海の色は何色に見える？ 海の色が違う理由は

海は青色？

　葛飾北斎『富嶽三十六景・神奈川沖浪裏』。海面に現れた波を青と白で巧みに表現しています。

　米国ハワイ州オアフ島ハナウマ湾。泳いでいる魚がよく見える透明度の高い海ですが、海面は鮮やかな水色や青色を呈しています。

　さて、多くの人に「海は何色？」と聞くと、おそらく「青色」や「水色」という答えが返ってくると思います。しかし、海水をグラスにくんでみると、無色透明です。無色透明の水がなぜ青色に見えるのか、海は何色なのか考えてみましょう。

光で決まる物体の色

　私たちが色を見ることができるのは、自ら光を出す光源を見ているときか、光で照らし出された物体を見ているときです。光源の色は、光源が出す光で決まりますが、物体の色は光源から物体に届く光のうち、物体に吸収されずに反射した光で決まります。透明な物体の色は、物体に吸収されずに反射したり、透過したりする光で決まります。

　水は透明な液体で、自ら光を出す物質ではありません。ですから、海の色は、太陽光が海面で反射した光や、海中に入った太陽光が海底で反射したり、海中の浮遊物で散乱したりして、再び海面に出てきた光で決まります。海中に潜ったときの水の色は透過光で決まります。

水は水色

　グラス1杯の水は無色透明に見えますが、「水は水色（光と色と）」で説明した通り、水は太陽光をわずかに吸収しています。そして、水は太陽光のうち波長の長い赤色系の光を他の色の光よりたくさん吸収する性質があります。次の図は水による光の吸収の度合いを波長ごとに示した吸収スペクトルです。波長が長い赤色の光をたくさん吸収していることがわかります。

R.M.Pope and E.S.Fry, "Absorption spectrum (380-700 nm) of pure water. II. Integrating cavity measurements," Appl. Opt., 36, 8710-8723,(1997).

　水が吸収する光はほんのわずかなのでグラス1杯の水では色の変化はわかりません。しかし、水の層の厚さが数メートルにもなると、赤色系の光が失われ、青色系の光が多くなり、水が青色に見えます。水が青色なのは水の性質で、これが水の青色が水色と呼ばれる所以です。

　水が水色であることは、水族館の大きな水槽を見たり、水中に潜ったりするとよくわかります。次の写真は潜水艦の中から海中を撮影したものです。海中は水色の世界で、潜水艦のキャビンも海の水色によって青くなっています。

　水深が深くなるにつれて、光が届きにくくなるため、海中はライト・ブルーからダーク・ブルー、やがて漆黒の世界となります。

海面の色は多種多彩 海の色が場所や時間によって違う理由

　海中の青色光が海底で反射したり、海中の微粒子で散乱したりして海面から出て行くと、海上にいる人の目に青色光が届くため、海が青色に見えます。しかし、海の色は常に青色とは限りません。例えば、赤色の色素をもつプランクトンが異常発生した赤潮は赤色になり、土砂の多い河口付近の海は茶色になります。そして、微粒子がほとんど存在しない水深の深い外洋や黒潮は、水中から出てくる光が少ないため黒っぽい色になります。

　また、海の色は水中から出てくる光だけで単純に決まるわけではありません。海面で反射する光を考える必要があります。例えば、船の航跡は白く見えますが、これは太陽光がほとんど水に吸収されず水の泡で乱反射するからです。

　また、海面には空の色が映ります。青空のときには青色、曇り空のときには灰色、そして夕焼空のときには鮮やかな橙色となります。

　ところで、透明な物質の光の反射率は、光の入射角が大きいほど高くなります。下記の図は光が空気中からガラスに入るときの入射角と反射率の関係を示したものです。

光が空気からガラスに入るときの入射角と反射率の関係

このことを考えると、原理的には、真下に見える海の色は水中から出てくる光の色が支配的で、遠くに見える海の色は反射光の色が支配的だと考えることができます。私たちが普段青色と認識している海の色は、水の青色と青空の反射光の青色によると考えて良いでしょう。

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