LEDが光るしくみ (5)
■LEDと豆電球の違い
LEDは一見すると豆電球(ムギ球)によく似ていますが、LEDの使い方は豆電球とは異なります。LEDと豆電球の違いをまとめておきましょう。
豆電球は次の図のように特別な回路を必要とせず乾電池に接続するだけで点灯します。このとき、電池の正極と負極の向きを気にする必要はありません。
豆電球に電流を流すと、フィラメントの抵抗によって、フィラメントがジュール熱を発します。フィラメントの温度が数百℃になると、フィラメントの色は暗赤色になります。さらに温度が高くなると、フィラメントの色は赤、橙、黄と次第に明るくなり、ついには白色光が発せられるようになります。このように物体が熱を光として放出する現象を熱放射といい、物体が高温で白い光を出している状態を白熱といいます。豆電球はこの熱放射を利用した白熱電球であり、電気エネルギーをいったん熱エネルギーに変換してから光を出すタイプの電灯です。
白熱電球から出る光の色はフィラメントの温度で決まります。白熱電球が明るく光っているとき、次の図のようなスペクトルの光を出しています。豆電球を電池につなぐと一瞬にして明るくなるように見えますが、フィラメントから白色光が発せられるまでには、フィラメントの温度が十分に上昇する必要があり、その分だけ時間がかかります。
豆電球は電圧を高くするほどフィラメントに流れる電流が多くなり、フィラメントの温度が高くなって明るくなります。豆電球に流れる電流は電圧に比例し、大雑把には(注1)オームの法則の電圧と電流の関係と同じです。つまり、豆電球にかかる電圧が一定であれば、豆電球に流れる電流も一定となります。
(注1)大雑把には:フィラメント(金属)は温度が高くなると、抵抗が大きくなるため、電球ではオームの法則は成り立ちません。
ですから、豆電球を点灯するには電圧が一定の電源を使えば良いのです。そのため、豆電球には2.5V、3.8V用など定格電圧が表示されています。例えば、2.5V0.3Aの豆電球は、2.5Vの電圧が加わったときに、0.3Aの電流が流れ、消費電力は0.75Wになります。同じ2.5Vの豆電球でも、電流が0.5Aの方が消費電力が大きくなるので明るくなります。ところで、1.5Vの乾電池を2個直列につなぐと3Vですが、電池の内部抵抗や、電池の起電力の低下により電圧降下が起こるため豆電球に加わる電圧は3Vより小さくなります。
豆電球が点灯しているとき、フィラメントは酸化・昇華しながら細くなっていきます。長時間使用すると、やがてフィラメントが断線します。また、豆電球の定格電圧より高い電圧をかけると、寿命が短くなったり、フィラメントが焼き切れたりします。
白熱電球は構造が簡単ですが、光を得る効率は低く電気エネルギーのほとんどが熱エネルギーとして失われてしまいます。100Wの電球では可視光線の変換効率が10%前後であり、残りは赤外線や熱伝導で失われます。そのため、最近では省エネルギーや地球温暖化の対策のため、白熱電球の使用を禁止する方針を打ち出している国もあります。
LEDはこれまで説明した通り、電流が流れる向きが決まっています。電球は周期的に電流の向きが変わる交流でも連続的に点灯させることができますが、LEDは交流では人間の目では見分けることができない点滅発光となります。
LEDに電流を流すと、p型半導体とn型半導体の接合面で正孔と電子が出合い、電子のエネルギーが光として放出されます。このようにLEDは電気エネルギーを直接光エネルギーに変換するタイプの電灯です。
LEDの発光色は半導体のバンドギャップの大きさで決まります。ですから、LEDに流す電流の大きさを変えても、明るさが変わるだけでLEDの発光色は変わりません。LEDから出る光は特定の波長を中心とした光で、白熱電球のように広い範囲の波長の光が含まれていません。LEDで白色光を得るためには、LEDが光るしくみ(4)で説明した通り、蛍光物質を使用したり、赤緑青のLEDを組み合わせたりする必要があります。また、LEDは電流が流れると直ちに発光するため、電球のように発光に時間がかかりません。そのため、LEDは素早く点滅させることが可能であり、光通信にも使えます。
LEDの電圧と電流の関係は次の図のようになります。図からわかるとおり、ある電圧を超えるまでは電流が流れません。電流が流れなければLEDは発光しません。LEDに加える電圧を上げていくと電流が流れて発光しますが、LEDに流れる電流はわずかな電圧の変動で大きく変化します。電圧が高くなると、大きな電流が流れて、LEDが高温となり、壊れてしまいます。従って、LEDを点灯させるためには電流が一定となる電源を使う必要があります。
乾電池でLEDを発光させる場合には、抵抗を入れるなどしてLEDに流れる電流を制限する必要があります。LEDを点灯させるのに必要な電圧や電流はLEDの説明書に表示されています。それらについては後述します。
LEDの可視光線の変換効率は電球の約2倍以上です。ですから、電球と同じ明るさの照明をLEDで作れば消費電力が電球の半分以下で済むことになります。電球の寿命は数千時間程度ですが、LEDの寿命は数万時間です。また、LEDは電球に比べて、振動や衝撃に強いという特長もあります。LEDは光量が少ないという欠点がありましたが、最近は光量の大きなLEDも実用化されています。電球ソケットに取り付けられるLEDランプも登場しています。
電球とLEDの違いを次の表にまとめます。
電球 | LED | |
発光体 | フィラメント | 半導体 (注2) |
極性 | なし | あり |
発行色 | フィラメントの温度で決まる | バンドギャップの大きさで決まる(注2) |
点灯 | 遅い | 速い |
電源 | 電圧制御 | 電流制御 |
寿命 | 短い | 長い |
消費電力 | 大きい | 小さい |
発行効率 | 低い | 高い |
(注2)白色LEDでは蛍光物質を併用する |
■LEDを点灯するためには
LEDを点灯するには電流が一定になるようにしなければなりませんが、抵抗つきのLEDを買ってきて、説明書に書いてある通りに回路を組めば簡単に点灯させることができます。LEDの説明書を見てみると、順方向電圧や絶対最大定格電流などの数値が出ています。これらの値はLEDを点灯させる回路を組む上で注意しなければならない非常に重要なものです。
LEDの点灯についてはLEDが光るしくみ(6)で説明します。
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