ニュートンが考えた光の直進
17世紀末に、ニュートンは光の正体は弾丸のような粒子であるという「粒子説」を唱えました。同じ頃、ホイヘンスは光の正体は波であるいう「波動説」を唱えました。
ニュートンは光源から放射される光には実体があり、光が波だとすると、光が直進することを説明できないと主張しました。
これに対して、ホイヘンスは、光が直進するのは、たくさんの小さな球面波が重なり平面波となって進むからだと説明しました。彼は光の反射や屈折の法則も波動で説明できることを示し、光が波であると主張しました。
ホイヘンスの説明はしっかりしていましたが、光の現象が何とか粒子説で説明できたことや、ニュートンの権威もあり、当時は光の粒子説が有力となりました。
ニュートンの時代には光は直進するというのが実験事実です。しかし、ニュートンが言うように光が弾丸のような粒子であれば、光は重力に引かれて落下しながら進むことになります。この事実と異なる部分はどのように考えたら良いでしょうか。
今、初速V0の物体が水平に飛び出したときの物体の運動(水平投射)は次のようになります。空気抵抗はないと考えましょう。
秒速30万キロメートルの光の粒子が x だけ進んだときに y がどれぐらいになるかを求めてみましょう。
2つの式から
y = 1/2 g (x/V0)2
となります。x を1 km (1000 m)としてみます。
y = (1/2 )(9.81)(1000/300000000)2
y=5.45×10-11
これは54.5 pm(ピコメートル:1 pm=1兆分の1メートル)です。
水素原子の大きさはだいたい100 pmですから、この値は水素原子の半径ぐらいとうことになります。
つまり、光はものすごく速いので1 km進んでも水素原子の半径ほどしか落下しないと言えるわけです。ニュートンの時代には、光の弾丸がわずかに落下するかしないかを観測することはできませんから、結局のところ重力の影響は考えなくても良いということになります。
ニュートンの主張は「光は弾丸のような粒子であっても速度が大きいので直進するのだ」ということになります。
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