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2011年2月13日 (日)

LEDが光るしくみ(3)

■LEDの光のもとは電子のエネルギー

LEDの発光原理をもう少し詳しく理解するため、電子のエネルギーについて考えてみましょう。 電子は波の性質を持っており、電子がもつエネルギーは電子の波の振動数(波長)によって決まります。電子には原子中で存在できる振動数と存在できない振動数があるため、電子が取り得るエネルギーは不連続となります。原子の電子軌道が飛び飛びになるのはこのためです。1つの電子軌道は1つのエネルギー準位に対応し、電子は低い準位から高い準位へと順番に位置を占めるように存在します。このとき、電子は準位と準位の間には存在できません。

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■結晶中の電子のエネルギー状態を考えてみよう

原子が単独に存在するとき、1つのエネルギー準位は上図のように1本の線で表すことができます。原子が複数存在する場合は、原子と原子の同じエネルギー準位の電子軌道が相互作用し、1つだったエネルギー準位が原子の数と同じ本数に分かれます。原子が多数存在する結晶中の電子のエネルギー準位は多数の線の束となり、帯(バンド)のようになります。この帯のことをエネルギーバンドといいます。これを簡単に示すと次の図のようになります。

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結晶中の電子は低い準位のエネルギーバンドから順番に満たされていきます。結合の担い手となる原子の最外殻にある価電子は価電子帯という高い準位のエネルギーバンドに属します。 電子がエネルギーの低いところから高いところへ順番に満たされていくとき、すべての電子が満たされたときの最大のエネルギーをフェルミ準位といいます(統計的には電子の存在確率が50%になるところになります)。フェルミ準位は、簡単に言うと、どのぐらいのエネルギーまで電子が満たされているかを示す値です。 価電子帯の上には通常は電子が存在しない伝導帯というエネルギーバンドが存在します。価電子帯と伝導帯の間には電子が存在できない禁止帯(禁制帯)があります。禁止帯のエネルギーの幅のことをバンドギャップといいます。価電子帯は電子が詰まった状態で、電子は動くことはできません。しかし、価電子帯の電子が外部からエネルギーを受けて、バンドギャップを乗りこえ伝導帯に移動すると、自由電子となり電流が流れるようになります。

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■金属・絶縁体・半導体のエネルギーバンド

金属は次の図のようにフェルミ準位が価電子帯にあります。そのため、価電子帯のフェルミ準位の上の部分には電子が存在せず、伝導帯のようになっています。金属に電圧をかけると価電子が容易に価電子帯の上の部分に移動し、自由電子となります。ですから、金属は電流がよく流れるのです。

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絶縁体や半導体の価電子帯はすべて電子で詰まっており、フェルミ準位は禁止帯にあります。伝導帯は禁止帯の上にあるため、金属のような現象は起きません。絶縁体と半導体の違いはバンドギャップの大きさです。絶縁体はバンドギャップが大きいため、価電子帯の電子はバンドギャップを乗りこえて伝導帯に移動するのに大きなエネルギーを必要とします。そのため、金属のようにわずかなエネルギーでは価電子は自由電子になることができません。ですから、絶縁体には電流が流れません。 一方、半導体は絶縁体よりもバンドギャップが小さく、絶縁体に比べて小さなエネルギーで価電子が自由電子となるため電流が流れます。

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■p型半導体とn型半導体のエネルギーバンド

純粋な半導体(真性半導体)に不純物を加えることをドーピングといい、加える不純物をドーパントといいます。p型半導体のドーパントは正孔を生成させ電子を受け取るのでアクセプタ、n型半導体のドーパントは結合に供与しない電子を与えるのでドナーといいます。 半導体にドーパントを加えると、ドーパントと価電子帯の電子が相互作用するためのエネルギー準位が禁止帯に新たに生じます。p型で生じる準位をアクセプタ準位、n型で生じる準位をドナー準位といいます。アクセプタ準位は価電子帯に近いところに生じ、価電子がアクセプタと結合するため、価電子帯に正孔が生じます。一方、ドナー準位は伝導帯に近いところに生じます。ドナーの電子は結合に使われないので、伝導帯に移動し自由電子となります。加えるアクセプタやドナーの量が多いほどキャリア(自由電子や正孔)が増え電流が流れやすくなります。 フェルミ準位はp型では電子が不足するので禁止帯の中心より下側、n型では電子が注入されるため禁止帯の中心より上側となります。フェルミ準位の位置は電子密度で決まります。

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■pn接合するとエネルギーバンドはどうなるか

電圧をかけていない状態では接合部付近に空乏層ができます。このとき、p型とn型の電子密度は釣り合っているのでフェルミ準位が一致します。また、伝導体と価電子帯のp型-n型間のエベルギー差が大きいため、電子や正孔は移動することができず電流が流れません。

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順方向の電圧をかけると、カソードから電子が注入されるため、空乏層の領域が小さくなり、電子密度に変化が生じます。p型とn型のフェルミ準位の差が生じ、伝導体と価電子帯のp型-n型間のエベルギー差が小さくなります。その結果、電子はn型からp型へ、正孔はp型からn型へ移動できるようになり、電流が流れます。 自由電子と正孔は接合面で出合い再結合し電気的に中和されます。このとき、電子のエネルギーが熱や光のエネルギーとして放出されます。放出されるエネルギーの大きさは半導体のバンドギャップによって決まります。つまり、半導体の種類やドーパントの種類を変えることにやって、異なるエネルギーを放出させることができるようになります。可視光線のエネルギーが出てくるようにつくられたものが普通のLEDです。これがLEDの発光の基本的なしくみです。LEDについては次の記事で説明します。

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