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2010年1月 9日 (土)

LEDが光る仕組み(1)

LEDとは

 信号機や電光掲示板をよく見ると小さなランプのようなものが並んでいることがわかります。この小さなランプのようなものがLED(Light Emitting Diode発光ダイオード)です。

LEDを使った歩行者用信号(青色)
LEDを使った歩行者用信号(青色)

 LEDは従来の光源に比べて優れた特長をもっています。LEDは電気部品に使われている半導体でできていますが、電気を流すと発光するタイプの半導体でできています。

LEDの主な特徴

  • 省電力である
  • 寿命が長い
  • 目的の波長の光を出すことができる
  • 電球より応答が良く点滅性能に優れている
  • 小型・軽量で衝撃に強い

LEDを発明した人は誰か

 20世紀の初め、イギリスのヘンリー・ジョセフ・ラウンド(H.J.Round)は炭化ケイ素などの結晶に電圧をかけると種々の色の光が出ることを報告しました。この報告がLEDと同じ発光原理の発光現象の発見と考えられています。 また、1920年代にロシアのオレク・ウラジーミロヴィチ・ロシェフ(O.V.Losev)はラジオに使われているダイオードに電圧をかけると発光することに気がつき、世界で初めて発光ダイオードに関する詳細な論文をまとめました。

 Roundの報告はメモ程度のものであり、Losevの論文は当時ほとんど注目されませんでしたが、この2人がLEDの発光原理の発明者と考えることができるでしょう。

H.J.ラウンドとO.V.ロシェフ
H.J.ラウンドとO.V.ロシェフ

 1950年ぐらいまでは天然に算出される鉱物の発光現象の研究が盛んに行われました。人工的な結晶で作られた発光ダイオードが登場したのは1960年代に入ってからです。

半導体はどんな物質か

 鉄や銅などの金属は電気を良く通す導体、普通のガラスやゴムは電気をほとんど通さない絶縁体です。 半導体は「室温において電気を通しやすい導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質(電気の通しやすさ)を持つ物質」とよく説明されます。

 しかし、純粋な半導体物質は低温ではほとんど電気を通しません。ところが、半導体物質に不純物を加えたり、光や熱を加えたりすると電気が良く通るようになります。ですから、半導体は導体と絶縁体の中間の電気の通しやすさをもつ物質というより、条件によって電気を通したり、通さなかったりする物質と考えた方が的を射ているでしょう。

 私たちの身の周りの物質はすべて原子と原子が化学結合したものです。もちろん、半導体も原子と原子が化学結合したものです。半導体が電気を通したり、通さなかったりする理由は、原子と原子の化学結合に仕掛けがあるからです。

絶縁体のダイヤモンドの結合を考えてみよう

 次の図はダイヤモンドの結晶中の炭素原子の化学結合を簡単に示したものです。

ダイヤモンド結晶中の炭素原子の化学結合
ダイヤモンド結晶中の炭素原子の化学結合

 ひとつの炭素原子は結合を担う「手」を4つ持っており、隣り合う炭素原子同士がその「手」を取り合って結合していると考えることができます。

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結合を担う「手」の正体は何か

 原子は正電荷を帯びた原子核と負電荷を帯びた電子からできています。原子の一番外側にある電子(最外郭電子)は内側の電子より原子核からの引力が弱いため、原子と原子が近づくと特別な働きをします。この最外郭電子を価電子と呼びます。 この価電子が原子と原子が化学結合するのを担う「手」です。ひとつの炭素原子は価電子を4つ持っており、それが化学結合の「手」となるのです。

炭素原子の構造
炭素原子の構造      

(注)最外郭電子の数が電子郭の最大収容数と同じ、もしくは8個の原子は、電子配置が安定しているので価電子はゼロとします。

ケイ素原子の化学結合を考えてみよう

 半導体として良く使われるケイ素の原子も炭素原子と同じように4つの手を持っています。

ケイ素原子の構造
ケイ素原子の構造

 ケイ素原子同士が結合するとき、隣り合ったケイ素原子同士が価電子を共有し、結合をつくります。このように原子と原子がお互いに価電子を出し合ってつくる結合を共有結合といいます。

ケイ素原子の共有結合
ケイ素原子の共有結合

 原子と原子が共有結合している場合、結合の担い手である価電子は原子に束縛されています。そのため、価電子は物質中を自由に動くことができません。

 電気が物質中を流れるというのは、電子が物質中を移動するということです。ですから、電子が移動できない物質は電気を通さない絶縁体です。半導体に使われる純粋なケイ素の結晶は、不純物を加えたり、光や熱を加えたりすると電気が流れるようになりますが、通常は電気を通しません。一般にダイヤモンドは絶縁体と考えられていますが、やはり不純物を加えることで半導体をつくることができます。

金属はどうして電気が流れるのか

 金属原子は他の原子と出会うと価電子を放出し、正電荷を帯びやすいという性質をもっています。そのため、金属原子がたくさん集まると、それぞれの原子は価電子を放出して正電荷を帯びます。その結果、価電子は原子核の束縛から逃れて、金属中を自由に動き回れるようになります。つまり、価電子は特定の原子に束縛されず、すべての原子に共有されている状態になります。このように金属中を自由に移動できる価電子を自由電子といいます。正電荷を帯びた金属原子(金属イオン)と自由電子からなる結合を金属結合といいます。金属は価電子が金属中を自由に移動できるので電気をよく通すのです。

アルミニウム原子の構造と自由電子アルミニウム原子の構造と自由電子

ケイ素の結晶に電気を通すには

 ケイ素の結晶に電気を通すためには、ケイ素原子の価電子を移動させる必要があります。今日、もっとも広く使われている半導体はケイ素、ゲルマニウムなどの元素の純粋な結晶に不純物をわずかに加えたものや、ガリウムヒ素などの化合物です。不純物を加えたり、化合物としたりすることによって価電子の動きを制御することができるようになるのです。 このような方法によりp型n型と呼ばれる半導体をつくることができます。LEDはこのp型とn型の半導体を組み合わせたものです。p型とn型半導体については次回で説明します。

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