レンズの語源 (レンズの名前の由来 レンズマメ/レンズ豆)
多くの言葉にはその言葉の元となる意味があります。例えば、光に関係する道具である鏡は英語でミラー(mirror)といいますが、mirrorの語根のmir-には「驚いて見る」という意味があります。これは「驚く、不思議に思う、見る」という意味をもつラテン語のmirareに由来しています。miracle(奇跡、不思議なこと)や「蜃気楼」mirage(蜃気楼)などの単語も同じ語根mir-をもっています。きっと古代の人々にとって、鏡は驚いて見るような不思議でかつ貴重な道具だったのでしょう。
レンズも鏡と同様に光に関係する道具ですが、レンズという言葉には、見るという意味や、あるいは光を集める、物を拡大して見るなどの意味はありません。実はレンズという名前は植物のマメの名前に由来しています。そのマメの名前がずばりレンズマメ(レンズ豆)といいます。
レンズマメは地中海沿岸を原産とするマメです。人類とレンズマメの付き合いはとても古く紀元前から食物として栽培されてきた植物です。旧約聖書の創世記では、アブラハムの息子のイサクの子のエサウが狩猟から疲れ切って戻ってきた際、双子の弟ヤコブが料理していたレンズマメのスープを食べさせてもらう代わりに、その長子権を譲ったことが記されています。
レンズマメは次の写真のように凸レンズに似た形をしています。現代の私たちはレンズマメを見て「レンズに形が似ている」と思うかもしれませんが、本当はその逆でレンズの形がレンズマメに似ていたからレンズと名付けられたのです。
下記はレンズの基本と仕組み(秀和システム)に掲載したレンズ豆の写真です。
レンズマメ(レンズ豆)は英語ではlentil、ラテン語ではlens、ギリシャ語ではphakosといいます。英語で眼の水晶体のことをlens、白内障などによる水晶体の欠損をaphakia(無水晶体)といいますが、これらの名前もレンズマメ(レンズ豆)に由来しています。
レンズは日本語名もレンズで特別な名前はありません。戦時中は英語の使用を避けるため中国語の透鏡という漢字が使われました。同様にプリズムは稜鏡と呼ばれました。
中国語のレンズの本
現在、レンズのことを透鏡と呼ぶことはありませんが、レンズで作られた道具が眼鏡、顕微鏡、望遠鏡と呼ばれるように今日でも鏡という漢字が使われています。光を使う道具としてはレンズより鏡の方が歴史が古いため、レンズに鏡という漢字が慣習的に使われるようになったのでしょう。
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