フェルマーの原理|光はどのように進むのか
光の基本的な性質として、光の直進性があります。光は光源から出た後、直進します。光が鏡で反射すると、光の進む方向は変わりますが、光は反射した後も直進します。光が空気から水に入るとき、光は水面で折れ曲がり屈折します。光が水面で屈折すると、光の進む方向は変わりますが、光は屈折した後も直進します。光はどのような道筋を選んで進んでいるのでしょうか。
次の図で私たちがA地点からB地点に向かうときその経路は無数にあります。 A地点からO地点を経由してB地点に向かう、あるいはA地点からB地点にジグザグに進んで向かうなどがあるでしょう。しかし、普通は「最短距離」となるA地点とB地点を直線で結んだ経路を取るでしょう。
光も同じ媒質中を進むときには「最短距離」で進みます。ところが、光はある媒質から屈折率の異なる媒質に進むときには次の図のように「最短距離」を選ばず媒質と媒質の境界面で折れ曲がり屈折します。なぜ、光はABを直線で結ぶ「最短距離」を選ばないのでしょうか。
この問題について明快な答えを出したのは、フランスの数学者のピエール・ド・フェルマーです。フェルマーは「光は最短時間で到達できる経路を選ぶ」と説明しました。
フェルマーは光は最短時間で到達できる経路を選ぶと説明していますが、最短距離と最短時間の意味は大きく異なります。
次の図は海岸をイメージしたものです。A地点からO地点のところまでは砂浜、O地点からB地点までは海となっています。海岸の砂浜のA地点から、海上のB地点まで一番早く到達する経路を考えてみましょう。ここで問題になるのは、海の中を移動する速さは砂浜を移動する速さより遅いということです。A地点とB地点を直線で結ぶ①の経路は最短距離ですが、この経路だと海の中を走る距離が一番長くなります。一番早くB地点にたどりつくことができるのは②の経路のようになるのです。
光の速度は真空中ではおよそ秒速30万キロメートルです。空気中の光の速度は真空中とほとんど変わりませんが、水中ではおよそ秒速22.5万キロメートルと遅くなります。そのため、光が空気中から水中に入ったときの屈折角の大きさは、光が水中を進む距離がもっとも短くなるようになっているのです(※)。
フェルマーはこのように最短時間で行ける経路が実際に観測される光の経路であると説明しました。この説明は、1679年、フェルマーの子によって発表され、以後「フェルマーの原理」または「フェルマーの法則」と呼ばれています。
フェルマーの原理とは「二点間を結ぶ光の経路は、その所要時間を最小にするものになる」ということです。光は何もない空間や同じ媒質中では最短距離=最短時間となるように一直線に進みますが、屈折率の異なる媒質を通るときには最短時間となるような経路を進みます。
(※)と言っても、光が空気中から水中に入るときに、光が最短時間になるような経路を自ら選んでいるというわけではありません。というのは、屈折角の大きさがどうなるかは媒質の屈折率によって決まるからです。光にとっては、最短時間というのは結果であって、そもそも目的地がどこかなんてのは、水に入ったから決まるわけで、空気中にいる光にとっては、そんなの関係ねぇ~ということになります。この話はまたの機会に。
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コメント
そうなんですよね。この※のところをよく考えたうえで説明するのと、そうでないのではだめなのだと思います。
フェルマーの原理は、なかなか分かりやすい展開にはなりますが、それは、数学の問題などを公式だけ覚えて、解答しているようなものだと思いました。やっと最近。(^^ゞ
投稿: 芽 | 2009年12月14日 (月) 08時07分