金属の光沢と色|金属反射と金属光沢
金属と絵の具の色の違い
京都の金閣寺はまばゆいばかりの黄金色です。金は簡単に言えば黄色をしていますが、絵の具などの黄色とはずいぶん色味が違います。そこで、私たちは金の色を「金色」と金属の名前をつけた色で呼び、普通の黄色とは区別しています。
これは金に限らず銀や銅も同じです。銀は白色ですが銀色、銅は赤色ですが銅色と呼びます。逆に金、銀、銅はその色から黄金(コガネ)、白銀(シロガネ)、赤銅(アカガネ)とも呼ばれます。
一般に表面を良く磨いた金属が光を反射するときに見られる特有のツヤを金属光沢と呼びます。
白色光をプリズムで分けると光の色の帯が現れますが、その中に金色、銀色、銅色の光はありません。しかし、金属光沢のある黄色い物体は金色に見えます。同様に金属光沢のある白色の物体は銀色に、赤色の物体は銅色に見えます。黄色、白色、赤色の塗料に金属光沢をもつ粉末を混ぜると、金色・銀色・銅色の塗料を作ることができます。
金属光沢のしくみ
綺麗に磨いた金属の表面は鏡のようにものを映します。鏡はガラスの裏側に銀やアルミニウムの薄い膜を張り付けたものですから、鏡による光の反射は金属の表面での光の反射と同じです。
原子は正電荷を帯びた原子核と負電荷を帯びた電子からなります。原子の一番外側にある電子(最外殻電子)は内側の電子より原子核からの引力が弱いため、原子と原子が近づくと特別な働きをします。この最外殻電子を価電子と呼びます。
金属原子はたくさん集まると価電子を放出し、正電荷を帯びた金属イオンとなります。放出された価電子は原子核の束縛から解き放たれて、金属中を自由に移動できるようになります。このように自由に移動できる電子を自由電子といいます。
自由電子は金属中のすべての金属イオンに共有されている状態になります。このように金属イオンと自由電子からなる結合を金属結合と呼びます。金属は金属結合によって、高い電気伝導性と熱伝導性、展性や延性、金属光沢などの金属特有の性質を持ちます。
金属中の自由電子はプラズマ振動という特異的な振動をします。自由電子がプラズマ振動をする限界の振動数をプラズマ振動数といいます。金属の表面に光があたるとき、光の振動数がプラズマ振動数より小さい場合には、自由電子は光の振動数に従って振動します。このとき、光のエネルギーは自由電子の振動に使われますが、自由電子はもとの光と同じ振動数の光を再放出します。結果的に、光は自由電子に遮断されて金属の中へ入っていくことができず、自由電子によって跳ね返されます。これが金属光沢を生じさせます。
金属に色がつく理由
金属の色は光の反射が可視光線のどの波長領域で起こっているかによって決まります。金属が金属光沢をもつのは光が自由電子に跳ね返されるためですが、プラズマ振動数より大きな振動数の光は金属の中に入っていきます。プラズマ振動数は金属の電子密度によって異なるため、金属によって反射する光の波長範囲が変わります。また、金属の中に入った光は原子核に束縛されている電子に吸収されます。原子核に束縛されている電子の状態は金属の種類によって異なるので、吸収される光の波長が異なります。次の図はアルミニウム、金、銀、銅、鉄の紫外線から可視光線領域の光の反射率を示したものです。
アルミニウムや銀は可視光線全域の波長の光をよく反射するので表面の色が銀白色になります。銀やアルミニウムが鏡の材料に使われるのはこのためです。金は赤色系と緑色系の光を反射するので黄金色に見えます。銅は赤色系の光をよく反射し、青色系と緑色系の光も反射するため白味を帯びた赤色に見えます。鉄は可視光線全域を反射しますが銀やアルミニウムに比べると反射率が低いため、厳密には灰色がかった金属光沢となりますが見分けるのは難しいでしょう。
また、金属の色は金属表面の状態によって変わります。金属の表面に酸化皮膜などができると、金属の色味が変わります。
金属光沢を調べる方法
ガラスや水面は鏡のように光をよく反射します。これらの反射は一見すると金属による鏡面反射に似ていますが、偏光フィルタを使うとその違いを簡単に見分けることができます。
次の写真はガラスの手前に物体を置いて撮影したものです。左の写真はガラスの表面に物体が映り込んでいますが、偏光フィルタを使った右の写真は物体が映っていません。これはガラスの反射光が偏光しているからです。
鏡で同じ写真を撮影すると、偏光フィルタを使っても反射光を消すことができません。金属による反射では、自由電子が光を振動方向に関係なく反射するため、反射光が偏光していないからです。偏光フィルタがあれば簡単に確認できますので、機会があったら実験してみましょう。
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