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2011年12月21日 (水)

液晶ディスプレイの仕組み(4)

■バックライトのしくみ

液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)のバックライトとして広く使われている光源は、直径数ミリメートル、長さ数百ミリメートルの細長い形をした冷陰極管という小型の蛍光ランプです。

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 冷陰極管は細長い形をしているため、そのままバックライトとして使うと、次の図のようにLCDの明るさにムラが生じてしまいます。

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 そのため、バックライトはLCDの明るさにムラが生じないよう、光が効率的に液晶パネル全面に均等に届くよう工夫されています。

 バックライトの配置には、液晶パネルのすぐ後ろに冷陰極管を配置する直下ライト方式と、液晶パネルの側面に冷陰極管を配置するサイドライト(エッジライト)方式があります。直下ライト方式はLCD全体が厚くなりますが、画面を明るくすることができるので、大型の液晶テレビなどで採用されています。他方、サイドライト方式は多くのLCDで採用されています。ノートパソコンのLCDはサイドライト方式を採用しています。

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 反射板、反射シートは冷陰極管から出る光を無駄なく使うために使われます。拡散板は画面の明るさのムラを低減し、プリズムシートは画面の明るさを向上させます。導光板はサイドライト方式のみで使われ、側面の冷陰極管からやってくる光を液晶パネルの前面の方へ導く役割をします。それでは、一般的によく使われているサイドライト方式のバックライトについてもう少し詳しく説明しましょう。

■サイドライト方式バックライトのしくみ

 次の図はサイドライト方式バックライトの構造を示したものです。サイドライト方式の冷陰極管は透明度の高いアクリル樹脂でできた導光板の端に取り付けられています。冷陰極管から出た光は反射シートによって導光板に入り、全反射を繰り返しながら導光板の中を進んでいきます。

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 このとき、光が導光板の中で全反射するだけなら、光は導光板の外側に出てくることはできません。そこで、導光板の下側には、光を乱反射させて導光板の上側に放出させるための反射ドットが取り付けられています。

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 反射ドットは、冷陰極管に近いところは、粗く配置されており、遠くなるに従って密に配置されています。この工夫によって、導光板の上側に出てくる光の量を均一に保ちます。

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 反射ドットには、導光板に白色インクでドットを印刷したものと、導光板を成型するときに金型で微細な溝を取り付けたものがあります。

 導光板の下側に反射板がありますが、これは導光板の下側に入った光を無駄なく利用するためのものです。導光板の上側から放出された光は拡散板で拡散されたのち、プリズムシートを通った後に1枚目の偏光板に入っていきます。

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白色LEDバックライト
携帯電話のバックライトには白色LEDが使われています。また、最近ではノートパソコンなどのLCDのバックライトにも白色LEDが使われるようになってきました。

■LCDが斜めから見えにくい理由

 最近のLCDは斜め方向からでも良く見えますが、ひと昔前のLCDや、現在でも低価格な商品に使われているLCDは斜めから見にくいという欠点があります。

 LCDが斜めから見えにくい理由は、液晶分子が棒状の形をしており、縦方向と横方向の屈折率が異なるからです。

 LCDが中間色を表示しているとき、液晶分子は次の図のように斜めに配列しています。LCDは正面から見たときに良く見えるように作られているため、斜めから見たときには角度によって見えにくくなり、視野角が狭くなっています。

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■斜めからも良く見える液晶ディスプレイ

 LCDの基本的な表示原理であるTN(Twisted Nematic)型LCDは次の図のように液晶分子が電界の向きにそって起き上がって垂直に整列します。そのため、特に液晶分子が斜めに立ちあがる中間の明るさでは、LCDを見る角度によって、明るさが大幅に違って見え、視野角が狭くなります。

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 この問題を解決するには、液晶分子の配列を工夫する必要があります。例えば、液晶分子を次の図のように交互に向きを変えて配列すると、液晶分子全体の屈折率を平均的に揃えることができるので、視野角が広がり、斜めからも見やすくなります。

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 このようにLCDの視野角を広げる技術を広視野角化技術といいます。広視野角化技術にはいくつかの方法がありますが、ここではIPS方式(In Plane Switching)について紹介します。

 次の図はIPS方式のLCDの構造を示したものです。IPS方式とTN型のLCDで大きく異なる部分は電極の位置です。TN型では電極は液晶分子を上下に挟み込むように配置されていますが、IPS方式では電極を平面上に設置しています。このため、IPS方式は電圧をかけたときに発生する電界の方向がTN型と異なり、その結果、液晶分子が配列する方向が異なります。IPS方式では、液晶分子が画面と平行を保ったままで整列するため、広い視野角で光が出ます。ですから、斜め方向からもよく見えるのです。

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■最後に

 LCDはより綺麗な表示を実現するために、いろいろな工夫が施されており、関連する技術もどんどん進歩しています。そのため、今回説明したしくみとは異なるLCDもたくさんありますし、これからも新しいしくみのLCDが登場してくるでしょう。それらをすべて解説するのは困難ですが、いかなるLCDも偏光板と液晶の配列で画面表示を行う基本原理は変わりません。

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