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2011年12月19日 (月)

液晶ディスプレイの仕組み(2)

■液晶ディスプレイ(LCD)の表示は光のON/OFF

 透過型LCDのバックライトは常時点灯しています。バックライトの光は、画面上の白い部分では通過しており、黒い部分では遮断されています。

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 バックライトが常時点灯しているのにも関わらず、画面の白い部分と黒い部分が明瞭に区別でき、さらに中間の明るさの表示ができるのは、バックライトの光の通過と遮断の制御が確実に行われているからです。この光のON/OFFで重要な役割をしているのが偏光板と液晶です。偏光板と液晶がどのような働きをしているのかTN(Twisted Nematic)型液晶を例に考えてみましょう。

■偏光板と液晶の組み合わせで光のON/OFF

 透過型LCDは向きが90度異なる2枚の偏光板の間に液晶が封入されています。

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 バックライトの光は自然光と同様にさまざまな振動面で振動する光を含んでいます。これは、偏光で光のON/OFFを実現するLCDにとって都合が悪いので、偏光板①でこの偏光板と同じ向き(透過軸)に振動する光を取り出します。これによって振動方向がそろった光を使います。

 この光はそのまま進むと次の図のように偏光板②を通過することができないため遮断されます。このとき、LCDの画面表示は黒となります。

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 偏光板①を通過した光が偏光板②を通過できるようにするには、次の図のように2枚の偏光板の間で光を90度ねじ曲げる必要があります。このとき、LCDの画面表示は白となります。

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 2枚の偏光板の間で、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりする役割をするのが液晶分子です。

 光は液晶分子の配列にそって進む性質があります。そのため、液晶分子の配列を変化させることによって、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりすることができるのです。

■液晶分子の配列を制御するには

 液晶分子の配列は液晶に電圧をかけることによって制御することができます。液晶に電圧をかけると、液晶分子は電界の向きにそって規則的に配列します。液晶に電圧をかけていないときは、液晶分子の配列はバラバラです。

 液晶分子の配列がバラバラだと、光の通り方もバラバラになります。すると、画面の明るい部分と暗い部分の表示が明瞭でなくなり、綺麗な表示ができなくなります。ですから、液晶に電圧がかかっていない状態でも、液晶分子を規則的に配列させておく必要があります。

 ところで、液晶分子は溝にそって配列するという性質があります。そこで、液晶パネルの内側には細かい溝が刻まれた配向膜という薄い膜が取り付けられています。液晶分子は電圧がかかっていない状態でも、右図のように配向膜の溝にそって規則的に配列します。配向膜の溝の向きを90度ずらすようにして向かい合わせ、その間に液晶を封じ込めると、液晶分子は右図のように90度ねじれて配列します。

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配向膜にはポリイミドという樹脂が使われています。この樹脂をガラス基板に塗布し、薄い膜を作ります。布を巻き付けたローラーで膜の表面を一定の方向に擦ること(ラビング)によって溝がつけられます。配向膜の溝に液晶分子がなぜ規則的に配列するのかはまだ十分に解明されていませんが、配向膜はLCDの性能を左右する重要な要素です。

 このように液晶分子が90度ねじるように配列すると、ここを通過する光は次の図の左のように液晶分子の配列にそってねじ曲げられます。また、この状態で電圧をかけると、液晶分子は次の右図のように電界にそって規則的に配列するため、光はねじ曲げられずにそのまま進みます。配向膜の向きを90度ずらして、液晶分子がねじれて配列するようにしておくことが光を制御する上で重要なポイントになっています。

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 液晶分子で光の向きを変えることができたら、後は偏光板を使って光を通過させたり、遮断したりするだけです。90度向きの異なる2枚の偏光板で挟むと、次の図のようになります。

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 この場合、光は液晶に電圧をかけていないときに偏光板を通過します。液晶に電圧をかけると、光は遮断されます。つまり、液晶に電圧をかけていないときは画面に白が表示され、電圧をかけているときは黒が表示されます。液晶にかける電圧の大きさを変えると、液晶分子の配列の度合いが変わります。液晶分子がねじれた状態と直立した状態の中間の配列になると、光の通過量が少なくなるため画面に灰色が表示されます。この光の制御方法をノーマリーホワイトモードといいます。ノーマリーホワイトモードの液晶のしくみを簡単に図で示すと次のようになります。

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ノーマリーブラックモード

2枚の偏光板の向きが同じでも、光を通過させたり、遮断したりすることが可能です。この場合、電圧をかけていないときに光が遮断されるので黒、電圧をかけているときに光が通過するので白となります。この制御方法をノーマリーブラックモードといいます。このモードは電圧をかけていないときに黒を表示するため、液晶分子の配列のバラツキによって、光が漏れて黒が綺麗に表示できないという欠点がありました。しかし、最近ではこの欠点を解決した液晶ディスプレイもあります。

 ノーマリーホワイトモードとノーマリーブラックモードのどちらが良いかは、液晶の配列させ方に関係しています。TN型液晶では、ノーマリーホワイトモードの方が黒の表示がより綺麗になります。黒の表示が重要視されるのはLCDが光の明るさの濃淡で画面表示をしているからです。カラー液晶ディスプレイは光の3原色を使った加法混色で色を表示しています。光が漏れると正しい色を作り出すことができなくなりますから、光が何もない黒の表示が重要になります。

■LCDの画面から出てくる光を確認してみよう

 偏光板②を通過する光、すなわちLCDの画面から出てくる光は偏光板②と同じ向きに振動する光であることがわかります。次の写真はLCDの画面をデジカメの偏光フィルタを通して撮影したものです。偏光フィルタの向きによって、LCDの画面が見えたり、見えなくなったりします。

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