その色、どこから
■物体の色はどこから
私たちの身の周りにある多くの物体の色は太陽や電灯などの光源から物体に届いた光のうち、物体が吸収せずに反射した光の色で決まります。このように物体が特定の色の光を吸収・反射すると、色が生じます。
ところが、空にかかる虹・シャボン玉の膜・CDやDVDの銀色の面は、普通の物体と違って光の吸収と反射で色づくわけではありません。どのような仕組みで色が生じるのか考えてみましょう。
■虹の色はどこから
1666年、イギリスのアイザック・ニュートンは、無色の太陽光をプリズムに通すと、太陽光が分解して、赤から紫まで連続的に変化する光の色の帯が現れる現象を実験で示しました。このような現象を光の分散といいます。
そして、ニュートンは無色の太陽光は赤から紫までの色の光が混ざり合ったものであることを突き止めました。このような光を白色光と呼びます。
光の色は波長の違いであり、波長が短い方から長くなるに従って紫から赤へと変化します。物質中の光の速度は光の波長が短くなるほど遅くなります。そのため、波長の短い光は波長の長い光より大きく屈折します。
太陽光をプリズムに通すと、光の色が赤から紫になるに従って大きく屈折するため、光が分散して光の色の帯が現れます。空にかかる虹も空気中に無数に存在する水滴で光が屈折することによって生じた光の色の帯で、その基本的な原理はプリズムで光の色の帯が生じる原理と同じです。
■シャボン玉や油膜の色はどこから
シャボン玉の膜や水面に広がった油膜は虹のように色づいて見えます。シャボン玉の膜や油膜の虹は薄膜による光の干渉によって生じます。
干渉とは複数の波が重ね合わさるとき、波が強め合ったり、弱め合ったりする現象です。光の波と波が干渉するとき、波の山と谷が重なる条件では、光が暗くなり、波の山と山が重なる条件では、光が明るくなります。
次の図のように、光が薄い膜にあたると、光の一部は表面で反射しますが、膜の表面で屈折してから膜の中に入った光は、膜の中で反射して再び膜の外に出てきます。この2つの光が干渉し合い光が強め合うところと弱め合うところができるため、膜の表面に色づいた縞模様が見えます。シャボン玉や油膜の虹色の模様がさまざまに変化するのは膜の厚さが変わるためです。
コガネムシなどの昆虫やサバなどの魚の体は金属のような光沢がありますが、これらも薄い膜が何枚も積み重なった多層膜による光の干渉によるもので金属光沢ではありません。
■CDやDVDの虹色はどこから
CDやDVDの銀色の面をのぞくと鏡のように自分の顔が映りますが、虹のような光の色の帯が見えます。これらのディスクの銀色の面には同心円状のトラックと呼ばれる円周上にピットと呼ばれる小さな孔が開けられており、その配列によって情報を記憶しています。トラックとトラックの間隔はCDで1.6μmで、1mmあたりに625本のトラックが溝のように規則正しく等間隔に並んでいます。
波は波長と同じぐらいの大きさの物体にあたると、その物体の陰に回り込むように広がって進む性質があります。これを波の回折といいます。光も波の性質をもつため、光が光の波長ほどの微細な物体にあたると回折します。
CDやDVDの規則正しく刻まれた溝に光があたると、光は回折を起こし、ディスクの表面でさまざな方向に広がるように反射します。このとき、光の波の干渉が起こり、光が出てくる角度によって、特定の色の光が強め合ったり、弱め合ったりします。これが連続的にくり返されて、全体として虹のような光の色の帯が見えます。このようにCDやDVDで生じる虹は、ディスクの面に規則正しく微細に刻まれた溝による光の回折と干渉によって生じます。
物体の微細な構造によって回折や干渉で生じる色を構造色と呼びます。構造色で虹色を見ることができるのは、光源がさまざまな色の光を含んだ白色光であることも忘れてはいけません。
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