老視 眼の仕組み(4)
老視と老視の矯正
老視(老眼)で近くのものが見にくくなるのは、老化によって水晶体の調整能力が低下し、近点が遠くなるからです。このため老視の人が老眼鏡を使わずに本を読むときには、本を正視の近点より離さなければなりません。一方、老視では遠点は変わることがなく無限遠にありますから、遠くのものは裸眼でも良く見えます。近視と遠視は遠点が変わる眼の屈折異常ですが、老視は近点が変わる眼の屈折異常です。
老視は水晶体の調整能力が低下しているため、次の図のように像が網膜の後側に結ばれてしまいます。そのため、老視の矯正には光を集める働きのある凸レンズを使います。どれぐらいの焦点距離の凸レンズが必要になるかは、老視の度数によって決まります。
遠近両用眼鏡の仕組み
老眼鏡をかけると近点が近づきますが、同時に遠点も近づくため遠くが見えにくくなります。そのため、普通の単焦点レンズの老眼鏡は近くのものを見るときにだけ使います。遠近両用眼鏡はレンズの上側と下側で屈折率が違います。遠くを見るときはレンズの上側を使い、近くを見るときは視線を下げてレンズ下側を使ってものを見ます。遠近両用眼鏡には境目のある二重焦点レンズと境目のない累進屈折レンズがあります。
一般に正視の人の遠近両用眼鏡は、レンズの上部には度が入っておらず、下部が凸レンズになっています。
近視の人が老視になるとどうなるか
一般的な近視の眼は水晶体が厚くなっているわけですから、眼の屈折力が正視の眼よりも強くなっています。ですから、近視の眼は近いところが良く見える眼といっても良いでしょう。
近視の眼は近いところが見える分、遠いところが見えないので、眼鏡をかけて眼の屈折力を弱くする必要があるのですが、矯正された近視の眼の屈折力は正視の眼と同じようになります。
ですから、眼鏡をかけた分、近点は遠くになりますので、裸眼よりも近くのものは見えにくくなります。このことは、新聞などを眼に近づけていき、どこまで文字が読めるかで確かめることができます。眼鏡をかけているときより、かけていないときの方が、新聞を眼に近づけることができます。もっとも、日常生活においては、眼の水晶体の厚さの調整がうまくできているうちは、眼鏡をかけていれば遠くのものも、近くのものも良く見えます。
近視の人が老視になると、やはり近くのものが見えなくなります。しかし、近視はもととも近くのものが見えやすい眼なので、近くのものが見えにくくなるのがわかるのは、眼鏡をかけているときです。裸眼の状態では近くのものが良く見えるはずです。
ですから、近視の人は近いところを見るだけならば、老眼鏡を必要としません。近くのものを見るときには、眼鏡を外せば良いのです。よく、眼鏡をおでこにあげて、新聞などを読んでいる人がいますが、近視の人は、それだけで近いところの文字が読めるようになるのです。
遠くも、近くも見えるようにしたいときには、遠近両用眼鏡をかけます。一般に近視の人の遠近両用眼鏡は上部が凹レンズで、レンズの下部には度が入っていません。
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