LEDが光る仕組み(2)
■ケイ素の結晶に不純物を加えると
LEDが光る仕組み(1)で説明した通り、ケイ素の結晶に電気を通すためには、ケイ素原子の結合の担い手である価電子を自由に移動できるようにする必要があります。そして、ケイ素の結晶に不純物を加えると、価電子の動きを制御することができると説明しました。
不純物を加えると言っても、でたらめに物質を加えれば良いわけではありません。ケイ素の結晶の中に、ケイ素以外の原子を不純物として加えるのです。具体的にはケイ素原子と価電子数が異なる原子を加えます。ケイ素原子は価電子を4つもっています。ケイ素の結晶に価電子数5のリン原子と価電子数3のアルミニウム原子を加えたとき、どのようなことが起きるのか考えてみましょう。
■リン原子を加えたとき(n型半導体)
ケイ素の結晶にリン原子を加えると、ケイ素原子とリン原子は価電子を1個ずつ出し合って結合します。ところが、リン原子は価電子を5つ持っているので、電子が1個余ります。この余った電子は室温程度の熱エネルギーでリン原子の束縛から外れ、結晶中を自由に動き回るようになります。つまり、この余分な電子がより大きなエネルギーをもつ自由電子となります。この結晶に電圧をかけると、この自由電子が負極から正極へ移動し電流となります。このように、結合に使われなかった価電子によって電流が流れる半導体をn型半導体と呼びます。nはnegative(陰性の、負の)の略です。
■アルミニウム原子を加えたとき(p型半導体)
ケイ素の結晶にアルミニウム原子を加えると、ケイ素原子とアルミニウム原子は価電子を1個ずつ出し合って結合します。ところが、アルミニウム原子は価電子を3つしか持っていないため、結合をつくることができず電子が不足する部分ができます。この部分は電子がなくなった孔のようになります。この孔は負電荷を帯びた電子が不足してできた孔なので、正電荷を持つ孔として考えることができることから正孔と呼ばれます。
正孔は非常に不安定で、まわりの価電子を引っ張り込んで結びつこうとする性質があります。その結果、結合の担い手になっている価電子は原子の束縛から外れ正孔と結びつきます。その価電子が外れたところは新しい正孔となります。新しくできた正孔は再び価電子と結びつき、その価電子の外れたところが新しい正孔となります。このように、正孔は次々と価電子と結びついて消滅・生成を繰り返し、あたかも正電荷をもった粒子のように結晶中を動き回ります。実際には電子が移動しているのですが、正孔が移動していると考えることができるのです。
この結晶に電圧をかけると、正孔は正極から負極へ移動し電流となります。このように、正孔によって電流が流れる半導体をp型半導体と呼びます。pはpositive(陽性の、正の)の略です。
■p型半導体とn型半導体を組み合わせると
次の図のようにp型半導体とn型半導体を組み合わせた接合をpn接合といいます。
電圧をかけていない状態では、接合面の付近で正孔と自由電子が結合しようと移動します。移動して出合った正孔と自由電子は電気的に中和し、その結果、接合面付近は正孔と自由電子が少なくなります。その部分を空乏層といいます。空乏層のn型側は自由電子が不足し正に帯電し、p型側は正孔が不足し負に帯電し、全体としては安定した絶縁状態になります。そのため、電流が流れません。
■順方向と逆方向の接続
次の図のように、p型を正極、n型を負極に接続して電圧をかけると、正孔はn型の方へ、自由電子はp型の方へ移動します。正孔と自由電子は接合部で出合い結びつき電気的に中和します。
正極ではp型から導線へ電子が移動するので新しい正孔が生成されます。一方、負極では導線からn型に電子が供給され続けます。そのため電流が流れ続けるようになります。この電圧をかける向きを順方向といいます。
接合面で正孔と自由電子が中和するとき、自由電子が持っていたエネルギーが熱や光のエネルギーとして放出されます。どのようなエネルギーがどれぐらいでるかは半導体を作る物質によって異なります。
次の図のように、p型をマイナス極、n型をプラス極にして電圧をかけると、正孔はマイナス極の方へ、電子はプラス極の方へ移動します。接合部の付近は正孔と電子がほとんど存在しなくなり、空乏層となるので、電流が流れなくなります。この電圧をかける向きを逆方向といいます。
■ダイオードはどのような素子か
pn接合はp型からn型に向けて電流が流れる性質があります。この働きを整流作用といいます。整流作用をもつ半導体素子をダイオードといいます。
ダイオードは電流の流れる方向が周期的に変わる交流を直流に変換するなど、さまざまな用途で使われます。
ダイオード(diode)はギリシャ語のdi(2つの)とode(通り道)が語源です。LED(発光ダイオード)はダイオードの一種で順方向に電圧をかけたときに発光します。電池をつなぐ向きを逆にすると光りません。LEDの仕組みについては(3)で説明します。
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