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2011年12月20日 (火)

液晶ディスプレイの仕組み(3)

■液晶ディスプレイのカラー表示のしくみ

 モノクロの液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)で表示される画像の明るさ(濃淡)は液晶板を通り抜けてくる光の量で決まります。ノーマリーホワイトモードの場合、次の図のように、液晶分子に電圧が加えられていない部分(V0)は白色、十分な電圧が加えられている部分(V2)は黒色、その間の電圧(V1)が加えられている部分は灰色となります。256色表示のモノクロLCDは液晶の配列を256段階切り替えることができるようになっています。白から黒まで256階調の表示を行うことができます。

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 液晶分子はブラインドの役割をしているだけですから、LCDでカラー表示を行うためには液晶パネルを通り抜けてくる光に色をつける必要があります。光に色をつける方法には、カラーフィルター方式(CF:Color Filter)とカラーフィルターレス方式(CFL:Color Filter Less)という2つの方法があります。いずれの方法のLCDも光の三原色で色を作ります。

■光の三原色で色を作る

 次の図は光の三原色を示したものです。この三色の光を任意の割合で混ぜると、様々な色光を作り出すことができます。例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)の光を混ぜると白色(W)の光を作ることができます。赤(R)と緑(G)の光では黄色(Y)の光となります。このように光の足し算で色をつくることを加法混色といいます。

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 加法混色には、異なる色光を重ねて色をつくる同時加法混色、色分けされた円盤を回転したときのように時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色、細かい色の点をモザイク状に敷き詰めて色をつくる並置加法混色があります。

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■カラーフィルター(CF)方式のしくみ

 電灯の光を赤色セロファンに通すと光の色が赤くなります。CF方式のLCDはこれと同じ原理で光に色をつけています。一般的に使われているLCDの多くがCF方式を採用しています。

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光に色がつく
私たちが色を見ることができるのは、光源の物体を見るときか、光で照らし出された物体を見るときです。「光に色がつく」という表現は本当は正しくありません。

 カラーLCDは様々な色の光を出す必要があります。単純にカラーフィルターで色を付ける仕組みでは、100万色を出すのに100万種類のカラーフィルターが必要となってしまいます。また、カラーフィルターが固定ではそもそも表示を切り替えることができません。CF方式では光の三原色(R=赤、G=緑、B=青)の3つのカラーフィルターで様々な色を表示しています。

 CF方式のLCDの白色の部分を倍率の高いルーペ(透明なガラス球がわかりやすい)で拡大して見てみると、赤(R)・緑(G)・青(B)の色がタイル状に並んでいることがわかります。同様に黄色い部分を見てみると、青(B)がなく、赤(R)・緑(G)の色が並んでいることがわかります。このようにCF方式のLCDは光の色の点を画面上に並べて並置加法混色で色を作り出しています。

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 任意の色を表示するためには、1画ごとに赤(R)・緑(G)・青(B)の光を任意の割合で混ぜ合わせることができるようにする必要があります。モノクロLCDは、最初の図に示した通り、1画素に対して液晶の配列がひとつになっています。これに対して、CF方式のLCD は次の図のように1画素が3つのサブ画素に分割されており、それぞれのサブ画素に赤(R)・緑(G)・青(B)のフィルターが取り付けられています。

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 液晶分子はサブ画素ごとに配列するようになっており、3色の明るさを個別に変化させることができます。これによって1画素ごとに光の三原色の混色をしています。赤(R)・緑(G)・青(B)の液晶分子の配列をそれぞれ256段階切り替えることができる場合、それぞれの色を256階調表示にすることができるので、全体として表示可能な色の数は256の3乗(=16,777,216色)となります。すべての画素で個別に16,777,216色を表示することが可能ですから、画面に表示する人物や景色などの画像も16,777,216色を使って表現することができます。これがトゥルーカラーまたはフルカラーと呼ばれる表示モードです。

■カラーフィルターレス(CFL)方式とは

 CFL方式のLCDはバックライトに光の三原色を出すLED (発光ダイオード、Light Emitting Diode)を使います。CFL方式のLCDは光の三原色のLEDの点灯時間を連続的に切り替えることによって、継時加法混色で色を表示しています。

 CFL方式のLCDは、光の三原色のLEDで任意の明るさの色光を作り出すため、次の図のように1画素に対して液晶の配列はひとつとなります。液晶分子のブラインドの役割は単純に光を通すか(ON)か、通さない(OFF)だけで済むため、中間の配列状態を取る必要がなくなります。

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 上の図で液晶分子に電圧がかかっている部分は、光が透過しないので黒色になります。電圧がかかっていない部分は光が透過しますが、何色が表示されるかはLEDの点灯状態によって決まります。図の右側のように赤(R)・緑(G)・青(B)のLEDがすべて点灯している場合は白色、真ん中のように青(B)が消灯していて、赤(R)・緑(G)が点灯している場合は黄色になります。

 バックライト用LEDは赤(R)・緑(G)・青(B)の3色のチップがひとつになったものが主流になってきました。3つのLEDが1つで済み、単位画素あたりの三色光を増加させることができるため、明るくなり、色ムラが少なくなります。

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 最近はCFL方式のLCDの開発が進み、CFL方式のLCDが増えてきています。CFL方式のLCDは液晶分子の配列に中間状態がありません。またCF方式のLCDのようなサブ画素がないため、色が表示されている画素が完全に開口しています。そのため明るくて発色性が良いという特長があります。さらに、材料のコストダウンや、製造工程の短縮ができるなどのメリットがあります。

CFL方式のLCDが実現できた背景には、青色LEDの完成と、LEDのコストダウンがあります。LEDのしくみについては本サイトの下記で解説しています。

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コメント

デジタルカメラの仕組みの興味ありましてこのサイト見させていただきました。

レンズ→RGBフィルター→センサー→RAW・・・どのように動いているかのイメージ理解できました。

素人なんで正しいかは判断できませんが液晶ディスプレーの仕組みはまさにデジカメと同じですね

投稿: miya54 | 2022年6月23日 (木) 09時52分

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