光が生まれたのはいつか
■宇宙の誕生
この宇宙はおよそ137億年前に誕生したと考えられています。生まれたばかりの宇宙は超高温・超高密度の極めて小さな空間でしたが、すぐに膨張を始めました。この宇宙の初期状態のことをビッグバンと言います。初期の宇宙では、物理法則も現在私たちが知っているものとは異なっていたと考えられています。
宇宙が誕生すると光子を含む素粒子が生まれました。そして、クオークと呼ばれる素粒子が集まり、陽子や中性子ができました。この陽子と中性子が集まって水素やヘリウムの原子核ができました。
宇宙空間は極めて高温であり、大量の電子が宇宙空間を自由に飛び回っていました。光子は電子に強く散乱され、宇宙空間をまっすぐに進むことができない状態でした。
別の言い方をすると光子が宇宙空間を透過することができない状態、つまり宇宙は不透明だったのです。このときの光子の振る舞いは私たちがよく知っている光の振る舞いとはだいぶ違っていたと考えられます。
■光が生まれる
宇宙が誕生して約38万年後、宇宙の温度が低下すると、電子が原子核に捉えられ原子となりました。これによって光子が宇宙空間をまっすぐに進むことができるようになりました。つまり、光が宇宙空間を長距離進むことができるようになり、宇宙が透明になったのです。これを宇宙の晴れ上がりと言います。私たちが日常体験の中でよく知っている光は宇宙の晴れ上がりのときに生まれたと考えて良いでしょう。
宇宙の晴れ上がりで自由になった光子は現在も観測することができます。この光を宇宙マイクロ波背景放射(宇宙背景放射)と言います。宇宙マイクロ波背景放射は宇宙の全方向から等しくやってくる電磁波です。
この電磁波のスペクトルは2.725 Kの黒体放射のスペクトルによく一致しており、この光を調べることによって、宇宙の誕生や生い立ちを調べたり、推測したりすることができます。宇宙マイクロ波背景放射は私たちが出合うことができるもっとも古い光です。
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