を行います。その結果、私たちは物体を見ることができるのです。
物体が見えるというのは、網膜が物体の色や形を光の情報として感じ、脳がその光の情報をもとに物体の色や形や動きを認識するということです。この目と脳の働きがあって、私たちははじめて物体を見ることができるのです。
網膜できちんと物体をきちんととらえることができないと、物体を正確に見ることができません。近眼、遠視、老眼の人が物をよく見ることができないのは、眼のピントを調節する機能が低下しているために、物体の形を網膜で正確にとらえることができないからです。
網膜で物体の形を正確にとらえることができないと、脳でも物体の形を正確に認識することはできません。逆に脳の働きのために、物体の形を正確にとらえることができないという例もあります。それが、いわゆる錯視です。
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コメント
網膜状ですか?
網膜上の間違いですか
投稿: | 2014年7月22日 (火) 10時49分
誤りのご指摘ありがとうございます。「網膜状」を「網膜上」に修正しました。
投稿: 光と色と | 2014年8月 3日 (日) 11時47分