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2011年12月

2011年12月31日 (土)

コンタクトレンズの仕組み

コンタクトレンズを発明した人

 レオナルド・ダ・ヴィンチが1508年にまとめた眼に関する古い写本に、水が入った底が丸い透明な器に顔をつけて、器越しにものを見るとものの見え方が変わると書いてあります。ダ・ヴィンチはこの方法で角膜の力を強めることができると述べています。つまり、ダ・ヴィンチは、角膜の屈折力を改善させて視力を矯正する方法を考えついたことになります。このことから、一般的に、コンタクトレンズの原理を発明したのはダ・ヴィンチであると考えられています。しかし、当時ダ・ヴィンチの興味は眼の仕組みそのものに注がれていたようで、この方法を視力矯正に応用することまでは考えていなかったようです。

ダ・ヴィンチが考えた視力の矯正
ダ・ヴィンチが考えた視力の矯正

 1636年、フランスのルネ・デカルトは視力を改善する方法として、両端が球形状のガラス管に水を満たして、眼をガラス管の片方の端に接してのぞく方法を提案しました。デカルトはこの道具で視力を調べたようですが、まばたきすることができないため、視力を矯正する道具としては実用的ではありませんでした。しかし、コンタクトレンズの原形を考えたのはルネ・デカルトと考えることはできるでしょう。

デカルトの考えた視力の矯正
デカルトの考えた視力の矯正

 現在使われている目に装着するタイプのコンタクトレンズのアイデアは1820年代にイギリスのジョン・ハーシェルによって目を保護するためのものとして提案されました。ジョン・ハーシェルは天王星および赤外線を発見したウィリアム・ハーシェルの息子です(ココログ 光と色と「分光分析の幕開け(3)-赤外線の発見」)。

 世界で初めて視力矯正のためのコンタクトレンズを作ったのはスイスのオーゲン・フィックです。フィックは1887年に兎の眼からとった石膏の型で作ったコンタクトレンズを製作し、Ein kontactbrille(接触する眼鏡)という題名の本で発表しました。このkontactbrilleがコンタクトレンズの語源です。しかし、フィックのコンタクトレンズは重たくて目の負担が大きく短時間しか装着できませんでした。

 1889年、ドイツのアウグスト・ミューラーは吹きガラスからコンタクトレンズを作成する方法について修士論文にまとめています。ミュラーのコンタクトレンズは軽量でしたが30分ぐらいしか装着することはできませんでした。ミュラーはコンタクトレンズのフィット感、涙による湿潤、角膜のカーブに合わせた形状などのアイデアを出し、後のコンタクトレンズの開発の基礎を築きました。

 初期のコンタクトレンズはガラスで作られていました。ガラス製コンタクトレンズは、加工が難しい、割れる危険性がある、着け心地が悪い、眼が充血して長時間使用することができないなどの欠点があり、ほとんど普及しませんでした。

ハードコンタクトレンズ

 コンタクトレンズが広く使われるようになったきっかけは、化学工業の発展によって生まれた新しい材料であるプラスチックが作りました。1940年代にポリメチルメタクリラート(PMMA)という透明度が高く、硬くて加工しやすいプラスチックが開発され、プラスチック製のコンタクトレンズを作られるようになったのです。PMMAで作られるコンタクトレンズをハードコンタクトレンズといいます。

ハードコンタクトレンズの材料・ポリメチルメタクリラート(PMMA)の構造
ハードコンタクトレンズの材料
ポリメチルメタクリラート(PMMA)の構造

 ハードコンタクトレンズはPMMAの性質から酸素透過性がほとんどありません。眼の角膜を作る細胞は血管をもたないため、涙から酸素を取り込む必要があります。角膜がハードコンタクトレンズで覆われると、細胞は酸素を取り込むことができません。そのため、ハードコンタクトレンズは眼に与える負担が大きく、長時間装着することができません。

 プラスチックはその構造の中にケイ素やフッ素などの元素を入れると酸素透過性が高くなります。そこで、PMMAの構造の一部をケイ素やフッ素を含む形に置き換えた酸素透過性プラスチックが開発されました。現在、一般にハードコンタクトレンズと言えば、酸素透過性コンタクトレンズのことで、PMMA製のものはほとんど使われていません。

酸素透過性ハードコンタクトレンズの材料
酸素透過性ハードコンタクトレンズの材料

 ハードコンタクトレンズはレンズが硬く、上下に動きやすいため、異物感を感じたり、ホコリなど巻き込んだりしやすいという欠点がありますが、このことは眼に異常があったときに、すぐに気がつきやすいという長所にもなっています。

ソフトコンタクトレンズ

 ハードコンタクトレンズの使用感が良くないという理由で開発されたのが、柔らかいプラスチックを使ったソフトコンタクトレンズです。ソフトコンタクトレンズに使われるプラスチックは、本来は硬くて水溶性の材質ですが、水を大量に吸って柔らかくなるという性質をもっています。

 このプラスチックはPMMAとよく似た構造をしています。PMMAは吸水性が全くないので、PMMAに親水基である水酸基を導入したポリヒドロキシエチルメタクリラート(PHEMA)というプラスチックが使われます。PHEMAは水を含んでいるときは柔らかいのですが、乾くと硬くなり破損しやすくなります。ですから、ソフトコンタクトレンズは専用の保存液に浸しておく必要があるのです。PHEMAは酸素透過性がほとんどありませんが、水を吸うので涙を介して酸素を透過させることがでます。

ソフトコンタクトレンズの材料・ポリヒドロキシエチルメタクリラート(PHEMA)
ソフトコンタクトレンズの材料
ポリヒドロキシエチルメタクリラート(PHEMA)

 ソフトコンタクトレンズは着け心地も良いのですが、ホコリなどを巻き込んでも気がつきにくいという欠点があります。長時間気がつかないでいると、角膜にできた傷から細菌が入り、角膜に障害を起こすこともあります。また、汚れやすいので洗浄をしっかり行う必要もあります。そのため、最近では、定期的に交換するタイプや使い捨てタイプのものが主流になっています。

角膜の形状に合わせて加工できる

 ハードにしろ、ソフトにしろ、コンタクトレンズは角膜に密着して取り付けます。人間の眼の角膜の表面は球面ではなく、中央部が急で周辺部に行くほど緩やかな非球面をしています。しかも、上下左右が非対称です。最近のコンタクトレンズは角膜の形状にあわせた非球面タイプのものが多くなってきました。レンズと角膜の形状をあわせることにより、局所的な角膜の圧迫を抑えたり、異物感を軽減したり、涙を入りこみやすくしたりできるのです。

角膜の形状に合わせたコンタクトレンズ
角膜の形状に合わせたコンタクトレンズ

遠近両用コンタクトレンズ

 コンタクトレンズにも遠近両用タイプがあります。遠近両用コンタクトレンズは大きくわけると、交代視型(視軸移動型)と同時視型があります。

交代視型(視軸移動型)コンタクトレンズと同時視型コンタクトレンズ
交代視型(視軸移動型)コンタクトレンズと同時視型コンタクトレンズ

 交代視型はレンズに遠くを見る遠用部と近くを見る近用部があり、視線を移動することによって遠近を使い分けます。同時視型は、遠用部と近用部から入った光が同時に網膜上に結像します。眼が遠くを見ているときには、近くのものの像がぼやけ、近くのものを見ているときは、遠くのものの像がぼやけることになりますが、脳が網膜上でピントが合った方の像を見るように選択するのです。

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2011年12月30日 (金)

ガラスはなぜ透明なのか

透明とは

 一般に透明とは物体が可視光線のほぼ全域の光、もしくは一部の光を透過して、物体の向う側が見通せる状態のことをいいます。例えば、無色透明のガラスは可視光線のほぼ全域の光を透過します。一方、色ガラスのように可視光線の一部の光しか透過しないものは透明ですが色づいて見えます。

 物体が透明であるためには物体の表面や内部で可視光線が散乱しないこと、そして可視光線が物体を構成する物質に吸収されずに透過することなどの条件が必要となります。例えば透明なガラスの表面に細かい傷を入れると、光が傷で散乱(乱反射)するため不透明な磨りガラスとなります。また、ガラスの内部に小さな微粒子をたくさん分散させると、光が微粒子で散乱するため不透明になります。

ガラスが透明なのはどうしてだろう

 固体にはたくさんの原子や分子が規則正しく結合した結晶体と、不規則に結合して結晶を作らない非晶体があります。固体物質の多くは小さな単結晶がたくさん集まってできた多結晶体です。多結晶体には粒界と呼ばれる結晶の境目があります。粒界の大きさが光の波長と同じかそれ以上の場合、光が粒界で散乱するため不透明となります。一方、結晶を作らない非晶体は粒界がないため、光の散乱は起きません。

 ガラスは結晶構造をもたない非晶体です。主成分の二酸化ケイ素(SiO2)が網目状に結びついた構造をしており、その様子は固体というより液体に近い状態です。このような状態では粒界が存在しないため光は散乱しません。そして、最も重要なことは二酸化ケイ素が光を吸収しないということです。いくら非晶体でも物体を構成する物質が光を吸収する性質をもっていると無色透明にはなりません。

結晶体と非結晶体の構造
結晶体と非結晶体の構造

 普通の板ガラスは無色透明に見えますが、ガラスの縁をよく見てみると緑色に見えます。これは板ガラスに含まれている不純物が光を吸収するからです。ガラスが薄い場合は吸収される光の量が少ないため無色透明に見えますが、ガラスが厚くなると吸収される光の量が増えるため色づいて見えるのです。次の写真は厚さ 1.5 cmのガラス1枚のとき(右側)と2枚重ねたとき(左側)の光の透過の様子を比較した写真です。2枚重ねた左側の方が暗くなっています。厚さが1 mにもなると真っ暗になって向う側が見えなくなります。

ガラス板の透明度
ガラス板の透明度

 光を遠くまで伝送する必要がある光ファイバーには石英ガラスが使われています。石英ガラスは極めて透明度が高く光の信号をほとんど減衰させることなく100 km以上先まで届けることが可能です。プラスチック製の光ファイバーは数十メートル先までしか光の信号を伝送することができません。

透明なプラスチックや結晶

 熔融した液体を冷却したとき、ガラスと同様に結晶化せずに固まった状態をガラス状態といいます。プラスチックにもガラス状態のものがあります。身近な例ではスーパーやコンビニのポリエチレンというプラスチックでできた袋があります。この袋には透明なものと不透明なものがあります。透明なものはポリエチレンが結晶構造をとっていません。不透明なものは袋の強度をあげるためにポリエチレンを部分的に結晶化させています。また、アクリル樹脂の仲間は非晶質で透明度が高く眼鏡のレンズなどガラスの代わりに用いられることから有機ガラスと呼ばれることもあります。

 ダイヤモンドをはじめとする宝石の多くは結晶体です。これらの宝石はひとつの結晶からなる単結晶で粒界がありませんので光が散乱しません。ダイヤモンドや水晶は可視光線のほぼ全域の光を透過するため無色透明です。

 ガラスにもあえて結晶化させたものもあります。ナノテクノロジーを使って粒界を光の波長より小さくして透明にする工夫がされています。結晶構造をもちますので厳密にはガラスとは言えませんが結晶化ガラスと呼ばれています。結晶化ガラスの代表は耐熱ガラスです。調理器具や食器、耐熱性を要する建材やインテリア、液晶パネルやプラズマディスプレイに使われています。同様に多結晶のセラミックスを透明化した透光性セラミックスもあります。屈折率が高いのでレンズなどに使われています。

光は無色透明の物質をすり抜けるだけなのか

 光が無色透明の物質を通り抜けるとき、光の速さが低下します。このことは、光がその物質と相互作用していることを意味しています。例えば、光がガラスを通過するとき、光はガラスの分子とぶつかります。このとき、ガラスの分子中の電子が光のエネルギーを受け取りますが、すぐに光を放出します。放出された光はとなりの電子に受け取られますが、その電子はまたすぐに光を放出するという過程が繰り返されます。このため光の速さが真空中より遅くなるのですが、光はガラスの中を伝播していきます。無色透明なガラスでは、可視光線全域の光が同じような状態となります。これが、光がガラスを伝わるしくみです。無色透明な物質では同じことが起きています。

 吸収された光がどのようになるかは物質によって変わりますが、多くの場合は熱エネルギーとなって失われます。物質によっては蛍光やリン光として再放出するものもありますが、失われた分は熱エネルギーになります。

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2011年12月29日 (木)

氷は透明なのに、かき氷はなぜ白いのか

■透明なものを細かく砕くと白くなる

 透明な氷をかき氷機にかけると、あっという間に細かく削られて白いかき氷ができあがります。もとの透明な氷も真っ白なかき氷も、同じ水が凍ってできた氷です。どうして、透明な氷がかき氷になると白くなるのでしょう。

手動かき氷機(ブロック氷用)デモ

 透明な物体に光があたると、ほとんどの光は物体を通り過ぎます。ところが、透明な物体を細かく砕くと、表面にあたった光がいろいろな方向に反射するようになり、透明でなくなり、白くなります。

 ためしに、透明な氷をハンマーでたたいて細かく砕いてみましょう。砕いてできたひとつひとつの小さな氷片は透明ですが、その氷片がたくさん集まると白く見えます。たくさんの氷片で光がいろいろな方向に反射するからです。

■白い紙が鏡のように見えない理由

 光はあらゆる物体の表面で反射します。たとえば、白い紙はほとんどの光を反射していますが、鏡のように物体を映しません。

 白い紙の表面には微細な凸凹がたくさんあります。ここに光が当たると、光は反射の法則に従って、いろいろな方向に反射します。次の図の(A)のように光が規則的に反射することを正反射、(B)のように光がさまざまな方向に反射することを乱反射といいます。鏡は(A)のように光を正反射するため物体を映しますが、白い紙は(B)のように光を乱反射するため、反射した光線が混ざり合うので鏡のように見えないのです。

正反射と乱反射
正反射と乱反射

 これは簡単な実験で確かめることができます。CDケースなど透明なプラスチックの板に黒い紙を貼ります。黒い紙を貼った反対側の表面は鏡のように物体をよく映します。この表面を目の細かいサンドペーパーでこすると表面が白くなり、物体が映らなくなります。プラスチックの表面に細かい凸凹ができ、光の乱反射が起こるためです。

 透明な氷をかき氷にすると白く見えるのもたくさんの小さな氷片が凸凹と同じ役割をするからです。湖の水面に景色が綺麗に映っているときに、さざ波で景色が映らなくなるのも波で凸凹になった水面が光を乱反射するからです。

■物体を見ることができるのは乱反射のおかげ

 私たちが物体を見るうえで光の乱反射はとても重要です。次の図のように真っ暗な部屋で鏡と白い紙を真上からペンライトで照らし、その様子をほぼ真横から見てみましょう。鏡の見え方は変化しませんが、白い紙は光があたったところが明るくなります。これは鏡が光を真上の方にしか反射しないのに対し、白い紙は光をいろいろな方向に反射するからです。

2

 私たちの身の回りにある多くの物体は光を表面で乱反射しています。光が物体の表面で乱反射するおかげで、私たちは物体の姿や色をいろいろな方向から見ることができるのです。鏡や透明な物体が見えにくいのは、光が物体の表面で正反射したり、物体を通り抜けたりしてしまうためです。3_2

 ところで、氷屋さんで作られる氷は綺麗な透明ですが、家庭の冷蔵庫で作られる氷は白くにごっています。これは家庭の冷蔵庫で作られる氷にたくさんの空気の泡が含まれているからです。空気の泡で光が乱反射するため、かき氷にするまでもなく氷が白く見えるのです。

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2011年12月28日 (水)

凸レンズの公式の導出(2)-虚像

凸レンズでできる虚像のレンズの写像公式も実像のときと同様に求めることができます。

凸レンズでできる虚像
凸レンズでできる虚像

この図からレンズの公式を導くことができます。

まず、下図において△OABと△OA’B’が相似形であることに注目します。

凸レンズの虚像

△OABと△OA’B’が相似形ですから、

A’B’/AB=B’O/BO=b/a ……(1)式

の関係にあります。

次に、下図において、△FPOと△FA’B’が相似形であることに注目します。

凸レンズの虚像

△FPOと△FA’B’が相似形ですから、

A’B’/PO=B’F/OF=(b+f)/f ……(2)式

の関係にあります。

ここで、AB=POであることに着目すると(1)式と(2)式が等しいことがわかります。

つまり、

b/a=(b+f)/f

の関係にあります。

この式を変形すると、

bf=ab+af

となります。

両辺をfで割ると

b=ab/f+a

より

ab/f=b-a

両辺をabで割ると

1/f=1/a-1/b

となります。

虚像の場合、b<0とすると

1/f=1/a+1/b

のように表すことができます。

レンズの倍率mは虚像の高さと物体の高さの比ですからA’B‘/ABです。これは①式と同じですから、次の式が得られます。

m=A’B’/AB=b/a

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2011年12月27日 (火)

日焼けの仕組みと日焼け止めクリームの仕組み

日焼けの原因となる紫外線

 日焼けは皮膚の細胞内に存在する物質が化学変化することで生じます。物質が化学変化を起こすにはエネルギーが必要ですが、日焼けを起こす化学反応のエネルギー源は太陽光に含まれる紫外線です。紫外線より波長の長い可視光線や赤外線では日焼けは起こりません。可視光線や赤外線は日焼けに必要な化学反応を起こすほどのエネルギーをもっていないからです。可視光線や赤外線より波長が短い、つまり振動数が大きくて高いエネルギーをもつ紫外線が日焼けを起こします。紫外線は波長の長さで次の図のようにUV-A、UV-B、UV-Cに分類されます。

紫外線の分類

 この分類で、波長の短いUV-Cと、UV-Bの短波長側の一部の紫外線はエネルギーが高く危険です。この範囲の紫外線は皮膚の細胞組織を破壊し、免疫力低下、白内障、皮膚ガンなどを引き起こし、人体に悪影響を与えます。しかしながら、これらの紫外線は大気中のオゾン層で吸収されるため地表には届きません。ですから、日常生活では心配する必要はありません。地表に届いて日焼けの原因となる紫外線はUV-AとUV-Bの長波長側の紫外線です。

日焼けが生じるしくみ

 UV-Aは皮膚の奥まで届き、メラノサイト(色素細胞)を刺激します。メラノサイトにはチロシンというアミノ酸が存在します。これは日焼けのもととなるメラニンの原料です。紫外線でメラノサイトの活動が活発になると、チロシンに酸化酵素のチロシナーゼが働いてドーパという物質ができます。チロシナーゼはさらにドーパに働いて、ドーパキノンという物質を作ります。ドーパキノンは反応性が高く、いくつかの物質を経て複雑な構造を持つ褐色のメラニンとなります。

日焼けの仕組み

 日焼けすると肌の色が黒くなるのはメラニンが増えるからです。メラニン色素は紫外線を吸収し、紫外線が皮膚にダメージを与えるのを防ぎます。ですから、紫外線量に対してメラニン色素が適度に生成されているうちは肌が黒くなるだけで、これは健康的な日焼け(サンタン)です。しかし、UV-Aは皮膚の深部組織に影響を与えるため、色素沈着やしわやたるみなどを引き起こします。 

 UV-Bの長波長側の紫外線は皮膚の奥まで届きUV-Aと同じ作用をしますが、そのほとんどは皮膚の表面に近いところまでしか届きません。日焼けによって皮膚が赤くなったり、腫れたり、水ぶくれができるのはUV-Aよりエネルギーが高いUV-Bによるもので、これは病的な日焼け(サンバーン)です。また、UV-Bは皮膚ガンを引き起こすことも知られています。

日焼け止めクリームのしくみ

 日焼けを避けるには衣服、帽子、日傘などで紫外線を皮膚から物理的に遮断するのが最も良い方法です。しかし、顔や腕を紫外線から完全に遮断するのは困難です。また、海水浴の時は衣服を着ていませんから紫外線に対して無防備になります。このような場合には日焼け止めクリーム(UVカットクリーム)などを使うと良いでしょう。

 日焼け止めクリームには紫外線防止剤が含まれています。紫外線防止剤には、金属酸化物などの微粒子で紫外線を物理的に遮断する紫外線散乱剤と、紫外線を吸収して熱などのエネルギーとして放出する紫外線吸収剤があります。

 紫外線散乱剤には二酸化チタン、酸化亜鉛などの化合物が使われます。これらの微粒子を皮膚に塗ると、紫外線が皮膚に届く前に散乱・反射されるので、皮膚を紫外線から守ることができます。

日焼け止めクリームの仕組み

 紫外線吸収剤には多くの化合物が使われていますが、代表的なものとしてはオキシベンゾンやメトキシケイヒ酸オクチルなどです。これらの化合物はその構造中にベンゼン環や二重結合を持っており、紫外線をよく吸収します。

 これらの化合物が紫外線を吸収すると、分子中の電子状態がエネルギーの低い安定した基底状態からエネルギーの高い不安定な励起状態になります。電子状態はすぐに不安定な励起状態から安定した基底状態に戻りますが、このときに差分のエネルギーを熱エネルギーとして放出します。この繰り返しで紫外線から皮膚を守ります。

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 化合物によって吸収する紫外線の波長領域が異なるため、紫外線吸収剤には複数の化合物が配合されています。使用しているうちに化合物そのものが化学変化を起こして、かゆみや肌荒れを起こす場合もあるので、肌が弱い人は注意が必要です。

紫外線防止剤の効果を示すSPFやPAとは

 紫外線防止剤の効果はSPF(Sun Protection Factor)やPA(Protection Grade of UV-A)という数値で表されます。SPFは主にUV-Bによるサンバーンを防ぐ効果を示す数値で、紫外線で皮膚に赤い斑点が現れるまでの時間を何倍に長くできるかを表したものです。例えば、SPF15の日焼け止めクリームは紫外線で赤い斑点ができるまでに20分かかる人では、20×15=300分、すなわち5時間日焼け止めの効果を得られるということです。

SPFの仕組み

 PAは皮膚の黒化をSPFと同じ方法で測定したPFA(Sun Protection Factor of UV-A)という数値から求められます。日本化粧品工業連合会では下記の3段階に定めています。

PA+ PFA2以上4未満・UV-A防御効果がある
PA++ PFA4以上8未満・UV-A防御効果がかなりある
PA+++ PFA8以上・UV-A防御効果が非常にある

 SPFやPAが高いということは紫外線防止効果が高いということですが、その分だけ皮膚への負担が大きくなります。日常の生活で使う日焼け止めは数値が低いものを選び、数値が高いものは海水浴、レジャー、屋外でスポーツをするときなどに使うようにすると良いでしよう。日本化粧品工業連合会のサイトにPAとSPFによる紫外線防止用化粧品の選び方の解説がありますので参考にすると良いでしょう。

「日やけ止め化粧品」の選び方
http://www.jcia.org/consumer/spf_main.htm

■日焼けクリームとは

 日焼けクリームは紫外線の悪影響を避けてわざと日焼けをするためのものと、日光に浴びずに皮膚が日焼けしたような色にするものがあります。

 前者は紫外線の悪影響を避けるためのものですから、これは日焼け止めクリームのことです。日焼けをするのが目的ですから、サンバーンの原因となるUV-Bを選択的にカットするように作られており、UV-Aによるサンタンで体を焼いていくことができます。

 後者はサンレスタンニングと呼ばれ、薬品で皮膚の角質層のタンパク質を変質させて皮膚の色を日焼けしたような黒い色にするものです。メラニン色素の少ない白人が多い欧米では、肌を黒くするために日光浴をしたり、日焼けサロンを利用したりすることは皮膚に障害を与えるので好ましくありません。そこで、紫外線を使うことなく肌を黒くすることができる薬品が使われるようになりました。代表的なサンレスタンニング剤はグリセリンから作られるジヒドロキシアセトンという単糖です。

ジヒドロキシアセトン

 ジヒドロキシアセトンを皮膚に塗ると、角質層のタンパク質をつくるアミノ酸と反応し、タンパク質が変質します。この変質したタンパク質が黄色や茶色になります。着色した皮膚は洗ったり、こすったりしても色は落ちませんが、数日から1週間ほどで肌の色が元に戻ります。ジヒドロキシアセトン自身は無害であり、紫外線による日焼けで生じるダメージを皮膚に与えることなく皮膚の色を日焼けしたような色にすることができます。

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2011年12月26日 (月)

キャンドルパワー (燭) - 用語

日本語で燭、キャンドルパワー(記号 C)というのは、昔使用されていた光の明るさを表す単位です。

1Cの光の明るさは、ロウソク1本分の明るさという意味です。ロウソク1本分の明るさという定義はずいぶん曖昧ですが、1860年にイギリスで都市ガス条例によってガス灯が規制されたときに定義されました。これが日本に伝わったときに燭または燭光と訳されました。

その定義によると、1Cは、1時間に120グレーン(1グレーン=1/7000ポンド)の割合で燃焼する1/6ポンドの鯨油ロウソクの明るさとなります。

1ポンドは約453.6グラムですから、120グレーンは120×453.6/7000=7.8グラム、1/6ポンドは453.6/6=75.6グラムとなります。6ポンドのロウソクと書いてある書物もありますが、1/6ポンドです。

キャンドルパワーは曖昧なため、その後、定義が何度か改めれました。最終的には光の明るさは1948年にカンデラ(記号 cd)という単位で国際的に統一されました。

カンデラの値はキャンドルパワーになるべく近い値となっていて、次の関係があります。

1 C = 1.0067 cd

Candle

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2011年12月24日 (土)

波(波動) - 用語

波とは周期的な変化が空間を伝わる現象。波が伝わる空間物質を媒質という。

例えば、音波は音源の振動が気体や液体や固体を媒質として伝わる波である。地震は震源の揺れが波として地面を伝わったものである。波は空間を伝わるが、物質の移動を伴わない。媒質となる物質はその場で振動するだけである。木の葉が浮いている水面に波が広がるとき、葉がその場に留まっている様子を見ることができる。波は物質の移動を伴わずにエネルギーを伝達する現象である。

また、波には媒質を必要としないものもある。光や電波などの電磁波は磁界の変化と電界の変化が繰り返しながら伝わる波であり、真空中も伝わる。

波には波の進行方向に対して垂直に振動する横波と、波の進行方向に対して水平に振動する縦波がある。

横波はピンと張った糸をはじいたときにできる波である。縦波はバネが伸縮するような振動で伝わる波で疎密波ともいう。音波は縦波であり、電磁波は横波である。

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2011年12月22日 (木)

虚像 - 用語(光学)

虚像の説明は『光と色と THE NEXT』の「虚像-光学用語」を参照してください。


虚像とは、凸レンズや凹レンズを屈折しながら通過する光線や、鏡で反射する光線によって見える像である

やってくる光線を反対方向に延長すると、そこにあたかも物体があるように像が見える。その像を虚像という。

虚像は光が集まってできる像ではないので、スクリーン上に虚像を映すことはできない。

鏡の中に映っている自分の姿や、ルーペや望遠鏡で拡大して見ている物体は虚像である。

平面鏡でできる虚像凸レンズでできる虚像

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実像 - 用語

実像の説明は『光と色と THE NEXT』の「実像-光学用語」を参照してください。


実像とは、凸レンズを屈折しながら通過する光線や、凹面鏡で反射した光線が集まってできる像のことである。

実像は光が集まってできる像なので、実像のできる位置にスクリーンを置くと、スクリーン上に像を投影することができる。

映画のスクリーンに映しだされる映像や、スプーンをのぞいたときにひっくり返って見える自分の顔は実像である。

ピンホールを通過する光線や平面鏡で反射する光線がスクリーンに作る像も実像である。

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レンズ - 用語

レンズの用語解説は別館「光と色と THE NEXT」の「レンズー光学用語」を参照してください。


レンズは透明なガラスやプラスチックで作られた光を屈折させて集めたり、広げたりする道具である。

一般的に、真ん中が厚くて周辺部が薄い球面をしたレンズを凸レンズ、真ん中が薄くて周辺部が厚い球面をしたレンズを凹レンズと言う。

Lense

 凸レンズは物体を置く位置を焦点の外側にするか内側にするかによって実像と虚像を作る。凹レンズは光を広げる働きしかないので虚像を作るのみで実像を作らない。

 凸レンズで作られている身近な道具はルーペやカメラや老眼鏡である。ルーペで拡大されて見える物体は虚像である。カメラはフィルム面に物体の実像を写すことで写真を撮る。老眼鏡は老眼で屈折力が弱くなった水晶体の屈折力を凸レンズの光を集める働きで強めるものである。

 凹レンズは光を広げる働きしかないので、凹レンズ一枚で作られた身近な道具はほとんどないが、広く使われているものは近親の眼鏡である。近親の眼鏡は近親で屈折力が強くなった水晶体の屈折力を凹レンズの光を広げる働きで弱めるものである。

凹レンズの光を広げる働きを利用すると凸レンズの焦点位置のずれを小さくすることが可能である。望遠鏡やカメラのレンズはより綺麗な実像や虚像を得るため凸レンズと凹レンズを組み合わせて作られている。最近では表面の形が非球面の凸レンズや凹レンズが使われるようになっている。

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2011年12月21日 (水)

液晶ディスプレイの仕組み(4)

■バックライトのしくみ

液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)のバックライトとして広く使われている光源は、直径数ミリメートル、長さ数百ミリメートルの細長い形をした冷陰極管という小型の蛍光ランプです。

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 冷陰極管は細長い形をしているため、そのままバックライトとして使うと、次の図のようにLCDの明るさにムラが生じてしまいます。

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 そのため、バックライトはLCDの明るさにムラが生じないよう、光が効率的に液晶パネル全面に均等に届くよう工夫されています。

 バックライトの配置には、液晶パネルのすぐ後ろに冷陰極管を配置する直下ライト方式と、液晶パネルの側面に冷陰極管を配置するサイドライト(エッジライト)方式があります。直下ライト方式はLCD全体が厚くなりますが、画面を明るくすることができるので、大型の液晶テレビなどで採用されています。他方、サイドライト方式は多くのLCDで採用されています。ノートパソコンのLCDはサイドライト方式を採用しています。

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 反射板、反射シートは冷陰極管から出る光を無駄なく使うために使われます。拡散板は画面の明るさのムラを低減し、プリズムシートは画面の明るさを向上させます。導光板はサイドライト方式のみで使われ、側面の冷陰極管からやってくる光を液晶パネルの前面の方へ導く役割をします。それでは、一般的によく使われているサイドライト方式のバックライトについてもう少し詳しく説明しましょう。

■サイドライト方式バックライトのしくみ

 次の図はサイドライト方式バックライトの構造を示したものです。サイドライト方式の冷陰極管は透明度の高いアクリル樹脂でできた導光板の端に取り付けられています。冷陰極管から出た光は反射シートによって導光板に入り、全反射を繰り返しながら導光板の中を進んでいきます。

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 このとき、光が導光板の中で全反射するだけなら、光は導光板の外側に出てくることはできません。そこで、導光板の下側には、光を乱反射させて導光板の上側に放出させるための反射ドットが取り付けられています。

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 反射ドットは、冷陰極管に近いところは、粗く配置されており、遠くなるに従って密に配置されています。この工夫によって、導光板の上側に出てくる光の量を均一に保ちます。

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 反射ドットには、導光板に白色インクでドットを印刷したものと、導光板を成型するときに金型で微細な溝を取り付けたものがあります。

 導光板の下側に反射板がありますが、これは導光板の下側に入った光を無駄なく利用するためのものです。導光板の上側から放出された光は拡散板で拡散されたのち、プリズムシートを通った後に1枚目の偏光板に入っていきます。

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白色LEDバックライト
携帯電話のバックライトには白色LEDが使われています。また、最近ではノートパソコンなどのLCDのバックライトにも白色LEDが使われるようになってきました。

■LCDが斜めから見えにくい理由

 最近のLCDは斜め方向からでも良く見えますが、ひと昔前のLCDや、現在でも低価格な商品に使われているLCDは斜めから見にくいという欠点があります。

 LCDが斜めから見えにくい理由は、液晶分子が棒状の形をしており、縦方向と横方向の屈折率が異なるからです。

 LCDが中間色を表示しているとき、液晶分子は次の図のように斜めに配列しています。LCDは正面から見たときに良く見えるように作られているため、斜めから見たときには角度によって見えにくくなり、視野角が狭くなっています。

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■斜めからも良く見える液晶ディスプレイ

 LCDの基本的な表示原理であるTN(Twisted Nematic)型LCDは次の図のように液晶分子が電界の向きにそって起き上がって垂直に整列します。そのため、特に液晶分子が斜めに立ちあがる中間の明るさでは、LCDを見る角度によって、明るさが大幅に違って見え、視野角が狭くなります。

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 この問題を解決するには、液晶分子の配列を工夫する必要があります。例えば、液晶分子を次の図のように交互に向きを変えて配列すると、液晶分子全体の屈折率を平均的に揃えることができるので、視野角が広がり、斜めからも見やすくなります。

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 このようにLCDの視野角を広げる技術を広視野角化技術といいます。広視野角化技術にはいくつかの方法がありますが、ここではIPS方式(In Plane Switching)について紹介します。

 次の図はIPS方式のLCDの構造を示したものです。IPS方式とTN型のLCDで大きく異なる部分は電極の位置です。TN型では電極は液晶分子を上下に挟み込むように配置されていますが、IPS方式では電極を平面上に設置しています。このため、IPS方式は電圧をかけたときに発生する電界の方向がTN型と異なり、その結果、液晶分子が配列する方向が異なります。IPS方式では、液晶分子が画面と平行を保ったままで整列するため、広い視野角で光が出ます。ですから、斜め方向からもよく見えるのです。

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■最後に

 LCDはより綺麗な表示を実現するために、いろいろな工夫が施されており、関連する技術もどんどん進歩しています。そのため、今回説明したしくみとは異なるLCDもたくさんありますし、これからも新しいしくみのLCDが登場してくるでしょう。それらをすべて解説するのは困難ですが、いかなるLCDも偏光板と液晶の配列で画面表示を行う基本原理は変わりません。

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2011年12月20日 (火)

液晶ディスプレイの仕組み(3)

■液晶ディスプレイのカラー表示のしくみ

 モノクロの液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)で表示される画像の明るさ(濃淡)は液晶板を通り抜けてくる光の量で決まります。ノーマリーホワイトモードの場合、次の図のように、液晶分子に電圧が加えられていない部分(V0)は白色、十分な電圧が加えられている部分(V2)は黒色、その間の電圧(V1)が加えられている部分は灰色となります。256色表示のモノクロLCDは液晶の配列を256段階切り替えることができるようになっています。白から黒まで256階調の表示を行うことができます。

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 液晶分子はブラインドの役割をしているだけですから、LCDでカラー表示を行うためには液晶パネルを通り抜けてくる光に色をつける必要があります。光に色をつける方法には、カラーフィルター方式(CF:Color Filter)とカラーフィルターレス方式(CFL:Color Filter Less)という2つの方法があります。いずれの方法のLCDも光の三原色で色を作ります。

■光の三原色で色を作る

 次の図は光の三原色を示したものです。この三色の光を任意の割合で混ぜると、様々な色光を作り出すことができます。例えば、赤(R)と緑(G)と青(B)の光を混ぜると白色(W)の光を作ることができます。赤(R)と緑(G)の光では黄色(Y)の光となります。このように光の足し算で色をつくることを加法混色といいます。

Photo_2

 加法混色には、異なる色光を重ねて色をつくる同時加法混色、色分けされた円盤を回転したときのように時間の経過とともに目に入る色光を変えて色をつくる継時加法混色、細かい色の点をモザイク状に敷き詰めて色をつくる並置加法混色があります。

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■カラーフィルター(CF)方式のしくみ

 電灯の光を赤色セロファンに通すと光の色が赤くなります。CF方式のLCDはこれと同じ原理で光に色をつけています。一般的に使われているLCDの多くがCF方式を採用しています。

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光に色がつく
私たちが色を見ることができるのは、光源の物体を見るときか、光で照らし出された物体を見るときです。「光に色がつく」という表現は本当は正しくありません。

 カラーLCDは様々な色の光を出す必要があります。単純にカラーフィルターで色を付ける仕組みでは、100万色を出すのに100万種類のカラーフィルターが必要となってしまいます。また、カラーフィルターが固定ではそもそも表示を切り替えることができません。CF方式では光の三原色(R=赤、G=緑、B=青)の3つのカラーフィルターで様々な色を表示しています。

 CF方式のLCDの白色の部分を倍率の高いルーペ(透明なガラス球がわかりやすい)で拡大して見てみると、赤(R)・緑(G)・青(B)の色がタイル状に並んでいることがわかります。同様に黄色い部分を見てみると、青(B)がなく、赤(R)・緑(G)の色が並んでいることがわかります。このようにCF方式のLCDは光の色の点を画面上に並べて並置加法混色で色を作り出しています。

Photo_6

 任意の色を表示するためには、1画ごとに赤(R)・緑(G)・青(B)の光を任意の割合で混ぜ合わせることができるようにする必要があります。モノクロLCDは、最初の図に示した通り、1画素に対して液晶の配列がひとつになっています。これに対して、CF方式のLCD は次の図のように1画素が3つのサブ画素に分割されており、それぞれのサブ画素に赤(R)・緑(G)・青(B)のフィルターが取り付けられています。

Photo_7

 液晶分子はサブ画素ごとに配列するようになっており、3色の明るさを個別に変化させることができます。これによって1画素ごとに光の三原色の混色をしています。赤(R)・緑(G)・青(B)の液晶分子の配列をそれぞれ256段階切り替えることができる場合、それぞれの色を256階調表示にすることができるので、全体として表示可能な色の数は256の3乗(=16,777,216色)となります。すべての画素で個別に16,777,216色を表示することが可能ですから、画面に表示する人物や景色などの画像も16,777,216色を使って表現することができます。これがトゥルーカラーまたはフルカラーと呼ばれる表示モードです。

■カラーフィルターレス(CFL)方式とは

 CFL方式のLCDはバックライトに光の三原色を出すLED (発光ダイオード、Light Emitting Diode)を使います。CFL方式のLCDは光の三原色のLEDの点灯時間を連続的に切り替えることによって、継時加法混色で色を表示しています。

 CFL方式のLCDは、光の三原色のLEDで任意の明るさの色光を作り出すため、次の図のように1画素に対して液晶の配列はひとつとなります。液晶分子のブラインドの役割は単純に光を通すか(ON)か、通さない(OFF)だけで済むため、中間の配列状態を取る必要がなくなります。

Photo_8
 上の図で液晶分子に電圧がかかっている部分は、光が透過しないので黒色になります。電圧がかかっていない部分は光が透過しますが、何色が表示されるかはLEDの点灯状態によって決まります。図の右側のように赤(R)・緑(G)・青(B)のLEDがすべて点灯している場合は白色、真ん中のように青(B)が消灯していて、赤(R)・緑(G)が点灯している場合は黄色になります。

 バックライト用LEDは赤(R)・緑(G)・青(B)の3色のチップがひとつになったものが主流になってきました。3つのLEDが1つで済み、単位画素あたりの三色光を増加させることができるため、明るくなり、色ムラが少なくなります。

Photo_9

 最近はCFL方式のLCDの開発が進み、CFL方式のLCDが増えてきています。CFL方式のLCDは液晶分子の配列に中間状態がありません。またCF方式のLCDのようなサブ画素がないため、色が表示されている画素が完全に開口しています。そのため明るくて発色性が良いという特長があります。さらに、材料のコストダウンや、製造工程の短縮ができるなどのメリットがあります。

CFL方式のLCDが実現できた背景には、青色LEDの完成と、LEDのコストダウンがあります。LEDのしくみについては本サイトの下記で解説しています。

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2011年12月19日 (月)

液晶ディスプレイの仕組み(2)

■液晶ディスプレイ(LCD)の表示は光のON/OFF

 透過型LCDのバックライトは常時点灯しています。バックライトの光は、画面上の白い部分では通過しており、黒い部分では遮断されています。

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 バックライトが常時点灯しているのにも関わらず、画面の白い部分と黒い部分が明瞭に区別でき、さらに中間の明るさの表示ができるのは、バックライトの光の通過と遮断の制御が確実に行われているからです。この光のON/OFFで重要な役割をしているのが偏光板と液晶です。偏光板と液晶がどのような働きをしているのかTN(Twisted Nematic)型液晶を例に考えてみましょう。

■偏光板と液晶の組み合わせで光のON/OFF

 透過型LCDは向きが90度異なる2枚の偏光板の間に液晶が封入されています。

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 バックライトの光は自然光と同様にさまざまな振動面で振動する光を含んでいます。これは、偏光で光のON/OFFを実現するLCDにとって都合が悪いので、偏光板①でこの偏光板と同じ向き(透過軸)に振動する光を取り出します。これによって振動方向がそろった光を使います。

 この光はそのまま進むと次の図のように偏光板②を通過することができないため遮断されます。このとき、LCDの画面表示は黒となります。

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 偏光板①を通過した光が偏光板②を通過できるようにするには、次の図のように2枚の偏光板の間で光を90度ねじ曲げる必要があります。このとき、LCDの画面表示は白となります。

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 2枚の偏光板の間で、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりする役割をするのが液晶分子です。

 光は液晶分子の配列にそって進む性質があります。そのため、液晶分子の配列を変化させることによって、光をそのまま進めたり、ねじ曲げたりすることができるのです。

■液晶分子の配列を制御するには

 液晶分子の配列は液晶に電圧をかけることによって制御することができます。液晶に電圧をかけると、液晶分子は電界の向きにそって規則的に配列します。液晶に電圧をかけていないときは、液晶分子の配列はバラバラです。

 液晶分子の配列がバラバラだと、光の通り方もバラバラになります。すると、画面の明るい部分と暗い部分の表示が明瞭でなくなり、綺麗な表示ができなくなります。ですから、液晶に電圧がかかっていない状態でも、液晶分子を規則的に配列させておく必要があります。

 ところで、液晶分子は溝にそって配列するという性質があります。そこで、液晶パネルの内側には細かい溝が刻まれた配向膜という薄い膜が取り付けられています。液晶分子は電圧がかかっていない状態でも、右図のように配向膜の溝にそって規則的に配列します。配向膜の溝の向きを90度ずらすようにして向かい合わせ、その間に液晶を封じ込めると、液晶分子は右図のように90度ねじれて配列します。

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配向膜にはポリイミドという樹脂が使われています。この樹脂をガラス基板に塗布し、薄い膜を作ります。布を巻き付けたローラーで膜の表面を一定の方向に擦ること(ラビング)によって溝がつけられます。配向膜の溝に液晶分子がなぜ規則的に配列するのかはまだ十分に解明されていませんが、配向膜はLCDの性能を左右する重要な要素です。

 このように液晶分子が90度ねじるように配列すると、ここを通過する光は次の図の左のように液晶分子の配列にそってねじ曲げられます。また、この状態で電圧をかけると、液晶分子は次の右図のように電界にそって規則的に配列するため、光はねじ曲げられずにそのまま進みます。配向膜の向きを90度ずらして、液晶分子がねじれて配列するようにしておくことが光を制御する上で重要なポイントになっています。

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 液晶分子で光の向きを変えることができたら、後は偏光板を使って光を通過させたり、遮断したりするだけです。90度向きの異なる2枚の偏光板で挟むと、次の図のようになります。

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 この場合、光は液晶に電圧をかけていないときに偏光板を通過します。液晶に電圧をかけると、光は遮断されます。つまり、液晶に電圧をかけていないときは画面に白が表示され、電圧をかけているときは黒が表示されます。液晶にかける電圧の大きさを変えると、液晶分子の配列の度合いが変わります。液晶分子がねじれた状態と直立した状態の中間の配列になると、光の通過量が少なくなるため画面に灰色が表示されます。この光の制御方法をノーマリーホワイトモードといいます。ノーマリーホワイトモードの液晶のしくみを簡単に図で示すと次のようになります。

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ノーマリーブラックモード

2枚の偏光板の向きが同じでも、光を通過させたり、遮断したりすることが可能です。この場合、電圧をかけていないときに光が遮断されるので黒、電圧をかけているときに光が通過するので白となります。この制御方法をノーマリーブラックモードといいます。このモードは電圧をかけていないときに黒を表示するため、液晶分子の配列のバラツキによって、光が漏れて黒が綺麗に表示できないという欠点がありました。しかし、最近ではこの欠点を解決した液晶ディスプレイもあります。

 ノーマリーホワイトモードとノーマリーブラックモードのどちらが良いかは、液晶の配列させ方に関係しています。TN型液晶では、ノーマリーホワイトモードの方が黒の表示がより綺麗になります。黒の表示が重要視されるのはLCDが光の明るさの濃淡で画面表示をしているからです。カラー液晶ディスプレイは光の3原色を使った加法混色で色を表示しています。光が漏れると正しい色を作り出すことができなくなりますから、光が何もない黒の表示が重要になります。

■LCDの画面から出てくる光を確認してみよう

 偏光板②を通過する光、すなわちLCDの画面から出てくる光は偏光板②と同じ向きに振動する光であることがわかります。次の写真はLCDの画面をデジカメの偏光フィルタを通して撮影したものです。偏光フィルタの向きによって、LCDの画面が見えたり、見えなくなったりします。

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2011年12月18日 (日)

液晶ディスプレイの仕組み(1)

コレステロールの研究で不思議な物質を発見

 1888年、コレステロールの研究をしていたオーストラリアの植物学者フリードリヒ・ライニッツァーはコレステリルベンゾエートという物質に普通の固体の結晶とは異なる性質があることを発見しました。

フリードリヒ・ライニッツァー(Friedrich Reinitzer)
フリードリヒ・ライニッツァー(Friedrich Reinitzer)

 普通の固体は結晶を加熱すると、ある温度(融点)で液体となります。ところが、この物質の結晶を加熱すると145℃で白濁した液体となり、さらに加熱すると178.5℃で透明な液体となったのです。つまり、彼はコレステリルベンゾエートに2つの融点があることを発見したのです。この物質を不思議に思った彼はドイツの物理学者O・レーマンに詳しい調査を依頼しました。レーマンは物質を加熱しながら観察できる顕微鏡をもっており、液体の状態のコレステリルベンゾエートに本来は固体の結晶がもつ光を2つの方向に屈折させる複屈折の性質があることを発見しました。彼はこの物質が液体でありながら固体の結晶の性質をもつと考え、「液晶」(Liquid Crystal)と名付けました。

 1963年、米国電気メーカーRCA社のR・ウィリアムズは液晶に電圧をかけると透明な液晶が不透明に変わることを発見しました。1968年に同社によって液晶を利用した表示装置が開発されました。

 1973年に日本のSHARPによって、世界初の液晶表示装置をもつ電卓が開発され、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)はいろいろな機器に利用されるようになりました。

液晶とは何か

 液晶は液体と固体(結晶)の中間の状態、またはそのような状態となる物質のことです。そのため、液晶は液体の流動性と固体の結晶性を兼ね備えています。液晶の分子は液体の分子のように自由に動くことができますが、ある方向については固体の結晶の原子のように規則的に配列する性質があります。LCDに使われている液晶は細長い形をしています。例えば、5CB と呼ばれているネマティック液晶の分子は、次の図のようにベンゼン環がつながった硬い部分と炭素が直鎖状につながった柔らかい部分からなる構造をしています。

ネマティック液晶5CBの構造
ネマティック液晶5CBの構造

 液晶分子はこの柔らかい部分があるため液体のような流動性をもち、硬い部分があるため規則正しく配列することができます。


ネマティック液晶は分子が一定の方向を向いて規則的に配列するが、三次元的な配列には秩序をもたない液晶

 この液晶に電圧をかけるとシアノ基(-CN)によって液晶分子中に正電荷に偏った部分と負電荷に偏った部分ができて分極します。そのため、液晶分子は電界の方向に規則正しく配列します。電圧をかけていないときは規則的に配列しません。

液晶に電圧をかけると
液晶に電圧をかけると

どうして液晶で画像を表示できるのか

 液晶は自ら光を出しませんが、液晶分子の配列が変わると、光を透過したり、反射したりする割合が変わります。LCDは液晶にかける電圧の強さを制御することにより、明るさを変えることによって画像の表示を行っています。このしくみは窓のブラインドを閉じたり、開いたりするのとよく似ていると考えることができるでしょう。

液晶は窓のブラインドに似ている
液晶は窓のブラインドに似ている

 LCDはこの「ブラインド」の開閉を画面の1画素単位で行い、各画素の明るさを変えることによって画像を表示しています。

液晶ディスプレイに描かれた「あ」
液晶ディスプレイに描かれた「あ」

 LCDには透過型LCDと反射型LCDがあります。透過型LCDは液晶パネルの背面にバックライトを配置し、液晶パネルを透過する光を使って画像を見えるようにします。ノートパソコンや液晶テレビは透過型LCDです。透過型LCDは暗いところではよく見えますが、バックライトより明るい光が当たると見えにくくなります。一方、反射型LCDはバックライトがなく、外部の光を液晶パネルの背面にある反射板に反射させることによって画像を見えるようにします。反射型LCDは時計や電卓などの表示に使われています。反射型LCDは暗いところでは見えにくく、光がまったくないところでは見えません。

透過型LCDと反射型LCD
透過型LCDと反射型LCD

 最近では透過型と反射型のハイブリッド型のLCDもあります。このタイプのLCDはバックライトと反射板の両方を使うため、明るいところでも、暗いところでもよく見えます。屋外で利用することの多い携帯電話のディスプレイなどをより見やすくすることができるでしょう。

 それでは、LCDがどのようにして液晶分子を使って「ブラインド」の開閉を実現しているのか、これから透過型LCDのしくみを例に考えていきましょう。そのためには、まず光の偏光という現象を理解する必要があります。

偏光とはどのような現象か

 波には波の進行方向と垂直に振動する横波と、波の進行方向に水平に振動する縦波があります。身近な例では、光の波が横波で、音波が縦波です。

横波と縦波の違い
横波と縦波の違い

 横波は振動方向と進行方向が1つの平面上にあります。光の波がこの平面で振動することを光の偏りといい、そのような光を偏光と言います。自然光や電灯などの光源から出る光には振動面がバラバラの偏光が均等に含まれています。

光は縦波
光は縦波

 さまざまな振動面の光を含む光から、ある振動面で振動している偏光を取り出すことができるのが偏光板です。

偏光板を通る光
偏光板を通る光

 2枚の偏光板を置いて、1枚の偏光板を回転させながら光の明るさを調べると、偏光板が90度回転するごとに明るさが変わります。光を偏光板に通すと、光の振動方向がそろいます。光は次の図のように最初に通り抜けた偏光板と同じ向きの偏光板を通り抜けることができますが、垂直の向きの偏光板は通り抜けることができません。

偏光板の向きを変えると
偏光板の向きを変えると

 これは簡単な実験で確かめることができます。次の写真は2枚の偏光フィルターを同じ向きに重ねたときの光の透過を示すものです。2枚の偏光フィルタが重なったところで光が透過して文字が見えます。

偏光フィルターを通る光
偏光フィルターを通る光

 偏光フィルターを1枚だけ90度回転させると、次の写真のように偏光フィルターが重なった部分が光を透過しなくなり文字が見えなくなります。

偏光フィルタの向きを変えると
偏光フィルタの向きを変えると

 向きの異なる偏光板を2枚固定して並べたとき、2枚の偏光板の間で光が偏光する方向を自由に変えることができたら、偏光板を通過する光を制御することができます。LCDでその役割をしているのが液晶です。光は液晶分子の配列にそって偏光するという性質があります。つまり、液晶分子の配列を変えることによって、光を液晶の配列にそってそのまま直進させて通過させたり、ねじ曲げて遮断したりすることができるのです。

 液晶分子の配列と偏光がどのようにLCDで使われているかについては「液晶ディスプレイの仕組み(2)」で説明します。

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2011年12月16日 (金)

半影月食 皆既月食 部分月食 月食の仕組み(1)

夜空に輝く月は自ら光を出しているわけではなく、太陽の光を反射しています。ですから、太陽の光が届いていない部分は輝きを失い暗くなります。

月が地球を挟んで太陽の反対側に来たときに、月が地球の影に入り込むと、月に太陽光が届かなくなり、地球から月が見えなくります。これが月食です。

物体が影をつくるとき、半影と本影の2種類の影ができます(半影と本影については、「光と色と:影のできかた」を参照してください)。月食は、月がどのように地球の影に入るかによって分類することができます。

次の図のように、月が太陽から見て地球の裏側にあるとき月食となります。このとき、月が地球の半影に入る場合、半影月食となります。また、月全体が本影に入る場合、皆既日食となります。月の一部分が本影に入る場合、部分日食となります。

Photo

次の図は、地球から、それぞれの月食の状態の月を見たときの様子です。

月食の仕組み

半影月食は、月の表面に太陽光が届いています。月は若干暗くなりますが、輝いて見えます。地球から見たとき、明るさの比較の対象もありませんので、ほとんどわかりません。

皆既日食のとき、月は真っ暗になってしまうのではなく、薄暗い赤色に見えます。これは、地球の大気で屈折し、月の表面に届いた太陽光によるものです。月が赤く見える仕組みについては、月食のしくみ(2)で説明します。

月は地球の周りを29.5日かけて公転しています。ですので、月が太陽から見て地球の裏側にきたとき、つまり月に1回は月食が起こりそうな感じがします。しかし、月が地球の影に入るのは希なことであり、通常は月は地球の影の上側や下側を通り抜けていきます。このとき、月は満月となります。

なお、普段見えている三日月や半月などは、月が地球の影に入ったわけではありません。太陽と地球と月の位置関係で、月の表面の一部が暗く見えているだけです。これについては、月の満ち欠けの仕組みをご覧ください。

[FullHD]2011年12月10日の皆既月食を微速度動画で   

【補足】

太陽は地球から非常に遠くにあるため、太陽の表面の1点から出た光は本当は次の図のように平行光線として地球に届きます。本説明では、わかりやすくするため、上の図のように描きました。

Image3

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2011年12月14日 (水)

月の満ち欠けの仕組み

 月は地球のまわりを約27.3日かけて1周しています。これを月の公転といいます。ところが月が地球のまわりを1周しても最初の見え方にとは同じなりません。これは地球も太陽の周りを公転しているからです。月の満ち欠けは太陽の光の当たり方と地球から見え方で変わります。地球の公転によって太陽の方向が少し変わります。そのため月の満ち欠けの周期は29.5日になります。

 次の図は地球の北極側から月の公転の様子を描いたものです。太陽のある側の月の表面が光を反射して明るくなります。

 月が満月の位置にあるときは、地球から見える月の表面全体に光があたりますので、月全体が光り輝いて見えます。

 月が新月の位置にあるときは、地球から見える月の表面全体に光はあたりませんので、月は見えません。

 その他の位置では、地球から見える月の表面の一部分にしか光があたりませんので、三日月に見えたり、半月に見えたりします。

月の満ち欠けの仕組み
月の満ち欠けの仕組み

 皆既日食は月が新月の位置にあり、太陽が月ですっぽりと隠されてしまう状態のことです。

 また、皆既月食は月が満月の位置にあり、月が地球の影ですっぽりと隠されてしまう状態のことです。

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2011年12月12日 (月)

皆既月食はなぜ赤く見えるのか 月食の仕組み(2)

先日の皆既月食では赤い月を見ることができました。この赤い月は、地球の大気を屈折しながら通り抜けてきた太陽光によるものです。

夕焼けのときに空が赤くそまるのは、太陽が高さが低くなるので、太陽光が大気中を通る距離が昼間より長くなります。このとき、太陽光に含まれる波長の短い青色系の光のほとんどは大気中で散乱してしまいますが、赤色系の光は地表に届くようになります。そのため、太陽や空が赤く見えるのです。

夕焼けの仕組み

 次の写真は夕焼けで染まる雲を宇宙から撮影したものです。

Earthterminator_iss002_full


Earth at Twilight
Explanation: No sudden, sharp boundary marks the passage of day into night in this gorgeous view of ocean and clouds over our fair planet Earth. Instead, the shadow line or terminator is diffuse and shows the gradual transition to darkness we experience as twilight. With the Sun illuminating the scene from the right, the cloud tops reflect gently reddened sunlight filtered through the dusty troposphere, the lowest layer of the planet's nurturing atmosphere. A clear high altitude layer, visible along the dayside's upper edge, scatters blue sunlight and fades into the blackness of space. This picture actually is a single digital photograph taken in June of 2001 from the International Space Station orbiting at an altitude of 211 nautical miles.

 皆既月食で月が赤くなるのは夕焼けの現象と関係しています。上の図で太陽光は地上に届くだけでなく、次の図のように大気を通り抜けていくものもあります。太陽光が、大気の長い距離を通り抜けるとき、青色光が散乱してしまいます。赤い光だけが大気を通り抜けてきます。このとき、光は大気によって屈折するため、光は地球の裏側に回り込むようにして通り抜けていきます。この光が月に当たるため、月が赤く見えるのです。

皆既月食はなぜ赤く見えるのか

 この赤い光は部分月食のときにも月に届いていますが、地球の影になっていない月の表面の反射光が明るいため、赤く見えません。皆既月食では、月の表面に届く光が、この赤い光だけになるので、月が赤く見えます。

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2011年12月11日 (日)

皆既月食 2011年12月10日

12月10日の皆既月食はとても綺麗に見えました。

出かけていたので手持ちのデジカメで撮影しました。

まずは部分月食です。

Moon1

どんどん月が欠けていきます。

Moon2

もう少しで皆既月食です。

Moon3

三脚がなかったので、皆既月食の赤い月は綺麗に撮影することができませんでした。

残念ながらこのレベルです。

Moon4

皆既月食が終わり、部分月食へ(レンズを変えました)

Moon6

色収差が出ています

月食に関する説明は下部の【関連記事】をご参照ください。

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2011年12月10日 (土)

太陽光が緑色の閃光に グリーンフラッシュ

 西の空を真っ赤に染める太陽が水平線に沈み、その輝きがまさに消えようとする日没の直前に、太陽から緑色の光が一瞬見えることがあります。この現象をグリーンフラッシュといいます。

 夜空に輝く星の光は地球の大気で屈折しています。この屈折の度合いは天頂ではゼロですが、星の高さが低くなるほど大きくなります。そのため高度の低い星は実際の星の位置よりも浮き上がって見えます。この現象を大気差といいます。

大気差の詳しい説明は次を参照してください。
見えている月がそこにはない 大気差の仕組み
https://optica.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-a0f7.html

 太陽光は赤色から紫色までの可視光線を含んでいますが、光の屈折率は波長によって異なります。すなわち、赤色より緑色の光の方が、緑色より青色の光の方が、大きく屈折します。ですから、実際には、同じ物体から出る光でも、紫や青い光の方が、赤い光よりも浮き上がっていることになります。

 太陽が西の空に沈むとき、太陽からの光は赤色に見え夕焼けとなります。そうして太陽が水平線(地平線)に消える頃にはほとんどの色の光が人間の目に届かなくなり空は暗くなります。この過程では、実際には赤い光の方が青い光よりも先に見えなくなっていきます。そのため、日没直前には赤い光よりも波長の短い光が残って見えるというわけです。このとき見える光の色は緑色のため、この現象はグリーンフラッシュと呼ばれます。

 ところで、「紫色や青色の光の方が緑色の光より波長が短いのだから、紫や青い光が見えるのでは」と疑問を持つ人もいると思います。日没時に、紫や青い光は見えないのは、波長が短いため、大気で散乱されてしまうからです。

詳しい説明は次を参照してください。

 グリーンフラッシュはめったに見ることができない現象です。執筆者もグリーンフラッシュを見たことはありませんが、緑色の光が十分に見えるほど空気が澄んでいて雲がなく晴れ渡った西の水平線に太陽が沈む時に見ることができるそうです。また高い山からの方が見えやすいそうで、次第に空が明るくなっていく朝焼けでは見ることができないそうです。

 このめったに見ることができないグリーンフラッシュを一緒に見ることができた男女は永遠に結ばれるというロマンチックな伝説があるそうですが、富士山頂付近やカリフォルニアの浜辺では見えることがあるそうです。

YouTubeにグリーンフラッシュの動画がありました。太陽がゆっくりと水平線に沈んでいきますが、まさに日没の直前に緑色の光が見えます。

BGMが入っていますので、音が出て困る人は再生前に音量を下げてください。

グリーンフラッシュ 父島にて

 

なお、グリーンフラッシュはレンズの収差と勘違いされやすいとされています。肉眼で緑色の光が見えたら、グリーンフラッシュが見えたと言えるでしょう。

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2011年12月 8日 (木)

宇宙から地球を監視する リモートセンシング

 地球の周りにはたくさんの人工衛星が回っています。それらの人工衛星の中には宇宙から地球の状態を観測するために打ち上げられたものも少なくありません。例えば、天気予報でお馴染みの気象衛星ひまわりや、地球観測衛星(ランドサット)や地球資源衛星などを始めとする多くの人工衛星が宇宙空間での地球観測で活躍しています。

 これらの人工衛星はいろいろな種類の電磁波(光や電波)を利用して地球規模での様々なデータを収集していますが、それらのデータを使って地球の大規模な観測が行われています。これをリモートセンシングといいます。リモートは「遠くに離れて」「遠隔の」、センシングは「感知すること」という意味です。感知機のことをセンサーといいます。リモートセンシングは気象の観測、海洋の観測、地質の調査、植物の分布状態、環境の観測などのさまざまな目的に利用されています。

 リモートセンシングには

  1. 地球の陸地や海、大気などから放射したり反射する可視光線・赤外線・電波などを観測する方法
  2. 人工衛星から電磁波を発してその反射波を観測する方法

があります。

2

1の方法では光学センサーという感知機が使われます。光学センサーは簡単に説明すると人間の目やカメラと同じ構造と機能をもつセンサーで、地球から発せられる光を色や形として観測します。人間の目は可視光線しかとらえることができませんが、光学センサーは人間の目では見えない赤外線などを感知することができます。そのため、土地の利用状況、水資源の状況、地表や海面の温度、鉱物資源や植物の分布状況などのたくさんの情報を得ることができます。

2の方法ではマイクロ波(電波)を利用したレーダがセンサとして使われます。人工衛星がマイクロ波を発し地球にあたって反射して戻ってくるマイクロ波を観測します。この方法は主に地形を調べるのに威力を発し、資源探査や地球環境の監視などで活躍しています。またマイクロ波の特性から天候に左右されず、夜間でも観測が可能であることから、1の光学センサーでは得られない情報を取得することが可能です。さらに1と2のセンサーを併用し、どちらかのセンサーだけでは判断できない観測への対応も進められています。

 人類は今日まで快適な生活を営むため様々な技術開発をしてきましたが、残念ながら同時に深刻な環境汚染や自然破壊を引き起こしました。例えば石油などの化石燃料を発電や自動車へ利用することにより大気中にたくさんの二酸化炭素を放出し地球温暖化を引き起こしています。さらにオゾン層の破壊や酸性雨など深刻な環境問題にも直面しています。地球温暖化への有効な対策を考えるためには大気中の原因物質の調査が必要となりますが、これには赤外線を利用した温室効果気体センサーを装備した人工衛星が活躍しています。地球観測衛星は全世界的な規模でかつ24時間休みなく地球を監視しているのです。

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2011年12月 6日 (火)

方解石による複屈折

方解石は炭酸塩鉱物で、主成分は炭酸カルシウムCaCO3です。カルサイト(calcite)、石灰石とも呼ばれます。純粋なものは無色透明ですが、不純物あが混入したものは色がついており、特に美しいものは大理石として扱われます。

方解石に光を通すと、光が結晶の方向によって2つの光線に分けられます。そのため、方解石を通してものを見ると、次の写真のように二重になって見えます。この現象を複屈折といいます。

Photo

光は横波のため、次の図のように進行方向と垂直な様々な面で振動します。

Photo_2

いま、真空中の光速を c、物質中の光速を vとすると、屈折率 nは

n = c/v

であらわすことができます。この式から物質中の光の速度が変わると、屈折率が変わることがわかります。

方解石を通る光は、その振動面の方向によって、速度が異なります。そのため、複屈折が生じます。

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2011年12月 4日 (日)

「機能性プラスチック」のキホン

「機能性プラスチック」のキホン

桑嶋 幹 (著) 久保 敬次 (著)

Photo

内容紹介

ほしい性能を付与できる進化した有機材料の世界。プラスチックは生活に密着した材料ですが、目的や用途に応じて必要な性質をもつものがつくれるという素晴らしい特徴があります。
本書は「機能性」をキーワードに、プラスチックの基本からプラスチックが抱える問題までをわかりやすく解説し、楽しく学びながら読み進めることができるように心がけて仕上げました。また、化学の知識があまりなくても、理解できるように工夫してあります。プラスチックに代表される有機材料は、今後ますます注目されていくでしょう。よく理解してつき合いたいものです。

第1章 プラスチックの基礎知識
私たちは毎日多くのプラスチック製品を使っていますが、プラスチックのことをどれくらい知っているのでしょうか?
第1章では難しい話は抜きに、プラスチックがどのようなものかを概論的に説明します。

第2章 プラスチックのつくり方
第2章の主題は、プラスチックがどのようにつくられるかです。
まず、プラスチックの原料である高分子の作り方を説明し、続いて高分子を形成してプラスチックに仕上げる方法について説明します。

第3章 プラスチックの高性能化
第3章ではプラスチックの高性能化について解説します。
前半でその基礎となる材料の特性を説明したうえで、プラスチックの高性能化について解説します。
後半は高性能化されたプラスチックの例をいくつか紹介します。

第4章 機能性プラスチックのしくみと働き
プラスチックは、どのような化学構造にするか、ポリマー同士をどのように組み合わせるか、どのように加工するかなどで、
さまざまな機能をもったものをつくりだすことができます。
第4章では、機能性プラスチックの具体的な例を解説します。

第5章 プラスチックと私たちの生活
本章では、プラスチックの安全性、資源問題、環境問題など、プラスチックが抱える問題について考えます。
私たちの暮らしをよりよくするために、どのようにプラスチックを利用したらよいかなどについても考えていきましょう。

単行本: 224ページ
出版社: ソフトバンククリエイティブ (2011/11/24)
ISBN-10: 4797364238
ISBN-13: 978-4797364231
発売日: 2011/11/24
商品の寸法: 20.8 x 14.8 x 2.4 cm

目次

はじめに

登場キャラクターのご紹介

第1章 プラスチックの基礎知識
001プラスチックは目的や用途に合わせて開発できる身近な材料
002プラスチックとは形をつくることができるもの
003漆や琥珀などの天然樹脂の利用がルーツ プラスチックの歴史①
004生ゴムの利用から合成ゴムの開発へ プラスチックの歴史②
005セルロイドは半合成時代のプラスチック プラスチックの歴史③
006プラスチック時代を開いたベークライト プラスチックの歴史④
007すべての物質は原子からできている プラスチックはどのような物質か①
008高分子は多数の原子が結合した巨大分子 プラスチックはどのような物質か②
009物質の化学式 プラスチックはどのような物質か③
010プラスチックにはどのようなものがあるか
011熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
012汎用プラスチックとエンジニアリングプラスチック
013目的によってつくりだされる複合材料
014プラスチックの工業規格と定義
015用途や観察・簡単な実験で見分ける方法 プラスチックの見分け方①
016品質表示や識別マークで見分ける方法 プラスチックの見分け方②
017バイルシュタイン試験でハロゲンを検出 プラスチックの見分け方③
018光分析機器を使って見分ける方法 プラスチックの見分け方④
019プラスチックの生産量と消費量 プラスチックの利用①
020プラスチックの種類別生産量と用途 プラスチックの利用②
COLUMN 物質名の表し方

第2章 プラスチックのつくり方
021形づくられて初めてプラスチックになる
022重合でモノマーを連結してポリマーをつくる
023ポリマーは長さの違う分子の混ざりもの
024化学結合の考え方 腕を組み替えてつながる
025ポリマーをつくる2つの方法
026連鎖反応でポリマーをつくる方法
027逐次反応でポリマーをつくる方法
028重合以外のプラスチックのつくり方 
029枝分かれしたポリマー
030複数のモノマーを使う重合
031複数のモノマーを混ぜて単純に重合する ランダム共重合体と交互共重合体
032同じモノマーごとに固まっているブロック共重合体
033幹と枝が違うものでできているグラフト共重合体
034プラスチックのABC
035添加剤で性能が変わる
036高分子は流れ方に特徴がある 流れ方の科学(レオロジー)
037ポリマーからプラスチックへ 成形加工法①
038ポリマーからプラスチックへ 成形加工法②
039熱硬化性プラスチック
COLUMN 水中で重合する方法

第3章 プラスチックの高性能化
040高性能と高機能は違う 本来の意味と実際の使われ方
041温度が上がると変化する性質 ガラス状態とゴム状態
042ポリマー同士の仲のよさによって変化する性質 
043結晶性の有無で変化する性質
044モノマーの結合の向きで変化する性質
045プラスチックの強さと伸び
046バネの性質と水あめの性質
0472種類のポリマーの比率で変化する構造と性質
048架橋ゴムと熱可塑性エラストマー
049架橋の方法と架橋体の性質
050引っ張って強くする
051プラスチックをもっと強靱にする
052もっと熱に強くする
053もっと割れにくくする
054もっと透明にする
055ナイロンとアラミド繊維 鋼鉄より強く、クモの糸より細い
056炭素繊維プラスチック 鋼鉄より強く、アルミより軽い
057発泡プラスチック 衝撃吸収から断熱まで
058シリコーン樹脂 オイルからゴム・プラスチックまで
059フッ素樹脂 フライパンだけではない
060合成ゴム ゴムにもいろいろある
COLUMN ソフトマターってなに?

第4章 機能性プラスチックのしくみと働き
061プラスチックレンズ すぐれた透過率と屈折率
062コンタクトレンズ 酸素を透過し、眼にやさしい
063光ファイバー 信号を光に乗せて届ける
064記録・記憶材料 光で情報を記録する
065光硬化性樹脂 光で固めて造形まで
066フォトレジスト 微細な半導体集積回路をつくる
067形状記憶樹脂 元の形を記憶する
068偏光フィルム 液晶ディスプレイの立役者
069生分解性プラスチック 微生物で分解される
070医用高分子 医療現場で大活躍
071親水性ポリマー 水と仲のよいポリマー
072高吸水性高分子 大量の水を保持する
073高分子電解質膜 燃料電池の心臓部
074分離膜 海水を真水に変える
075導電性プラスチック 電気を通すポリマー
076圧電素子 スピーカーから人口筋肉まで
077気体透過膜とバリア膜 気体を通す、遮断する
078防音材と防振材 振動を吸収する
079コーティング 表面を覆って特殊な機能を付加
080粘着剤と接着剤 ものとものをくっつける
081自分で補修する夢の材料 インテリジェント材料
COLUMN プラスチック磁石

第5章 プラスチックと私たちの生活
082プラスチックの利便性と問題
083プラスチックと安全性① 有害物質
084プラスチックの安全性② 用途と用法
085プラスチックと環境問題
086プラスチックの耐候性
087プラスチックと資源問題① 石油はあとどれぐらいもつのか
088プラスチックと資源問題② プラスチックと石油資源
089プラスチックとごみ問題① ごみ問題とは
090プラスチックとごみ問題② 廃プラスチックの排出量
091リサイクルの4R運動
092プラスチックのリサイクル
093容器包装リサイクル法とは
094ペットボトルのリサイクル
095ペットボトルのリサイクルの問題点
096プラスチックの問題点は科学と技術の発展で解決できるか
097持続可能な社会とは
098循環型社会を目指すために
099ゼロ・エミッション
100プラスチックで解決できる環境問題
COLUMN ライフサイクルアセスメント(LCA)とは

参考文献
索引

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2011年12月 2日 (金)

眼鏡でわかる凸レンズと凹レンズの仕組み

凸レンズと凹レンズの働き

 虫めがねに使われている凸レンズは中央部が厚くて、周辺部が薄い形をしています。また、凸レンズとは逆に、中央部が薄くて、周辺部が厚いレンズを凹レンズといいます。まず、凸レンズと凹レンズの働きを確認しておきましょう。

 凸レンズを通して近くのものを見ると、拡大して見ることができます。遠くのものを見ると、倒立して見えます。また、凸レンズは光を集める働きがあります。凸レンズで太陽光を集めると、黒い紙などを燃やすことができます。光を集める道具であると同時に、熱を集める道具と言ってもよいでしょう。凹レンズにも光を屈折させる働きがありますが、凹レンズを通してものを見ると、近くのものも、遠くののものも小さく見えます。これは凹レンズの光を広げる働きによるものです。凹レンズには光を集める働きはありません。

凸レンズと凹レンズの働きの違い
凸レンズと凹レンズの働きの違い

近視と近視用メガネ

 近視は遠くのものがよく見えません。近視の眼は光を屈折させる力が強すぎるため、次の図の左側のように遠くからやってくる光の像を網膜の手前で結んでしまいます。そのため、遠くのものがぼやけて見えます。像を網膜上にうまく結ぶようにするためには、眼の屈折力を弱める必要があります。そこで、近視の矯正には凹レンズを使います。図の右側のように、眼に入る光を凹レンズで広げてやることによって、うまく網膜上に像を作ることができるようにします。これが近視のメガネのしくみです。

近視と近視用メガネ
近視と近視用メガネ

老視と老視用メガネ(老眼と老眼鏡)

 ヒトは40歳を過ぎた頃から、近くのものが見えづらくなります。これを老視(老眼)といいます。近くのものが見えずらくなるのは、老化によって水晶体を厚くすることができなくなるからです。次の図の左側のように、老視の眼は光を屈折する力が弱すぎるため、近くからやってくる光の像を網膜の後ろで結んでしまいます。そのため、近くのものがぼやけて見えます。像を網膜上にうまく結ぶようにするためには、眼の屈折力を強める必要があります。そこで、老視の矯正には凸レンズを使います。図の右側のように、眼に入る光を凸レンズで集めてやることによって、うまく網膜上に像を作ることができるようにします。これが老眼鏡のしくみです。

老視と老視用メガネ(老眼と老眼鏡)
老視と老視用メガネ(老眼と老眼鏡)

老眼鏡と近視の眼鏡でレンズの働きを調べてみよう

 老眼鏡が凸レンズ、近視のメガネが凹レンズに本当になっているかどうか確かめてみましょう。メガネに太陽や電灯などの光をあてて、眼鏡の影を机の上などに作るとわかります。

老眼鏡と近視の眼鏡でレンズの働きを調べる
老眼鏡と近視の眼鏡でレンズの働きを調べる

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実像と虚像の違い-実像と虚像の例から考える

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