メタマテリアル-負の屈折率をもつ物質
1967年、ロシアの科学者ヴィクトル・ヴェセラゴは負の屈折率を持つ物質が存在するのではないかと考えました。普通の物質は正の屈折率をもつので光を図1の①のように屈折させますが、負の屈折率を持つ物質は光を②のように「く」の字型に屈折させます。もし、このような物質があれば、光学の常識を超えて、光を自由に操ることができるようになります。しかし、そのような物質は見つかりませんでした。
近年、物質をnm(ナノメートル、10-9 m)スケールで扱う技術ナノテクノロジーが発展し、メタマテリアルという負の屈折率を持つ人工物質が開発されました。メタマテリアルは食塩の塊や鉄の塊のような物質ではなく、微小な構造単位を繰り返し配列させた人工的な構造物です。ただし、光に対しては均質な物質として振る舞います。
微細構造はまるで電磁石のコイルのような働きをし、電磁誘導によって光の振る舞いが制御されます。メタマテリアルでレンズを作ると、近接場光を集めて増幅することができるようになると考えられています。そのレンズで光の回折限界を超えた微細な領域を観察したり、微細な電気回路のパターンを露光したり、より高密度な光ディスクを読み書きしたりすることができるようになると期待されています。
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