折れ曲がる箸と浮き上がるコイン
■茶碗の中の箸が折れ曲がって見えるのはなぜ?
茶碗の中に箸を入れて、水をそそぐと、写真のように箸が水面で折れ曲がって見えます。もちろん、箸そのものが曲がってしまったわけではありません。箸が折れ曲がって見えるのは光の屈折によるものですが、その仕組みについて考えてみましょう。
次の図はカップに箸をまっすぐに立てて、カップに水を入れた場合の様子を示したものです。カップの底にある箸の先P点から出た光のうち、水面上のO点に向かって直進する光を考えてみましょう。もし、光がO点から空気中に出たあと、点線のようにそのまま直進してQ点に届けば、箸はまっすぐ見えるはずです。しかし、光はO点で折れ曲がり、実線のように進んでQ’点に届きます。私たちは光がO点で折れ曲がったことを判断することができませんから、箸の先が光が曲がったO点の延長線OP’上にあるように見えてしまいます。そのため、箸が短くなったように見えるのです。
■茶碗の底のコインが浮き上がって見えるのはなぜ?
次の写真(A)のようにカップの底にコインを置き、カップのふちでコインがほどんど見えなくなる位置に目線を合わせます。このカップに水を入れると、(B)のようにカップの底のコインが見えるようになります。
カップに水が入っていない状態では、次の図(A)のように、コインの中心P点から出た光は矢印のように進むため、カップの縁に遮られて眼に届きません。そのため、コインの中心を見ることができません。ところが、カップに水が入った状態では、、(B)のように、コインから出た光が水面上のO点で折れ曲がるため眼に届くようになります。このとき、眼から光線を逆に辿った直線OP’上にコインが浮き上がって見えます。カップの底から出る光も水面で屈折するため、コインだけでなくカップの底ごと浮き上がって見えます。
■光は物質の境界面で屈折する
光が空気中から水中に進むとき、光は空気と水の境界面(水面)で、反射したり、水の中に入ったりします。水面に垂直に入った光はそのまま直進しますが、斜めに入った光は、次の図(A)のように進む向きを変えます。この現象を光の屈折といい、光が屈折する角度を屈折角といいます。光が水中から空気中に進むときも、(B)のように空気と水の境界面で屈折します。このように、光は同じ物質中を進むときは直進し、ある物質から異なる物質に入るときに境界面で屈折します。
水中の魚をモリで突こうとして失敗したことはないでしょうか。光の屈折のため、魚は水上から見える位置よりも、深いところにいます。そのため、魚に狙いを定めたつもりでもモリが外れてしまうのです。また、川や池で遊んでいるときに底が見えるから安心と思っても、思ったより深いことがありますから注意しましょう。
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