ルミノール反応の原理と仕組み|科学捜査に光の目
最終更新:2025年11月27日
はじめに
この記事はルミノール反応の原理と仕組みについて解説しています。ルミノール (luminol) は窒素含有複素環式化合物です。過酸化水素とともに用いると血液が存在すると化学発光します。これをルミノール反応と呼びます。
目次
- ルミノール反応とは
- ルミノール反応の発見
- 反応機構
- ルミノール反応の発光スペクトル
- ルミノール反応では人間の血液かどうかは見分けられない
- 光ったからといって直ちに血液とは判断できない
- ルミノール反応の実験キット
ルミノール反応とは
ルミノール(luminol, C8H7N3O2)は犯罪捜査で血痕の検査に使われています。血痕の色は新鮮なときは赤色をしていますが、時間の経過とともに褐色に変化します。ですから、犯行現場で血痕らしきものが見つかったとしても、目視ではそれが血痕であるかどうかの判断はつきません。その判断に使われるのがルミノール反応です。
ルミノール反応の発見
1928年、ドイツの化学者アルブレヒト(H.O.Albrecht)はルミノールに過酸化水素水(H2O2)を加えると青白い光を出すことを発見し、この反応を生じさせるためには銅や鉄などの触媒が必要であると述べています。
| H. O. Albrecht, Zeitschrift für Physikalische Chemie, 136, 321 (1928). Über die Chemiluminescenz des Aminophthalsäurehydrazids (On the chemiluminescence of aminophthalic acid hydrazide) アミノフタル酸ヒドラジドの化学発光について |
次の映像を見ると発光の様子がよくわかります。
ルミノールの発光の様子
1937年にドイツの法医科学者のヴァルター・シュペヒト(Walter Specht)が血液がこの反応の触媒となることを発見しました。血痕にルミノールと水酸化ナトリウムを混ぜたアルカリ溶液と過酸化水素水の混合液を吹きかけると青白く光ります。この反応は非常に高感度で血液が数万倍以上に希釈されていても起こるため犯罪捜査に用いられるようになりました。捜査の現場に残されている血痕が少量の場合、発光は短時間であり光も弱いため暗闇で観察し長時間露光で写真撮影します。
反応機構
ルミノールと過酸化水素水の混合液はそのままでは反応しませんが、血液中のヘモグロビンに含まれるヘムという鉄原子をもつ物質が反応を促進させる触媒の役割をして反応が起きます。
まず触媒によって過酸化水素が分解し活性酸素ができます。活性酸素は非常に不安定で物質を酸化させる性質があります。活性酸素がルミノールと反応すると、次の図のような反応が起こり、3-アミノフタル酸となります。
調整後のルミノール試薬は不安定のためルミノールと過酸化水素水は別々に保管し使用直前に混合する必要があります。
ルミノール反応の発光スペクトル
反応で生じた物質はエネルギーが高い励起状態にあります。励起状態になった物質はすぐにエネルギーの低い基底状態に戻ります。そのときに、励起状態と基底状態の差分のエネルギーを光として放出します。差分のエネルギーの大きさは波長424 nmの青色光のエネルギー(光のエネルギーの計算機|計算式の導出と波長と振動数との関係と変換)に相当するため発光する光の色は青色になります。次の図がルミノール反応の発光スペクトルです。

ルミノール反応の発光スペクトル
このように化学反応で光が出る現象を化学発光(化学ルミネッセンス、Chemiluminescence)と言います。化学反応によって励起された電子が基底状態に戻る際、エネルギーを光として放出することで発光が生じます。
パーティーやコンサートで使われているケミカルライトも化学発光を利用したものです。ケミカルライトはシュウ酸ジフェニルと過酸化水素との混合による化学発光です。
ルミノール反応では人間の血液かどうかは見分けられない
ヒトをはじめとする多くの動物の血液にはヘモグロビンが存在します。ですから、ルミノール反応は人間以外の血液でも生じます。そのため、発見された血痕がヒトの血液由来のものなのかどうかを確認する必要があります。その検査を人血証明試験と言います。人血証明試験はヒトのヘモグロビンと選択的に反応する酵素とヒトの血液中のタンパクと反応する酵素を用いて調べる分析ですが、血痕の状態により分析が困難な場合もあるため、いろいろな分析を行う必要があります。
光ったからといって直ちに血液とは判断できない
ルミノール反応は酸化反応ですから、過酸化水素水でなくても市販の漂白剤などの酸化剤でも反応が起きます。
また、この反応は血液中の鉄を含むヘムが触媒となって起こると説明しましたが、触媒となる物質はヘムだけではありません。鉄の他に銅やコバルトなどの金属元素を含む物質なども触媒となりますが、必ずしも金属元素だけが触媒になるわけではありません。過酸化水素を分解する触媒であれば良いことになります。たとえば、大根にはパーオキシターゼ(peroxidase、ぺルオキシターゼとも呼ばれる)という酵素が含まれていますが、パーオキシターゼは過酸化水素を分解させ、物質の酸化反応を促進する触媒となる酵素です。パーオキシターゼは大根だけでなく、セイヨウワサビやキュウリをはじめとする植物に含まれており、食品添加物としても使用されています。ですから、ルミノールと過酸化水素水の混合溶液をパーオキシターゼを含む物質に触れさせると青い光を発光します。
したがって、科学捜査ではルミノール反応はあくまでも予備試験です。発光したものが、ただちに血痕と断定することはできません。ルミノール反応が陽性だった場合にはそれがヒトの血液由来のものかどうか、血液型は何型かなどを調べる化学分析が行われ鑑定されます。
ルミノール反応の実験キット
ルミノール反応の実験キットを手に入れることができます。手順書通りに操作すれば簡単に実験を行うことができます。大根の酵素などを使って実験すると面白いでしょう。
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Author:Photon(光学 分析化学 工学修士)
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コメント
ここに掲載された記述を私が書いている小説に引用してもよろしいでしょうか?
ご返信願います。
投稿: 増田 | 2015年9月18日 (金) 14時48分
コメントありがとうございます。
小説への引用は構いませんが、こちらの記事が正確な記述になっているかどうか確認した方が良いかと思いますので、どの部分を引用されたいかお知らせ頂けますでしょうか。ブログの左下のメール送信でメールのやり取りが可能です。
投稿: 光と色と | 2015年9月20日 (日) 14時05分
ここに記載されているルミノール反応の図を私が書きつつある本に引用してもよろしいでしょうか?
メールが頂けたら、予定している本に関する情報や書く予定の内容、引用方法についての情報をお送りします。
投稿: 稲場秀明 | 2017年6月20日 (火) 20時36分